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玉椿 作者:不詳
見る度(たび)に飽(あ)かぬ色なり足曳(あしびき)の、かた山椿(やまつばき)今ぞ咲く。花に心を越の雪、その初嵐(はつあらし)明(あ)かしけん、まだ青柳(あをやぎ)のいとしほらしき玉水(たまみづ)の、咲きぶりもよき都紅(みやこべに)。文(ふみ)から糸の厳島(いつくしま)。互(たがひ)に峰の雪解けて、千歳(ちとせ)をちぎる鹿(しか)の松、道冴(さ)えわたる照明(せうみやう)の月。常磐山、八つ穂(ほ)の峰の玉椿。色も変わらで幾代経ぬらん。