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地歌 こんかい
 
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{{Ruby|痛|いた}}はしや母上は、花の姿に引き替へて、{{Ruby|凋|しを}}るる露の床の{{Ruby|内|うち}}、智恵の鏡もかき曇る、法師にまみへ給いつつ。母を招けば{{Ruby|跡|あと}}み{{Ruby|返|かへ}}りて、さらばと言はぬ。ばかりにて、泣くより外の、事ぞなき、野越え山越え里打ち過ぎて、来るは誰故、そさま、故。誰ゆゑ来るは、来るは誰ゆゑ、そさま故、君は帰るか、恨めしや{{Ruby|往|いの}}ふやれ。我が住む森に帰るらん。勇みに勇んで帰らん。我が思ふ、我が思ふ、心の内は白菊。岩隠れ、{{Ruby|蔦|つた}}隠れ、篠の{{Ruby|細道|ほそみち}}掻き分け行けば、蟲の{{Ruby|声々|こゑ〳〵}}面白や。降り初むるやれ、降り初むる。やれ降りそむる、今朝だにも。今朝だにも、所は跡も無かりけり。西は田の{{Ruby|畦|あぜ}}{{Ruby|危|あぶな}}いさ。{{Ruby|谷峯|たにみね}}しどろに越え行け。{{Ruby|彼|あ}}の山越えて、此山越えて。こがれ焦るる憂き思ひ。
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