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Mymelo (トーク | 投稿記録)
地歌 こんかい
(相違点なし)

2009年8月16日 (日) 07:53時点における版

いたはしや母上は、花の姿に引き替へて、しをるる露の床のうち、智恵の鏡もかき曇る、法師にまみへ給いつつ。母を招けばあとかへりて、さらばと言はぬ。ばかりにて、泣くより外の、事ぞなき、野越え山越え里打ち過ぎて、来るは誰故、そさま、故。誰ゆゑ来るは、来るは誰ゆゑ、そさま故、君は帰るか、恨めしやいのふやれ。我が住む森に帰るらん。勇みに勇んで帰らん。我が思ふ、我が思ふ、心の内は白菊。岩隠れ、つた隠れ、篠の細道ほそみち掻き分け行けば、蟲の声々〳〵面白や。降り初むるやれ、降り初むる。やれ降りそむる、今朝だにも。今朝だにも、所は跡も無かりけり。西は田のあぜあぶないさ。谷峯たにみねしどろに越え行け。の山越えて、此山越えて。こがれ焦るる憂き思ひ。


  • 底本: 今井通郎『生田山田両流 箏唄全解』上、武蔵野書院、1975年。
  • Public Domain この作品は1899年3月4日以前に公表されたもので、作者の死亡から100年以上経過しているため全世界でパブリックドメインの状態にあります。