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萩の露 作者:霞紅園
何時(いつ)しかも、招く尾花に袖触(ふ)れ初めて、我から濡れし露の萩。今さら人は恨(うら)みねど、葛(くず)の葉風(はかぜ)にそよとだに、音づれ絶えて松蟲の、ひとり音(ね)に鳴く侘(わ)びしさを、夜半(よは)に砧の打ちそへて、いとど思ひを重ねよと、月に声は冴えぬらん。いざさらば、空ゆく雁に言問(ことと)はん。恋しき方に玉章(たまづさ)を、送るよすがの有りやなしやと。