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地歌 四季の眺
(相違点なし)

2009年7月12日 (日) 08:10時点における版

梅の匂ひに、柳も靡く、春風に、桃の弥生やよひの花見てもどる。ゆらり〳〵と夕霞、春の野がけに芹逢せりよもぎ、摘みかけたる面白さ。里の卯の花、田の早苗さなへ、色見えて、茂る若葉のかげとひ行けば、まだき初音はつね、やまほととぎす、一声に花の名残も忘られて、いへづとに語らばや、草葉いろ付き、野菊も咲きて、秋深み、野辺の朝風つゆ身にしみて、ちらり〳〵と、村時雨しぐれ、よしや濡るとも紅葉葉の、染めかけたる面白さ。野辺の通ひ路人目も草も冬枯れて、落葉しぐるる木枯の風、峰の炭がま煙りも淋し、降る雪に野路も山路も白妙に、見渡したる面白さ。


  • 底本: 今井通郎『生田山田両流 箏唄全解』中、武蔵野書院、1975年。
  • Public Domain この作品は1899年3月4日以前に公表されたもので、作者の死亡から100年以上経過しているため全世界でパブリックドメインの状態にあります。