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磯千鳥 作者:橘岐山
うたた寝の、枕に響く暁(あけ)の鐘、実(げ)に儘(まま)ならぬ世の中を、何にたとへん飛鳥川。昨日の渕は今日の瀬と。かはりやすきを変るなと、契りしこともいつしかに、身は浮き舟の楫(かぢ)を絶え、今は寄る辺(べ)もしら波や。棹(さほ)の雫(しづく)か涙の雨か、濡れにぞぬれし濡れ衣(ころも)、身に沁(し)むけさの浦風を佗びつつや鳴く磯千鳥。