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狭衣 作者:不詳
独(ひとり)思ひを枕に語(かた)り。せめて頼みの夢さへも、麻の狭衣うち冴えて、いとど寝られぬ秋の夜の。更(ふけ)て砧(きぬた)の音かときけばな。月ぞ。知らする我が涙。片敷(かたし)く袖の、千千(ちぢ)に悲しくながめしに、我身(わがみ)の秋はな。さつと妻戸(つまど)の時雨(しぐれ)は厭(いや)よ。袖の涙の、露の乱れ髪。言ふに言はれぬ我が思ひ。