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風景なる事、想像するに堪へず。巴里にては煤烟の爲に衣類の汚れる事等は滅多に無きも此地にては然らず、殊に冬期は煤烟濃霧に閉されて四散せず下層に欝積する故にカラーカフスは一日に二三回も取り代へねばならずと云ふ。只夫れ交通機關に至りては倫敦遙に巴里に勝れり。タキシーの數も多きのみならず地下線も二重三重に通じて便利なり、尙其他に巴里にて見るを得ざる乘合自動車あり。動搖烈しくして餘り乘心地よきものに非ざれど屋根の上にも席を設けある故、田舍漢の見物には恰好の乘物にして階上に座を占め乍ら街道を見下しつゝ乘り廻るも亦一興也。是等の交通機關が錯綜して最繁劇雜踏を呈しつゝあるは英蘭銀行前にして、自動車に乘りながら時に