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2021年5月22日 (土) 02:28時点における版

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手にくる打まとひ。かうべとつて引あげたまふ時。菊はわなゝく こゑを出し。あゝとなゑんといふ時。和尚のいわくさては累が しかととなへよといふかときゝ給へば。きくこたへて中さ申といふ故 に。爾はとてかみふりほどき手をゆるし合掌がつしやう叉手して十念 をさづけ給へば。一おわんぬ。さて累はとといたまへば。菊がいわく 只今我がむねよりおりて。右の手をとりわきに侍ると。又十念を さづけてとい給へは。いまこゝさつまとかうしにをうちかけ。 うしろ向ひてたてるといふ。また十念じうねんをさづけて問たまへ ば。その時きくきなおり。四方上下を見めぐらし。 よにもうれしげなるかほばせにて。累はもはや見え申 さぬといへば。其時中のもの共。皆一とうこゑをあげ。近比御手 からといふ時。又菊いとわびしき音根こわねを出し。それよそれさま のうしろへ。累がまたきたる物をと云う時。和尚はやくも心へ たまひ。まも本尊ほんぞんを取出し。とびらひらき菊に指けて 累がつらはかやう成しか。と問たまへば。菊がいわくいなと よかほをば見ざりしかといふて。のびあがり。あなたこなた を見まはし。わかれいづちへか行きけん。たちまち見へずと いふ時。和尚おしやうきくに十念をさづけたまひ。近所よりたゝきかね を取よせ念佛しばらくつとめ。廻向ゑかうして帰らんとしたまひ しが。名主年寄としより兩人に向てのたまふは。此灵魂れいこんのさり やう。いささか心得がたき所有。しかしながらまことに累が灵魂なら は、もはや二度ふたゝびきたるまじ。若又きつねたぬきのわざならば。また