「半七捕物帳 第一巻/化け銀杏」の版間の差分
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=== 三 ===
:鉄物屋の清太郎が見たという若い女は、気ちがいでなければ何者であろう。おそらく寺の留守坊主に逢いに来る女ではあるまいかと半七は鑑定した。かれは子分どもに云いつけて、その坊主の行状を探らせたが、円養は大酒呑みでこそあれ、{{r|女犯
:十二月十六日の朝である。半七が朝湯から帰ってくると、河内屋の番頭の忠三郎が待っていた。
:「やあ、番頭さん。お早うございます」と、半七は挨拶した。「例の一件はなにぶん{{r|捗
:「実はそのことで出ましたのでございます」と、忠三郎は声をひそめた。「昨晩わたくしの主人が或るところで{{r|彼
:「へえ、そうですか。それは不思議だ。して、それが何処にありましたえ」
:忠三郎の報告によると、ゆうべ芝((しば)の{{r|源助町
:その以上に詮議のしようもないので、重兵衛はそのまま帰って来たが、なにぶんにも腑に落ちないので、とりあえず半七の処へ{{r|報
:「いよいよ不思議ですね」と、半七も眉をよせた。「その三島屋というのはどんな{{r|家
:三島屋は古い{{r|暖簾
:「そうかも知れませんね」と、半七はしばらく考えていた。「どっちにしても、それが確かに稲川の屋敷の品だかどうだか、それをよくよく詮議して置かなければなりませんよ。さもないと、物が間違いますからね。おまえさんがみれば間違いもなかろうが、念のために稲川の屋敷の御用人を一緒に連れて行ったらどうです。二人がみれば間違いはありますまい。だが、最初から表向きにそんなことを云って、万一違っていた時には、おたがいに気まずい思いをしなければなりませんからね」
:「ごもっともでございます。主人も、もし間違った時に困ると心配して居りました」
:「それだから、おまえさんが御用人を連れて行って、うまく話し込むんですね。このお方は書画が大変にお好きで、こちらに探幽の名作があるということを手前の主人から聞きまして、ぜひ一度拝見したいと申されるので、押し掛けながら御案内しましたとか何とか云えば、向うも大自慢だから喜んで見せるでしょう。もし又なんとか理窟を云って、飽くまで見せるのを{{r|拒
:「承知いたしました」
:忠三郎は匆々に帰った。
:その晩にでも再びたずねて来るかと、半七は心待ちに待っていたが、忠三郎は姿をみせなかった。その明くる日も来なかった。おそらく用人の方に何か差し支えがあって、すぐには行かれなかったのであろうと思いながら、半七は内心すこし{{r|苛々
:「親分。探幽の一件はまだ心当りが付きませんかえ」
:「むむ。ちっとは心当りがねえでもねえが、どうもまだしっかりと摑むわけにも行かねえで困っているよ」
:「そうですか。いや、それについて飛んだお笑いぐさがありましてね。なんでも物を握って見ねえうちは、{{r|糠
:「おめえ達のお笑いぐさはあんまり珍らしくもねえが、どうした」と、半七はからかうように{{r|訊
:「それがおかしいんですよ。わっしの町内に{{r|万助
:「むむ」と、半七も少しまじめになって向き直った。「それからどうした」
:「それからすぐに万助の家へ飛び込んで、よく調べてみると、万助の奴め、ぼんやりしている。どうしたんだと訊くと、その探幽が贋物だそうで……」
:半七も思わず笑い出した。
:「まったくお笑いぐさですよ」と、仙吉も声をあげて笑った。「なんでも二、三日まえ、あいつが{{r|御成町
:「いや、がっかりすることはねえ」と、半七は笑いながら云った。「仙吉。おめえにしちゃあ大出来だ。これからもう一度万助のところへ行って、その贋物を売った道具屋はどんな奴だか、よく訊いて来てくれ」
:「でも親分、それは贋物ですぜ」
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:「承知しました」
:仙吉は匆々に出て行った。
:あくる朝になっても忠三郎は顔をみせないので、半七は日本橋辺へ用達しに行った足ついでに、{{r|通旅籠町
:「親分さん。まことに申し訳ございません。早速うかがいたいと存じて居りますのですが、なにぶんにも稲川様のお屋敷の方が埒が明きませんので……」
:「御用人が一緒に行ってくれないんですかえ」
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:「親分、わかりました」
:「判ったか」
:「万吉の奴をしらべて、すっかり判りました。贋物を売った古道具屋は御成道の横町で、亭主は左の{{r|小鬢
=== 四 ===
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