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一能の有人は。心のほどもおもひやられ。その家も心にくき也。世中は名利のみなり。能は名聞なれば。不堪と云とも猶たしなむべし。心のをよび學びもて行ほどに。物のへたといふとも。功の入ぬる事は。かたはらいたきことのなき也。よくする事はまれなり。尋常しくなりて。人なみに立まじはるまでを詮とすベし。いかに高き家に生。みめかたちよく侍人も。歌よむとて短 |
一能の有人は。心のほどもおもひやられ。その家も心にくき也。世中は名利のみなり。能は名聞なれば。不堪と云とも猶たしなむべし。心のをよび學びもて行ほどに。物のへたといふとも。功の入ぬる事は。かたはらいたきことのなき也。よくする事はまれなり。尋常しくなりて。人なみに立まじはるまでを詮とすベし。いかに高き家に生。みめかたちよく侍人も。歌よむとて短册とる所。詩作るとて韻などさぐり。管弦の所の器のまへわたし。連歌の中にせぬ人にて他言うちまじへ。音曲する人の座しきにつらなりてしつらづえつき。鞠などの塲に露をだにえはらはず。又わかき友だちのよき手跡にて消息かきかはしなどす |