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てある。風うち吹きて海のおもていと騷がしうさらさらと騷ぎたり。若きをのこども聲ほそやかにて、おも{{*|や脫歟}}せにたるといふ歌を歌ひ出でたるを聞くにもつぶつぶと淚ぞ落つる。いかゞ崎山吹の崎などいふ所々見やりて蘆の中より漕ぎ行く。まだ物う{{*|たカ}}しかにも見えぬ程に遙なる楫の音して心細く歌ひ來る舟あり。行きちがふ程に「いづくのぞや」と問ひければ「石山へ人の御迎に」とぞこな{{*|たカ}}ふなる。この聲もいと哀に聞ゆる。め{{*|さイ}}いひおきし遲くい{{*|でくイ有}}れば、かしこなりつるして出でぬれば違ひていくなめり。留めてをのこどもかたへは乘りかへりて、心のほしきに歌ひ行く。瀨田の橋の本行きかゝるほどにぞほのぼのと明け行く。千鳥うちかけりつゝ飛びちがふ。物の哀に悲しき事さらに數なし。さてありし濱わに至りたれば迎の車出で來たる。きやうに巳の時ばかりいき着きぬ。此彼集まりてせかいにまでなどいひ騷ぎけることなどいへば「さもあらばあれ、今は猶しかるべき身かは」などぞ答ふる。おほやけにすまひの頃なり。幼き人參らまほしげに思ひたれば、さうぞかせて出し立つま{{*|づ脫歟}}殿へとて物したりければ、車のしりに乘せて、暮にはこなたざまに物し給ふべき人の、さるべきに申しつけて、を{{*|さイ}}はあなたざまにときは{{*|くカ}}にも、まして淺まし。又の日もきの{{*|こ脫歟}}のごと參るさまにえ知らでよさりは一つのさうき{{*|二字所の、雜色カ}}、これらかれが{{*|らカ}}送りせよとて、さいだちて出でにければ、獨罷でゝ、いかに心に思ふらむ、例ならましかば、諸共にあらましをと、幼き心ちに思ふなるベし。うちぐしたるさまにて入りくるを見るに、せむかたなくいみじく思へど、何のかひかあらむ。身一つをのみ切り碎く心ちす。』かくて八月になりぬ。二日のよさり方、{{*|に脫歟}}はかに見え |