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「よのうちは松にも露はかゝりけり明くれば消ゆるものこそ思へ」。 |
「よのうちは松にも露はかゝりけり明くれば消ゆるものこそ思へ」。 |
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かくて經るほどにその月つごもりに小野の宮のおとゞ{{*|實賴}}かくれ給ひぬとて、「世はさはりありて世の中いと騷がしかなればつゝしむとてえ物せぬなり。服になりぬるをこれら疾くして」とはあるものか。いとあさましければこの頃ものするものども里につてなむとて歸しつ。これにまして心やましきさまにて絕えて事づてもなし。』さながら六月になりぬ。かくて數ふるは夜見る{{*|ぬイ}}事は三十よ日、晝見る事は四十よ日になりにけり。いとにはかにあやしといはゞおろかなり。心もゆかぬ世とはいひながら、まだいとかゝる目は見ざりつれば、見る人々もあやしうめづらかなりと思ひたり。物しおぼえねば、詠めのみぞせらるゝ。人目もいと耻しう覺えて落つる泪おし隱しつゝ臥して聞けば、{{*|う |
かくて經るほどにその月つごもりに小野の宮のおとゞ{{*|實賴}}かくれ給ひぬとて、「世はさはりありて世の中いと騷がしかなればつゝしむとてえ物せぬなり。服になりぬるをこれら疾くして」とはあるものか。いとあさましければこの頃ものするものども里につてなむとて歸しつ。これにまして心やましきさまにて絕えて事づてもなし。』さながら六月になりぬ。かくて數ふるは夜見る{{*|ぬイ}}事は三十よ日、晝見る事は四十よ日になりにけり。いとにはかにあやしといはゞおろかなり。心もゆかぬ世とはいひながら、まだいとかゝる目は見ざりつれば、見る人々もあやしうめづらかなりと思ひたり。物しおぼえねば、詠めのみぞせらるゝ。人目もいと耻しう覺えて落つる泪おし隱しつゝ臥して聞けば、{{*|う脫歟}}ぐひすぞをりはへて鳴くにつけて覺ゆるやう、 |
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「鶯もごもなきものやおもふらむみなつきはてぬ音をぞ鳴くなる」。 |
「鶯もごもなきものやおもふらむみなつきはてぬ音をぞ鳴くなる」。 |