「さんぺいとろの御作業」の版間の差分

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28行目:
或時*あなにやす*さひらとて二人の人ありしが でうす の御奉公の爲に捧げ奉りたる財寳を又盗みたるを*さん◦ぺいとろ叱り給へば頓死したると也。*さん◦ぺいとろのみかげに當る病人は{{r|快|くわい}}{{r|気|き}}を得たるのみならず◦死人もよみがへりたると也。又御言葉を以て癩病をも數多直し給ひたると也。じよつぺといふ所に、*たびたといふ{{r|女人|にょにん}}のありしが◦一段慈悲心なる人なりつるが◦死しけると聞き給ひて◦その死骸のそばに立寄給ひて起きよと宣へば◦即ちよみがへりたると也。*こるねりよといひし大名ぜんちよにて居られしが*さん◦ぺいとろの御談義を聴聞して◦あるほどの家人までもこと{{gu}}く御授けを受させ◦その身もきりしたんとなり◦すぴりつ◦さんちのがらさをみち{{ku}}て申受られし也。いゑるされむよりせざれやといふ所に{{r|御弟子|みでし}}を連行き給ひ◦その内より一人をびすぽになさせられて◦その所に置き給ひ◦それよりべりと◦とりぽりなどゝいふ在々所々にびすぽ一人づゝを据置かせられ◦きりしたんのうちをこと{{gu}}く御覧じまはられ◦人につきたる數多の天狗をせめいだして通り給ふ也。かくて在々所々にきりしたんの繁昌をさせられ◦又いゑるされむへ帰り給ふ也。*さん◦ぱうろきりしたんにならせられてより後三年目に當て◦{{r|御|ご}}{{r|音信|いんしん}}としていゑるされむへ上り給ひしに◦なほ{{ku}} でうす の御事とすくりぷつらの上を教へ給へば◦さん◦ぱうろは御教を弘め給はんとていで給へば*さん◦ぺいとろもあんちおきあ{{r|以下|いげ}}を弘め給ひ◦又いゑるされむへ帰り給へば◦ぜすきりしと {{r|見|まみ}}へ給ひて◦これより西の方へ赴き給へと宣ふ也。これ即ちろうまのあたり也
 
その時代に*しまん◦まごといふ博士あり。魔法を以て種々の{{r|神變|じんぺん}}を顕ずるが故に◦いづくにもその隠れなき者也。{{r|然|しか}}るをろうまのゑむぺらどる御成敗を加へられん爲に追討の官人を下し給へば◦即ち{{r||から}}めて来るに依て◦牢に入れられければ◦その牢の内にても種々の{{r|奇|き}}{{r|特|どく}}をするに依て◦牢より出さるゝのみならず◦結局人々より でうす の如くに{{r|尊敬|そんきやう}}せらるゝ也。後にはゑんぺらどる*くらうぢよまで信じ給ふ也。そのゑんぺらどる彼が木像を大きに作り◦ちぶれといふ河のほとりなる諸國往返の道筋に立おき給ひ◦之は*しまん◦まごといふ尊き人の御影也と{{r|額|がく}}を{{r|打|うて}}り。その時分*さん◦ぺいとろもろうまへ上り給ひ◦毎日みいさを行はせられ◦さんた◦ちりあんだあでの御談義を述給ふ也。その御談義を以てきりしたんになる人數多あり。この御談義◦御奇特を人々傳へ聞いて◦その所の人々過半きりしたんになるに依て◦かの博士をば次第に尊敬する者なき也。かの博士そねみ{{r|奉|たてまつ}}て諸人の前にて*さん◦ぺいとろの御相手となりたる也。かの博士の道を行くには◦我身の影を數多に見せて前後左右に{{r|随|ずいじん}}するを人々あやしみ問へば◦それはわがよみがへしたる者の亡魂なり。恩のところを忘れずして、何時も我に{{r||したが}}ふと言へり。そのほか、我身も數多に見へ◦或時は両面と現じ◦又或時は{{r||よう}}{{r||づ}}{{r|牛面|ぎうめん}}とも現れ◦又或時は身より{{r||ほのほ}}を出す也。これを以て{{r|愚|ぐ}}{{r|人|にん}}をたぶらかす也。さりながら*さん◦ぺいとろの{{r|御前|おんまへ}}に来れば◦{{r||けぶり}}の風に消ゆるが如く◦その神變おのづから果たる者也。かの博士いつも問答には負くるによつて◦大きなる武略を巧みいだす者也。その武略といふは◦合戦に運を開きたる人の{{r|頭|かうべ}}にいただかるゝ木の枝を以てかむりを作りていたゞき◦あるたるの上にあがり◦萬民を大きに{{r|罵詈|めり}}して人々愚味{{sic}}なる者のごとく◦奇特をば見知らずして◦かの*ぺいとろといふものを尊敬するの條◦我この所に久しく住すべからず◦天にあがり空よりその{{r||ばつ}}を與ゆべし。これ皆わが言葉を違背しける{{r|科故|とがゆへ}}也と◦手を拍て虚空に上れば◦人の影の如くなるもの數多前後に見へて◦白雲その跡を隠したり。*さん◦ぺいとろその場に去らぬ{{r|體|てい}}にて在まし◦高くあがりて後 ぜすきりしと へおらしよし給ひ◦かの武略人に{{r|御|ご}}{{r|罸|ばつ}}を與へ給へ◦愚痴なる者を信ぜぬ爲に◦と申させ給ひて空を見給ひ◦いかに天狗◦ぜすきりしと の御力を以て下知を加ふ。かの博士を放せと宣へば◦白雲の中より大地に落ちて{{r|五|ご}}{{r|體|たい}}{{r|身分|しんぶん}}を損ひ◦大苦痛を以て二日存命して終に死す。この事を萬人見物して各々声を挙げ*さん◦ぺいとろの弘め給ふ でうす より外に、{{r|別|べち}}に拜むべき方なしと叫びければ*さん◦ぺいとろ高き所に◦{{r|上|あが}}りて鎮め給ひ◦わが弘むる所の ぜすきりしと は眞の でうす にて在ましながら◦人の形を受させられ◦色々の御辛労を凌ぎ給ひ◦終にくるすにかゝらせられて一切人間の御扶けとなり給ふといふ儀を談じ給ふ也。即ちその時數多の人々きりしたんになりたる也
 
其時*さん◦りのをびすぽと定め給ひ◦それよりいすぱにや◦あひりか◦ゑじつと{{r|以下|いげ}}◦{{r|御|おん}}弘めの爲に赴給ひ、あれしあんどりあに御逗留し給へば*さんた◦まりやの御最期を でうす より告給ふに依て◦又じゆであへ帰り給ひ◦それよりろうまへ上り給ふ道すがら◦みらむ◦ぶりたにやへ行給へば◦そこにて御身の御最期近きと知給ひ◦ろうまへ帰り給ふ也。その時の{{r|御|ご}}{{r|告|つげ}}にくるすにかゝりてまるちるになるべしと知らせ給ふ也。これをきゝ給ひ◦ぶりたにやにて數多のびすぽを定めさせられ◦きりしたんの繁昌をなし給ひて*ねろといふゑむぺらどるの時代に◦ろうまにをひて歴々の大名高家を◦御談義を以てきりしたんになさせらるゝそのうちに◦ねろの后妃も二人きりしたんになり給ふに依て*さん◦ぺいとろに對し奉り{{r||いか}}りをなし◦一切のきりしたんに成敗と過怠を定めおかれたり。その時◦數多のきりしたんをまるちるに行はれたる也。*さん◦けれめんては*ねろと外戚のよしみたるに依て◦許しおかれたる者也。勿論*さん◦ぺいとろをば{{r|搦|から}}め{{r|奉|たてまつ}}てさかさまにくるすにかけ奉りたる也。この道よりおんあにまは◦ぱらいぞに入り給ふと分別すべし。*さん◦けれめんて◦その御死骸を取給ひてよき所に納め給ふもの也
 
今までは*さん◦ぺいとろあぽすとろの御上を少々沙汰せし也。これよりは*さん◦ぱうろの御上を云ふべし