「大塚徹・あき詩集/琉球の女」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
ページの作成:「{{header | title =大塚徹・あき詩集 | author =大塚徹 | 年 =昭和4 | year =1929 | section =北海の蟹 | previous =../北海…」
(相違点なし)

2019年1月3日 (木) 11:58時点における版


琉球の女

杏の実の匂うたそがれ
私は 風の贈物をうけよう。

蒼白い月かげにぬれて
デイゴの樹にまつわる
夜潮のささやきを聞こう。

この春 この貧しい町におとずれて
眉のほそい 琉球の女たちは
蛇皮線を弾いて 異国の酒を売った。

鼓を打ち、笛の音にあわせて
エキゾチックな 色あざやかな歌々を
かの日の 疲れはて 青ざめた
娘子軍のかなしい踊りよ!
(その虚洞うつろな瞳は穹を眺めて
 遠くふるさとの老婆の姿が消えた)

杏の実の匂うたそがれ
私は この漂泊の人達のかなしみをよせて
熱帯の強烈な酒に酔いしれよう。
私は 風の贈物をうけよう。

(昭和4年、炬火)