仏説阿弥陀経 (昭和新纂経典部)

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• 底本: 国訳大蔵経編輯部 編『国訳大蔵経 : 昭和新纂』経典部 第2巻,東方書院,昭和3-7. 国立国会図書館デジタルコレクション:info:ndljp/pid/1172018/1/49

佛說（ぶつせつ）阿彌陀（あみだ）經（きやう）

姚秦（えうしん）三藏（さんざう）法（ほつ）師（し）鳩摩羅（くもら）什（じふ）　詔（みことのり）を奉（ほう）じて譯（やく）す

　^[1]是（かく）の如（ごと）きを我（われ）聞（き）きき。一（いち）時（じ）佛（ほとけ）舍（しや）衞（ゑ）國（こく）^[2]の祇（ぎ）樹（じゆ）給（ぎつ）孤（こ）獨園（どくをん）^[3]に在（ましま）して、大（だい）比丘（びく）衆（しゆ）千（せん）二（に）百（ひやく）五（ご）十（じふ）人（にん）と俱（とも）なりき。皆（みな）是（こ）れ大（だい）阿羅（あら）漢（かん）なり、衆（しゆ）に知（ち）識（しき）せられたり。長老（ちやうらう）舍（しや）利（り）弗（ほつ）、摩訶（まか）目犍連（もつけんれん）、摩訶（まか）迦（か）葉（せふ）、摩訶（まか）迦（か）旃延（せんねん）^[4]、摩訶（まか）俱絺羅（くちら）^[5]、離婆多（りはだ）、周（しゆ）利（り）槃（はん）陀伽（だか）、難（なん）陀（だ）^[6]、阿（あ）難（なん）陀（だ）、羅睺羅（らごら）、憍梵（けうぼん）波（は）提（だい）、賓（びん）頭（づ）盧頗羅墮（るはらだ）、迦留陀夷（かるだい）、摩訶（まか）劫（こふ）賓（ひん）那（な）、薄拘羅（はくら）、阿㝹樓駄（あぬるだ）^[7]、是（かく）の如（ごと）き等（とう）の諸（もろもろ）の大（だい）弟子（でし）なり。幷（ならび）に諸（もろもろ）の菩（ぼ）薩（さつ）、摩訶（まか）薩（さつ）有（あ）り、文殊（もんじゆ）師利（しり）法（ほふ）王（わう）子（じ）、阿（あ）逸（いつ）多（た）菩（ぼ）薩（さつ）、乾（けん）陀訶（だか）提（だい）菩（ぼ）薩（さつ）、常（じやう）精進（しやうじん）菩（ぼ）薩（さつ）、是（かく）の如（ごと）き等（とう）の諸（もろもろ）の大（だい）菩（ぼ）薩（さつ）及（およ）び釋（しやく）提（だい）桓（くわん）因（いん）等（とう）の無（む）量（りやう）の諸天（しよてん）大衆（だいしゆ）と俱（とも）なりき。

　^[8]爾時（しかのとき）、佛（ほとけ）長老（ちやうらう）舍（しや）利（り）弗（ほつ）に吿（つ）げたまはく、『是（これ）より西方（さいはう）十萬億（じふまんのく）の佛（ぶつ）土（ど）を過（す）ぎて世（せ）界（かい）有（あ）り、名（なづ）けて極樂（ごくらく）と曰（い）ふ。其（その）土（ど）に佛（ほとけ）有（ましま）す、阿彌陀（あみだ）と號（なづ）けたてまつる。今（いま）現（げん）に在（ましま）して說法（せつぽふ）したまふ。舍（しや）利（り）弗（ほつ）彼（かの）土（ど）を何（なん）が故（ゆゑ）ぞ名（なづ）けて極樂（ごくらく）と爲（す）る。其國（そのくに）の衆生（しゆじやう）衆（もろもろ）の苦（く）有（あ）ること無（な）く、但（ただ）諸（もろもろ）の樂（らく）のみを受（う）く、故（ゆゑ）に極樂（ごくらく）と名（なづ）く。

　^[9]又（また）舍（しや）利（り）弗（ほつ）、極樂（ごくらく）國（こく）土（ど）には七重（しちぢう）の欄楯（らんじゆん）、七重（しちぢう）の羅（ら）網（まう）ある七重（しちぢう）の行樹（がうじゆ）あり。皆（みな）是（こ）れ四（し）寶（はう）をもつて周匝（しゆさふ）し圍（い）繞（ねう）せり。是故（このゆゑ）に彼國（かのくに）を名（なづ）けて極樂（ごくらく）と曰（い）ふ。

　^[10]又（また）舍（しや）利（り）弗（ほつ）、極樂（ごくらく）國（こく）土（ど）には七寶（しつぱう）の池（いけ）有（あ）り。八（はつ）功（く）德（どく）水（すゐ）其中（そのなか）に充滿（じうまん）せり。池（いけ）の底（そこ）には純（もつぱ）ら金沙（こんしや）を以（もつ）て地（ぢ）に布（し）けり。四（し）邊（へん）に階道（かいだう）有（あ）り、金銀（こんごん）瑠璃（るり）玻瓈（はり）をもつて合成（がふじやう）せり。上（ほとり）に樓閣（ろうかく）有（あ）り、亦（また）金銀（こんごん）瑠璃（るり）、玻瓈（はり）硨（しや）磲（こ）、赤珠（しやくしゆ）碼（め）碯（なう）を以（もつ）て而（しか）も之（これ）を嚴飾（ごんじき）せり。池（いけ）の中（なか）に蓮（れん）華（げ）あり、大（おほ）いさ車輪（しやりん）の如（ごと）し、靑色（しやうしき）には靑光（しやうくわう）あり、黃色（わうしき）には黃光（わうくわう）あり、赤色（しやくしき）には赤光（しやつくわう）あり、白色（びやくしき）には白光（びやつくわう）あり、微（み）妙（めう）香潔（かうけつ）なり。 舍（しや）利（り）弗（ほつ）、極樂（ごくらつ）國（こく）土（ど）には是（かく）の如（ごと）きの功（く）德（どく）莊嚴（しやうごん）を成就（じやうじゆ）せり。

　^[11]又（また）舍（しや）利（り）弗（ほつ）、彼（かの）佛（ほとけ）の國（こく）土（ど）には常（つね）に天樂（てんがく）を作（な）す。黃金（わうごん）を地（ぢ）と爲（せ）り。晝（ちう）夜（や）六（ろく）時（じ） 曼（まん）陀羅華（だらけ）を雨（あめふ）らす。其國（そのくに）の衆生（しゆじやう）常（つね）に淸旦（しやうたん）を以（もつ）て、各（おのおの）衣（い）裓（こく）を以（もつ）て諸（もろもろ）の妙（めう）華（け）を盛（もつ）て、他（た）方（はう）十萬億（じふまんのく）の佛（ほとけ）を供（く）養（やう）す。卽（すなは）ち食（じき）時（じ）を以て還（かへ）つて本國（ほんごく）に到（いた）つて飯食（ぼんじき）し經行（きやうぎやう）す。舍（しや）利（り）弗（ほつ）極樂（ごくらつ）國（こく）土（ど）には是（かく）の如（ごと）きの功（く）德（どく）莊嚴（しやうごん）を成就（じやうじゆ）せり。

　^[12]復次（またつぎ）に舍（しや）利（り）弗（ほつ）、彼國（かのくに）には常（つね）に種種（しゆじゆ）奇（き）妙（めう）なる雜色（ざつしき）の鳥（とり）有（あ）り、 白鵠（びやつこく）孔（く）雀（じやく）鸚（あう）鵡（む）、舍（しや）利（り）、 迦（か）陵（りよう）頻（びん）伽（が）、共（ぐ）命（みやう）の鳥（とり）なり。是（この）諸（もろもろ）の鳥（とり）、晝（ちう）夜（や）六（ろく）時（じ）に和雅（わげ）の音（こゑ）を出（いだ）す、其音（そのこゑ）五（ご）根（こん）五（ご）力（りき）^[13]、七（しち）菩（ぼ）提（だい）分（ぶん）、八（はつ）聖道（しやうだう）分（ぶん）是（かく）の如（ごと）き等（とう）の法（ほふ）を演暢（えんちやう）す。其（その）土（ど）の衆生（しゆじやう）是音（このこゑ）を聞（き）き已（おは）つて、皆（みな）悉（ことごと）く佛（ほとけ）を念（ねん）じ法（ほふ）を念（ねん）じ僧（そう）を念（ねん）ず^[14]。舍（しや）利（り）弗（ほつ）、汝（なんぢ）此鳥（このとり）は實（じつ）に是（こ）れ罪報（ざいはう）の所生（しよしやう）なりと謂（おも）ふ勿（なか）れ。所以（ゆゑん）は何（いか）ん。彼（かの）佛（ほとけ）の國（こく）土（ど）には三惡趣（さんなくしゆ）無（な）し。舍（しや）利（り）弗（ほつ）、其（その）佛（ほとけ）の國（こく）土（ど）には尙（なほ）し三惡道（さんなくだう）の名（な）も無（な）し、何（いか）に況（いは）んや實（じつ）有（あ）らんや。是（この）諸（もろもろ）の鳥（とり）は皆（みな）是（こ）れ阿彌陀（あみだ）佛（ぶつ）の法音（ほふおん）を宣（せん）流（る）せしめんと欲（ほつ）して變（へん）化（げ）して作（な）す所（ところ）なり。舍（しや）利（り）弗（ほつ）彼（かの）佛（ほとけ）の國（こく）土（ど）には微（み）風（ふう）吹（ふ）いて、諸（もろもろ）の寶行樹（はうがうじゆ）及（およ）び寶（はう）羅（ら）網（まう）を動（うご）かして、微（み）妙（めう）の音（こゑ）を出（いだ）せり。譬（たと）へば百（ひやく）千種（せんしゆ）の樂（がく）を同（どう）時（じ）に俱（とも）に作（な）すが如（ごと）し。是音（このこゑ）を聞（き）く者（もの）は皆（みな）自（じ）然（ねん）に念佛（ねんぶつ）念法（ねんぼふ）念僧（ねんそう）の心（しん）を生（しやう）ず。舍（しや）利（り）弗（ほつ）、其（その）佛（ほとけ）の國（こく）土（ど）には是（かく）の如（ごと）きの功（く）德（どく）莊嚴（しやうごん）を成就（じやうじゆ）せり。

　^[15]舍（しや）利（り）弗（ほつ）、汝（なんぢ）が意（こころ）に於（おい）て何（いか）ん、彼（かの）佛（ほとけ）を何（なん）が故（ゆゑ）ぞ阿彌陀（あみだ）と號（なづ）けたてまつる。舍（しや）利（り）弗（ほつ）、彼（かの）佛（ほとけ）の光明（こうみやう）無（む）量（りやう）にして、十方（じつぱう）の國（くに）を照（てら）すに障（しやう）礙（げ）する所（ところ）無（な）し^[16]。是故（このゆゑ）に號（なづ）けて阿彌陀（あみだ）と爲（な）す。又（また）舍（しや）利（り）弗（ほつ）、彼（かの）佛（ほとけ）壽命（じゆみやう）及（およ）び其人民（そのにんみん）、無（む）量（りやう）無（む）邊（へん）阿（あ）僧（そう）祇（ぎ）劫（こふ）なり^[17]、故（ゆゑ）に阿彌陀（あみだ）と名（なづ）く。舍（しや）利（り）弗（ほつ）、阿彌陀（あみだ）佛（ぶつ）成佛（じやうぶつ）より已來（このかた）今（いま）に於（おい）て十劫（じつこふ）なり。又（また）舍（しや）利（り）弗（ほつ）、彼（かの）佛（ほとけ）無（む）量（りやう）無（む）邊（へん）の聲聞（しやうもん）弟子（でし）有（あ）り、皆（みな）阿羅（あら）漢（かん）なり、是（これ）算數（さんじゆ）の能（よ）く知（し）る所（ところ）に非（あら）ず。諸（もろもろ）菩（ぼ）薩（さつ）も亦（また）是（かく）の如し。舍（しや）利（り）弗（ほつ）、彼（かの）佛（ほとけ）の國（こく）土（ど）には是（かく）の如（ごと）きの功（く）德（どく）莊嚴（しやうごん）を成就（じやうじゆ）せり。

　^[18]又（また）舍（しや）利（り）弗（ほつ）、極樂（ごくらつ）國（こく）土（ど）には衆生（しゆじやう）生（しやう）ずる者（もの）は皆（みな）是（こ）れ阿鞞（あび）跋（ばつ）致（ち）^[19]なり。其中（そのなか）に多（おほ）く一生（いつしやう）補（ふ）處（しよ）有（あ）り。其數（そのかず）甚（はなは）だ多（おほ）し、是（こ）れ算數（さんじゆ）の能（よ）く知（し）る所（ところ）に非（あら）ず、但（ただ）無（む）量（りやう）無（む）邊（へん）阿（あ）僧（そう）祇（ぎ）劫（こふ）を以（もつ）て說（と）くべし。

　^[20]舍（しや）利（り）弗（ほつ）、衆生（しゆじやう）聞（き）かん者（もの）は應當（まさ）に發願（ほつぐわん）して彼國（かのくに）に生（しやう）ぜんと願（がん）ずべし。所以（ゆゑん）は何（いか）ん。是（かく）の如（ごと）きの諸（もろもろ）の上善人（じやうぜんにん）と俱（とも）に一處（いつしよ）に會（ゑ）することを得（う）ればなり。舍（しや）利（り）弗（ほつ）、少（せう）善根（ぜんごん）福德（ふくとく）の因緣（いんねん）を以（もつ）て彼國（かのくに）に生（しやう）ずることを得（う）べからず^[21]。

　^[22]舍（しや）利（り）弗（ほつ）、若（も）し善男（ぜんなん）子（し）善女人（ぜんによにん）有（あ）つて、阿彌陀（あみだ）佛（ぶつ）を說（と）くを聞（き）いて 名號（みやうがう）を執（しふ）持（ぢ）すること、若（もし）は一日（いちにち）、若（もし）は二（に）日（にち）、若（もし）は三日（さんにち）、若（もし）は四（し）日（にち）、若（もし）は五（ご）日（にち）、若（もし）は六日（ろくにち）、若（もし）は七日（しちにち）一心（いつしん）不（ふ）亂（らん）なれば、其人（そのひと）命終（みやうじう）の時（とき）に臨（のぞ）んで、阿彌陀（あみだ）佛（ぶつ）諸（もろもろ）の聖衆（しやうじゆ）と與（とも）に現（げん）に其前（そのまへ）に在（ましま）す。是人（このひと）終（おは）る時（とき）心（こころ）顚倒（てんだう）せず、卽（すなは）ち阿彌陀（あみだ）佛（ぶつ）の極樂（ごくらつ）國（こく）土（ど）に往生（わうじやう）することを得（う）。舍（しや）利（り）弗（ほつ）、我（われ）是（この）利（り）^[23]を見（み）るが故（ゆゑ）に此（この）言（ことば）を說（と）く。若（も）し衆生（しゆじやう）有（あ）つて是說（このせつ）を聞（き）かん者（もの）は應當（まさ）に發願（ほつぐわん）して彼（かの）國（こく）土（ど）に生（しやう）ずべし。

　^[24]舍（しや）利（り）弗（ほつ）、我今（われいま）、阿彌陀（あみだ）佛（ぶつ）の不可思議（ふかしぎ）功（く）德（どく）を讚歎（さんだん）するが如（ごと）く、東方（とうばう）に亦（また）阿（あ）閦（しゆく）鞞（び）佛（ぶつ）、須（しゆ）彌（み）相（さう）佛（ぶつ）、大（だい）須（しゆ）彌（み）佛（ぶつ）、須（しゆ）彌（み）光（くわう）佛（ぶつ）、妙音佛（めうおんぶつ）、有（ましま）す。是（かく）の如（ごと）き等（とう）の恆（ごう）河（が）沙數（しやしゆ）の諸佛（しよぶつ）、各（おのおの）其國（そのくに）に於（おい）て廣長（くわうぢやう）の舌相（ぜつさう）^[25]を出（いだ）して、徧（あまね）く三千（さんぜん）大（だい）千（せん）世（せ）界（かい）に覆（おほ）うて誠實（じやうじつ）の言（ことば）を說（と）きたまふ。汝（なんぢ）等（ら）衆生（しゆじやう）當（まさ）に是（この）稱讚（しようさん）不可思議（ふかしぎ）功（く）德（どく）一切（いつさい）諸佛（しよぶつ）所（しよ）護（ご）念（ねん）經（きやう）を信（しん）ずべし。

　^[26]舍（しや）利（り）弗（ほつ）、南方（なんぱう）世（せ）界（かい）に日月（にちぐわつ）燈佛（とうぶつ）、名（みやう）聞（もん）光（くわう）佛（ぶつ）、大焰（だいえん）肩佛（けんぶつ）、須（しゆ）彌（み）燈佛（とうぶつ）、無（む）量（りやう）精進（しやうじん）佛（ぶつ）有（ましま）す。是（かく）の如（ごと）き等（とう）の恆（ごう）河（が）沙數（しやしゆ）の諸佛（しよぶつ）、各（おのおの）其國（そのくに）に於（おい）て廣長（くわうぢやう）の舌相（ぜつさう）を出（いだ）して、徧（あまね）く三千（さんぜん）大千（だいせん）世（せ）界（かい）に覆（おほ）うて誠實（じやうじつ）の言（ことば）を說（と）きたまふ。汝（なんぢ）等（ら）衆生（しゆじやう）當（まさ）に是（この）稱讚（しようさん）不可思議（ふかしぎ）功（く）德（どく）一切（いつさい）諸佛（しよぶつ）所（しよ）護（ご）念（ねん）經（きやう）を信（しん）ずべし。

　^[27]舍（しや）利（り）弗（ほつ）、西方（さいはう）世（せ）界（かい）に無（む）量（りやう）壽佛（じゆぶつ）、無（む）量（りやう）相佛（さうぶつ）、無（む）量（りやう）幢佛（どうぶつ）、大光佛（だいくわうぶつ）、大明佛（だいみやうぶつ）、寶相佛（はうさうぶつ）、淨光（じやうくわう）佛（ぶつ）有（ましま）す。如是（かく）の如（ごと）き等（とう）の恆（ごう）河（が）沙數（しやしゆ）の諸佛（しよぶつ）、各（おのおの）其國（そのくに）に於（おい）て廣長（くわうぢやう）の舌相（ぜつさう）を出（いだ）して、徧（あまね）く三千（さんぜん）大千（だいせん）世（せ）界（かい）に覆（おほ）うて誠實（じやうじつ）の言（ことば）を說（と）きたまふ。汝（なんぢ）等（ら）衆生（しゆじやう）、當（まさ）に是（この）稱讚（しようさん）不可思議（ふかしぎ）功（く）德（どく）一切（いつさい）諸佛（しよぶつ）所（しょ）護（ご）念（ねん）經（きやう）を信（しん）ずべし。

　^[28]舍（しや）利（り）弗（ほつ）、北方（ほつぱう）世（せ）界（かい）に焰肩佛（えんけんぶつ）、最（さい）勝（しよう）音（おん）佛（ぶつ）、難（なん）沮（そ）佛（ぶつ）、日（につ）生（しやう）佛（ぶつ）、 網（まう）明（みやう）佛（ぶつ）有（ましま）す。是（かく）の如（ごと）き等（とう）の恆（ごう）河（が）沙數（しやしゆ）の諸佛（しよぶつ）、各（おのおの）其國（そのくに）に於（おい）て廣長（くわうぢやう）の舌相（ぜつさう）を出（いだ）して、徧（あまね）く三千（さんぜん）大千（だいせん）世（せ）界（かい）に覆（おほ）うて誠實（じやうじつ）の言（ことば）を說（と）きたまふ。汝（なんぢ）等（ら）衆生（しゆじやう）、當（まさ）に是（この）稱讚（しようさん）不可思議（ふかしぎ）功（く）德（どく）一切（いつさい）諸佛（しよぶつ）所（しょ）護（ご）念（ねん）經（きやう）を信（しん）ずべし。

　^[29]舍（しや）利（り）弗（ほつ）、下（げ）方（はう）世（せ）界（かい）に師子（しし）佛（ぶつ）、名聞（みやうもん）佛（ぶつ）、名光（みやうくわう）佛（ぶつ）、達（だつ）摩（ま）佛（ぶつ）、法幢（ほふどう）佛（ぶつ）、持（ぢ）法（ほふ）佛（ぶつ）有（ましま）す。是（かく）の如（ごと）き等（とう）の恆（ごう）河（が）沙數（しやしゆ）の諸佛（しよぶつ）、各（おのおの）其國（そのくに）に於（おい）て廣長（くわうぢやう）の舌相（ぜつさう）を出（いだ）して、徧（あまね）く三千（さんぜん）大千（だいせん）世（せ）界（かい）に覆（おほ）うて誠實（じやうじつ）の言（ことば）を說（と）きたまふ。汝（なんぢ）等（ら）衆生（しゆじやう）、當（まさ）に是（この）稱讚（しようさん）不可思議（ふかしぎ）功（く）德（どく）一切（いつさい）諸佛（しよぶつ）所（しょ）護（ご）念（ねん）經（きやう）を信（しん）ずべし。

　^[30]舍（しや）利（り）弗（ほつ）、上方（じやうはう）世（せ）界（かい）に梵音（ぼんのん）佛（ぶつ）、宿王（しゆくわう）佛（ぶつ）、香上（かうじやう）佛（ぶつ）、香光（かうくわう）佛（ぶつ）、大（だい）焰肩（えんけん）佛（ぶつ）、雜色（ざつしき）寶（ほう）華（け）嚴身（ごんしん）佛（ぶつ）、娑（しや）羅（ら）樹（じゆ）王（わう）佛（ぶつ）、寶（ほう）華（け）德（とく）佛（ぶつ）、見（けん）一切（いつさい）義（ぎ）佛（ぶつ）、如（によ）須（しゆ）彌（み）山（せん）佛（ぶつ）有（ましま）す。是（かく）の如（ごと）き等（とう）の恆（ごう）河（が）沙數（しやしゆ）の諸佛（しよぶつ）、各（おのおの）其國（そのくに）に於（おい）て廣長（くわうぢやう）の舌相（ぜつさう）を出（いだ）して、徧（あまね）く三千（さんぜん）大千（だいせん）世（せ）界（かい）に覆（おほ）うて誠實（じやうじつ）の言（ことば）を說（と）きたまふ。汝（なんぢ）等（ら）衆生（しゆじやう）、當（まさ）に是（この）稱讚（しようさん）不可思議（ふかしぎ）功（く）德（どく）一切（いつさい）諸佛（しよぶつ）所（しょ）護（ご）念（ねん）經（きやう）を信（しん）ずべし。

　^[31]舍（しや）利（り）弗（ほつ）、汝（なんぢ）が意（こころ）に於（おい）て云何（いかん）。何（なに）が故（ゆゑ）ぞ名（なづ）けて一切（いつさい）諸佛（しよぶつ）所（しよ）護（ご）念（ねん）經（きやう）と爲（す）る。舍（しや）利（り）弗（ほつ）、若（も）し善男（ぜんなん）子（し）善女人（ぜんによにん）有（あ）つて、是（この）諸佛（しよぶつ）所說（しよせつ）の名（みな）、及（およ）び經（きやう）の名（な）を聞（き）かん者（もの）は、是（この）諸（もろもろ）の善男（ぜんなん）子（し）善女人（ぜんによにん）皆（みな）一切（いつさい）諸佛（しよぶつ）の爲（ため）に共（とも）に護（ご）念（ねん）せられて、皆（みな）阿（あ）耨（のく）多羅（たら）三藐（さんみやく）三菩提（さんぼだい）を退轉（たいてん）せざることを得（う）。是故（このゆゑ）に舍（しや）利（り）弗（ほつ）汝（なんぢ）等（ら）皆當（みなまさ）に我（わが）語（ご）及（およ）び諸佛（しよぶつ）の所說（しよせつ）を信受（しんじゆ）すべし。舍（しや）利（り）弗（ほつ）、若（も）し人（ひと）有（あ）つて已（すで）に發願（ほつぐわん）し、今（いま）發願（ほつぐわん）し、當（まさ）に發願（ほつぐわん）し、阿彌陀（あみだ）佛（ぶつ）國（こく）に生（しやう）ぜんと欲（ほつ）せん者（もの）は、是（この）諸人（しよにん）等（とう）、皆（みな）阿（あ）耨（のく）多（た）羅（ら）三藐（さんみやく）三菩提（さんぼだい）を退轉（たいてん）せざることを得（え）て、彼（かの）國（こく）土（ど）に於（おい）て若（もし）は已（すで）に生（しやう）じ、若（もし）は今（いま）生（しやう）じ、若（もし）は當（まさ）に生（しやう）ぜん。是故（このゆゑ）に舍（しや）利（り）弗（ほつ）、諸（もろもろ）の善男（ぜんなん）子（し）善女人（ぜんによにん）、若（も）し信（しん）ずること有（あ）らん者（もの）は、應當（まさ）に發願（ほつぐわん）して彼（かの）國（こく）土（ど）に生（しやう）ずべし。

　^[32]舍（しや）利（り）弗（ほつ）、我今（われいま）諸佛（しよぶつ）の不可思議（ふかしぎ）功（く）德（どく）を稱讚（しようさん）するが如（ごと）く、彼（かの）諸佛（しよぶつ）等（とう）も亦（また）我（わが）不可思議（ふかしぎ）功（く）德（どく）を稱說（しようせつ）して、是（この）言（ことば）を作（な）したまはく、『釋（しや）迦牟尼（かむに）佛（ぶつ）、能（よ）く甚難（じんなん）希有（けう）の事（こと）を爲（な）して、能（よ）く娑（しや）婆（ば）國（こく）土（ど）の五（ご）濁（ぢよく）惡（あく）世（せ）の劫濁（こふぢよく）、見濁（けんぢよく）、煩惱濁（ぼんなうぢよく）、衆生濁（しゆじやうぢよく）、命濁（みやうぢよく）の中（なか）に於（おい）て阿（あ）耨（のく）多（た）羅（ら）三藐（さんみやく）三菩提（さんぼだい）を得（え）て、諸（もろもろ）の衆生（しゆじやう）の爲（ため）に是（この）一切（いつさい）世（せ）間（けん）難信（なんしん）の法（ほふ）を說（と）く。舍（しや）利（り）弗（ほつ）、當（まさ）に知（し）るべし、我（われ）五濁（ごぢよく）惡世（あくせ）に於（おい）て此（この）難（なん）事（じ）を行（ぎやう）して阿（あ）耨（のく）多（た）羅（ら）三藐（さんみやく）三菩提（さんぼだい）を得（え）て、一切（いつさい）世間（せけん）の爲（ため）に此（この）難信（なんしん）の法（ほふ）を說（と）く。是（これ）を甚難（じんなん）と爲（な）す。』佛（ほとけ）此（この）經（きやう）を說（と）き終（おは）りたまふに、舍（しや）利（り）弗（ほつ）及（およ）び諸（もろもろ）の比丘（びく）一切（いつさい）世（せ）間（けん）天人（てんにん）阿（あ）修（しゆ）羅（ら）等（とう）、佛（ほとけ）の所說（しよせつ）を聞（き）き奉（たてまつ）つて、歡喜（くわんぎ）し信受（しんじゆ）して禮（らい）を作（な）して去（さ）りきぬ。

佛說阿彌陀經　畢

注釈部

1. 【一】第一大段、序分。
2. 【舍衞國】拘薩羅國の都城。
3. 【祇樹給孤獨園】舍衞國の南一里の處。
4. 【摩訶迦旃延】佛十大弟子の一、論議第一。
5. 【摩訶俱絺羅】佛十大弟子の一、問答第一
6. 【難陀】佛十大弟子の一、諸根調伏第一。
7. 【阿㝹樓駄】佛十大弟子の一、天眼第一。
8. 【二】第二大段、正宗分、初に略して淨土を明す。
9. 【三】次に廣く淨土を明す中、初に依報莊嚴を明す、第一に寶行樹。
10. 【四】次に寶池樓閣蓮華。
11. 【五】三に天樂、金地、雨華、供佛經行（行道のこと）。
12. 【六】四に化鳥演法、風樹作樂。
13. 【五根】進、信、念、定、慧。五力とは五根を惡むを排斥する意。
14. 【佛を念じ等】化鳥妙法を傳へ人の勝心を發し、三寶の芳名を念じ百生の障累を消す。
15. 【七】以下正報に就いて莊嚴を明す、初に化主の功德。
16. 【彼佛の光明等】彌陀を無量光、卽ち光明に約して名を得。
17. 【彼佛の壽命等】彌陀を無量壽、卽ち壽命に約して名を得。
18. 【八】別して菩薩の所得を明す。
19. 【阿鞞跋致】不退轉と譯す。
20. 【九】以下衆生を勸めて念佛往生せしむるを明す。
21. 【少善根】雜善を簡び念佛の行を明す。
22. 【一〇】念佛行を修すべきを勸む。
23. 【是利】釋尊の選擇念佛。
24. 【一一】以下六方段東方世界。
25. 【廣長の舌相】不虛妄の相。
26. 【一二】南方世界。
27. 【一三】西方世界。
28. 【一四】北方世界。
29. 【一五】下方世界。
30. 【一六】上方世界。
31. 【一七】經名に約して三世の利益を顯す。
32. 【一八】諸佛釋尊を讃歎す。

関連項目

• 仏説阿弥陀経