詩五十一篇

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• 底本:
  • 中川藤四郎 等訳『詩篇』,日本聖公会出版社,明32.10. 国立国会図書館デジタルコレクション:info:ndljp/pid/825502/1/72
  • ハリストス正教会本会 訳『聖詠経』,ハリストス正教会本会,明34.7. 国立国会図書館デジタルコレクション:info:ndljp/pid/824695/1/57

詩（し）五十一（ごじふいつ）篇（ぺん）

日本聖公会（詩五十一篇）

¹ あゝかみよ、願（ねがは）くは汝（なんぢ）の仁慈（いつくしみ）によりて我（われ）をあはれみ

なんぢの憐憫（あはれみ）のおほきによりて我（わが）もろ〳〵の愆（とが）を消（け）したまへ

² わが不義（ふぎ）をことごとくあらひ去（さ）り

我（われ）をわが罪（つみ）よりきよめたまへ

³ 我（われ）はわが愆（とが）をしる

わが罪（つみ）はつねに我（わが）前（まへ）にあり

⁴ 我（われ）はひとへに汝（なんぢ）に罪（つみ）ををかし、聖（み）前（まへ）にあしきことを行（おこ）なへり

されば汝（なんぢ）ものいふ時（とき）は義（ぎ）とせられ、汝（なんぢ）さばく時（とき）は潔（いさぎよし）とせられたまふ

⁵ 視（み）よわれ邪曲（よこしま）のうちに産（うま）れ

わが母（はは）つみの中（うち）にありて我（われ）をはらみたりき

⁶ 汝（なんぢ）はわが心（こころ）の衷（うち）に真実（まこと）あらんことを望（のぞ）みたまふ

わが隠（かく）れたる所（ところ）に智慧（ちゑ）を知（しら）しめたまはん

⁷ ヒソプをもて我（われ）を潔（きよ）めたまへ、さらばわれきよまらん

我（われ）をあらひ給（たま）へ、さらばわれ雪（ゆき）よりもしろからん

⁸ 願（ねがは）くはわれに喜悦（よろこび）と快楽（たのしみ）とをきかせ

なんぢが砕（くだ）きし骨（ほね）をよろこばせ給（たま）へ

⁹ 願（ねがは）くは聖（み）顔（かほ）をわがすべての罪（つみ）よりそむけ

我（わが）すべての不義（ふぎ）をけし給（たま）へ

¹⁰ あゝ神（かみ）よ、わがために清（きよ）き心（こころ）をつくり

わが衷（うち）に直（なほ）き霊（れい）をあらたにおこしたまへ

¹¹ われを聖（み）前（まへ）より棄（すて）たまふ勿（なか）れ

汝（なんぢ）のきよき霊（れい）を我（われ）より取（とり）たまふ勿（なか）れ

¹² なんぢの救（すくひ）のよろこびを我（われ）にかへし

自（じ）由（ゆう）の聖（み）霊（たま）をあたへて我（われ）をたもちたまへ

¹³ さらばわれ愆（とが）を犯（をか）せるものに汝（なんぢ）の途（みち）をゝしへん

罪人（つみびと）はなんぢに帰（かへ）りきたるべし

¹⁴ 神（かみ）よわが救（すくひ）の神（かみ）よ、血（ち）を流（なが）しゝ罪（つみ）よりわれを助（たす）け出（いだ）したまへ

わが舌（した）は声（こゑ）たからかに汝（なんぢ）の義（ぎ）をうたはん

¹⁵ 主（しゅ）よわが口唇（くちびる）をひらき給（たま）へ

然（さら）ばわが口（くち）なんぢの誉（ほまれ）をあらはさん

¹⁶ なんぢは祭物（そなへもの）をこのみ給（たま）はず、もし然（しか）らずば我（われ）これを献（ささ）げん

なんぢまた燔祭（はんさい）をも喜（よろ）こびたまはず

¹⁷ 神（かみ）の求（もと）めたまふ祭物（そなへもの）はくだけたる霊魂（たましひ）なり

神（かみ）よ、なんぢは砕（くだ）けたる悔（くい）し心（こころ）を藐（かろ）しめたまふまじ

¹⁸ 願（ねがは）くは聖意（みこころ）にしたがひてシオンをさきはひ

エルサレムの石垣（いしがき）をきづきたまへ

¹⁹ その時（とき）なんぢ義（ぎ）の祭物（そなへもの）と燔祭（はんさい）と全（また）きはんさいとを悦（よろこ）びたまはん

かくて人々（ひとびと）なんぢの祭壇（さいだん）に牡（を）牛（うし）を献（ささ）ぐべし

日本正教会（第五十聖詠）

¹　伶長（れいちやう）に歌（うた）はしむ。ダワィドの詠（えい）。

²　ダワィド、ワィルサワィヤに入（い）りて後（のち）、預言者（よげんしゃ）ナファンの彼（かれ）に来（きた）りし時（とき）に之（これ）を作（つく）れり。

³ 神（かみ）よ、爾（なんぢ）の大（おほい）なる憐（あはれみ）に因（より）て我（われ）を憐（あはれ）み、爾（なんぢ）が惠（めぐみ）の多（おほ）きに因（より）て我（われ）の不（ふ）法（はふ）を抹（け）し給（たま）へ。

⁴ 屡（しばしば）我（われ）を我（わ）が不（ふ）法（はふ）より洗（あら）ひ、我（われ）を我（わ）が罪（つみ）より清（きよ）め給（たま）へ、

⁵ 盖（けだし）我（われ）は我（わ）が不（ふ）法（はふ）を知（し）る、我（われ）の罪（つみ）は常（つね）に我（わ）が前（まへ）に在（あ）り。

⁶ 我（われ）は爾（なんぢ）獨（ひとり）爾（なんぢ）に罪（つみ）を犯（をか）し、悪（あく）を爾（なんぢ）の目（め）の前（まへ）に行（おこな）へり、爾（なんぢ）は爾（なんぢ）の審断（しんだん）に義（ぎ）にして、爾（なんぢ）の裁判（さいばん）に公（おほやけ）なり。

⁷ 視（み）よ、我（われ）は不（ふ）法（はふ）に於（おい）て妊（はら）まれ、我（わ）が母（はは）は罪（つみ）に於（おい）て我（われ）を生（う）めり。

⁸ 視（み）よ、爾（なんぢ）は心（こころ）に眞實（しんじつ）のあるを愛（あい）し、我（わ）が衷（うち）に於（おい）て智慧（ちえ）を我（われ）に顕（あらは）せり。

⁹ 「イソプ」を以（もつ）て我（われ）に沃（そそ）げ、然（しか）せば我（われ）潔（いさぎよ）くならん、我（われ）を滌（あら）へ、然（しか）せば我（われ）雪（ゆき）より白（しろ）くならん。

¹⁰ 我（われ）に喜（よろこび）と楽（たのしみ）とを聞（き）かせ給（たま）へ、然（しか）せば爾（なんぢ）に折（を）られし骨（ほね）は悦（よろこ）ばん。

¹¹ 爾（なんぢ）の顔（かんばせ）を我（わ）が罪（つみ）より避（さ）け、我（わ）が盡（ことごと）くの不（ふ）法（はう）を抹（け）し給（たま）へ。

¹² 神（かみ）よ、潔（いさぎよ）き心（こころ）を我（わ）れに造（つく）れ、正（ただ）しき霊（たましひ）を我（われ）の衷（うち）に改（あらた）め給（たま）へ。

¹³ 我（われ）を爾（なんぢ）の顔（かんばせ）より逐（お）ふこと勿（なか）れ、爾（なんぢ）の聖神（せいしん）を我（われ）より取（と）り上（あ）ぐること毋（なか）れ。

¹⁴ 爾（なんぢ）が救（すくひ）の喜（よろこび）を我（われ）に還（かへ）せ、主宰（しゅさい）たるの神（しん）を以（もつ）て我（われ）を固（かた）め給（たま）へ。

¹⁵ 我（われ）不（ふ）法（はう）の者（もの）に爾（なんぢ）の道（みち）を教（をし）へん、不（ふ）虔（けん）の者（もの）は爾（なんぢ）に帰（かへ）らんとす。

¹⁶ 神（かみ）よ、我（わ）が救（すくひ）の神（かみ）よ、我（われ）を血（ち）より救（すく）ひ給（たま）へ、然（しか）せば我（わ）が舌（した）は爾（なんぢ）の義（ぎ）を讃（ほ）め揚（あ）げん。

¹⁷ 主（しゅ）よ、我（わ）が唇（くちびる）を啓（ひら）け、然（しか）せば我（わ）が口（くち）は爾（なんぢ）の讃（さん）美（び）を揚（あ）げん、

¹⁸ 盖（けだし）爾（なんぢ）は祭（まつり）を欲（ほつ）せず、欲（ほつ）せば我（われ）之（これ）を献（たてまつ）らん、爾（なんぢ）は燔（やき）祭（まつり）を喜（よろこ）ばず。

¹⁹ 神（かみ）に喜（よろこ）ばるる祭（まつり）は痛（つう）悔（くわい）の霊（たましひ）なり、痛（つう）悔（くわい）して謙遜（けんそん）なる心（こころ）は、神（かみ）よ、爾（なんぢ）軽（かろ）んじ給（たま）はず。

²⁰ 主（しゅ）よ、爾（なんぢ）の惠（めぐみ）に因（よ）りて恩（おん）をシオンに垂（た）れ、イエルサリムの城（じゃう）垣（えん）を建（た）て給（たま）へ、

²¹ 其（その）時（とき）に爾（なんぢ）義（ぎ）の祭（まつり）、献（ささげ）物（もの）と燔（やき）祭（まつり）を喜（よろこ）び饗（う）けん、其（その）時（とき）に人人（ひとびと）爾（なんぢ）の祭壇（さいだん）に犢（こうし）を奠（そな）へんとす。

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