汽車 (アサヒ読本)

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二十六 汽車

「ゴー。」
と、とほくの 方で 音が しました。
「汽車 だ。正ちゃん、見に 行かう。」
と、にいさんが いひました。
 ぼくたちは、畠の 中の みちを 走って、せんろの 方へ 行きました。
 汽車は ぐんぐん 大きく なって、こっちへ 來ます。
「くゎもつ列車 だ。長い、長い。」
と、にいさんが いひました。
「シュッ、シュッ、シュッ、シュッ。」
と、きくゎん車が 大きな 音を たてて 來ました。
「いくつ あるか、かぞへて みよう。」
と、にいさんが いひました。
 くろい はこの 車が、あとから あとから やって 來ます。
「一、二、三、四、五、六、七、八。」
と かぞへて、十八まで 來た 時、牛の たくさん のって ゐる 車が、いくつか 通りました。「おや。」と 思って ゐる 間に、ぼくは、車の かずが わからなくなりました。
 牛の あとから、大きな 木を つんだ 車や、石を つんだ 車が、いくつも いくつも 通りました。おしまひごろに なると、にいさんは、大きな こゑを 出して かぞへました。
「四十六、四十七、四十八。みんなで 四十八 あった。」
といひました。
 汽車は だんだん 小さく なって、とほくの 方へ 行って しまひました。
 ぼくは、さっき 見た 牛の ことを 考へて、
「ぼくも 汽車に のりたいなあ。」
と 思ひました。

 

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