民法 (大韓民国)

第1編 総則

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第1章 通則

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第1条(法源) 民事に関して、法律に規定がないときは慣習法により、慣習法がないときは条理による。

第2条(信義誠実)① 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

 権利は、濫用することができない。

第2章 人

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第1節 能力

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第3条(権利能力の存続期間) 人は、生存している間、権利及び義務の主体となる。

第4条(成年) 人は、19歳をもって、成年に達する。

(最終改正 2011.3.7)

第5条(未成年者の行為能力)① 未成年者が法律行為をするには、法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。

 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。

第6条(処分を許した財産) 法定代理人が範囲を定めて処分を許した財産は、未成年者が自由に処分することができる。

第7条(同意及び許可の取消し) 法定代理人は、未成年者がまだ法律行為をする前であるときは、前2条の規定による同意及び許可を取り消すことができる。

第8条(営業の許可)① 未成年者は、法定代理人から許された特定の営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。

 法定代理人は、前項の規定による許可を取り消し、又は制限することができる。ただし、善意の第三者に対抗することができない。

第9条(成年後見開始の審判)① 家庭裁判所は、疾病、障害、老齢その他の事由による精神的制約により事務を処理する能力が持続的に欠ける者について、本人、配偶者、4親等以内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、限定後見人、限定後見監督人、特定後見人、特定後見監督人、検事又は地方自治団体の長の請求により、成年後見開始の審判をする。

 家庭裁判所は、成年後見開始の審判をするときは、本人の意思を考慮しなければならない。

(最終改正 2011.3.7)

第10条(成年被後見人の法律行為及びその取消し)① 成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。

 前項の規定にかかわらず、家庭裁判所は、取り消すことができない成年被後見人の法律行為の範囲を定めることができる。

 家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等以内の親族、成年後見人、成年後見監督人、 検事又は地方自治団体の長の請求により、前項の範囲を変更することができる。

 第1項の規定にかかわらず、日用品の購入等日常生活に必要でその代価が過分でない法律行為は、成年後見人が取り消すことはできない。

(最終改正 2011.3.7)

第11条(成年後見終了の審判) 成年後見開始の原因が消滅した場合は、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等以内の親族、成年後見人、成年後見監督人、検事又は地方自治団体の長の請求により、成年後見終了の審判をする。

(最終改正 2011.3.7)

第12条(限定後見開始の審判)① 家庭裁判所は、疾病、障害、老齢その他の事由による精神的制約により事務を処理する能力が不足する者について、本人、配偶者、4親等以内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、成年後見人、成年後見監督人、特定後見人、特定後見監督人、検事又は地方自治団体の長の請求により、限定後見開始の審判をする。

 限定後見開始の場合については、第9条第2項の規定を準用する。

(最終改正 2011.3.7)

第13条(限定被後見人の法律行為及びその同意)① 家庭裁判所は、限定被後見人が限定後見人の同意を得なければならない法律行為の範囲を定めることができる。

 家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等以内の親族、限定後見人、限定後見監督人、検事又は地方自治団体の長の請求により、前項の規定による限定後見人の同意を得てすることができる法律行為の範囲を変更することができる。

 限定後見人の同意を必要とする法律行為について、限定後見人が限定被後見人の利益が害されるおそれがあるにもかかわらずその同意をしないときは、家庭裁判所は、限定被後見人の請求により、限定後見人の同意に代わる許可をすることができる。

 限定後見人の同意が必要な法律行為を限定被後見人が限定後見人の同意を得ないでしたときは、その法律行為を取り消すことができる。 ただし、日用品の購入等日常生活に必要でその代価が過分でない法律行為については、この限りでない。

(最終改正 2011.3.7)

第14条(限定後見終了の審判) 限定後見開始の原因が消滅した場合は、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等以内の親族、限定後見人、限定後見監督人、検事又は地方自治団体の長の請求により、限定後見終了の審判をする。

(最終改正 2011.3.7)

第14条の2(特定後見の審判)① 家庭裁判所は、疾病、障害、老齢その他の事由による精神的制約により一時的な補助又は特定の事務に関する補助が必要な者について、本人、配偶者、4親等以内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、検事又は地方自治団体の長の請求により、特定後見の審判をする。

 特定後見の審判は、本人の意思に反してすることができない。

 特定後見の審判をする場合は、特定後見の期間又は事務の範囲を定めなければならない。

(最終改正 2011.3.7)

第14条の3(審判間の関係)① 家庭裁判所が限定被後見人又は特定被後見人について成年後見開始の審判をするときは、従前の限定後見又は特定後見の終了の審判をする。

 家庭裁判所が成年被後見人又は特定被後見人について限定後見開始の審判をするときは、従前の成年後見又は特定後見の終了の審判をする。

(最終改正 2011.3.7)

第15条(制限行為能力者の相手方が確答を催告する権利)① 制限行為能力者の相手方は、制限行為能力者が行為能力者となった後に、その者に対し、1箇月以上の期間を定めて、その取り消すことができる行為を追認するかどうかの確答を催告することができる。 行為能力者となった者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。

 制限行為能力者がまだ行為能力者となることができない場合には、その法定代理人に対し、前項の催告をすることができ、法定代理人がその定められた期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。

 特別な手続が必要な行為は、その定められた期間内に、その手続を行った旨の確答を発しないときは、 取り消したものとみなす。

(最終改正 2011.3.7)

第16条(制限行為能力者の相手方の撤回権及び拒絶権)① 制限行為能力者が締結した契約は、追認があるときまで、相手方がその意思表示を撤回することができる。 ただし、相手方が契約の当時に制限行為能力者であることを知っていた場合においては、この限りでない。

 制限行為能力者の単独行為は、追認があるときまで、相手方が拒絶をすることができる。

 第1項に規定する撤回及び前項の拒絶の意思表示は、制限行為能力者に対してもすることができる。

(最終改正 2011.3.7)

第17条(制限行為能力者の詐術)①  制限行為能力者が詐術を用いて自己を行為能力者と信じさせた場合は、その行為を取り消すことができない。

 未成年者又は限定被後見人が詐術を用いて法定代理人の同意があるものと信じさせた場合も、前項と同様とする。

(最終改正 2011.3.7)

第2節 住所

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第18条(住所)① 生活の本拠となる場所を住所とする。

 住所は、同時に2箇所以上有することができる。

第19条(居所) 住所が知れない場合、居所を住所とみなす。

第20条(居所) 国内に住所を有しない者については、国内における居所を住所とみなす。

第21条(仮住所) ある行為について仮住所を定めたときは、その行為に関しては、これを住所とみなす。

第3節 不在と失踪

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第22条(不在者の財産の管理)① 従来の住所又は居所を去った者が財産管理人を定めなかったときは、裁判所は、利害関係人又は検事の請求により、財産管理について必要な処分を命じなければならない。 本人の不在中に財産管理人の権限が消滅したときも、同様とする。

 本人がその後に財産管理人を定めたときは、裁判所は、本人、財産管理人、利害関係人又は検事の請求により、前項の規定による命令を取り消さなければならない。

第23条(財産管理人の改任) 不在者が財産管理人を定めた場合において、不在者の生死が明らかでないときは、裁判所は、財産管理人、利害関係人又は検事の請求により、財産管理人を改任することができる。

第24条(財産管理人の職務)① 裁判所が選任した財産管理人は、管理すべき財産の目録を作成しなければならない。

 裁判所は、その選任した財産管理人に対して、不在者の財産を保存するために必要な処分を命じることができる。

 不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検事の請求があるときは、裁判所は、不在者が定めた財産管理人に対して、前2項に規定する処分を命じることができる。

 前3項の場合において、その費用は、不在者の財産から支払う。

第25条(財産管理人の権限) 裁判所の選任した財産管理人が第118条に規定する権限を超える行為をするときは、 裁判所の許可を得なければならない。 不在者の生死が明らかでない場合において、不在者が定めた財産管理人が権限を超える行為をするときも、同様とする。

第26条(財産管理人の担保供与及び報酬)① 裁判所は、その選任した財産管理人に財産の管理及び返還について相当の担保を供させることができる。

 裁判所は、その選任した財産管理人に対して不在者の財産から相当な報酬を支払うことができる。

 前2項の規定は、不在者の生死が明らかでない場合において、不在者が定めた財産管理人について準用する。

第27条(失踪の宣告)① 不在者の生死が5年間明らかでないときは、裁判所は、利害関係人又は検事の請求により、失踪の宣告をしなければならない。

 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者、墜落した航空機の中に在った者その他の死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、戦争が止んだ後又は船舶の沈没、航空機の墜落その他の危難が去った後1年間明らかでないときも、前項と同様とする。

(最終改正 1984.4.10)

第28条(失踪宣告の効果) 失踪宣告を受けた者は、前条の期間が満了した時に、死亡したものとみなす。

第29条(失踪宣告の取消し)① 失踪者が生存する事実又は前条の規定と異なる時に死亡した事実の証明があったときは、裁判所は、本人、利害関係人又は検事の請求により、失踪宣告を取り消さなければならない。ただし、失踪宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。

 失踪宣告の取消しがあった場合において、失踪の宣告を直接の原因として財産を得た者が、善意であったときはその受けた利益が現存する限度において返還する義務を負い、悪意であったときはその受けた利益に利息を付して返還するとともに損害があればこれを賠償しなければならない。

第30条(同時死亡) 二人以上の者が同一の危難で死亡した場合は、同時に死亡したものと推定する。

第3章 法人

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第1節 総則

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第31条(法人の成立の準則) 法人は、法律の規定によらなければ、成立しない。

第32条(非営利法人の設立及びその許可) 学術、宗教、慈善、技芸、社交その他の営利でない事業を目的とする社団又は財団は、主務官庁の許可を得て、法人とすることができる。

第33条(法人設立の登記) 法人は、その主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立する。

第34条(法人の権利能力) 法人は、法律の規定に従い、 定款で定めた目的の範囲内において、権利及び義務の主体となる。

第35条(法人の不法行為能力)① 法人は、理事その他の代表者がその職務について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。 理事その他の代表者は、これにより自己の損害賠償責任を免れることができない。

 法人の目的の範囲外の行為により第三者に損害を加えたときは、その事項に関する議決に賛成し、又はその議決を執行した社員、理事及びその他の代表者が連帯して賠償しなければならない。

第36条(法人の住所) 法人の住所は、その主たる事務所の所在地にあるものとする。

第37条(法人の事務の検査及び監督) 法人の事務は、主務官庁が検査し、及び監督する。

第38条(法人の設立許可の取消し) 法人が目的外の事業を行い、設立の許可の条件に反し、又はその他公益を害する行為をしたときは、主務官庁は、その許可を取り消すことができる。

第39条(営利法人)① 営利を目的とする社団は、商事会社の設立の条件に従い、法人とすることができる。

 前項に規定する社団法人については、すべて商事会社に関する規定を準用する。

第2節 設立

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第40条(社団法人の定款) 社団法人の設立者は、次に掲げる事項を記載した定款を作成し、記名押印しなければならない。

 1. 目的

 2. 名称

 3. 事務所の所在地

 4. 資産に関する規定

 5. 理事の任免に関する規定

 6. 社員資格の得喪に関する規定

 7. 存立時期又は解散事由を定めるときは、その時期又は事由

第41条(理事の代表権に対する制限) 理事の代表権に対する制限は、これを定款に記載しなければ、効力を生じない。

第42条(社団法人の定款の変更)① 社団法人の定款は、総社員の3分の2以上の同意があるときに限り、変更することができる。ただし、定数について定款に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

 定款の変更は、主務官庁の許可を得なければ、効力を生じない。

第43条(財団法人の定款) 財団法人の設立者は、一定の財産を拠出して、第40条第1号から第5号までの規定に掲げる事項を記載した定款を作成し、記名押印しなければならない。

第44条(財団法人の定款の補充) 財団法人の設立者がその財団法人の名称、事務所の所在地又は理事の任免の方法を定めないで死亡したときは、利害関係人又は検事の請求により、裁判所がこれを定める。

第45条(財団法人の定款の変更)① 財団法人の定款は、その変更の方法を定款に定めたときに限り、変更することができる。

 財団法人の目的の達成又は財産の保全のために適当であるときは、前項の規定にかかわらず、名称又は事務所の所在地を変更することができる。

 第42条第2項の規定は、前2項の場合について準用する。

第46条(財団法人の目的その他の変更) 財団法人の目的を達成することができないときは、設立者又は理事は、主務官庁の許可を得て、設立の趣旨を考慮し、目的その他の定款の規定を変更することができる。

第47条(贈与又は遺贈に関する規定の準用)① 生前の処分で財団法人を設立するときは、贈与に関する規定を準用する。

 遺言で財団法人を設立するときは、遺贈に関する規定を準用する。

第48条(拠出財産の帰属時期)① 生前の処分で財団法人を設立するときは、拠出した財産は、法人が成立した時から法人の財産となる。

 遺言で財団法人を設立するときは、拠出した財産は、遺言の効力が発生した時から法人に帰属したものとみなす。

第49条(法人の登記事項)① 法人の設立の許可があったときは、3週間内に、主たる事務所の所在地において、設立の登記をしなければならない。

 前項の登記の登記事項は、次のとおりとする。

 1. 目的

 2. 名称

 3. 事務所

 4. 設立の許可の年月日

 5. 存立時期又は解散事由を定めたときは、その時期又は事由

 6. 資産の総額

 7. 出資の方法を定めたときは、その方法

 8. 理事の姓名及び住所

 9. 理事の代表権を制限したときは、その制限

第50条(従たる事務所の設置の登記)① 法人が従たる事務所を設置したときは、主たる事務所の所在地においては3週間内に従たる事務所を設置したことを登記し、その従たる事務所の所在地においては同期間内に前条第2項各号に掲げる事項を登記し、他の従たる事務所の所在地においては同期間内にその従たる事務所を設置したことを登記しなければならない。

 主たる事務所又は従たる事務所の所在地を管轄する登記所の管轄区域内に従たる事務所を設置したときは、前項の期間内にその事務所を設置したことを登記すれば足りる。

第51条(事務所の移転の登記)① 法人がその事務所を移転したときは、旧所在地においては3週間内に移転の登記をし、新所在地においては同期間内に第49条第2項各号に掲げる事項を登記しなければならない。

 同一の登記所の管轄区域内において事務所を移転したときは、その移転したことを登記すれば足りる。

第52条(変更の登記) 第49条第2項各号に掲げる事項に変更があったときは、3週間内に変更登記をしなければならない。

第52条の2(職務執行停止等の仮処分の登記) 理事の職務執行を停止し、若しくは職務代行者を選任する仮処分をし、又はその仮処分を変更し、若しくは取り消す場合は、主たる事務所及び従たる事務所が所在する地の登記所において、これを登記しなければならない。

(最終改正 2001. 12. 29)

第53条(登記期間の起算) 第50条から第52条までの規定により登記すべき事項で官庁の許可を要するものは、その許可書が到達した日から登記の期間を起算する。

第54条(設立の登記以外の登記の効力及び登記事項の公告)① 設立の登記以外のこの節の登記の登記事項は、その登記後でなければ、第三者に対抗することができない。

 登記した事項は、裁判所が、遅滞なく公告しなければならない。

第55条(財産目録及び社員名簿)① 法人は、成立した時及び每年3月までに財産目録を作成し、事務所に備え置かなければならない。 事業年度を定めた法人は、成立した時及びその年度末にこれを作成しなければならない。

 社団法人は、社員名簿を備え置き、社員の変更があったときは、これを記載しなければならない。 

第56条(社員権の譲渡及び相続の禁止) 社団法人の社員の地位は、譲渡し、又は相続することができない。

第3節 機関

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第57条(理事) 法人は、理事を置かなければならない。

第58条(理事の事務の執行)① 理事は、法人の事務を執行する。

 理事が数人ある場合には、定款に別段の定めがないときは、法人の事務執行は、理事の過半数をもって決定する。

第59条(理事の代表権)① 理事は、法人の事務について、各自、法人を代表する。ただし、定款に定める趣旨に反することはできず、特に社団法人においては、総会の議決に従わなければならない。

 法人の代表については、代理に関する規定を準用する。

第60条(理事の代表権に加えた制限の対抗要件) 理事の代表権に加えた制限は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

第60条の2(職務代行者の権限)① 第52条の2の職務代行者は、仮処分命令に別段の定めがある場合を除き、法人の常務に属さない行為をすることができない。ただし、裁判所の許可を得た場合は、この限りでない。

 職務代行者が前項の規定に反する行為をした場合であっても、法人は、善意の第三者に対して責任を負う。

(最終改正 2001. 12. 29)

第61条(理事の注意義務) 理事は、善良な管理者の注意をもって、その職務を行わなければならない。

第62条(理事の代理人選任) 理事は、定款又は総会の決議で禁止していない事項に限り、第三者に特定の行為を代理させることができる。

第63条(臨時理事の選任) 理事が欠け、又は欠員がある場合において、これにより損害が生じるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人又は検事の請求により、臨時理事を選任しなければならない。

第64条(特別代理人の選任) 法人と理事との利益が相反する事項については、理事は、代表権を有しない。この場合においては、前条の規定により、特別代理人を選任しなければならない。

第65条(理事の任務懈怠) 理事がその任務を怠ったときは、その理事は、法人に対し、連帯して損害賠償の責任を負う。

第66条(監事) 法人は、定款又は総会の決議により、監事を置くことができる。

第67条(監事の職務) 監事の職務は、次のとおりとする。

 1. 法人の財産状況を監査すること。

 2. 理事の業務執行の状況を監査すること。

 3. 財産状況又は業務執行について不正又は不備があることを発見したときは、これを総会又は主務官庁に報告すること。

 4. 前号に規定する報告をするために必要があるときは、総会を招集すること。

第68条(総会の権限) 社団法人の事務は、定款で理事又はその他の役員に委任した事項を除き、総会の決議によらなければならない。

第69条(通常総会) 社団法人の理事は、毎年1回以上、通常総会を招集しなければならない。

第70条(臨時総会)① 社団法人の理事は、必要であると認めたときは、臨時総会を招集することができる。

 総社員の5分の1以上の者が会議の目的事項を示して請求したときは、理事は、臨時総会を招集しなければならない。この定数は、定款で増減することができる。

 前項の規定による請求があった後2週間内に理事が総会の招集の手続を行わないときは、請求した社員は、裁判所の許可を得て、これを招集することができる。

第71条(総会の招集) 総会の招集は、1週間前までにその会議の目的事項を記載した通知を発し、その他定款で定めた方法に従わなければならない。

第72条(総会の決議事項) 総会は、前条の規定により通知した事項に関してのみ決議することができる。ただし、定款に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

第73条(社員の決議権)① 各社員の決議権は、平等とする。

 社員は、書面又は代理人により、決議権を行使することができる。

 前2項の規定は、定款に別段の定めがあるときは、適用しない。

第74条(社員が決議権を有しない場合) 社団法人とある社員との間に関係する事項を議決する場合には、その社員は、決議権を有しない。

第75条(総会の決議方法)① 総会の決議は、本法又は定款に別段の定めがないときには、社員の過半数の出席及び出席社員の決議権の過半数をもって行う。

 第73条第2項の場合においては、当該社員は、出席したものとみなす。

第76条(総会の議事録)① 総会の議事については、議事録を作成しなければならない。

 議事録には、議事の経過、要領及び結果を記載し、議長及び出席した理事が記名押印しなければならない。

 理事は、議事録を主たる事務所に備え置かなければならない。

第4節 解散

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第77条(解散事由)① 法人は、存続期間の満了、法人の目的の達成若しくは達成の不能、定款で定めた解散事由の発生、破産又は設立許可の取消しによって解散する。

 社団法人は、社員が欠けるに至り、又は総会で決議した場合も、解散する。

第78条(社団法人の解散決議) 社団法人は、総社員の4分の3以上の同意がなければ、解散を決議することができない。ただし、定款に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

第79条(破産申請) 法人が債務を完済できなくなったときは、理事は、遅滞なく破産の申請をしなければならない。

第80条(残余財産の帰属)① 解散した法人の財産は、定款で指定した者に帰属する。

 定款で帰属権利者を指定せず、かつ、これを指定する方法を定めなかったときは、理事又は清算人は、主務官庁の許可を得て、その法人の目的に類似した目的のために、その財産を処分することができる。ただし、社団法人においては、総会の決議がなければならない。

 前2項の規定により処分されなかった財産は、国庫に帰属する。

第81条(清算法人) 解散した法人は、清算の目的の範囲内においてのみ、権利を有し、義務を負う。

第82条(清算人) 法人が解散したときは、破産の場合を除き、理事が清算人となる。ただし、定款又は総会の決議により別段の定めをしたときは、その定めるところによる。

第83条(裁判所による清算人の選任) 前条の規定により清算人となる者がなく、又は清算人の欠員により損害が生じるおそれがあるときは、裁判所は、職権で又は利害関係人若しくは検事の請求により、清算人を選任することができる。

第84条(裁判所による清算人の解任) 重要な事由があるときは、裁判所は、職権で又は利害関係人若しくは検事の請求により、清算人を解任することができる。

第85条(解散の登記)① 清算人は、破産の場合を除き、その就任後3週間内に、解散の事由及び年月日、清算人の姓名及び住所並びに清算人の代表権を制限したときはその制限を、主たる事務所及び従たる事務所の所在地において、登記をしなければならない。

 第52条の規定は、前項の登記について準用する。

第86条(解散の届出)① 清算人は、破産の場合を除き、その就任後3週間内に、前条第1項に規定する事項を主務官庁に届け出なければならない。

 清算中に就任した清算人は、その姓名及び住所を届け出れば足りる。

第87条(清算人の職務)① 清算人の職務は、次のとおりとする。

 1. 現務の結了

 2. 債権の取立て及び債務の弁済

 3. 残余財産の引渡し

 清算人は、前項の職務を行うために必要なすべての行為をすることができる。

第88条(債権の申出の公告)① 清算人は、就任した日から2箇月内に3回以上の公告をもって、債権者に対し、一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を催告しなければならない。 その期間は、2箇月以上でなければならない。

 前項の公告には、債権者が期間内に申し出なければ清算から除斥される旨を表示しなければならない。

 第1項の公告は、裁判所による登記事項の公告と同一の方法により行わなければならない。

第89条(債権の申出の催告) 清算人は、知れている債権者には、各別にその債権の申出を催告しなければならない。 知れている債権者は、清算から除斥することができない。

第90条(債権の申出期間内の弁済禁止) 清算人は、第88条第1項に規定する債権の届出の期間内は、債権者に弁済することができない。ただし、法人は、債権者に対する遅延損害賠償の義務を免れることができない。

第91条(債権の弁済の特例)① 清算中の法人は、弁済期にない債権についても、弁済することができる。

 前項の場合において、条件付債権、存続期間が不確定な債権その他価額が不確定な債権については、裁判所が選任した鑑定人の評価に従い弁済しなければならない。

第92条(清算から除斥された債権) 清算から除斥された債権者は、法人の債務を完済した後に帰属権利者に引き渡していない財産に対してのみ、弁済を請求することができる。

第93条(清算中の破産)① 清算中の法人の財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになったときは、清算人は、遅滞なく破産の申請をして、これを公告しなければならない。

 清算人は、破産管財人にその事務を引き継ぐことによって、その任務が終了する。

 第88条第3項の規定は、第1項に規定する公告について準用する。

第94条(清算結了の登記及び届出) 清算が結了したときは、 清算人は、3週間内に、これを登記し、主務官庁に届け出なければならない。

第95条(解散及び清算の検査及び監督) 法人の解散及び清算は、裁判所が検査し、及び監督する。

第96条(準用規定) 第58条第2項、第59条から第62条まで、第64条、第65条及び第70条の規定は、清算人について準用する。

第5節 罰則

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第97条(罰則) 法人の理事、監事又は清算人は、次のいずれかに該当する場合には、500万ウォン以下の過料に処する。

 1. この章に規定する登記を怠ったとき。

 2. 第55条の規定に違反し、又は財産目録若しくは社員名簿に虚偽の記載をしたとき。

 3. 第37条又は第95条の規定による検査又は監督を妨げたとき。

 4. 主務官庁又は総会に対して、虚偽の申述を行い、又は事実を隠蔽したとき。

 5. 第76条又は第90条の規定に違反したとき。

 6. 第79条又は第93条の規定に違反して破産の申請を怠ったとき。

 7. 第88条又は第93条の規定による公告を怠り、又は不正の公告をしたとき。

(最終改正 2007.12.21)

第4章 物

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第98条(物の定義) この法律において「物」とは、有体物及び電気その他の管理することができる自然力をいう。

第99条(不動産及び動産)① 土地及びその定着物は、不動産とする。

 不動産以外の物は、動産とする。

第100条(主物及び従物)① 物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物は、従物とする。

 従物は、主物の処分に従う。

第101条(天然果実及び法定果実)①  物の用法に従い収取する産出物は、天然果実とする。

 物の使用の対価として受ける金銭その他の物は、法定果実とする。

第102条(果実の取得)① 天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に属する。

 法定果実は、これを収取する権利の存続期間の日数の割合に応じて、取得する。

第5章 法律行為

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第1節 総則

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第103条(社会秩序に反する法律行為) 善良な風俗その他社会秩序に反する事項を内容とする法律行為は、無効とする。 

第104条(不公正な法律行為) 当事者の窮迫、軽率又は無経験により著しく公正を欠く法律行為は、無効とする。

第105条(任意規定) 法律行為の当事者が法令中の善良な風俗その他社会秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。

第106条(事実たる慣習) 法令中の善良な風俗その他社会秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、当事者の意思が明らかでないときは、その慣習に従う。

第2節 意思表示

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第107条(心裡留保)① 意思表示は、表意者が真意でないことを知ってしたものであっても、その効力を有する。ただし、相手方が表意者の真意でないことを知り、又は知ることができた場合は、無効とする。

 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

第108条(虚偽表示)① 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。

 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

第109条(錯誤による意思表示)① 意思表示は、法律行為の内容の重要な部分に錯誤があるときは、取り消すことができる。ただし、その錯誤が表意者の重大な過失によるときは、取り消すことができない。

 前項の規定による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

第110条(詐欺又は強迫による意思表示)① 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

 相手方のある意思表示について第三者が詐欺又は強迫を行った場合において、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。

 前2項の規定による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

第111条(意思表示の効力発生時期)① 相手方のある意思表示は、相手方に到達した時にその効力を生じる。

 表意者が通知を発した後に死亡し、又は制限行為能力者となったときであっても、意思表示の効力に影響を及ぼさない。

(最終改正 2011. 3. 7)

第112条(制限行為能力者に対する意思表示の効力) 意思表示の相手方が意思表示を受けた時に制限行為能力者であった場合には、表意者は、その意思表示をもって対抗することができない。 ただし、その相手方の法定代理人が意思表示の到達した事実を知った後は、この限りでない。

(最終改正 2011. 3. 7)

第113条(意思表示の公示送達) 表意者が過失なく相手方を知ることができず、又は相手方の所在を知ることができない場合には、意思表示は、民事訴訟法の公示送達の規定により、送達することができる。

第3節 代理

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第114条(代理行為の効力)① 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、直接本人に対して効力を生じる。

 前項の規定は、代理人に対する第三者の意思表示について準用する。

第115条(本人のためにすることを示さなかった行為) 代理人が本人のためにすることを示さなかったときには、その意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人としてしたことを知り、又は知ることができたときは、前条第1項の規定を準用する。

第116条(代理行為の瑕疵)① 意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫又はある事情を知り、若しくは過失により知らなかったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決する。

 特定の法律行為を委任した場合において、代理人が本人の指図に従ってその行為をしたときは、本人は、自己が知っていた事情又は過失によって知らなかった事情について、代理人が知らなかったことを主張することができない。

第117条(代理人の行為能力) 代理人は、行為能力者であることを要しない。

第118条(代理権の範囲) 権限の定めのない代理人は、 次に掲げる行為のみをすることができる。

 1. 保存行為

 2. 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲において、その利用又は改良をする行為

第119条(各自代理) 代理人が数人あるときは、各自が本人を代理する。ただし、法律又は授権行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。

第120条(任意代理人の復任権) 代理権が法律行為により与えられた場合には、代理人は、本人の承諾があり、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。

第121条(任意代理人の復代理人の選任に伴う責任)① 前条の規定により代理人が復代理人を選任したときは、本人に対して、その選任及び監督についての責任を負う。

 代理人が本人の指名に従って復代理人を選任した場合においては、その不適任又は不誠実であることを知りながら、本人に対する通知又はその解任を怠ったときでなければ、責任を負わない。

第122条(法定代理人の復任権及びその責任) 法定代理人は、その責任で復代理人を選任することができる。ただし、やむを得ない事由によるときは、前条第1項に規定する責任のみを負う。

第123条(復代理人の権限)① 復代理人は、その権限内において、本人を代理する。

 復代理人は、本人又は第三者に対して、代理人と同一の権利義務を有する。

第124条(自己契約及び双方代理) 代理人は、本人の許諾がなければ、本人のために自己と法律行為をし、又は同一の法律行為について当事者双方を代理することができない。ただし、債務の履行については、これをすることができる。

第125条(代理権授与の表示による表見代理) 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その 代理権の範囲内においてしたその他人とその第三者との間の法律行為について、責任を負う。ただし、第三者が、代理権を有しないことを知り、又は知ることができたときは、この限りでない。

第126条(権限外の表見代理) 代理人がその権限外の法律行為をした場合において、第三者がその権限があると信ずべき正当な理由があるときは、本人は、その行為について、責任を負う。

第127条(代理権の消滅事由) 代理権は、次に掲げる事由があるときは、消滅する。

 1. 本人の死亡

 2. 代理人の死亡、成年後見開始又は破産

(最終改正 2011. 3. 7)

第128条(任意代理の終了) 法律行為により授与された代理権は、前条の場合のほか、その原因となった法律関係の終了により消滅する。 法律関係の終了前に本人が授権行為を撤回した場合も、同様とする。

第129条(代理権消滅後の表見代理) 代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。 ただし、第三者が過失によりその事実を知らなかったときは、この限りでない。

第130条(無権代理) 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人が追認しなければ、本人に対して効力を生じない。

第131条(相手方の催告権) 代理権を有しない者が他人の代理人として契約をした場合において、相手方は、相当の期間を定めて、本人に対し、その追認をするかどうかの確答を催告することができる。 本人がその期間内に確答を発しないときは、追認を拒絶したものとみなす。

第132条(追認及び拒絶の相手方) 追認又は拒絶の意思表示は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。

第133条(追認の効力) 追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生じる。 ただし、第三者の権利を害することはできない。

第134条(相手方の撤回権) 代理権を有しない者がした契約は、本人の追認があるまでは、相手方が、本人又はその代理人に対し、撤回することができる。ただし、契約の時に相手方が代理権を有しないことを知っていたときは、この限りでない。

第135条(相手方に対する無権代理人の責任)① 他人の代理人として契約をした者がその代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかった場合は、その者は、相手方の選択に従い、契約を履行する責任又は損害を賠償する責任を負う。

 代理人として契約をした者に代理権がない事実を相手方が知り、若しくは知ることができたとき又は代理人として契約をした者が制限行為能力者であるときは、前項の規定を適用しない。

(最終改正 2011. 3. 7)

第136条(単独行為と無権代理) 単独行為については、その行為の時において、相手方が、代理人と称する者の代理権を有しない行為に同意し、又はその代理権を争わなかったときに限り、第130条から前条までの規定を準用する。 代理権を有しない者に対してその同意を得て単独行為をしたときも、同様とする。

第4節 無効及び取消し

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第137条(法律行為の一部無効) 法律行為の一部分が無効であるときは、その全部を無効とする。ただし、その無効な部分がなくても法律行為をしたものと認められるときは、残余の部分は、無効とならない。

第138条(無効行為の転換) 無効な法律行為が他の法律行為の要件を備え、当事者がその無効を知っていれば他の法律行為をすることを欲しただろうと認められるときは、他の法律行為として効力を有する。

第139条(無効行為の追認) 無効な法律行為は、追認しても、その効力を生じない。ただし、当事者がその無効であることを知って追認したときは、新たな法律行為とみなす。

第140条(法律行為の取消権者) 取り消すことができる法律行為は、制限行為能力者、錯誤、詐欺若しくは強迫によって意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。

(最終改正 2011. 3. 7)

第141条(取消しの効果) 取り消された法律行為は、初めから無効であったものとみなす。ただし、制限行為能力者は、その法律行為によって受けた利益が現存する限度において、償還する責任を負う。

(最終改正 2011. 3. 7)

第142条(取消しの相手方) 取り消すことができる法律行為の相手方が確定している場合には、その取消しは、その相手方に対する意思表示によってしなければならない。

第143条(追認の方法及び効果)① 取り消すことができる法律行為は、第140条に規定する者が追認することができ、追認後に取り消すことができない。

 前条の規定は、前項の場合について準用する。

第144条(追認の要件)① 追認は、取消しの原因が消滅した後にすることによって、その効力を生じる。

 前項の規定は、法定代理人又は後見人が追認をする場合については、適用しない。

(最終改正 2011. 3. 7)

第145条(法定追認) 取り消すことができる法律行為について、前条の規定により追認をすることができる時以後に、次に掲げる事由があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。

 1. 全部又は一部の履行

 2. 履行の請求

 3. 更改

 4. 担保の供与

 5. 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡

 6. 強制執行

第146条(取消権の消滅) 取消権は、追認をすることができる日から3年内に、法律行為をした日から10年内に行使しなければならない。

第5節 条件及び期間

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第147条(条件の成就の効果)① 停止条件付法律行為は、条件が成就した時からその効力を生じる。

 解除条件付法律行為は、条件が成就した時からその効力を失う。

 当事者が条件の成就の効力をその成就前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。

第148条(条件付権利の侵害の禁止) 条件付法律行為の当事者は、条件の成否が未定である間に、条件の成就により生じるべき相手方の利益を害することができない。

第149条(条件付権利の処分等) 条件の成就が未定である権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又は担保とすることができる。

第150条(条件の成就及び不成就に対する信義に反する行為)① 条件の成就によって不利益を受ける当事者が信義誠實に反して条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものと主張することができる。

 条件の成就によって利益を受ける当事者が信義誠實に反して条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就していないものと主張することができる。

第151条(不法条件及び既成条件)① 条件が善良な風俗その他公の秩序に反したものであるときは、その法律行為は、無効とする。

 条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときは無条件の法律行為とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無効とする。

 条件が法律行為の時に既に成就できないものであった場合において、その条件が解除条件であるときは無条件の法律行為とし、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無効とする。

第152条(期限の到来の効果)① 始期を付した法律行為は、期限が到来した時から効力を生じる。

 終期を付した法律行為は、期限が到来した時から効力を失う。

第153条(期限の利益及びその放棄)① 期限は、債務者の利益のためのものと推定する。

 期限の利益は、放棄することができる。ただし、相手方の利益を害することはできない。

第154条(期限付権利と準用規定) 第148条及び第149条の規定は、期限を付した法律行為について準用する。

第6章 期間

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第155条(この章の規定の適用範囲) 期間の計算は、法令、裁判上の処分又は法律行為に別段の定めがないときは、この章の規定に従う。

第156条(期間の起算点) 期間を時、分又は秒によって定めたときは、即時から起算する。

第157条(期間の起算点) 期間を日、週、月又は年によって定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。

第158条(年齢の計算及び表示) 年齢は、出生日を算入し、満年齢で計算して、年数で表示する。ただし、1歳に達しない場合は、月数で表示することができる。

(最終改正 2022.12.27)

第159条(期間の満了点) 期間を日、週、月又は年によって定めたときは、期間の末日の終了をもって期間が満了する。

第160条(暦による計算)① 期間を週、月又は年によって定めたときは、暦に従って計算する。

 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に期間が満了する。

 月又は年によって定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に期間が満了する。

第161条(公休日等と期間の満了点) 期間の末日が土曜日又は公休日に当たるときは、期間は、その翌日に満了する。

(最終改正 2007. 12. 21)

第7章 消滅時効

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第162条(債権及び財産権の消滅時効)① 債権は、10年間行使しないときは、消滅時効が完成する。

 債権及び所有権以外の財産権は、20年間行使しないときは、消滅時効が完成する。

第163条(3年の短期消滅時効) 次に掲げる債権は、3年間行使しないときは、消滅時効が完成する。

 1. 利息、扶養料、給料、使用料その他1年以内の期間によって定めた金銭又は物の給付を目的とする債権

 2. 医師、助産師、看護師又は薬剤師の治療、労働又は調剤に関する債権

 3. 請負人、技師その他工事の設計又は監督に従事する者の工事に関する債権

 4. 弁護士、弁理士、公証人、公認会計士又は司法書士に対する職務上保管している書類の返還を請求する債権

 5. 弁護士、弁理士、公証人、公認会計士又は司法書士の職務に関する債権

 6. 生産者又は商人が販売した生産物又は商品の代価

 7. 手工業者又は製造者の業務に関する債権

(最終改正 1997. 12. 13)

第164条(1年の短期消滅時効) 次に掲げる債権は、1年間行使しないときは、消滅時効が完成する。

 1. 旅館、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、席料、入場料、消費物の代価又は立替金の債権

 2. 衣服、寝具、葬具その他の動産の使用料の債権

 3. 労役人又は演芸人の賃金又はその供給した物の代金債権

 4. 学生又は修業者の教育、衣食又は寄宿に関する校主、塾主又は教師の債権

第165条(判決等により確定した債権の消滅時効)① 判決によって確定した債権は、短期の消滅時効に該当するものであっても、その消滅時効の期間は、10年とする。

 破産手続によって確定した債権及び裁判上の和解、調停その他の判決と同一の効力を有するものによって確定した債権も、前項と同様とする。

 前2項の規定は、判決の確定の時に弁済期が到来していない債権については、適用しない。

第166条(消滅時効の起算点)① 消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。

 不作為を目的とする債権の消滅時効は、違反行為をした時から進行する。

第167条(消滅時効の遡及効) 消滅時効は、その起算日に遡って効力を生じる。

第168条(消滅時効の完成猶予の事由) 消滅時効は、次に掲げる事由によって完成しない。

 1. 請求

 2. 差押え、仮差押え又は仮処分

 3. 承認

第169条(時効の完成猶予の効力) 時効の完成猶予(訳注:前条の規定による消滅時効の完成猶予をいう。以下同じ。)は、当事者及びその承継人の間においてのみ、効力を有する。

第170条(裁判上の請求と時効の完成猶予)① 裁判上の請求は、訴えの却下、請求の棄却又は訴えの取下げの場合には、時効の完成猶予の効力を生じない。

 前項の場合において、6箇月内に裁判上の請求、破産手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしたときは、最初の裁判上の請求によって時効の完成猶予の効力が生じたものとみなす。

第171条(破産手続参加と時効の完成猶予) 破産手続参加は、債権者がこれを取り下げ、又はその届出が却下されたときは、時効の完成猶予の効力を生じない。

第172条(支払督促と時効の完成猶予) 支払督促は、債権者が法定期間内に仮執行の申請をしないことによってその効力を失ったときは、時効の完成猶予の効力を生じない。

第173条(和解のための召喚及び任意出席と時効の完成猶予) 和解のための召喚は、相手方が出席せず、又は和解が成立しなかったときは、1箇月内に訴えを提起しなければ、時効の完成猶予の効力を生じない。 任意出席の場合において、和解が成立しなかったときも、同様とする。

第174条(催告と時効の完成猶予) 催告は、6箇月内に裁判上の請求、破産手続参加、和解のための召喚、任意出席、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の完成猶予の効力を生じない。

第175条(差押え、仮差押え及び仮処分と時効の完成猶予) 差押え、仮差押え及び仮処分は、権利者の請求により又は法律の規定に従わないことにより取り消されたときは、時効の完成猶予の効力を生じない。

第176条(差押え、仮差押え及び仮処分と時効の完成猶予) 差押え、仮差押え及び仮処分は、時効の利益を受ける者に対してしなかったときは、これをその者に通知した後でなければ、時効の完成猶予の効力を生じない。

第177条(承認と時効の完成猶予) 時効の完成猶予の効力を生ずべき承認には、相手方の権利についての処分の行為能力又は権限があることを要しない。

第178条(消滅時効の更新)① 時効の完成猶予の効力が生じたときは、その時までに経過した時効期間を算入せず、第168条各号に掲げる事由が終了した時から、消滅時効が新たに進行する。

 裁判上の請求によって時効の完成猶予の効力が生じた消滅時効は、前項の規定により、裁判が確定した時から新たに進行する。

第179条(制限行為能力者と消滅時効の完成猶予) 消滅時効の期間の満了前6箇月内に制限行為能力者に法定代理人がない場合には、その者が行為能力者となり、又は法定代理人が就任した時から6箇月内は、消滅時効は、完成しない。

(最終改正 2011. 3. 7)

第180条(財産管理者に対する制限行為能力者の権利及び夫婦間の権利と消滅時効の完成猶予)① 財産を管理する父、母又は後見人に対する制限行為能力者の権利については、その者が行為能力者となり、又は後任の法定代理人が就任した時から6箇月内は、消滅時効は、完成しない。

 夫婦の一方が他方に対して有する権利については、婚姻関係が解消した時から6箇月内は、消滅時効は、完成しない。

(最終改正 2011. 3. 7)

第181条(相続財産に関する権利と消滅時効の完成猶予) 相続財産に属する権利又は相続財産に対する権利については、 相続人の確定、管理人の選任又は破産宣告があった時から6箇月内は、消滅時効は、完成しない。

第182条(天災その他の事変と消滅時効の完成猶予) 天災その他の事変のため第168条各号に掲げる事由に係る手続を行うことができないときは、その障害が終了した時から1箇月内は、消滅時効は、完成しない。

第183条(従たる権利に対する消滅時効の効力) 主たる権利の消滅時効が完成したときは、従たる権利にその効力が及ぶ。

第184条(消滅時効の利益の放棄等)① 消滅時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。

 消滅時効は、法律行為によって、これを排除し、延長し、又は加重することができないが、これを短縮し、又は軽減することができる。

第2編 物権

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第1章 総則

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第185条(物権の種類) 物権は、法律又は慣習法によるもののほかには、任意に創設することができない。

第186条(不動産に関する物権の変動の効力) 不動産に関する法律行為による物権の得喪及び変更は、登記をすることによって、効力を生じる。

第187条(登記を要しない不動産に関する物権の取得) 相続、公用徴収、判決、競売その他法律の規定による不動産に関する物権の取得は、登記を要しない。ただし、登記をしなければ、これを処分することができない。 

第188条(動産に関する物権の譲渡の効力及び簡易の引渡し)① 動産に関する物権の譲渡は、その動産を引き渡すことによって、効力を生じる。

 譲受人が既にその動産を占有しているときは、当事者の意思表示のみによって、その効力を生じる。

第189条(占有改定) 動産に関する物権を譲渡する場合において、当事者の契約により譲渡人がその動産の占有を継続するときは、譲受人が引渡しを受けたものとみなす。

第190条(目的物返還請求権の譲渡) 第三者が占有している動産に関する物権を譲渡する場合は、譲渡人がその第三者に対する返還請求権を譲受人に譲渡することをもって、動産を引き渡したものとみなす。 

第191条(混同による物権の消滅) 同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物権が第三者の権利の目的になっているときは、消滅しない。

 前項の規定は、所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属した場合について準用する。

 占有権については、前2項の規定は、適用しない。

第2章 占有権

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第192条(占有権の取得及び消滅)① 物を事実上支配する者は、占有権を有する。

 占有者が物に対する事実上の支配を喪失したときは、占有権は、消滅する。ただし、第204条の規定により占有を回収したときは、この限りでない。

第193条(相続による占有権の移転) 占有権は、相続人に移転する。 

第194条(間接占有) 地上権、伝貰権、質権、使用貸借、賃貸借、寄託その他の関係により他人に物を占有させた者は、間接的に占有権を有する。  

第195条(占有補助者) 家事上、営業上その他これらに類する関係により他人の指示を受けて物に対する事実上の支配をするときは、その他人のみを占有者とする。   

第196条(占有権の譲渡)① 占有権の譲渡は、占有物の引渡しによって、その効力を生じる。

 前項の占有権の譲渡については、第188条第2項、第189条及び第190条の規定を準用する。 

第197条(占有の態様)① 占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有するものと推定する。

 善意の占有者であっても、 本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えが提起された時から悪意の占有者とみなす。

第198条(占有継続の推定) 前後の両時点において占有した事実があるときは、その占有は、継続したものと推定する。

第199条(占有の承継の主張及びその効果)① 占有者の承継人は、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有と前の占有者の占有を併せて主張することができる。

 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。

第200条(権利の適法の推定) 占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。

第201条(占有者と果実)① 善意の占有者は、占有物の果実を取得する。

 悪意の占有者は、収取した果実を返還し、かつ、消費し、過失により損傷し、又は収取することができなかった場合にはその果実の代価を補償しなければならない。

 前項の規定は、暴力又は隠秘による占有者について準用する。

第202条(占有者の回復者に対する責任) 占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、悪意の占有者はその損害の全部を賠償し、善意の占有者は現に利益を受けている限度において賠償しなければならない。 所有の意思のない占有者は、善意である場合であっても、損害の全部を賠償しなければならない。

第203条(占有者の償還請求権)① 占有者が占有物を返還するときは、回復者に対して、占有物を保存するために支出した金額その他の必要費の償還を請求することができる。ただし、占有者が果実を取得した場合には、通常の必要費は、請求することができない。

 占有者が占有物を改良するために支出した金額その他の有益費については、その価額の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出金額又は増加額の償還を請求することができる。

 前項の場合において、裁判所は、回復者の請求により、相当の償還期間を許与することができる。

第204条(占有の回収)① 占有者が占有の侵奪を受けたときは、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。

 前項の規定による請求権は、侵奪者の特定承継人に対して行使することができない。ただし、承継人が悪意であるときは、この限りでない。

 第1項の規定による請求権は、侵奪を受けた日から1年内に行使しなければならない。

第205条(占有の保持)① 占有者が占有の妨害を受けたときは、その妨害の除去及び損害の賠償を請求することができる。

 前項の規定による請求権は、妨害が終了した日から1年内に行使しなければならない。

 工事により占有の妨害を受けた場合において、工事着手後1年を経過し、又はその工事が完成したときは、妨害の除去を請求することができない。

第206条(占有の保全)① 占有者が占有の妨害を受けるおそれがあるときは、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。

 工事により占有の妨害を受けるおそれがある場合には、前条第3項の規定を準用する。

第207条(間接占有の保護)① 前3条の規定による請求権は、第194条の規定による間接占有者も、これを行使することができる。

 占有者が占有の侵奪を受けた場合において、間接占有者は、その物を占有者に返還することを請求することができ、占有者がその物の返還を受けることができないとき又はこれを望まないときは自己に返還することを請求することができる。 

第208条(占有の訴えと本権の訴えとの関係)① 占有の訴えと本権の訴えは、互いに影響を及ぼさない。

 占有の訴えについては、本権に関する理由をもって裁判をすることができない。 

第209条(自力救済)① 占有者は、その占有を不正に侵奪し、又は妨害する行為に対して、自力をもってこれを防衛することができる。

 占有者は、占有物が侵奪された場合において、不動産であるときは侵奪後直ちに加害者を排除してこれを奪還することができ、動産であるときは現場で又は追跡して加害者からこれを奪還することができる。

第210条(準占有) この章の規定は、財産権を事実上行使する場合について準用する。

第3章 所有権

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第1節 所有権の限界

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第211条(所有権の内容) 所有者は、法律の範囲内において、その所有物を使用し、 収益し、及び処分する権利を有する。  

第212条(土地所有権の範囲) 土地の所有権は、正当な利益のある範囲内において、土地の上下に及ぶ。

第213条(所有物の返還請求権) 所有者は、その所有に属する物を占有する者に対して返還を請求することができる。ただし、占有者は、その物を占有する権利を有するときは、返還を拒否することができる。

第214条(所有物の妨害除去請求権及び妨害予防請求権) 所有者は、所有権を妨害する者に対して妨害の除去を請求することができ、所有権を妨害するおそれがある行為をする者に対してその予防又は損害賠償の担保を請求することができる。 

第215条(建物の区分所有)① 数人が1棟の建物を区分して各々その一部分を所有するときは、建物及びその附属物のうち共用する部分は、それらの者の共有と推定する。

 共用部分の保存に関する費用その他の負担は、各自の所有部分の価額に応じて分担する。 

第216条(隣地の使用請求権)① 土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し、又は修繕するために必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。

 前項の場合において、隣人が損害を受けたときは、補償を請求することができる。

第217条(煤煙等による隣地に対する妨害の禁止)① 土地の所有者は、煤煙、蒸気、液体、音響、振動その他これらに類するものにより隣地の使用を妨害し、又は隣地居住者の生活に苦痛を与えないように、適当な措置をする義務を負う。

 隣地居住者は、前項に規定する事態が隣地の通常の用途に照らし適当なものであるときは、これを忍容する義務を負う。

第218条(水道等の設置権)① 土地の所有者は、他人の土地を通過しなければ、必要な水道、排水管、ガス管、電線等を設置することができず、又はその設置に過分な費用を要する場合には、他人の土地を通過してこれを設置することができる。ただし、これによる損害が最も少ない場所及び方法を選んで設置しなければならず、他の土地の所有者の請求により損害を補償しなければならない。

 前項の規定による施設を設置した後に事情の変更があったときは、他の土地の所有者は、その施設の変更を請求することができる。施設の変更の費用は、土地の所有者が負担する。

第219条(周囲の土地の通行権)① ある土地と公道との間にその土地の用途に必要な通路がない場合において、その土地の所有者は、周囲の土地を通行し、又は通路として使用しなければ、公道に出入りすることができず、又はその出入りに過分な費用を要するときは、その周囲の土地を通行することができ、必要な場合には通路を開設することができる。ただし、これによる損害が最も少ない場所及び方法を選ばなければならない。

 前項の規定による通行権者は、周囲の土地の所有者の損害を補償しなければならない。 

第220条(分割及び一部譲渡と周囲通行権)① 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、 公道に出入りするため、他の分割者の土地を通行することができる。この場合においては、補償の義務を負わない。

 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。 

第221条(自然水流に関する義務及び権利)① 土地の所有者は、隣地から自然に流れて来る水流を妨げることができない。

 高地の所有者は、隣地の低地に自然に流れ下り、その低地で必要な水流については、自己の正当な使用の範囲を超えて、妨げることができない。 

第222条(疎通工事権) 水流が低地において閉塞したときは、高地の所有者は、自己の費用で、疏通に必要な工事をすることができる。 

第223条(貯水、排水又は引水のための工作物の工事請求権) 土地の所有者が貯水し、排水し、又は引水するために工作物を設置した場合において、工作物の破損又は閉塞により他人の土地に損害を加え、又は加えるおそれがあるときは、その他人は、その工作物の補修、閉塞の疏通又は予防のために必要な請求をすることができる。

第224条(慣習による費用の負担) 前2条の場合において、費用の負担に関する慣習があるときは、その慣習に従う。

第225条(軒先からの水に対する施設義務) 土地の所有者は、軒先からの水が隣地に直接に注がないように適当な施設を設けなければならない。

第226条(余水の疎通権)① 高地の所有者は、浸水地を乾燥するため、又は家用若しくは農工業用の余水を疏通するために、公道、公流又は下水道に至るまで、低地に水を通過させることができる。

 前項の場合においては、低地の損害が最も少ない場所及び方法を選ぶとともに、その損害を補償しなければならない。

第227条(流水用工作物の使用権)① 土地の所有者は、その所有地の水を疏通するために、隣地の所有者が設置した工作物を使用することができる。

 前項の工作物を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、工作物の設置及び保存の費用を分担しなければならない。

第228条(余水の供給請求権) 土地の所有者は、過分な費用又は労力をかけなければ自家用又は土地利用に必要な水を得ることが困難なときは、隣地の所有者に補償を行って、余水の供給を請求することができる。

第229条(水流の変更)① 溝渠その他の水流地の所有者は、対岸の土地が他人の所有であるときは、その水路又は水流の幅員を変更することができない。

 両岸の土地が水流地の所有者の所有であるときは、所有者は、水路及び水流の幅員を変更することができる。ただし、下流においては、自然の水路と一致するようにしなければならない。

 前2項の規定は、異なる慣習があるときは、その慣習に従う。 

第230条(堰の設置権及び利用権)① 水流地の所有者は、堰を設置する必要があるときは、その堰を対岸に付着させることができる。ただし、これによる損害を補償しなければならない。

 対岸の所有者は、水流地の一部が自己の所有であるときは、前項の堰を使用することができる。ただし、その利益を受ける割合に応じて、堰の設置及び保存の費用を分担しなければならない。 

第231条(公有河川の用水権)① 公有河川の沿岸で農工業を経営する者は、これに利用するため、他の人の用水を妨害しない範囲内で、必要な引水をすることができる。

 前項の引水をするために必要な工作物を設置することができる。

第232条(下流沿岸の用水権の保護) 前条第1項の引水又は同条第2項の工作物によって下流沿岸の用水権を妨害したときは、その用水権者は、妨害の除去及び損害の賠償を請求することができる。

第233条(用水権の承継) 農工業の経営に利用する水路その他の工作物の所有者又は利用者の特別承継人は、その用水に関する従前の所有者又は利用者の権利義務を承継する。  

第234条(用水権に関する異なる慣習) 前3条の規定は、異なる慣習があるときは、その慣習に従う。

第235条(共用水の用水権) 相隣者は、その共用に属する源泉又は水道から、各需要の程度に応じ、かつ、他の人の用水を妨害しない範囲内で、それぞれ水を使用する権利を有する。

第236条(用水を障害する工事と損害賠償及び原状回復)① 必要な用途又は収益のある源泉又は水道において他の人の建築その他の工事によって断水し、減水し、又はその他用途に障害が生じたときは、用水権者は、損害賠償を請求することができる。

 前項の工事によって飲料水その他の生活上必要な水の使用に障害が生じたときは、原状回復を請求することができる。

第237条(境界標及び囲障の設置権)① 隣接して土地を所有する者は、共同の費用で、通常の境界標又は囲障を設置することができる。

 前項の費用は、双方が等しい割合で負担する。ただし、測量の費用は、土地の面積に応じて負担する。

 前2項の規定は、異なる慣習があるときは、その慣習に従う。

第238条(囲障の特殊施設権) 隣地の所有者は、自己の費用で、囲障の材料を通常より良好なものとし、その高さを通常より高くし、又は防火壁その他の特殊施設を設けることができる。

第239条(境界標等の共有の推定) 境界に設置された境界標、囲障、溝渠等は、相隣者の共有と推定する。ただし、境界標、囲障、溝渠等が相隣者の一方のみの費用で設置された場合又は障壁が建物の一部である場合については、この限りでない。

第240条(樹木の枝及び根の除去権)① 隣地の樹木の枝が境界を越えるときは、その所有者に対して、枝の除去を請求することができる。

 前項に規定する請求に応じないときは、請求者は、その枝を除去することができる。

 隣地の樹木の根が境界を越えるときは、自由に除去することができる。

第241条(土地の深掘の禁止) 土地の所有者は、隣地の地盤が崩れる程度まで、自己の土地を深く堀ることができない。ただし、十分な防禦工事をしたときは、この限りでない。

第242条(境界線付近の建築)① 建物を築造する場合において、特別な慣習がないときは、境界から0.5メートル以上の距離を保たなければならない。

 隣地の所有者は、前項の規定に違反した者に対して、建物の変更又は撤去を請求することができる。ただし、建築に着手した後1年を経過し、又は建物が完成した後は、損害賠償のみを請求することができる。

第243条(目隠しの設置義務) 境界から2メートル以内の距離において隣地の住宅の内部を観望することができる窓又は縁側を設置する場合は、適当な目隠しを設置しなければならない。

第244条(地下施設等に対する制限)① 井戸を掘り、又は用水、下水若しくは汚物等を貯める地下施設を設けるときは境界から2メートル以上の距離を保たなければならず、貯水池、溝渠又は地下室の工事をするときは境界からその深さの2分の1以上の距離を保たなければならない。

 前項の工事をするには、土砂が崩れ、又は下水若しくは汚液が隣地に流れないよう適当な措置をしなければならない。  

第2節 所有権の取得

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第245条(不動産の所有権の取得時効)① 20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と不動産を占有した者は、登記をすることによって、その所有権を取得する。

 不動産の所有者として登記をした者が、10年間、所有の意思をもって、平穏に、公然と、善意で、かつ、過失なくその不動産を占有したときは、その所有権を取得する。 

第246条(動産の所有権の取得時効)① 10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と動産を占有した者は、その所有権を取得する。

 前項に規定する占有が善意で、かつ、過失なく開始された場合には、5年を経過することによって、その所有権を取得する。

第247条(所有権の取得時効の遡及効及び完成猶予等)① 前2条の規定による所有権の取得の効力は、占有を開始した時に遡る。

 消滅時効の完成猶予及び更新に関する規定は、前2条の規定による所有権の取得時効について準用する。

第248条(所有権以外の財産権の取得時効) 前3条の規定は、所有権以外の財産権の取得について準用する。

第249条(善意取得) 平穏に、かつ、公然と動産を譲り受けた者は、善意で、かつ、過失なくその動産を占有した場合には、 譲渡人が正当な所有者でないときであっても、即時にその動産の所有権を取得する。

第250条(盗品及び遺失物についての特例) 前条の場合において、その動産が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難に遭い、又は遺失をした日から2年内に、その物の返還を請求することができる。ただし、盗品又は遺失物が金銭であるときは、この限りでない。   

第251条(盗品及び遺失物についての特例) 譲受人が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公開の市場において又は同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、譲受人が支払った代価を弁償し、その物の返還を請求することができる。  

第252条(無主物の帰属)① 無主の動産を所有の意思をもって占有した者は、その所有権を取得する。

 無主の不動産は、国有とする。

 野生する動物は、無主物とし、飼養する野生動物も野生状態に戻ったときは、無主物とする。   

第253条(遺失物の所有権の取得) 遺失物は、法律の定めるところに従い公告をした後6箇月内にその所有者が権利を主張しないときは、拾得者がその所有権を取得する。

(最終改正 2013.4.5)

第254条(埋蔵物の所有権の取得) 埋蔵物は、法律の定めるところに従い公告をした後1年内にその所有者が権利を主張しないときは、発見者がその所有権を取得する。ただし、他人の土地その他の物から発見した埋蔵物については、その土地その他の物の所有者と発見者が等しい割合で取得する。

第255条(国家遺産基本法第3条の規定による国家遺産の国有)① 学術、技芸又は考古の重要な資料になる物については、第252条第1項及び前2条の規定にかかわらず、国有とする。

 前項の場合において、拾得者、発見者及び埋蔵物が発見された土地その他の物の所有者は、国に対して適当な報償を請求することができる。

(最終改正 2024.5.17)  

第256条(不動産への付合) 不動産の所有者は、その不動産に付合した物の所有権を取得する。ただし、他人の権限によって附属された物については、この限りでない。  

第257条(動産間の付合) 動産と動産が付合して、損傷しなければ分離することができず、又はその分離に過分な費用を要する場合には、その合成物の所有権は、主たる動産の所有者に属する。付合した動産の主従を区別することができないときは、動産の所有者は、付合の時の価額に応じて合成物を共有する。 

第258条(混和) 前条の規定は、動産と動産が混和して識別することができない場合について準用する。  

第259条(加工)① 他人の動産に加工したときは、その物の所有権は、原材料の所有者に属する。ただし、加工による価額の増加が原材料の価額より著しく多額であるときは、加工者の所有とする。

 加工者が材料の一部を供したときは、その価額は、前項ただし書に規定する増加額に加算する。

第260条(添付の効果)① 第256条から前条までの規定により動産の所有権が消滅したときは、その動産を目的とする他の権利も、消滅する。

 前項の権利は、動産の所有者が、合成物、混和物又は加工物の単独所有者となったときは合成物、混和物又は加工物について存し、その共有者となったときはその持分について存する。 

第261条(添付による求償権) 第256条から前条までの場合において損害を受けた者は、不当利得に関する規定に従い、補償を請求することができる。  

第3節 共同所有

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第262条(物の共有)① 物が持分によって数人の所有となったときは、共有とする。

 共有者の持分は、相等しいものと推定する。  

第263条(共有持分の処分並びに共有物の使用及び収益) 共有者は、その持分を処分することができ、共有物の全部を持分に応じて使用し、及び収益することができる。

第264条(共有物の処分及び変更) 共有者は、他の共有者の同意を得ないで、共有物を処分し、又は変更することができない。 

第265条(共有物の管理及び保存) 共有物の管理に関する事項は、共有者の持分の過半数で決する。ただし、保存行為は、各自が行うことができる。  

第266条(共有物の負担)① 共有者は、その持分に応じ、共有物の管理の費用の負担その他の義務を負う。

 共有者が1年以上前項の義務の履行を遅滞したときは、他の共有者は、相当の価額で持分を買い受けることができる。  

第267条(持分の放棄等の場合の帰属) 共有者がその持分を放棄し、又は相続人がなく死亡したときは、その持分は、他の共有者に各持分に応じて帰属する。 

第268条(共有物の分割請求)① 共有者は、共有物の分割を請求することができる。ただし、5年内の期間で分割しない旨の約定をすることができる。

 前項の約定を更新するときは、その期間は、更新した日から5年を超えることができない。

 前2項の規定は、第215条及び第239条に規定する共有物については、適用しない。  

第269条(分割の方法)① 分割の方法について協議が成立しないときは、共有者は、裁判所にその分割を請求することができる。

 現物で分割することができず、又は分割によって著しくその価額が減少するおそれがあるときは、裁判所は、物の競売を命じることができる。 

第270条(分割による担保責任) 共有者は、他の共有者が分割によって取得した物について、その持分に応じて売主と同じ担保の責任を負う。 

第271条(物の合有)① 法律の規定又は契約により数人が組合として物を所有するときは、合有とする。 合有者の権利は、合有物の全部に及ぶ。

 合有については、前項の規定又は契約によるほか、次条から第274条までの規定による。  

第272条(合有物の処分、変更及び保存) 合有物を処分し、又は変更するには、合有者全員の同意がなければならない。ただし、保存行為は、各自が行うことができる。  

第273条(合有持分の処分及び合有物の分割の禁止)① 合有者は、全員の同意がなければ、合有物についての持分を処分することができない。

 合有者は、合有物の分割を請求することができない。  

第274条(合有の終了)① 合有は、組合の解散又は合有物の譲渡によって終了する。

 前項の場合において、合有物の分割については、共有物の分割に関する規定を準用する。  

第275条(物の総有)① 法人格なき社団の社員が社団として物を所有するときは、総有とする。

 総有については、社団の定款その他契約によるほか、次条及び第277条の規定による。

第276条(総有物の管理及び処分並びに使用及び収益)① 総有物の管理及び処分は、社員総会の決議による。

 各社員は、定款その他の規約に従い、総有物を使用し、及び収益することができる。 

第277条(総有物に関する権利義務の得喪) 総有物に関する社員の権利義務は、社員の地位を取得し、又は喪失することによって、取得し、又は喪失する。  

第278条(準共同所有) この節の規定は、所有権以外の財産権について準用する。ただし、他の法律に特別の定めがあるときは、それによる。 

第4章 地上権

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第279条(地上権の内容) 地上権者は、他人の土地において建物その他の工作物又は樹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。  

第280条(存続期間を定めた地上権)① 契約で地上権の存続期間を定める場合には、その期間は、次に定める期間よりも短くすることができない。 

 1.石造、石灰造若しくは煉瓦造の建物若しくはこれに類する堅固な建物又は樹木の所有を目的とするときは、30年

 2.前号以外の建物の所有を目的とするときは、15年

 3.建物以外の工作物の所有を目的とするときは、5年

 前項の期間よりも短い期間を定めたときは、同項の期間まで延長する。  

第281条(存続期間を定めなかった地上権)① 契約で地上権の存続期間を定めなかったときは、その期間は、前条第1項各号に定める最短存続期間とする。

 地上権の設定時に工作物の種類及び構造を定めなかったときは、地上権は、前条第1項第2号の建物の所有を目的としたものとみなす。  

第282条(地上権の譲渡及び土地の賃貸) 地上権者は、他人にその権利を譲渡し、又はその権利の存続期間内においてその土地を賃貸することができる。   

第283条(地上権者の更新請求権及び買取請求権)① 地上権が消滅した場合において、建物その他の工作物又は樹木が現存するときは、地上権者は、契約の更新を請求することができる。

 地上権設定者が契約の更新を望まないときは、地上権者は、相当の価額で前項の工作物又は樹木の買取りを請求することができる。 

第284条(更新と存続期間) 当事者が契約を更新する場合においては、地上権の存続期間は、更新した日から第280条第1項各号に定める最短存続期間よりも短くすることができない。ただし、当事者は、これより長い期間を定めることができる。  

第285条(収去義務及び買取請求権)① 地上権が消滅したときは、地上権者は、建物その他の工作物又は樹木を収去して、土地を原状に回復しなければならない。

 前項の場合において、地上権設定者が相当の価額を提供してその工作物又は樹木の買取りを請求したときは、地上権者は、正当な理由なく拒むことができない。

第286条(地代増減請求権) 地代が土地に対する租税その他の負担の増減又は地価の変動により相当でなくなったときは、当事者は、その増減を請求することができる。  

第287条(地上権の消滅請求権) 地上権者が2年以上の地代を支払わないときは、地上権設定者は、地上権の消滅を請求することができる。 

第288条(地上権の消滅請求と抵当権者に対する通知) 地上権が抵当権の目的であるとき又はその土地にある建物及び樹木が抵当権の目的になっているときは、前条の規定による請求は、抵当権者に通知した後相当の期間が経過することによって、その効力を生じる。  

第289条(強行規定) 第280条から第287条までの規定に反する契約で地上権者に不利なものは、その効力を生じない。  

第289条の2(区分地上権)① 地下又は地上の空間は、上下の範囲を定めて、建物その他の工作物を所有するための地上権の目的とすることができる。この場合において、設定行為で、地上権の行使のために土地の使用を制限することができる。

 前項の規定による区分地上権は、第三者が土地を使用し、又は収益する権利を有する場合であっても、その権利者及びその権利を目的とする権利を有するすべての者の承諾があるときは、設定することができる。この場合において、土地を使用し、又は収益する権利を有する第三者は、その地上権の行使を妨げることができない。  

(最終改正 1984.4.10)

第290条(準用規定)① 第213条、第214条及び第216条から第244条までの規定は、地上権者間又は地上権者と隣地の所有者との間について準用する。

 第280条から第289条まで及び前項の規定は、前条の規定による区分地上権について準用する。

(最終改正 1984.4.10)

第5章 地役権

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第291条(地役権の内容) 地役権者は、一定の目的のため、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。 

第292条(付従性)① 地役権は、要役地の所有権に付従して移転し、又は要役地に対する所有権以外の権利の目的となる。ただし、別段の定めがあるときは、その定めに従う。

 地役権は、要役地から分離して譲り渡し、又は他の権利の目的とすることができない。 

第293条(共有関係及び一部譲渡と不可分性)① 土地の共有者の一人は、持分について、その土地のために存する地役権又はその土地について存する地役権を消滅させることができない。

 土地の分割又は土地の一部の譲渡の場合には、地役権は、要役地の各部のために又はその承役地の各部について存続する。ただし、地役権が土地の一部のみ関するものであるときは、 他の部分については、この限りでない。  

第294条(地役権の取得時効) 地役権については、継続し、かつ、外形上明らかなものに限り、第245条の規定を準用する。  

第295条(地役権の取得と不可分性)① 共有者の一人が地役権を取得したときは、他の共有者も、これを取得する。

 占有による地役権の取得時効の完成猶予及び更新は、地役権を行使するすべての共有者についてその事由がなければ、その効力を生じない。  

第296条(消滅時効の完成猶予及び更新と不可分性) 要役地が数人の共有である場合において、その一人のための地役権の消滅時効の完成猶予又は更新は、他の共有者のためにも効力を有する。  

第297条(用水地役権)① 用水地役権の承役地における水量が要役地及び承役地の需要に比して不足するときは、その需要の程度に応じて、まず家庭用に供給してから、他の用途に供給しなければならない。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、その定めに従う。

 承役地に数個の用水地役権が設定されたときは、後順位の地役権者は、先順位の地役権者の水の使用を妨げることができない。

第298条(承役地の所有者の義務及びその承継) 契約により承役地の所有者が地役権の行使のために自己の費用で工作物の設置又は修繕の義務を負担したときは、承役地の所有者の特定承継人も、その義務を負担する。 

第299条(所有権の放棄による負担の免除) 承役地の所有者は、地役権に必要な部分の土地の所有権を地役権者に放棄して、前条に規定する負担を免れることができる。  

第300条(工作物の共同使用)① 承役地の所有者は、地役権の行使を妨げない範囲内において、地役権者が地役権の行使のために承役地に設置した工作物を使用することができる。

 前項の場合には、承役地の所有者は、受益の程度に応じて、工作物の設置及び保存の費用を分担しなければならない。  

第301条(準用規定) 第214条の規定は、地役権について準用する。 

第302条(特殊の地役権) ある地域の住民が社団を組織して、各自が他人の土地において草木、野生物及び土砂を採取し、放牧し、又はその他の方法により収益をする権利を有する場合には、慣習に従うほか、この章の規定を準用する。 

第6章 伝貰権

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第303条(伝貰権の内容)① 伝貰権者は、伝貰金を支払って他人の不動産を占有し、その不動産の用途に従い使用及び収益をする権利を有するとともに、その不動産の全部について後順位の権利者及びその他の債権者より優先して伝貰金の弁済を受ける権利を有する。

 農耕地は、伝貰権の目的とすることができない。

(最終改正 1984. 4. 10)

第304条(建物の伝貰権の地上権及び賃借権に対する効力)① 他人の土地にある建物に伝貰権を設定したときは、その伝貰権の効力は、その建物の所有を目的とした地上権又は賃借権に及ぶ。

 前項の場合において、伝貰権設定者は、伝貰権者の同意を得ないで、地上権又は賃借権を消滅させる行為をすることができない。 

第305条(建物の伝貰権と法定地上権)① 敷地及び建物が同一の所有者に属する場合において、建物に伝貰権を設定したときは、その敷地の所有権の特別承継人は、伝貰権設定者に対して地上権を設定したものとみなす。ただし、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。

 前項の場合において、敷地の所有者は、他人にその敷地を賃貸し、又はこれを目的とする地上権若しくは伝貰権を設定することができない。  

第306条(伝貰権の譲渡、賃貸等) 伝貰権者は、伝貰権を他人に譲渡し、又は担保に供することができ、その存続期間内においてその目的物を他人に転伝貰し、又は賃貸することができる。ただし、設定行為でこれを禁止したときは、この限りでない。

第307条(伝貰権の譲渡の効力) 伝貰権の譲受人は、伝貰権設定者に対して伝貰権の譲渡人と同一の権利義務を有する。 

第308条(転伝貰等の場合の責任) 伝貰権の目的物を転伝貰し、又は賃貸した場合においては、伝貰権者は、転伝貰し、又は賃貸しなければ免れることができた不可抗力による損害についても、責任を負担する。 

第309条(伝貰権者の維持及び修繕の義務) 伝貰権者は、目的物の現状を維持し、その通常の管理に属する修繕をしなければならない。 

第310条(伝貰権者の償還請求権)① 伝貰権者が目的物を改良するために支出した金額その他の有益費については、その価額の増加が現存する場合に限り、所有者の選択に従い、その支出額又は増加額の償還を請求することができる。 

 前項の場合において、裁判所は、所有者の請求により、相当の償還期間を許与することができる。

第311条(伝貰権の消滅請求)① 伝貰権者が伝貰権設定契約又はその目的物の性質により定まった用法に従い、これを使用し、又は収益しない場合には、伝貰権設定者は、伝貰権の消滅を請求することができる。

 前項の場合においては、伝貰権設定者は、伝貰権者に対して原状回復又は損害賠償を請求することができる。 

第312条(伝貰権の存続期間)① 伝貰権の存続期間は、10年を超えることができない。当事者の約定期間が10年を超えるときは、これを10年に短縮する。

 建物に対する伝貰権の存続期間を1年未満で定めたときは、これを1年とする。 

 伝貰権の設定は、更新することができる。その期間は、更新した日から 10年を超えることができない。

 建物の伝貰権設定者が、伝貰権の存続期間の満了前6箇月から1箇月までの間に伝貰権者に対して更新の拒絶の通知又は条件を変更しなければ更新しない旨の通知をしなかった場合には、その期間が満了した時に従前の伝貰権と同一の条件で更に伝貰権を設定したものとみなす。 この場合において、伝貰権の存続期間は、定めがないものとみなす。

(最終改正 1984. 4. 10)

第312条の2(伝貰金増減請求権) 伝貰金が目的不動産に関する租税、公課金その他の負担の増減又は経済事情の変動により相当でなくなったときは、当事者は、将来に向ってその増減を請求することができる。ただし、増額の場合には、大統領令が定める基準による割合を超えることができない。 

(最終改正 1984. 4. 10)

第313条(伝貰権の消滅請求) 伝貰権の存続期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも相手方に対して伝貰権の消滅を請求することができ、相手方がこの請求を受けた日から6箇月を経過したときは、伝貰権は、消滅する。

第314条(不可抗力による滅失)① 伝貰権の目的物の全部又は一部が不可抗力により滅失したときは、その滅失した部分の伝貰権は、消滅する。

 前項に規定する一部の滅失の場合において、伝貰権者がその残存部分のみでは伝貰権の目的を達することができないときは、伝貰権設定者に伝貰権の全部の消滅を請求し、伝貰金の返還を請求することができる。 

第315条(伝貰権者の損害賠償責任)① 伝貰権の目的物の全部又は一部が伝貰権者の責めに帰すべき事由により滅失したときは、伝貰権者は、損害を賠償する責任を負う。

 前項の場合において、伝貰権が消滅したときは、伝貰権設定者は、伝貰金を損害の賠償に充当し、剰余額があるときは返還しなければならず、不足があるときは不足額を請求することができる。

第316条(原状回復義務及び買取請求権)① 伝貰権がその存続期間の満了により消滅したときは、伝貰権者は、その目的物を原状に回復しなければならず、その目的物に附属させた物を収去することができる。ただし、伝貰権設定者がその附属物の買取りを請求したときは、伝貰権者は、正当な理由なく拒むことができない。

 前項の場合において、その附属物が伝貰権設定者の同意を得て附属させたものであるときは、 伝貰権者は、伝貰権設定者にその附属物の買取りを請求することができる。その附属物が伝貰権設定者から買い受けたものであるときも、同様とする。  

第317条(伝貰権の消滅と同時履行) 伝貰権が消滅したときは、伝貰権設定者は、伝貰権者からその目的物の引渡し及び伝貰権設定登記の抹消登記に必要な書類の交付を受けると同時に、伝貰金を返還しなければならない。

第318条(伝貰権者の競売請求権) 伝貰権設定者が伝貰金の返還を遅滞したときは、伝貰権者は、民事執行法の定めるところにより、伝貰権の目的物の競売を請求することができる。

(最終改正 2001. 12. 29)

第319条(準用規定) 第213条、第214条及び第216条から第244条までの規定は、伝貰権者間又は伝貰権者と隣地の所有者及び地上権者との間について準用する。 

第7章 留置権

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第320条(留置権の内容)① 他人の物又は有価証券を占有している者は、その物又は有価証券に関して生じた債権が弁済期にある場合には、その債権の弁済を受ける時まで、その物又は有価証券を留置する権利を有する。

 前項の規定は、その占有が不法行為による場合には、適用しない。  

第321条(留置権の不可分性) 留置権者は、債権の全部の弁済を受ける時まで、留置物の全部についてその権利を行使することができる。  

第322条(競売及び簡易弁済充当)① 留置権者は、債権の弁済を受けるため、留置物を競売することができる。

 正当な理由があるときは、留置権者は、鑑定人の評価により留置物をもって直ちに弁済に充当することを裁判所に請求することができる。この場合において、留置権者は、あらかじめ債務者に通知しなければならない。    

第323条(果実収取権)① 留置権者は、留置物の果実を収取し、他の債権に先立って、その債権の弁済に充当することができる。ただし、その果実が金銭でないときは、競売しなければならない。 

 前項の果実は、まず債権の利息に充当し、剰余があるときは元本に充当する。 

第324条(留置権者の善管義務)① 留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければならない。

 留置権者は、債務者の承諾なしに、留置物の使用、貸与又は担保供与をすることができない。ただし、留置物の保存に必要な使用については、この限りでない。

 留置権者が前2項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消滅を請求することができる。 

第325条(留置権者の償還請求権)① 留置権者は、留置物について必要費を支出したときは、所有者にその償還を請求することができる。

 留置権者は、留置物について有益費を支出したときは、その価額の増加が現存する場合に限り、所有者の選択に従い、その支出した金額又は増加額の償還を請求することができる。ただし、裁判所は、所有者の請求により、相当の償還期間を許与することができる。  

第326条(被担保債権の消滅時効) 留置権の行使は、債権の消滅時効の進行に影響を及ぼさない。  

第327条(他の担保の供与と留置権の消滅) 債務者は、相当の担保を供して、留置権の消滅を請求することができる。  

第328条(占有の喪失と留置権の消滅) 留置権は、占有の喪失によって、消滅する。 

第8章 質権

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第1節 動産質

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第329条(動産質権の内容) 動産質権者は、債権の担保として債務者又は第三者が供した動産を占有し、かつ、その動産について他の債権者より優先して自己の債権の弁済を受ける権利を有する。 

第330条(質権の設定) 質権の設定は、質権者に目的物を引き渡すことによって、その効力を生じる。 

第331条(質権の目的) 質権は、譲り渡すことができない物を目的とすることができない。 

第332条(質権設定者による代理占有の禁止) 質権者は、質権設定者に、質物の占有をさせることができない。

第333条(動産質権の順位) 数個の債権を担保するために同一の動産について数個の質権を設定したときは、その順位は、設定の前後による。

第334条(被担保債権の範囲) 質権は、元本、利息、違約金、質権の実行の費用、質物の保存の費用及び債務の不履行又は質物の瑕疵による損害の賠償の債権を担保する。ただし、別段の定めがあるときは、その定めによる。  

第335条(留置的効力) 質権者は、前条の債権の弁済を受ける時まで、質物を留置することができる。ただし、自己より優先権を有する債権者に対抗することができない。  

第336条(転質権) 質権者は、その権利の範囲内において、自己の責任で、質物を転質することができる。この場合においては、転質をしなければ免れることができた不可抗力による損害についても、責任を負う。  

第337条(転質の対抗要件)① 前条の場合において、質権者が債務者に転質の事実を通知せず、又は債務者がこれを承諾しないときは、転質をもって債務者、保証人、質権設定者及びその承継人に対抗することができない。

 債務者が前項の通知を受け、又は承諾をしたときは、転質権者の同意なく質権者に債務を弁済しても、これをもって転質権者に対抗することができない。 

第338条(競売及び簡易弁済充当)① 質権者は、債権の弁済を受けるため、質物を競売することができる。

 正当な理由があるときは、質権者は、鑑定人の評価に従い質物をもって直ちに弁済に充当することを裁判所に請求することができる。この場合においては、質権者は、あらかじめ債務者及び質権設定者に通知しなければならない。  

第339条(流質契約の禁止) 質権設定者は、債務の弁済期前の契約において、質権者に弁済に代えて質物の所有権を取得させ、又は法律で定める方法によらないで質物を処分することを約することができない。  

(最終改正 2014. 12. 30)

第340条(質物以外の財産からの弁済)① 質権者は、質物により弁済を受けることができなかった部分の債権に限り、債務者の他の財産から弁済を受けることができる。

 前項の規定は、質物より先に他の財産について配当を実施する場合には、適用しない。ただし、他の債権者は、質権者にその配当金額の供託を請求することができる。 

第341条(物上保証人の求償権) 他人の債務を担保するために質権を設定した者は、その債務を弁済し、又は質権の実行によって質物の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有する。  

第342条(物上代位) 質権は、質物の滅失、損傷又は公用徴収によって質権設定者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。この場合においては、その支払い又は引渡しの前に差し押えなければならない。 

第343条(準用規定) 第249条から第251条まで及び第321条から第325条までの規定は、動産質権について準用する。  

第344条(他の法律による質権) この節の規定は、他の法律の規定により設定された質権について準用する。 

第2節 権利質

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第345条(権利質権の目的) 質権は、財産権をその目的とすることができる。ただし、不動産の使用又は収益を目的とする権利については、この限りでない。 

第346条(権利質権の設定方法) 権利質権の設定は、法律に別段の定めがないときは、その権利の譲渡に係る方法によらなければならない。  

第347条(債権証書がある債権に対する質権の設定方法) 債権を質権の目的とする場合において、債権証書があるときは、質権の設定は、その証書を質権者に交付することによって、その効力を生じる。 

第348条(抵当権で担保された債権に対する質権の付記登記) 抵当権で担保された債権を質権の目的としたときは、その抵当権の登記に質権の付記登記をすることによって、その効力が抵当権に及ぶ。  

第349条(指名債権に対する質権の対抗要件)① 指名債権を目的とする質権の設定は、質権設定者が第450条の規定に従い、第三債務者に質権の設定の事実を通知し、又は第三債務者がこれを承諾しなければ、これをもって第三債務者その他の第三者に対抗することができない。

 第451条の規定は、前項の場合について準用する。  

第350条(指図債権に対する質権の設定方法) 指図債権を質権の目的とする質権の設定は、証書に裏書して質権者に交付することによって、その効力を生じる。 

第351条(無記名債権に対する質権の設定方法) 無記名債権を目的とする質権の設定は、証書を質権者に交付することによって、その効力を生じる。 

第352条(質権設定者の権利の処分制限) 質権設定者は、質権者の同意を得ないで、質権の目的となった権利を消滅させ、又は質権者の利益を害する変更をすることができない。 

第353条(質権の目的となった債権の実行方法)① 質権者は、質権の目的となった債権を直接に請求することができる。

 債権の目的物が金銭であるときは、質権者は、自己の債権の限度で、直接に請求することができる。

 前項の債権の弁済期が質権者の債権の弁済期より前に到来したときは、質権者は、第三債務者にその弁済金額の供託を請求することができる。この場合において、質権は、その供託金について存在する。

 債権の目的物が金銭以外の物であるときは、質権者は、弁済を受けた物について質権を行使することができる。

第354条(同前) 質権者は、前条の規定によるほか、民事執行法に定める執行方法によって、質権を実行することができる。 

(最終改正 2001.12.29)

第355条(準用規定) 権利質権については、この節の規定のほか、動産質権に関する規定を準用する。 

第9章 抵当権

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第356条(抵当権の内容) 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者より優先して自己の債権の弁済を受ける権利を有する。   

第357条(根抵当)① 抵当権は、その担保する債務の極度額のみを定め、債務の確定を将来に保留して設定することができる。この場合においては、その確定される時までの債務の消滅又は移転は、抵当権に影響を及ぼさない。

 前項の場合においては、債務の利息は、極度額に含まれるものとみなす。

第358条(抵当権の効力の範囲) 抵当権の効力は、抵当不動産(訳注:抵当権の目的である不動産をいう。以下同じ。)に付合された物及び従物に及ぶ。ただし、法律に特別な規定又は設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。  

第359条(果実に対する効力) 抵当権の効力は、抵当不動産について差押えがあった後に抵当権設定者がその不動産から収取した果実又は収取することができる果実に及ぶ。ただし、抵当権者は、その不動産について所有権、 地上権又は伝貰権を取得した第三者に対しては、差し押えた事実を通知した後でなければ、これをもって対抗することができない。  

第360条(被担保債権の範囲) 抵当権は、元本、利息、違約金、債務不履行による損害賠償及び抵当権の実行費用を担保する。ただし、遅延賠償については、元本の履行期日を経過した後の1年分に限り、抵当権を行使することができる。  

第361条(抵当権の処分の制限) 抵当権は、その担保した債権と分離して、他人に譲渡し、又は他の債権の担保とすることができない。 

第362条(抵当不動産の補充) 抵当権設定者の責めに帰すべき事由により抵当不動産の価額が著しく減少したときは、抵当権者は、抵当権設定者に対し、その原状の回復又は相当の担保の供与を請求することができる。  

第363条(抵当権者の競売請求権及び買受人)① 抵当権者は、その債権の弁済を受けるために、抵当不動産の競売を請求することができる。

 抵当不動産の所有権を取得した第三者も、買受人となることができる。

第364条(第三取得者の弁済) 抵当不動産について所有権、地上権又は伝貰権を取得した第三者は、抵当権者にその不動産で担保された債権を弁済して、抵当権の消滅を請求することができる。

第365条(抵当地上の建物の競売請求権) 土地を目的に抵当権を設定した後にその設定者がその土地に建物を築造したときは、抵当権者は、土地とともにその建物についても競売を請求することができる。ただし、その建物の競売代価については、優先弁済を受ける権利を有しない。

第366条(法定地上権) 抵当不動産の競売により土地とその地上の建物が異なる所有者に属した場合には、土地の所有者が建物の所有者に地上権を設定したものとみなす。ただし、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。  

第367条(第三取得者の費用償還請求権) 抵当不動産の第三取得者がその不動産の保存又は改良のために必要費又は有益費を支出したときは、第203条第1項及び第2項の規定に従い、抵当不動産の競売代価から優先して償還を受けることができる。 

第368条(共同抵当と代価の配当及び次順位者の代位)① 同一の債権の担保として数個の不動産に抵当権を設定した場合において、その不動産の競売代価を同時に配当するときは、各不動産の競売代価に応じて、その債権の分担を定める。

 前項の抵当不動産のうち一部の競売代価を先に配当する場合は、その代価からその債権の全部の弁済を受けることができる。この場合において、その競売した不動産の次順位の抵当権者は、先順位の抵当権者が同項の規定に従い他の不動産の競売代価から弁済を受けることができる金額の限度で、先順位の者に代位して抵当権を行使することができる。 

第369条(付従性) 抵当権で担保された債権が消滅時効の完成その他の事由により消滅したときは、抵当権も消滅する。  

第370条(準用規定) 第214条、第321条、第333条及び第340条から第342条までの規定は、抵当権について準用する。  

第371条(地上権又は伝貰権を目的とする抵当権)① この章の規定は、地上権又は伝貰権を抵当権の目的とした場合について準用する。

 地上権又は伝貰権を目的として抵当権を設定した者は、抵当権者の同意を得ないで、地上権又は伝貰権を消滅させる行為をすることができない。

第372条(他の法律による抵当権) この章の規定は、他の法律により設定された抵当権について準用する。

第3編 債権

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第1章 総則

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第1節 債権の目的

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第373条(債権の目的) 金銭によって価額を算定することができないものであっても、債権の目的とすることができる。

第374条(特定物の引渡しの場合の債務者の善管義務) 特定物の引渡しが債権の目的であるときは、債務者は、その物を引渡すまで善良な管理者の注意をもって保存しなければならない。

第375条(種類債権)① 債権の目的を種類のみで指定した場合において、法律行為の性質又は当事者の意思によって品質を定めることができないときは、債務者は、中等の品質の物で履行しなければならない。

 前項の場合において、債務者が履行に必要な行為を完了し、又は債権者の同意を得て履行する物を指定したときは、その時からその物を債権の目的物とする。

第376条(金銭債権) 債権の目的がある種類の通貨で支払うことである場合において、その通貨が弁済期に强制通用力を失っているときは、債務者は、他の通貨で弁済しなければならない。

第377条(外貨債権)① 債権の目的が外国の通貨で支払うことであるときは、債務者は、自己の選択したその国の各種の通貨で弁済することができる。

 債権の目的がある種類の外国の通貨で支払うことである場合において、その通貨が弁済期に強制通用力を失っているときは、その国の他の通貨で弁済しなければならない。

第378条(同前) 債権額が外国の通貨で指定されたときは、債務者は、支払う時の履行地における為替相場により、我が国の通貨で弁済することができる。  

第379条(法定利率) 利息が生じる債権の利率は、他の法律の規定又は当事者の約定がないときは、年5分とする。   

第380条(選択債権) 債権の目的が数個の行為の中から選択によって定まる場合において、他の法律の規定又は当事者の約定がないときは、選択権は、債務者に属する。 

第381条(選択権の移転)① 選択権について行使期間がある場合において、選択権者がその期間内に選択権を行使しないときは、相手方は相当の期間を定めてその選択を催告することができ、選択権者がその期間内に選択をしないときは、選択権は、相手方に移転する。

 選択権について行使期間がない場合において、債権の期限が到来した後に相手方が相当の期間を定めてその選択を催告しても、選択権者がその期間内に選択をしないときも、前項と同様とする。

第382条(当事者の選択権の行使)① 債権者又は債務者が選択をする場合には、その選択は、相手方に対する意思表示によってする。

 前項の意思表示は、相手方の同意がなければ、撤回することができない。  

第383条(第三者の選択権の行使)① 第三者が選択をする場合には、その選択は、債務者及び債権者に対する意思表示によってする。

 前項の意思表示は、債権者及び債務者の同意がなければ、撤回することができない。

第384条(第三者の選択権の移転)① 選択をすべき第三者が選択をすることができない場合には、選択権は、債務者に移転する。

 第三者が選択をしない場合には、債権者又は債務者は相当の期間を定めてその選択を催告することができ、第三者がその期間内に選択しないときは、選択権は、債務者に移転する。

第385条(不能による選択債権の特定)① 債権の目的として選択すべき数個の行為の中に初めから不能であるもの又は後に至って履行が不能となったものがあるときは、債権の目的は、残存するものについて存在する。

② 選択権を有しない当事者の過失によって履行が不能となったときは、前項の規定を適用しない。  

第386条(選択の遡及効) 選択の効力は、その債権が発生した時に遡及する。ただし、第三者の権利を害することができない。

第2節 債権の効力

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第387条(履行期と履行遅滞)① 債務の履行について確定期限がある場合には、債務者は、期限が到来した時から遅滞の責任を負う。債務の履行について不確定期限がある場合には、債務者は、期限が到来したことを知った時から遅滞の責任を負う。

 債務の履行について期限がない場合には、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

第388条(期限の利益の喪失) 債務者は、次に掲げる場合には、期限の利益を主張することができない。

 1. 債務者が担保を損傷させ、減少させ、又は滅失させたとき。

 2. 債務者が担保を供する義務を履行しないとき。  

第389条(強制履行)① 債務者が任意に債務を履行しないときは、債権者は、その強制履行を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質が強制履行を許さないものであるときは、この限りでない。

 前項の債務が法律行為を目的とするときは債務者の意思表示に代わる裁判を請求することができ、債務者の一身に専属しない作為を目的とするときは債務者の費用で第三者にこれを行わせることを裁判所に請求することができる。

 第1項の債務が不作為を目的とする場合において、債務者がこれに違反したときは、債務者の費用で、その違反したものの除却及び将来のための適当な処分を裁判所に請求することができる。

 前3項の規定は、損害賠償の請求に影響を及ぼさない。 

(最終改正 2014. 12. 30)

第390条(債務不履行と損害賠償) 債務者が債務の内容に従った履行をしないときは、債権者は、損害の賠償を請求することができる。ただし、債務者の故意及び過失によらないで履行することができなくなったときは、この限りでない。  

第391条(履行補助者の故意及び過失) 債務者の法定代理人が債務者のために履行し、又は債務者が他人を使用して履行する場合には、法定代理人又は被用者の故意又は過失は、債務者の故意又は過失とみなす。

第392条(履行遅滞中の損害の賠償) 債務者は、自己に過失がない場合であっても、その履行遅滞中に生じた損害を賠償しなければならない。ただし、債務者が履行期に履行しても損害を免れることができない場合は、この限りでない。

第393条(損害賠償の範囲)① 債務の不履行による損害賠償は、通常の損害を限度とする。

 特別な事情による損害は、債務者がその事情を知り、又は知ることができたときに限り、賠償の責任を負う。 

第394条(損害賠償の方法) 別段の意思表示がないときは、損害は、金銭をもって賠償する。  

第395条(履行遅滞と填補賠償) 債務者が債務の履行を遅滞した場合において、債権者が相当の期間を定めて履行を催告してもその期間内に履行せず、又は遅滞後の履行が債権者にとって利益のないときは、債権者は、受領を拒絶し、又は履行に代わる損害賠償を請求することができる。

(最終改正 2014. 12. 30)

第396条(過失相殺) 債務の不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、損害賠償の責任及びその金額を定める際に、これを考慮しなければならない。  

第397条(金銭債務の不履行についての特則)① 金銭債務の不履行の損害賠償の額は、法定利率による。ただし、法令の制限に反しない約定利率があるときは、その利率による。

 前項の損害賠償については、債権者は損害の証明を要せず、債務者は過失がないとして抗弁することができない。

第398条(賠償額の予定)① 当事者は、債務の不履行に関する損害賠償の額を予定することができる。

 損害賠償の予定額が不当に過大である場合には、裁判所は、適当な額に減じることができる。

 損害賠償の額の予定は、履行の請求又は契約の解除に影響を及ぼさない。

 違約金の定めは、損害賠償の額の予定と推定する。

 当事者が金銭でないもので損害賠償に充当する旨を予定した場合についても、前各項の規定を準用する。 

第399条(損害賠償者の代位) 債権者がその債権の目的である物又は権利の価額の全部を損害賠償として受けたときは、債務者は、その物又は権利について当然に債権者に代位する。 

第400条(受領遅滞) 債権者が債務の履行を受けることができず、又は受けなかったときは、履行の提供があった時から遅滞の責任を負う。

第401条(受領遅滞と債務者の責任) 受領遅滞中には、債務者は、故意又は重大な過失がないときは、債務の不履行によるすべての責任を負わない。 

第402条(受領遅滞と利息) 受領遅滞中には、利息が生じる債権であっても、債務者は、利息を支払う義務を負わない。 

第403条(受領遅滞と債権者の責任) 受領遅滞によって、その目的物の保管又は弁済の費用が増加したときは、その増加額は、債権者の負担とする。  

第404条(債権者代位権)① 債権者は、自己の債権を保全するため、債務者の権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。

 債権者は、その債権の期限が到来する前には、裁判所の許可を得ないで、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。

第405条(債権者代位権の行使の通知)① 債権者が前条第1項の規定により保存行為以外の権利を行使したときは、債務者に通知をしなければならない。

 債務者が前項の通知を受けた後は、その権利を処分しても、これをもって債権者に対抗することができない。 

第406条(詐害行為取消権)① 債務者が債権者を害することを知りながら財産権を目的とする法律行為をしたときは、債権者は、その取消し及び原状の回復を裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害することを知ることができなかった場合は、この限りでない。

 前項の規定による訴えは、債権者が取消しの原因を知った日から1年内に、法律行為があった日から5年内に提起しなければならない。

第407条(詐害行為の取消しの効力) 前条の規定による取消し及び原状の回復は、全ての債権者の利益のためにその効力を有する。

第3節 複数の債権者及び債務者

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第1款 総則
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第408条(分割債権関係) 債権者又は債務者が数人ある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。

第2款 不可分債権及び不可分債務
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第409条(不可分債権) 債権の目的がその性質又は当事者の意思表示によって不可分である場合において、債権者が数人あるときは、各債権者は、全ての債権者のために履行を請求することができ、債務者は、全ての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。

第410条(一人の債権者に生じた事由の効力)① 前条の規定により全ての債権者に対して効力を有する事由を除き、不可分債権者の一人の行為又は一人に関する事由は、他の債権者に対して効力を生じない。

 不可分債権者の一人と債務者との間に更改又は免除があった場合において、債務の全部の履行を受けた他の債権者は、その一人が権利を失なわなければその者に分与すべき利益を債務者に償還しなければならない。

第411条(不可分債務と準用規定) 数人が不可分債務を負担した場合については、前条、第413条から第415条まで、第422条及び第424条から第427条までの規定を準用する。

第412条(可分債権又は可分債務への変更) 不可分債権又は不可分債務が可分債権又は可分債務に変更されたときは、各債権者は自己の部分のみの履行を請求する権利を有し、各債務者は自己の負担部分のみを履行する義務を負う.

第3款 連帯債務
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第413条(連帯債務の内容) 数人の債務者が債務の全部を各自履行すべき義務を負い、債務者の一人の履行によって他の債務者もその義務を免れることとなるときは、その債務は、連帯債務とする。

第414条(各連帯債務者に対する履行の請求) 債権者は、一人の連帯債務者に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、債務の全部又は一部の履行を請求することができる。

第415条(連帯債務者に生じた無効及び取消し) 一人の連帯債務者についての法律行為の無効又は取消しの原因は、他の連帯債務者の債務に影響を及ぼさない。

第416条(履行の請求の絶対的効力) 一人の連帯債務者に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても、効力を有する。

第417条(更改の絶対的効力) 一人の連帯債務者と債権者との間に債務の更改があったときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。

第418条(相殺の絶対的効力)① 一人の連帯債務者が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺をしたときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。

 相殺をする債権を有する連帯債務者が相殺をしていないときは、その連帯債務者の負担部分に限り、他の連帯債務者は、相殺をすることができる。

第419条(免除の絶対的効力) 一人の連帯債務者に対する債務の免除は、その連帯債務者の負担部分に限り、他の連帯債務者の利益のために効力を有する。

第420条(混同の絶対的効力) 一人の連帯債務者と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者の負担部分に限り、他の連帯債務者も、義務を免れる。

第421条(消滅時効の絶対的効力) 一人の連帯債務者について消滅時効が完成したときは、その連帯債務者の負担部分に限り、他の連帯債務者も、義務を免れる。

第422条(受領遅滞の絶対的効力) 一人の連帯債務者に対する受領遅滞は、他の連帯債務者に対しても、効力を有する。

第423条(相対的効力の原則) 第416条から前条までに規定する場合を除き、一人の連帯債務者に関する事由は、他の連帯債務者に対して効力を有しない。

第424条(負担部分の均等) 連帯債務者の負担部分は、等しいものと推定する。

第425条(出捐した連帯債務者の求償権)① 一人の連帯債務者が弁済その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、他の連帯債務者の負担部分について求償権を行使することができる。

 前項の求償権は、免責された日以後の法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害の賠償を含む。

第426条(求償要件としての通知)① 一人の連帯債務者が他の連帯債務者に通知しないで弁済その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において、他の連帯債務者が債権者に対抗することができる事由を有していたときは、その負担部分に限り、この事由をもって免責行為をした連帯債務者に対抗することができ、その対抗事由が相殺であるときは、相殺によって消滅すべき債権は、その連帯債務者に移転する。

 一人の連帯債務者が弁済その他自己の財産をもって共同の免責を得たことを他の連帯債務者に通知しなかった場合において、他の連帯債務者が善意で債権者に弁済その他の有償の免責行為をしたときは、その連帯債務者は、自己の免責行為が有効であることを主張することができる。

第427条(償還する資力のない者の負担部分)① 連帯債務者の中に償還する資力のない者があるときは、その資力のない者の負担部分は、求償権者及び他の資力のある者がその負担部分に応じて分担する。ただし、求償権者に過失があるときは、他の連帯債務者に対して分担を請求することができない。

 前項の場合において、償還する資力のない者の負担部分を分担する他の資力のある者が債権者から連帯の免除を受けたときは、その資力のある者の分担すべき部分は、債権者の負担とする。

第4款 保証債務
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第428条(保証債務の内容)① 保証人は、主たる債務者が履行しない債務を履行する義務を負う。

 保証は、将来の債務についても、することができる。

第428条の2(保証の方式)① 保証は、その意思が保証人の記名押印又は署名のある書面で表示されることによって、効力を生じる。 ただし、保証の意思が電子的形態で表示された場合は、効力を有しない。

 保証債務を保証人に不利に変更する場合も、前項と同様とする。

 保証人が保証債務を履行した場合は、その限度において、第1項及び前項の規定による方式の瑕疵を理由として、保証の無効を主張することができない。

(最終改正 2015.2.3)

第428条の3(根保証)① 保証は、不特定の多数の債務についても、することができる。 この場合において、保証する債務の極度額を書面で定めなければならない。

 前項の場合において、債務の極度額を前条第1項の規定による書面で定めない保証契約は、 効力を有しない。

(最終改正 2015.2.3)

第429条(保証債務の範囲)① 保証債務は、主たる債務の利息、違約金、損害賠償その他主たる債務に従たる債務を包含する。

 保証人は、その保証債務に関する違約金その他損害賠償の額を予定することができる。

第430条(目的又は態様における付従性) 保証人の負担が主たる債務の目的又は態様より重いときは、主たる債務の限度に減縮する。

第431条(保証人の要件)① 債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、その保証人は、行為能力及び弁済の資力を有する者でなければならない。

 保証人が弁済の資力を欠くに至ったときは、債権者は、保証人の変更を請求することができる。

 債権者が保証人を指名した場合には、前2項の規定を適用しない。

第432条(他の担保の供与) 債務者は、他の相当の担保を供することをもって、保証人を立てる義務を免れることができる。

第433条(保証人と主たる債務者の抗弁権)① 保証人は、主たる債務者の抗弁をもって債権者に対抗することができる。

 主たる債務者の抗弁の放棄は、保証人に対して効力を有しない。

第434条(保証人と主たる債務者の相殺権) 保証人は、主たる債務者の債権による相殺をもって債権者に対抗することができる。

第435条(保証人と主たる債務者の取消権等) 主たる債務者が債権者に対して取消権又は解除権若しくは解約告知権を有する間は、保証人は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

第436条 削除

(最終改正 2015.2.3)

第436条の2(債権者の情報提供義務及び通知義務等)① 債権者は、保証契約を締結する場合において、保証契約の締結の可否又はその内容に影響を及ぼし得る主たる債務者の債務に関連する信用情報を保有し、又は知っているときは、保証人に対し、その情報を提供しなければならない。 保証契約を更新する場合も、また同様とする。

 債権者は、保証契約を締結した後において、次に掲げる事由がある場合には、遅滞なく、保証人に対し、その事実を通知しなければならない。

 1. 主たる債務者が元本、利息、違約金、損害賠償その他主たる債務に従たる債務を3箇月以上履行しない場合

 2. 主たる債務者が履行期に履行することができないことをあらかじめ知った場合

 3. 主たる債務者の債務に関連する信用情報に重大な変化が生じたことを知った場合

 債権者は、保証人の請求があるときは、主たる債務の内容及びその履行の有無を通知しなければならない。

 債権者が第1項から前項までの規定による義務に違反して保証人に損害を負わせた場合には、裁判所は、その内容及び程度等を考慮し、保証債務を軽減し、又は免除することができる。

(最終改正 2015.2.3)

第437条(保証人の催告及び検索の抗弁) 債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、主たる債務者が弁済をする資力がある事実及びその執行が容易であることを証明して、まず主たる債務者に請求すべきこと及び主たる債務者の財産について執行すべきことをもって抗弁することができる。ただし、保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、この限りでない。

第438条(催告及び検索を怠った場合の効果) 前条の規定による保証人の抗弁にもかかわらず、債権者が怠ったために債務者から全部又は一部の弁済を受けることができなかった場合には、債権者が怠らなければ弁済を受けることができた限度において、保証人は、その義務を免れる。

第439条(共同保証の分別の利益) 数人の保証人が各別の行為により保証債務を負担した場合であっても、第408条の規定を適用する。

第440条(時効の完成猶予等の保証人に対する効力) 主たる債務者に対する時効の完成猶予及び更新は、保証人に対しても、その効力を有する。

第441条(委託を受けた保証人の求償権)① 主たる債務者の委託を受けて保証人となった者が過失なく弁済その他自己の出捐によって主たる債務を消滅させたときは、主たる債務者に対して求償権を有する。

 第425条第2項の規定は、前項の場合について準用する。

第442条(委託を受けた保証人の事前求償権)① 主たる債務者の委託を受けて保証人となった者は、次に掲げる場合には、主たる債務者に対して、あらかじめ、求償権を行使することができる。

 1. 保証人が過失なく債権者に弁済を命じる裁判を受けたとき。

 2. 主たる債務者が破産宣告を受けた場合において、債権者が破産財団に加入しなかったとき。

 3. 債務の履行期が確定せず、その最長期も確定することができない場合において、保証契約の後5年を経過し たとき。

 4. 債務の履行期が到来したとき。

 前項第4号の場合には、保証契約の後に債権者が主たる債務者に許与した期限をもって、保証人に対抗することができない。

第443条(主たる債務者の免責の請求) 前条の規定により主たる債務者が保証人に対して賠償する場合において、主たる債務者は、自己を免責させ、若しくは自己に担保を供することを保証人に請求することができ、又は賠償すべき金額について、供託をし、担保を供し、若しくは保証人を免責させることによって、その賠償の義務を免れることができる。

第444条(委託を受けない保証人の求償権)① 主たる債務者の委託を受けないで保証人となった者が弁済その他自己の出捐によって主たる債務を消滅させたときは、主たる債務者は、その当時利益を受けた限度において賠償しなければならない。

 主たる債務者の意思に反して保証人となった者が弁済その他自己の出捐によって主たる債務を消滅させたときは、主たる債務者は、現に利益を受けている限度において賠償しなければならない。

 前項の場合において、主たる債務者が求償した日以前に相殺の原因を有していたことを主張したときは、その相殺によって消滅すべき債権は、保証人に移転する。

第445条(求償要件としての通知)① 保証人が主たる債務者に通知しないで弁済その他自己の出捐によって主たる債務を消滅させた場合において、主たる債務者が債権者に対抗することができる事由を有していたときは、この事由をもって保証人に対抗することができ、その対抗事由が相殺であるときは、相殺によって消滅すべき債権は、保証人に移転する。

 保証人が弁済その他自己の出捐によって免責したことを主たる債務者に通知しなかった場合において、主たる債務者が善意で債権者に弁済その他有償の免責行為をしたときは、主たる債務者は、自己の免責行為が有効であることを主張することができる。

第446条(主たる債務者の保証人に対する免責通知義務) 主たる債務者が自己の行為によって免責したことをその委託を受けて保証人となった者に通知しなかった場合において、保証人が善意で債権者に弁済その他有償の免責行為をしたときは、保証人は、自己の免責行為が有効であることを主張することができる。

第447条(連帯債務又は不可分債務の保証人の求償権) 連帯債務者又は不可分債務者の一人のために保証人となった者は、他の連帯債務者又は不可分債務者に対し、その負担部分に限り、求償権を有する。

第448条(共同保証人間の求償権)① 数人の保証人がある場合において、一人の保証人が自己の負担部分を超える弁済をしたときについては、第444条の規定を準用する。

 主たる債務が不可分であり、又は各保証人が相互に連帯し、若しくは主たる債務者と連帯して債務を負担した場合において、一人の保証人が自己の負担部分を超える弁済をしたときについては、第425条から第427条までの規定を準用する。

第4節 債権の譲渡

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第449条(債権の譲渡性)① 債権は、譲り渡すことができる。ただし、債権の性質が譲渡を許さないときは、この限りでない。

 債権は、当事者が反対の意思を表示した場合には、譲り渡すことができない。ただし、その意思表示をもって善意の第三者に対抗することができない。

第450条(指名債権の譲渡の対抗要件)① 指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。

 前項の通知及び承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

第451条(承諾及び通知の効果)① 債務者が異議をとどめないで前条の承諾をしたときは、譲渡人に対抗することができた事由をもって譲受人に対抗することができない。ただし、債務者が債務を消滅させるために譲渡人に給付したものがあるときはこれを取り戻すことができ、譲渡人に対して負担した債務があるときはそれが成立しない旨を主張することができる。

 譲渡人が譲渡の通知のみをしたときは、債務者は、その通知を受ける時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。

第452条(譲渡の通知と禁反言)① 譲渡人が債務者に債権の譲渡を通知した場合においては、まだ譲渡をしていないとき又はその譲渡が無効であるときであっても、善意の債務者は、譲受人に対抗することができる事由をもって譲渡人に対抗することができる。

 前項の規定による通知は、譲受人の同意がなければ、撤回することができない。

第5節 債務の引受け

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第453条(債権者との契約による債務引受)① 第三者は、債権者との契約によって債務を引き受けて、債務者の債務を免れさせることができる。ただし、債務の性質が引受けを許さないときは、この限りでない。

 利害関係がない第三者は、債務者の意思に反して債務を引き受けることができない。

第454条(債務者との契約による債務引受)① 第三者が債務者との契約によって債務を引き受けた場合は、債権者の承諾によって、その効力を生じる。

 債権者の承諾又は拒絶の相手方は、 債務者又は第三者とする。

第455条(諾否の催告)① 前条の場合において、第三者又は債務者は、相当な期間を定めて諾否の確答を債権者に催告することができる。

 債権者がその期間内に確答を発しなかったときは、拒絶したものとみなす。

第456条(債務引受の撤回及び変更) 第三者と債務者との契約による債務引受は、債権者の承諾がある時まで、当事者は、撤回し、又は変更することができる。

第457条(債務引受の遡及効) 債務引受についての債権者の承諾は、別段の意思表示がなければ、債務を引き受けた時に遡って効力を生じる。 ただし、第三者の権利を害することができない。

第458条(従前の債務者の抗弁事由) 引受人は、従前の債務者が抗弁をすることができる事由をもって債権者に対抗することができる。

第459条(債務引受と保証及び担保の消滅) 従前の債務者の債務に対する保証又は第三者が供した担保は、債務引受により消滅する。ただし、保証人又は第三者が債務引受に同意した場合は、この限りでない。

第6節 債権の消滅

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第1款 弁済
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第460条(弁済の提供の方法) 弁済は、債務の内容に従った現実の提供によってしなければならない。ただし、債権者があらかじめ弁済の受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要する場合は、弁済の準備が完了したことを通知し、その受領を催告すれば足りる。

第461条(弁済の提供の効果) 弁済の提供は、その時から債務の不履行の責任を免れさせる。

第462条(特定物の現状引渡し) 特定物の引渡しが債権の目的であるときは、債務者は、履行期の現状のままでその物を引き渡さなければならない。

第463条(弁済としての他人の物の引渡し) 債務の弁済として他人の物を引き渡した債務者は、更に有効な弁済をしなければ、その物の返還を請求することができない。

第464条(譲渡能力のない所有者の物の引渡し) 譲渡する能力のない所有者が債務の弁済として物を引き渡した場合において、その弁済が取り消されたときも、更に有効な弁済をしなければ、その物の返還を請求することができない。

第465条(債権者の善意の消費及び譲渡と求償権)① 前2条の場合において、債権者が弁済として受領した物を善意で消費し、又は他人に譲り渡したときは、その弁済は、効力を有する。

 前項の場合において、債権者が第三者から賠償の請求を受けたときは、債務者に対して求償権を行使することができる。

第466条(代物弁済) 債務者が債権者の承諾を得て本来の債務の履行に代えて他の給付をしたときは、弁済と同一の効力を有する。 

(最終改正 2014.12.30)

第467条(弁済の場所)① 債務の性質又は当事者の意思表示により弁済の場所を定めなかったときは、特定物の引渡しは、債権成立の時にその物が存在した場所において、しなければならない。

 前項に規定する場合において、特定物の引渡しを除く債務の弁済は、債権者の現在の住所において、しなければならない。ただし、営業に関する債務の弁済は、債権者の現在の営業所において、しなければならない。

第468条(弁済期前の弁済) 当事者の別段の意思表示がないときは、弁済期前であっても、債務者は、弁済をすることができる。ただし、相手方の損害は、賠償しなければならない。

第469条(第三者の弁済)① 債務の弁済は、第三者もすることができる。ただし、債務の性質又は当事者の意思表示により第三者の弁済を許さないときは、この限りでない。

 利害関係がない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。

第470条(債権の準占有者に対する弁済) 債権の準占有者に対する弁済は、弁済者が善意であり、かつ、過失がないときに限り、効力を有する。

第471条(領収証の所持者に対する弁済) 領収証を所持した者に対してした弁済は、その所持者が弁済を受領する権限を有しない場合においても、効力を有する。ただし、弁済者がその権限のないことを知り、又は知ることができた場合は、この限りでない。

第472条(権限のない者に対する弁済) 前2条の場合のほか、弁済を受領する権限のない者に対してした弁済は、 債権者が利益を受けた限度において、効力を有する。

第473条(弁済の費用の負担) 弁済の費用は、別段の意思表示がないときは、債務者の負担とする。ただし、債権者の住所の移転その他の行為によって弁済の費用が増加したときは、その増加額は、債権者の負担とする。

第474条(領収証の請求権) 弁済者は、弁済を受領する者に対して領収証を請求することができる。

第475条(債権証書の返還請求権) 債権証書がある場合において、弁済者が債務の全部を弁済したときは、債権証書の返還を請求することができる。債権が弁済以外の事由によって全て消滅したときも、同様とする。

第476条(指定弁済充当)① 債務者が同一の債権者に対して同種のものを目的とする数個の債務を負担した場合において、弁済の提供がその債務の全部を消滅させることができないときは、弁済者は、弁済の時に、債務を指定し、その弁済に充当することができる。

 弁済者が前項の規定による指定をしないときは、弁済を受領する者は、弁済の受領の時に、いずれかの債務を指定し、弁済に充当することができる。ただし、弁済者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない。

 前2項の規定による弁済の充当は、相手方に対する意思表示によってする。

第477条(法定弁済充当) 当事者が弁済に充当する債務を指定しなかったときは、次の各号の定めるところに従い、充当する。

 1. 債務の中に履行期が到来したものと到来していないものがあるときは、履行期が到来した債務の弁済に充当する。

 2. 全ての債務の履行期が到来しているとき、又は到来していないときは、債務者のために弁済の利益が多い債務の弁済に充当する。

 3. 債務者のために弁済の利益が相等しいときは、履行期が先に到来した債務又は先に到来すべき債務の弁済に充当する。

 4. 前2号に掲げる事項が相等しいときは、その債務の額に応じて各債務の弁済に充当する。

第478条(不足した弁済の場合の充当) 1個の債務に数個の給付を要する場合において、弁済者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、前2条の規定を準用する。

第479条(費用、利息及び元本に対する弁済の充当の順序)① 債務者が1個又は数個の債務の費用及び利息を支払うべき場合において、弁済者がその全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、費用、利息及び元本の順で弁済に充当しなければならない。

 前項の場合については、第477条の規定を準用する。

第480条(弁済者の任意代位)① 債務者のために弁済した者は、弁済と同時に債権者の承諾を得て、債権者に代位することができる。

 前項の場合については、第450条から第452条までの規定を準用する。

第481条(弁済者の法定代位) 弁済をする正当な利益を有する者は、弁済によって当然に債権者に代位する。

第482条(弁済者の代位の効果及び代位者間の関係)① 前2条の規定により債権者に代位した者は、自己の権利に基づき求償することができる範囲において、債権及びその担保に関する権利を行使することができる。

 前項の規定による権利の行使は、次に定めるところによらなければならない。

 1. 保証人は、あらかじめ伝貰権又は抵当権の登記にその代位を付記しなければ、伝貰物又は抵当不動産について権利を取得した第三者に対して債権者に代位することができない。

 2. 第三取得者は、保証人に対して債権者に代位することができない。

 3. 第三取得者の一人は、各不動産の価額に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する。

 4. 物上保証人が数人ある場合については、前号の規定を準用する。

 5. 物上保証人と保証人との間においては、その人数に応じて、債権者に代位する。ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除き、その残額について、各財産の価額に応じて、代位する。 この場合において、その財産が不動産であるときは、第1号の規定を準用する。

第483条(一部の代位)① 債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使する。

 前項の場合において、債務の不履行を原因とする契約の解約告知又は解除は、債権者のみがすることができ、債権者は、代位者に対し、その弁済をした価額及び利息を償還しなければならない。

第484条(代位弁済と債権証書及び担保物)① 債権の全部の代位弁済を受けた債権者は、その債権に関する証書及び占有する担保物を代位者に交付しなければならない。

 債権の一部について代位弁済があったときは、債権者は、債権証書にその代位を記入し、かつ、自己が占有する担保物の保存について代位者の監督を受けなければならない。

第485条(債権者の担保の喪失及び減少行為と法定代位者の免責) 第481条の規定により代位する者がある場合において、債権者の故意又は過失によって担保が喪失され、又は減少されたときは、代位する者は、その喪失又は減少によって償還を受けることができなくなる限度において、その責任を免れる。

第486条(弁済以外の方法による債務の消滅と代位) 第三者が供託その他自己の財産をもって債務者の債務を免れさせた場合についても、第480条から前条までの規定を準用する。

第2款 供託
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第487条(弁済供託の要件及び効果) 債権者が弁済を受領せず、又は受領することができないときは、弁済者は、債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができる。 弁済者が過失なく債権者を知ることができない場合も、同様とする。

第488条(供託の方法)① 供託は、債務の履行地の供託所にしなければならない。

 供託所について法律に特別の定めがないときは、裁判所は、弁済者の請求により、供託所を指定し、供託物の保管者を選任しなければならない。

 供託者は、遅滞なく、債権者に供託の通知をしなければならない。

第489条(供託物の取戻し)① 債権者が供託を承認し、若しくは供託所に対して供託物を受け取る旨を通知し、又は供託有効の判決が確定するまでは、弁済者は、供託物を取り戻すことができる。この場合においては、供託をしなかったものとみなす。

 前項の規定は、質権又は抵当権が供託によって消滅したときは、適用しない。

第490条(自助売却金の供託) 弁済の目的物が供託に適さず、若しくは滅失し、若しくは損傷するおそれがあり、又は供託に過分の費用を要する場合には、弁済者は、裁判所の許可を得て、その物を競売し、又は市価で売却して、その代金を供託することができる。

第491条(供託物の受取と反対給付の履行) 債務者が債権者の反対給付の履行と同時に弁済をすべき場合には、債権者は、その給付の履行をしなければ、供託物を受け取ることができない。

第3款 相殺
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第492条(相殺の要件)① 双方が互いに同種の目的を有する債務を負担した場合において、その双方の債務の履行期が到来しているときは、各債務者は、対等額について相殺をすることができる。ただし、債務の性質が相殺を許さないときは、この限りでない。

 前項の規定は、当事者が別段の意思表示をした場合には、適用しない。ただし、その意思表示をもって善意の第三者に対抗することができない。

第493条(相殺の方法及び効果)① 相殺は、相手方に対する意思表示によってする。 この意思表示には、条件又は期限を付することができない。

 相殺の意思表示があったときは、各債務が相殺をすることが可能となった時に対等額について消滅したものとみなす。

第494条(履行地の異なる債務の相殺) 各債務の履行地が異なる場合であっても、相殺をすることができる。ただし、相殺をする当事者は、相手方に対し、相殺による損害を賠償しなければならない。

第495条(消滅時効が完成した債権による相殺) 消滅時効が完成した債権がその完成前に相殺をすることができたものであるときは、その債権者は、相殺をすることができる。

第496条(不法行為による債権を受働債権とする相殺の禁止) 債務が故意の不法行為によるものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。

第497条(差押禁止債権を受働債権とする相殺の禁止) 債権が差押えをすることができないものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。

第498条(支払が禁止された債権を受働債権とする相殺の禁止) 支払を禁止する命令を受けた第三債務者は、その後に取得した債権による相殺をもって、その命令を申し立てた債権者に対抗することができない。

第499条(準用規定) 第476条から第479条までの規定は、相殺について準用する。

第4款 更改
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第500条(更改の要件及び効果) 当事者が債務の重要な部分を変更する契約をしたときは、従前の債務は、更改によって消滅する。

第501条(債務者の交替による更改) 債務者の交替による更改は、債権者と更改後の債務者との契約によってすることができる。ただし、更改前の債務者の意思に反してすることができない。

第502条(債権者の交替による更改) 債権者の交替による更改は、確定日付のある証書によってしなければ、第三者に対抗することができない。

第503条(債権者の交替による更改と債務者の承諾の効果) 第451条第1項の規定は、債権者の交替による更改について準用する。

第504条(更改前の債務が消滅しない場合) 更改による新たな債務が、原因の不法又は当事者が知り得ない事由によって成立せず、又は取り消されたときは、更改前の債務は、消滅しない。

第505条(更改後の債務への担保の移転) 更改の当事者は、更改前の債務の担保を、その債務の目的の限度において、更改後の債務の担保とすることができる。ただし、第三者が供した担保は、その承諾を得なければならない。

第5款 免除
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第506条(免除の要件及び効果) 債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、債権は、消滅する。ただし、免除をもって正当な利益を有する第三者に対抗することができない。

第6款 混同
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第507条(混同の要件及び効果) 債権と債務が同一の主体に帰属したときは、債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。

第7節 指図債権

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第508条(指図債権の譲渡の方式) 指図債権は、その証書に裏書をして譲受人に交付することによって、譲り渡すことができる。

第509条(戻り裏書)① 指図債権は、その債務者に対しても、裏書をして譲り渡すことができる。

 裏書によって指図債権を譲り受けた債務者は、更に裏書をして、これを譲り渡すことができる。

第510条(裏書の方式)① 裏書は、証書又はその補充紙にその旨を記載し、裏書人が署名又は記名押印することによってする。

 裏書は、被裏書人を指定しないでし、又は裏書人の署名若しくは記名押印のみをもってすることができる。

第511条(白地式裏書の処理の方式) 裏書が前条第2項に規定する白地式によるものであるときは、所持人は、次に定める方式によって処理することができる。

 1. 自己又は他人の名称を被裏書人として記載することができる。

 2. 白地式により又は他人を被裏書人として表示して、更に証書に裏書をすることができる。

 3. 被裏書人を記載せず、かつ、裏書をしないで証書を第三者に交付することによって、譲り渡すことができる。

第512条(所持人払の裏書の効力) 所持人払の裏書は、白地式裏書と同じ効力を有する。

第513条(裏書の資格授与的効力)① 証書の占有者が裏書の連続によりその権利を証明するときは、適法な所持人とみなす。 最後の裏書が白地式である場合も、同様とする。

 白地式裏書の次に他の裏書があるときは、その裏書人は、白地式裏書によって証書を取得したものとみなす。

 抹消された裏書は、裏書の連続に関してその記載がないものとみなす。

第514条(裏書の資格授与的効力と善意取得) 何人も、証書の適法な所持人に対して、その返還を請求することができない。ただし、所持人が取得した時に譲渡人が権利を有しないことを知り、又は重大な過失により知らなかったときは、この限りでない。

第515条(移転の裏書と人的抗弁) 指図債権の債務者は、所持人の前者に対する人的関係の抗弁をもって所持人に対抗することができない。ただし、所持人がその債務者を害することを知って指図債権を取得したときは、この限りでない。

第516条(弁済の場所) 証書に弁済の場所を定めなかったときは、債務者の現在の営業所を弁済の場所とする。 営業所がないときは、現在の住所を弁済の場所とする。

第517条(証書の提示と履行遅滞) 証書に弁済の期限の定めがある場合であっても、その期限が到来した後に所持人が証書を提示して履行を請求した時から、債務者は、遅滞の責任を負う。

第518条(債務者の調査の権利義務) 債務者は、裏書の連続の存否を調査する義務を負うと同時に、裏書人の署名又は押印の真偽及び所持人の真偽を調査する権利を有するが、義務を負わない。ただし、債務者が弁済する時に所持人の権利者でないことを知り、又は重大な過失によって知ることができなかったときは、その弁済は、無効とする。

第519条(弁済と証書の交付) 債務者は、証書と引き換えることによってのみ、弁済すべき義務を負う. 

第520条(領収の記載の請求権)① 債務者は、弁済する時に、所持人に対して、証書に領収を証明する記載をすることを請求することができる。

 一部の弁済の場合において、債務者の請求があるときは、債権者は、証書にその旨を記載しなければならない。

第521条(公示催告手続による証書の失効) 滅失した証書又は所持人の占有を離れた証書は、公示催告手続によって無効とすることができる。

第522条(公示催告手続による供託及び弁済) 公示催告の申立てがあったときは、債務者に債務の目的物を供託させ、又は所持人が相当の担保を供して弁済をさせることができる。

第8節 無記名債権

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第523条(無記名債権の譲渡の方式) 無記名債権は、譲受人にその証書を交付することによって、譲り渡すことができる。

第524条(準用規定) 第514条から第522条までの規定は、無記名債権について準用する。

第525条(記名式所持人払債権) 債権者を指定し、所持人に対しても弁済すべき旨を付記した証書は、無記名債権と同じ効力を有する。

第526条(免責証書) 第516条、第517条及び第520条の規定は、債務者が証書の所持人に弁済して、その責任を免れる目的で発行した証書について準用する。

第2章 契約

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第1節 総則

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第1款 契約の成立
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第527条(契約の申込みの拘束力) 契約の申込みは、撤回することができない。

第528条(承諾期間を定めた契約の申込み) ① 承諾の期間を定めた契約の申込みは、申込者がその期間内に承諾の通知を受けなかったときは、効力を失う。

 承諾の通知が前項の期間後に到達した場合において、通常その期間内に到達し得るよう発送されたものであるときは、申込者は、遅滞なく、相手方に対してその延着の通知をしなければならない。ただし、その到達前に遅延の通知を発したときは、この限りでない。

 申込者が前項の通知をしなかったときは、承諾の通知は、延着しなかったものとみなす。

第529条(承諾期間を定めなかった契約の申込み) 承諾期間を定めなかった契約の申込みは、申込者が相当の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、効力を失う。

第530条(延着した承諾の効力) 前2条の場合において、申込者は、延着した承諾を新たな申込みとみなすことができる。

第531条(隔地者間の契約の成立時期) 隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する。

第532条(意思実現による契約の成立) 申込者の意思表示又は慣習により承諾の通知が必要でない場合には、契約は、承諾の意思表示と認められる事実があった時に成立する。

第533条(交叉申込み) 当事者間において同一の内容の申込みを互にした場合には、双方の申込みが相手方に到達した時に契約が成立する。

第534条(変更を加えた承諾) 承諾者が、申込みに条件を付し、又は変更を加えて承諾したときは、その申込みの拒絶と同時に新たな申込みをしたものとみなす。

第535条(契約締結上の過失) ① 目的が不能な契約を締結するときに、その不能であることを知り、又は知ることができた者は、相手方がその契約の有効を信じたことによって受けた損害を賠償しなければならない。ただし、その賠償の額は、契約が有効であることによって生じる利益の額を超えることができない。

 前項の規定は、相手方がその不能を知り、又は知ることができた場合には、適用しない。

第2款 契約の効力
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第536条(同時履行の抗弁権)① 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供する時までは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

 当事者の一方が相手方に先に履行しなければならない場合において、相手方の履行が困難である明らかな事由のあるときは、前項本文と同様とする。

第537条(債務者の危険負担) 双務契約の当事者の一方の債務が当事者双方の責めに帰することができない事由によって履行することができなくなったときは、債務者は、相手方の履行を請求することができない。

第538条(債権者の責めに帰すべき事由による履行不能)① 双務契約の当事者の一方の債務が債権者の責めに帰すべき事由によって履行することができなくなったときは、債務者は、相手方の履行を請求することができる。 債権者の受領遅滞中に当事者双方の責めに帰することができない事由によって履行することができなくなったときも、同様とする。

 前項の場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

第539条(第三者のためにする契約)① 契約により当事者の一方が第三者に履行することを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその履行を請求することができる。

 前項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して契約の利益を受ける意思を表示した時に発生する。

第540条(債務者の第三者に対する催告権) 前条の場合において、債務者は、相当の期間を定めて契約の利益を受けるかどうかの確答を第三者に催告することができる。 債務者がその期間内に確答を受けなかったときは、第三者が契約の利益を受けることを拒絶したものとみなす。

第541条(第三者の権利の確定) 第539条の規定により第三者の権利が発生した後は、当事者は、これを変更し、又は消滅させることができない。

第542条(債務者の抗弁権) 債務者は、第539条第1項の契約に基づく抗弁をもって、その契約の利益を受ける第三者に対抗することができる。

第3款 契約の解止、解除
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第543条(解約告知及び解除の権利)① 契約又は法律の規定により当事者の一方又は双方が解約告知又は解除の権利を有するときは、その解約告知又は解除は、相手方に対する意思表示によってする。

 前項の意思表示は、撤回することができない。

第544条(履行遅滞と解除) 当事者の一方がその債務を履行しないときは、相手方は、相当の期間を定めてその履行の催告をしてその期間内に履行がなかったときは、契約を解除することができる。ただし、債務者があらかじめ履行しない意思を表示した場合には、催告を要しない。

第545条(定期行為と解除) 契約の性質又は当事者の意思表示により、一定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ、契約の目的を達することができない場合において、当事者の一方がその時期に履行をしないときは、相手方は、前条の催告をすることなく、契約を解除することができる。

第546条(履行不能と解除) 債務者の責めに帰すべき事由により履行が不能となったときは、債権者は、契約を解除することができる。

第547条(解約告知及び解除の権利の不可分性)① 当事者の一方又は双方が数人ある場合には、契約の解約告知又は解除は、その全員から又は全員に対して、しなければならない。

 前項の場合において、解約告知又は解除の権利が当事者の一人について消滅したときは、他の当事者についても消滅する。

第548条(解除の効果と原状回復義務)① 当事者の一方が契約を解除したときは、各当事者は、その相手方に対して原状回復の義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。

 前項の場合において、返還すべき金銭には、それを受領した日から利息を付さなければならない。

第549条(原状回復義務と同時履行) 第536条の規定は、前条の場合について準用する。

第550条(解約告知の効果) 当事者の一方が契約を解約告知したときは、契約は、将来に向ってその効力を失う。

第551条(解約告知及び解除と損害賠償) 契約の解約告知又は解除は、損害賠償の請求に影響を及ぼさない。

第552条(解除権の行使についての催告権)① 解除権の行使の期間を定めなかったときは、相手方は、相当の期間を定めて、解除権を行使するかどうかの確答を解除権者に催告することができる。

 前項の期間内に解除の通知を受けなかったときは、解除権は、消滅する。

第553条(損傷等による解除権の消滅) 解除権者の故意又は過失によって契約の目的物が著しく損傷し、若しくはこれを返還することができなくなったとき、又は加工若しくは改造によって他の種類の物に変えられたときは、解除権は、消滅する。

第2節 贈与

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第554条(贈与の意義) 贈与は、当事者の一方が無償で財産を相手方に与える意思を表示し、相手方がこれを承諾することによって、効力を生じる。

第555条(書面によらない贈与の解除) 贈与の意思が書面により表示されなかった場合には、各当事者は、これを解除することができる。

第556条(受贈者の行為と贈与の解除)① 受贈者が次に該当する場合は、贈与者は、その贈与を解除することができる。

 1. 贈与者又はその配偶者若しくは直系血族に対する犯罪行為があったとき

 2. 贈与者に対して扶養義務がある場合において、これを履行しないとき

 前項の解除権は、解除の原因があることを知った日から6箇月を経過し、又は贈与者が受贈者に宥恕の意思を表示したときは、消滅する。

第557条(贈与者の財産状態の変更と贈与の解除) 贈与契約後に贈与者の財産状態が著しく変わり、その履行によって生計に重大な影響を及ぼす場合には、贈与者は、贈与を解除することができる。

第558条(解除と履行が完了した部分) 前3条の規定による契約の解除は、既に履行した部分については、影響を及ぼさない。

第559条(贈与者の担保責任)① 贈与者は、贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は欠缺について、責任を負わない。ただし、贈与者がその瑕疵又は欠缺を知りながら受贈者に告げなかったときは、この限りでない。

 負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同様の担保責任を負う。

第560条(定期贈与の死亡による失効) 定期の給付を目的とした贈与は、贈与者又は受贈者の死亡によって、効力を失う。

第561条(負担付贈与) 負担付贈与については、この節の規定のほか、双務契約に関する規定を適用する。

第562条(死因贈与) 贈与者の死亡によって効力を生じる贈与については、遺贈に関する規定を準用する。

第3節 売買

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第1款 総則
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第563条(売買の意義) 売買は、当事者の一方が財産権を相手方に移転することを約し、相手方がその代金を支払うことを約することによって、効力を生じる。

第564条(売買の一方の予約)① 売買の一方の予約は、相手方が売買を完結する意思を表示した時に、売買の効力を生じる。

 前項の意思の表示について期間を定めなかったときは、予約者は、相当の期間を定めて、売買を完結するかどうかの確答を相手方に催告することができる。

 予約者が前項の期間内に確答を受けなかったときは、予約は、効力を失う。

第565条(手付)① 売買の当事者の一方が契約の時に金銭その他の物を契約金、保証金等の名目で相手方に交付した場合において、当事者間に別段の定めがないときは、当事者の一方が履行に着手する時まで、交付者はこれを放棄し、受領者はその倍額を償還して、売買契約を解除することができる。

 第551条の規定は、前項の場合について適用しない。

第566条(売買契約に関する費用の負担) 売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する。

第567条(有償契約への準用) この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。

第2款 売買の効力
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第568条(売買の効力)① 売主は買主に売買の目的である権利を移転し、買主は売主にその代金を支払わなければならない。

 前項の規定による双方の義務は、特約又は慣習がないときは、同時に履行しなければならない。

第569条(他人の権利の売買) 売買の目的である権利が他人に属する場合には、売主は、その権利を取得して買主に移転しなければならない。

第570条(他人の権利の売買と売主の担保責任) 前条の場合において、売主がその権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約を解除することができる。ただし、買主が契約の時にその権利の売主に属さないことを知っていたときは、損害賠償を請求することができない。

第571条(他人の権利の売買と善意の売主の担保責任)① 売主が契約の時に売買の目的である権利が自己に属さないことを知ることができなかった場合において、その権利を取得して買主に移転することができないときは、売主は、損害を賠償して、契約を解除することができる。

 前項の場合において、買主が契約の時にその権利が売主に属さないことを知っていたときは、売主は、 買主に対し、その権利を移転することができない旨を通知して、契約を解除することができる。

第572条(権利の一部が他人に属している場合と売主の担保責任)① 売買の目的である権利の一部が他人に属するため売主がその権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、その部分の割合に応じて代金の減額を請求することができる。

 前項の場合において、残存する部分のみでは買主がこれを買い受けなかったときは、善意の買主は、契約の全部を解除することができる。

 善意の買主は、減額の請求又は契約の解除のほか、損害賠償を請求することができる。

第573条(前条の規定による権利の行使期間) 前条の規定による権利は、買主が善意である場合には事実を知った日から、悪意である場合には契約した日から、1年内に行使しなければならない。

第574条(数量不足又は一部滅失の場合と売主の担保責任) 前2条の規定は、数量を指定した売買の目的物が不足する場合及び売買の目的物の一部が契約の時に既に滅失していた場合において、買主がその不足又は滅失を知らなかったときについて準用する。

第575条(制限物権のある場合と売主の担保責任)① 売買の目的物が地上権、地役権、伝貰権、質権又は留置権の目的である場合において、買主がこれを知らないときは、これによって契約の目的を達することができない場合に限り、買主は、契約を解除することができる。その他の場合には、損害賠償のみを請求することができる。

 前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すべき地役権が存せず、又はその不動産に登記された賃貸借契約がある場合について準用する。

 前2項の規定による権利は、買主がその事実を知った日から1年内に行使しなければならない。

第576条(抵当権及び伝貰権の行使と売主の担保責任)① 売買の目的である不動産に設定された抵当権又は伝貰権の行使によって、買主がその所有権を取得することができず、又は取得した所有権を失ったときは、買主は、契約を解除することができる。

 前項の場合において、買主が費用を支出してその所有権を保存したときは、売主に対し、その償還を請求することができる。

 前2項の場合において、買主が損害を受けたときは、その賠償を請求することができる。

第577条(抵当権の目的である地上権及び伝貰権の売買と売主の担保責任) 前条の規定は、抵当権の目的である地上権又は伝貰権が売買の目的である場合について準用する。

第578条(競売と売主の担保責任)① 競売の場合には、買受人は、第570条から前条までの規定により、債務者に対し、契約を解除し、又は代金の減額を請求することができる。

 前項の場合において、債務者が資力のないときは、買受人は、代金の配当を受けた債権者に対し、その代金の全部又は一部の返還を請求することができる。

 前2項の場合において、債務者が物若しくは権利の不存在を知りながら告知せず、又は債権者がこれを知りながら競売を請求したときは、買受人は、その不存在を知っていた債務者又は債権者に対し、損害賠償を請求することができる。

第579条(債権の売買と売主の担保責任)① 債権の売主が債務者の資力を担保したときは、売買契約の時における資力を担保したものと推定する。

 弁済期に至らない債権の売主が債務者の資力を担保したときは、弁済期における資力を担保したものと推定する。

第580条(売主の瑕疵担保責任)① 売買の目的物に瑕疵があるときは、第575条第1項の規定を準用する。ただし、買主が瑕疵のあることを知り、又は過失によりこれを知らなかったときは、この限りでない。

 前項の規定は、競売の場合について適用しない。

第581条(種類売買と売主の担保責任)① 売買の目的物を種類で指定した場合においても、その後特定された目的物に瑕疵があるときは、前条の規定を準用する。

 前項の場合において、買主は、契約の解除又は損害賠償の請求をしないで、瑕疵のない物を請求することができる。

第582条(前2条の規定による権利の行使期間) 前2条の規定による権利は、買主がその事実を知った日から6箇月内に行使しなければならない。

第583条(担保責任と同時履行) 第536条の規定は、第572条から第575条まで、第580条及び第581条の場合について準用する。

第584条(担保責任の免除の特約) 売主は、第569条から前条までの規定による担保責任を免れる特約をした場合であっても、売主が知りながら告げなかった事実及び第三者に権利を設定し、又は譲り渡した行為については、責任を免れることができない。

第585条(同一期限の推定) 売買の当事者の一方に対する義務の履行について期限があるときは、相手方の義務の履行についても同一の期限があるものと推定する。

第586条(代金の支払場所) 売買の目的物の引渡しと同時に代金を支払うべき場合には、その引渡しの場所において支払わなければならない。

第587条(果実の帰属及び代金の利息) 売買契約をした後であっても引き渡していない目的物から生じた果実は、売主に属する。買主は、目的物の引渡しを受けた日から、代金の利息を支払わなければならない。ただし、代金の支払について期限があるときは、この限りでない。

第588条(権利の主張者がある場合と代金の支払の拒絶権) 売買の目的物について権利を主張する者がある場合において、買主が買い受けた権利の全部又は一部を失うおそれがあるときは、買主は、その危険の程度に応じて、代金の全部又は一部の支払を拒むことができる。ただし、売主が相当の担保を供したときは、この限りでない。

第589条(代金の供託の請求権) 前条の場合において、売主は、買主に対して代金の供託を請求することができる。

第3款 買戻し
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第590条(買戻しの意義)① 売主が売買契約と同時に買戻しをする権利を留保したときは、その受領した代金及び買主が負担した売買の費用を返還して、その目的物の買戻しをすることができる。

 前項の買戻しの代金について特約があるときは、その定めるところによる。

 前2項の場合において、特約がないときは、目的物の果実と代金の利息とは相殺したものとみなす。

第591条(買戻しの期間)① 買戻しの期間は、不動産については5年、動産については3年を超えることができない。約定した期間がこれを超えるときは、不動産については5年、動産については3年に短縮する。

 買戻しの期間を定めたときは、その後にこれを延長することができない。

 買戻しの期間を定めなかったときは、その期間は、不動産については5年、動産については3年とする。

第592条(買戻しの登記) 売買の目的物が不動産である場合において、売買の登記と同時に買戻権の留保を登記したときは、第三者に対しても、その効力を有する。

第593条(買戻権の代位行使と買主の権利) 売主の債権者が売主を代位して買戻しをしようとするときは、買主は、裁判所が選定した鑑定人の評価額から売主が返還すべき金額を控除した額をもって売主の債務を弁済し、残額があるときはこれを売主に支払って、買戻権を消滅させることができる。

第594条(買戻しの実行)① 売主は、買戻しの期間内に代金及び売買の費用を買主に提供しなければ、買戻しをする権利を失う。

 買主又は転得者が目的物について費用を支出したときは、売主は、第203条の規定に従い、その費用を償還しなければならない。ただし、有益費については、裁判所は、売主の請求により、相当の償還期間を許与することができる。

第595条(共有持分の買戻し) 共有者の一人が買戻しをする権利を留保してその持分を売り渡した後に、その目的物の分割又は競売があったときは、売主は、買主が受け、若しくは受けるべき部分又は代金について、買戻しをする権利を行使することができる。ただし、売主に通知をしなかった買主は、その分割又は競売をもって売主に対抗することができない。

第4節 交換

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第596条(交換の意義) 交換は、当事者双方が金銭以外の財産権を互いに移転することを約することによって、効力を生じる。

第597条(金銭を補充して支払う場合) 当事者の一方が前条の財産権の移転及びそれを補充する金銭の支払を約したときは、その金銭については、売買の代金に関する規定を準用する。

第5節 消費貸借

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第598条(消費貸借の意義) 消費貸借は、当事者の一方が金銭その他の代替物の所有権を相手方に移転することを約し、相手方がそれと同じ種類、品質及び数量をもって返還することを約することによって、効力を生じる。

第599条(破産と消費貸借の失効) 貸主が目的物を借主に引き渡す前に当事者の一方が破産宣告を受けたときは、消費貸借は、効力を失う。

第600条(利息計算の始期) 利息付きの消費貸借は、借主が目的物の引渡しを受けた時から利息を計算しなければならず、借主がその責めに帰すべき事由によって受領を遅滞したときは、貸主が履行の提供をした時から利息を計算しなければならない。

第601条(無利息の消費貸借と解除権) 無利息の消費貸借の当事者は、目的物の引渡しがあるまでは、いつでも契約を解除することができる。ただし、相手方に生じた損害があるときは、これを賠償しなければならない。

第602条(貸主の担保責任)① 利息付きの消費貸借の目的物に瑕疵がある場合については、第580条から第582条までの規定を準用する。

 無利息の消費貸借の場合には、借主は、瑕疵がある物の価額を返還することができる。ただし、貸主がその瑕疵を知りながら借主に告げなかったときは、前項と同様とする。

第603条(返還の時期)① 借主は、定めた時期に借用物と同じ種類、品質及び数量の物を返還しなければならない。

 返還の時期の定めがないときは、貸主は、相当の期間を定めて返還を催告しなければならない。ただし、借主は、いつでも返還することができる。

第604条(返還不能による時価の償還) 借主が借用物と同じ種類、品質及び数量の物を返還することができないときは、その時の時価を償還しなければならない。ただし、第376条及び第377条第2項の場合は、この限りでない。

第605条(準消費貸借) 当事者双方が消費貸借によらないで金銭その他の代替物を給付する義務を負う場合において、当事者がその目的物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借の効力を生じる。

第606条(代物による貸借) 金銭の貸借の場合において、借主が金銭に代えて有価証券その他の物の引渡しを受けたときは、その引渡しの時の価額をもって借用額とする。

(最終改正2014.12.30)

第607条(代物による返還の予約) 借用物の返還について借主が借用物に代えて他の財産権を移転することを予約した場合には、その財産の予約の時の価額は、借用額及びこれに付した利息の合算額を超えることができない。

(最終改正2014.12.30)

第608条(借主に不利益な約定の禁止) 前2条の規定に違反する当事者間の約定で借主に不利なものは、買戻しその他いかなる名目であっても、効力を有しない。

第6節 使用貸借

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第609条(使用貸借の意義) 使用貸借は、当事者の一方が相手方に無償で使用及び収益をさせるために目的物を引き渡すことを約し、相手方が使用及び収益をした後にその目的物を返還することを約することによって、効力を生じる。

第610条(借主の使用及び収益)① 借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その目的物の使用及び収益をしなければならない。

 借主は、貸主の承諾がなければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。

 借主が前2項の規定に違反したときは、貸主は、契約を解約告知することができる。

第611条(費用の負担)① 借主は、借用物の通常の必要費を負担する。

 前項の費用以外の費用については、第594条第2項の規定を準用する。

第612条(準用規定) 第559条及び第601条の規定は、使用貸借について準用する。

第613条(借用物の返還の時期)① 借主は、定めた時期に、借用物を返還しなければならない。

 時期の定めがない場合には、借主は、契約及び目的物の性質に従った使用及び収益が終わった時に、返還しなければならない。ただし、使用及び収益をするのに十分な期間が経過したときは、貸主は、いつでも契約を解約告知することができる。

第614条(借主の死亡及び破産と解約告知) 借主が死亡し、又は破産宣告を受けたときは、貸主は、契約を解約告知することができる。

第615条(借主の原状回復義務及び収去権) 借主が借用物を返還するときは、これを原状に復さなければならない。これに附属させた物は、収去することができる。

第616条(共同借主の連帯義務) 数人が共同して物を借用したときは、連帯して義務を負う。

第617条(損害賠償及び費用償還の請求の期間) 契約又は目的物の性質に反する使用及び収益によって生じた損害の賠償の請求及び借主が支出した費用の償還の請求は、貸主が物の返還を受けた日から6箇月内にしなければならない。

第7節 賃貸借

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第618条(賃貸借の意義) 賃貸借は、当事者の一方が相手方に目的物の使用及び収益をさせることを約し、相手方がこれに対して賃料を支払うことを約することによって、効力を生じる。

第619条(処分の能力又は権限がない者のできる短期賃貸借) 処分の能力又は権限のない者が賃貸借をする場合には、その賃貸借は、次に定める期間を超えることができない。

 1. 樹木の栽植、塩の採取又は石造、石灰造、煉瓦造及びこれらに類する建築を目的とする土地の賃貸借は、10年

 2. その他の土地の賃貸借は、5年

 3. 建物その他の工作物の賃貸借は、3年

 4. 動産の賃貸借は、6箇月

第620条(短期賃貸借の更新) 前条の期間は、更新することができる。ただし、その期間の満了前、土地については1年内、建物その他の工作物については3箇月内、動産については1箇月内に、更新しなければならない。

第621条(賃貸借の登記)① 不動産の賃借人は、当事者間に反対の約定がないときは、賃貸人に対し、その賃貸借の登記手続について協力すべきことを請求することができる。

 不動産の賃貸借を登記したときは、その時から第三者に対して効力を生じる。

第622条(建物の登記がある土地の賃貸借の対抗力)① 建物の所有を目的とする土地の賃貸借は、これを登記しなかった場合においても、賃借人がその土地の上にある建物を登記したときは、第三者に対して賃貸借の効力を生じる。

 建物が賃貸借の期間の満了前に滅失し、又は朽廃したときは、前項の効力を失う。 

第623条(賃貸人の義務) 賃貸人は、賃貸物を賃借人に引き渡し、契約の存続中その使用及び収益に必要な状態を維持する義務を負う。

第624条(賃貸人の保存行為と賃借人の受忍義務) 賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をするときは、賃借人は、これを拒むことができない。

第625条(賃借人の意思に反する保存行為と解約告知権) 賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をする場合において、賃借人がこれによって賃借の目的を達することができないときは、契約を解約告知することができる。

第626条(賃借人の償還請求権)① 賃借人が賃借物の保存のために必要費を支出したときは、賃貸人に対し、その償還を請求することができる。

 賃借人が有益費を支出した場合には、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、その価額の増加が現存するときに限り、賃借人の支出した金額又はその増加額を償還しなければならない。この場合において、裁判所は、賃貸人の請求により、相当の償還期間を許与することができる。

第627条(一部滅失等と減額請求権及び解約告知権)① 賃借物の一部が賃借人の過失なく滅失その他の事由により使用及び収益をすることができないときは、賃借人は、その部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる。

 前項の場合において、その残存部分では賃借の目的を達することができないときは、賃借人は、契約を解約告知することができる。

第628条(賃料増減請求権) 賃貸物に対する公課の負担の増減その他経済事情の変動によって約定した賃料が相当でなくなったときは、当事者は、将来に向かって賃料の増減を請求することができる。

第629条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)① 賃借人は、賃貸人の同意を得ないで、その権利を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。

 賃借人が前項の規定に違反したときは、賃貸人は、契約を解約告知することができる。

第630条(転貸の効果)① 賃借人が賃貸人の同意を得て賃借物を転貸したときは、転借人は、直接、賃貸人に対して義務を負う。 この場合において、転借人は、転貸人に対する賃料の支払をもって賃貸人に対抗することができない。

 前項の規定は、賃貸人の賃借人に対する権利の行使に影響を及ぼさない。

第631条(転借人の権利の存続) 賃借人が賃貸人の同意を得て賃借物を転貸した場合には、賃貸人と賃借人の合意によって契約を終了させたときでも、転借人の権利は、消滅しない。

第632条(賃借建物の小部分を他人に使用させる場合) 前3条の規定は、建物の賃借人がその建物の小部分を他人に使用させる場合には、適用しない。

第633条(賃料の支払時期) 賃料は、動産、建物又は宅地については毎月末に、その他の土地については毎年末に、支払わなければならない。ただし、収穫の時期があるものについては、その収穫の後に遅滞なく支払わなければならない。

第634条(賃借人の通知義務) 賃借物の修繕を要し、又は賃借物について権利を主張する者があるときは、賃借人は、遅滞なく賃貸人にこれを通知しなければならない。ただし、賃貸人が既にこれを知っているときは、この限りでない。

第635条(期間の定めのない賃貸借の解約告知の申入れ)① 賃貸借の期間の定めがないときは、当事者は、いつでも契約の解約告知の申入れをすることができる。

 相手方が前項の申入れを受けた日から次に定める期間が経過したときは、解約告知の効力を生じる。

 1. 土地及び建物その他の工作物については、賃貸人が解約告知の申入れをした場合は6箇月、賃借人が解約告知の申入れをした場合は1箇月

 2. 動産については、5日

第636条(期間の定めのある賃貸借の解約告知の申入れ) 賃貸借の期間の定めがある場合であっても、当事者の一方又は双方がその期間内に解約告知をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。

第637条(賃借人の破産と解約告知の申入れ)① 賃借人が破産宣告を受けた場合には、賃貸借の期間の定めがあるときであっても、賃貸人又は破産管財人は、第635条の規定により契約の解約告知の申入れをすることができる。

 前項の場合には、各当事者は、相手方に対し、契約の解約告知によって生じた損害の賠償を請求することができない。

第638条(解約告知の申入れの転借人に対する通知)① 賃貸借契約が解約告知の申入れによって終了した場合において、その賃貸物が適法に転貸されていたときは、賃貸人は、転借人に対してその事由を通知しなければ、解約告知をもって転借人に対抗することができない。

 転借人が前項の通知を受けたときは、第635条第2項の規定を準用する。

第639条(黙示の更新)① 賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人が相当の期間内に異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものとみなす。ただし、当事者は、第635条の規定により解約告知の申入れをすることができる。

 前項の場合には、従前の賃貸借について第三者が供した担保は、期間の満了によって消滅する。

第640条(賃料の延滞と解約告知) 建物その他の工作物の賃貸借において、賃借人の賃料の延滞額が2期分の賃料の額に達するときは、賃貸人は、契約を解約告知することができる。

第641条(賃料の延滞と解約告知) 建物その他の工作物の所有又は樹木の栽植、塩の採取若しくは牧畜を目的とする土地の賃貸借の場合についても、前条の規定を準用する。

第642条(土地の賃貸借の解約告知と地上の建物等に対する担保物権者への通知) 前条の場合において、その地上にある建物その他の工作物が担保物権の目的になっているときは、第288条の規定を準用する。

第643条(賃借人の更新請求権及び買取請求権) 建物その他の工作物の所有又は樹木の栽植、塩の採取若しくは牧畜を目的とする土地の賃貸借の期間が満了した場合において、建物、樹木その他の地上の施設が現存するときは、第283条の規定を準用する。

第644条(転借人の賃貸請求権及び買取請求権)① 建物その他の工作物の所有又は樹木の栽植、塩の採取若しくは牧畜を目的とする土地の賃借人が適法にその土地を転貸した場合において、賃貸借及び転貸借の期間が同時に満了して、建物、樹木その他の地上の施設が現存するときは、転借人は、賃貸人に対し、従前の転貸借と同一の条件で賃貸すべきことを請求することができる。

 前項の場合において、賃貸人が賃貸することを望まないときは、第283条第2項の規定を準用する。

第645条(地上権の目的である土地の賃借人の賃貸請求権及び買取請求権) 前条の規定は、地上権者が地上権の目的である土地を賃貸した場合について準用する。

第646条(賃借人の附属物買取請求権)① 建物その他の工作物の賃借人がその使用の便益のために賃貸人の同意を得てこれに附属させた物があるときは、賃貸借の終了の時に、賃貸人に対し、その附属物の買取りを請求することができる。

 賃貸人から買い受けた附属物についても、前項と同様とする。

第647条(転借人の附属物買取請求権)① 建物その他の工作物の賃借人が適法に転貸した場合において、転借人がその使用の便益のために賃貸人の同意を得てこれに附属させた物があるときは、転貸借の終了の時に、賃貸人に対し、その附属物の買取りを請求することができる。

 賃貸人から買い受け、又はその同意を得て賃借人から買い受けた附属物についても、前項と同様とする。

第648条(賃借土地の附属物、果実等に対する法定質権) 土地の賃貸人が、賃貸借に関する債権によって、賃借土地に附属され、又はその使用の便益に供されている賃借人の所有に係る動産及びその土地の果実を差し押えたときは、質権と同一の効力を有する。

第649条(賃借土地上の建物に対する法定抵当権) 土地の賃貸人が、弁済期を経過した最後の2年に係る賃料債権によって、その土地上にある賃借人の所有に係る建物を差し押えたときは、抵当権と同一の効力を有する。

第650条(賃借建物等の附属物に対する法定質権) 建物その他の工作物の賃貸人が、賃貸借に関する債権によって、その建物その他の工作物に附属されている賃借人の所有に係る動産を差し押えたときは、質権と同一の効力を有する。

第651条 削除

(最終改正 2016. 1. 6)

第652条(強行規定) 第627条、第628条、第631条、第635条、第638条、第640条、第641条及び第643条から第647条までの規定に違反する約定で賃借人又は転借人に不利なものは、効力を有しない。

第653条(一時使用のための賃貸借の特例) 第628条、第638条、第640条、第646条から第648条まで、第650条及び前条の規定は、一時使用をするための賃貸借又は転貸借であることが明らかな場合には、適用しない。

第654条(準用規定) 第610条第1項及び第615条から第617条までの規定は、賃貸借について準用する。

第8節 雇用

編集

第655条(雇用の意義) 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労務を提供することを約し、相手方がこれに対して報酬を支払うことを約することによって、効力を生じる。

第656条(報酬及びその支払時期)① 報酬又は報酬の額の定めがないときは、慣習に従って支払わなければならない。

 報酬は、定めた時期に支払わなければならず、支払時期の定めがないときは慣習に従い、慣習がないときは約定した労務を終えた後遅滞なく、支払わなければならない。

第657条(権利及び義務の専属性)① 使用者は、労働者の同意なしに、その権利を第三者に譲り渡すことができない。

 労働者は、使用者の同意なしに、第三者をして自分に代わって労務を提供させることができない。

 当事者の一方が前2項の規定に違反したときは、相手方は、契約を解約告知することができる。

(最終改正 2014. 12. 30)

第658条(労務の内容と解約告知権)① 使用者が労働者に対して約定しなかった労務の提供を要求したときは、労働者は、契約を解約告知することができる。

 約定した労務が特殊な技能を要する場合において、労働者がその技能を有しないときは、使用者は、契約を解約告知することができる。

第659条(3年以上の経過と解約告知申入権)① 雇用の約定期間が3年を超え、又は当事者の一方若しくは第三者の終身となっているときは、各当事者は、3年を経過した後、いつでも契約の解約告知の申入れをすることができる。

 前項の場合には、相手方が解約告知の申入れを受けた日から3箇月が経過した時は、解約告知の効力を生じる。

第660条(期間の定めのない雇用の解約告知の申入れ)① 雇用の期間の定めがないときは、当事者は、いつでも契約の解約告知の申入れをすることができる。

 前項の場合において、相手方が解約告知の申入れを受けた日から1箇月を経過したときは、解約告知の効力を生じる。

 期間によって報酬を定めたときは、相手方が解約告知の申入れを受けた当期後の1期を経過することによって、解約告知の効力を生じる。

第661条(やむを得ない事由と解約告知権) 雇用の期間の定めがある場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、契約を解約告知することができる。ただし、その事由が当事者の一方の過失によって生じたときは、相手方に対して損害を賠償しなければならない。

第662条(黙示の更新)① 雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労務を提供する場合において、使用者が相当の期間内に異議を述べないときは、従前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたものとみなす。ただし、当事者は、第660条の規定により解約告知の申入れをすることができる。

 前項の場合には、従前の雇用について第三者が供した担保は、期間の満了によって消滅する。

第663条(使用者の破産と解約告知の申入れ)① 使用者が破産宣告を受けた場合には、雇用の期間の定めがあるときであっても、労働者又は破産管財人は、契約を解約告知することができる。

 前項の場合には、各当事者は、契約の解約告知による損害の賠償を請求することができない。

第9節 請負

編集

第664条(請負の意義) 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約することによって、効力を生じる。

第665条(報酬の支払時期)① 報酬は、完成した目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。ただし、目的物の引渡しを要しない場合には、仕事を完成した後遅滞なく、支払わなければならない。

 前項の報酬については、第656条第2項の規定を準用する。

第666条(目的不動産に対する請負人の抵当権設定請求権) 不動産の工事の請負人は、前条の報酬に係る債権を担保するため、その不動産を目的とする抵当権の設定を請求することができる。

第667条(請負人の担保責任)① 完成した目的物又は完成前の履行済み部分に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めてその瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分な費用を要するときは、この限りでない。

 注文者は、瑕疵の修補に代え、又は修補とともに、損害賠償を請求することができる。

 前項の場合については、第536条の規定を準用する。

(最終改正 2014. 12. 30)

第668条(請負人の担保責任と注文者の解除権) 注文者が完成した目的物の瑕疵によって契約の目的を達することができないときは、契約を解除することができる。ただし、建物その他の土地の工作物については、この限りでない。

第669条(瑕疵が注文者の供した材料又は指示による場合の免責) 前2条の規定は、目的物の瑕疵が注文者の供した材料の性質又は注文者の指示によって生じたときは、適用しない。ただし、請負人がその材料又は指示の不適当であることを知りながら注文者に告げなかったときは、この限りでない。

第670条(担保責任の存続期間)① 前3条の規定による瑕疵の修補又は損害賠償の請求及び契約の解除は、目的物の引渡しを受けた日から1年内にしなければならない。

 目的物の引渡しを要しない場合には、前項の期間は、仕事が終了した日から起算する。

第671条(請負人の担保責任の土地及び建物等についての特則)① 土地又は建物その他の工作物の請負人は、目的物又は地盤の工事の瑕疵について、引渡しの後5年間担保の責任を負う。ただし、目的物が石造、石灰造、煉瓦造又は金属その他これに類する材料で造られたものであるときは、その期間を10年とする。

 前項の瑕疵によって目的物が滅失し、又は損傷したときは、注文者は、その滅失し、又は損傷した日から1年内に第667条の権利を行使しなければならない。

第672条(担保責任の免除の特約) 請負人は、第667条又は第668条の担保責任を負わないことを約した場合であっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることができない。

第673条(完成前の注文者の解除権) 請負人が仕事を完成するまでは、注文者は、損害を賠償して契約を解除することができる。

第674条(注文者の破産と解除権)① 注文者が破産宣告を受けたときは、請負人又は破産管財人は、契約を解除することができる。 この場合において、請負人は、仕事の完成した部分に対する報酬及び報酬に含まれていない費用について、破産財団の配当に加入することができる。

 前項の場合には、各当事者は、相手方に対し、契約の解除による損害の賠償を請求することができない。

第9節の2 旅行契約

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(最終改正 2015. 2. 3)

第674条の2(旅行契約の意義) 旅行契約は、当事者の一方が相手方に運送、宿泊、観光その他の旅行に関する役務を結合して提供することを約し、相手方がその代金を支払うことを約することによって、効力を生じる。

(最終改正 2015. 2. 3)

第674条の3(旅行開始前の契約の解除) 旅行者は、旅行を始める前においては、いつでも契約を解除することができる。 ただし、旅行者は、相手方に生じた損害を賠償しなければならない。

(最終改正 2015. 2. 3)

第674条の4(やむを得ない事由による契約の解約告知)① やむを得ない事由がある場合には、各当事者は、契約を解約告知することができる。 ただし、その事由が当事者の一方の過失によって生じた場合には、相手方に損害を賠償しなければならない。

 前項の規定により契約が解約告知された場合であっても、契約上出発地までの帰路の運送義務がある旅行主催者は、旅行者を出発地までの帰路を運送する義務を負う.

 第1項の規定による解約告知によって生じる追加費用は、その解約告知の事由が、いずれかの当事者の事情に属する場合にはその当事者が負担し、いずれの当事者の事情にも属さない場合には各当事者が等しい割合で負担する。

(最終改正 2015. 2. 3)

第674条の5(代金の支払時期) 旅行者は、定めた時期に代金を支払わなければならないが、その時期の定めがないときは慣習に従い、慣習がないときは旅行の終了後遅滞なく、支払わなければならない。

(最終改正 2015. 2. 3)

第674条の6(旅行主催者の担保責任)① 旅行に瑕疵がある場合には、旅行者は、旅行主催者に瑕疵の是正又は代金の減額を請求することができる。 ただし、その是正に過分な費用を要し、又はその他是正を合理的に期待することができない場合は、是正を請求することができない。

 前項の規定による是正の請求は、相当の期間を定めてしなければならない。 ただし、直ちに是正する必要がある場合は、この限りでない。

 旅行者は、是正の請求若しくは減額の請求に代えて損害賠償を請求し、又は是正の請求若しくは減額の請求とともに損害賠償を請求することができる。

(最終改正 2015. 2. 3)

第674条の7(旅行主催者の担保責任と旅行者の解約告知権)① 旅行者は、旅行に重大な瑕疵がある場合において、その是正がされず、又は契約の内容に従った履行を期待することができないときは、契約を解約告知することができる。

 契約が解約告知された場合には、旅行主催者は、代金の請求権を失う。 ただし、旅行者が実施された旅行によって利益を得た場合には、その利益を旅行主催者に償還しなければならない。

 旅行主催者は、契約の解約告知によって必要となった措置を講じる義務を負い、また、契約上出発地までの帰路の運送義務を負うときは、旅行者を出発地までの帰路を運送しなければならない。 この場合において、相当の理由があるときは、旅行主催者は、旅行者にその費用の一部を請求することができる。

(最終改正 2015. 2. 3)

第674条の8(担保責任の存続期間) 第674条の6及び前条の規定による権利は、旅行期間中であっても行使することができるが、契約で定めた旅行の終了日から6箇月内に行使しなければならない。

(最終改正 2015. 2. 3)

第674条の9(強行規定) 第674条の3、第674条の4又は第674条の6から前条までの規定に違反する約定で旅行者に不利なものは、効力を有しない。 

(最終改正 2015. 2. 3)

第10節 懸賞広告

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第675条(懸賞広告の意義) 懸賞広告は、広告者がある行為をした者に一定の報酬を支払う意思を表示し、これに応じた者がその広告に定めた行為を完了することによって、効力を生じる。

第676条(報酬の受領権者)① 広告に定めた行為を完了した者が数人ある場合は、先にその行為を完了した者が報酬を受ける権利を有する。

 数人が同時に完了した場合は、それぞれ等しい割合で報酬を受ける権利を有する。ただし、報酬がその性質上分割することができず、又は広告において一人のみが報酬を受ける旨を定めたときは、抽選によって決定する。

第677条(広告を知らずにした行為) 前条の規定は、広告のあることを知らずに広告に定めた行為を完了した場合について準用する。

第678条(優等懸賞広告)① 広告に定めた行為を完了した者が数人ある場合において、その優等者のみに報酬を支払うべき旨を定めたときは、その広告に応募の期間を定めたときに限り、その効力を生じる。

 前項の場合において、優等の判定は、広告に定めた者が行う。 広告に判定者を定めなかったときは、広告者が判定する。

 優等者がないとの判定は、行うことができない。ただし、広告に別段の意思表示があり、又は広告の性質上判定の標準が定められているときは、この限りでない。

 応募者は、前2項の判定について異議を述べることができない。

 数人の行為が同等と判定されたときは、第676条第2項の規定を準用する。

第679条(懸賞広告の撤回)① 広告に指定した行為の完了の期間を定めたときは、その期間の満了前に広告を撤回することができない。

 広告に行為の完了の期間を定めなかったときは、その行為を完了する者が現れるまでは、その広告と同一の方法によって広告を撤回することができる。

 従前の広告と同一の方法によって撤回することができないときは、それと類似した方法によって撤回することができる。 この撤回は、撤回したことを知った者に対してのみ、効力を有する。

第11節 委任

編集

第680条(委任の意義) 委任は、当事者の一方が相手方に事務の処理を委託し、相手方がこれを承諾することによって、効力を生じる。

第681条(受任者の善管義務) 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理しなければならない。

第682条(復任権の制限)① 受任者は、委任者の承諾なく、又はやむを得ない事由なしに、自分に代わって第三者に委任事務を処理させることができない。

 受任者が前項の規定により第三者に委任事務を処理させた場合には、第121条及び第123条の規定を準用する。

(最終改正 2014. 12. 30)

第683条(受任者の報告義務) 受任者は、委任者の請求があるときは委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了したときは遅滞なくその顛末を報告しなければならない。

第684条(受任者の取得物等の引渡し及び移転の義務)① 受任者は、委任事務の処理によって受け取った金銭その他の物及びその収取した果実を委任者に引き渡さなければならない。

 受任者が委任者のために自己の名義で取得した権利は、委任者に移転しなければならない。

第685条(受任者の金銭の消費についての責任) 受任者が委任者に引き渡すべき金銭又は委任者の利益のために使用すべき金銭を自己のために消費した場合は、消費した日以後の利息を支払わなければならないと同時に、その他の損害があるときは、賠償をしなければならない。

第686条(受任者の報酬請求権)① 受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。

 受任者が報酬を受けるべき場合は、委任事務を完了した後でなければ、これを請求することができない。 ただし、期間によって報酬を定めたときは、その期間が経過した後に、これを請求することができる。

 受任者が委任事務を処理している中途において、受任者の責めに帰することができない事由によって委任が終了したときは、受任者は、既に処理した事務の割合に応じた報酬を請求することができる。 

第687条(受任者の費用の前払請求権) 委任事務の処理について費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、これを前払しなければならない。

第688条(受任者の費用の償還請求権等)① 受任者が委任事務の処理について必要費を支出したときは、委任者に対し、支出した日以後の利息を請求することができる。

 受任者が委任事務の処理に必要な債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってこれを弁済させることができ、その債務が弁済期にないときは、相当の担保を供させることができる。

 受任者が委任事務の処理のために過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。

(最終改正 2014. 12. 30)

第689条(委任の解約告知の自由)① 委任契約は、各当事者がいつでも解約告知することができる。

 当事者の一方がやむを得ない事由なく相手方の不利な時期に契約を解約告知したときは、その損害を賠償しなければならない。

第690条(死亡、破産等と委任の終了) 委任は、当事者の一方の死亡又は破産によって終了する。受任者が成年後見開始の審判を受けた場合も、同様とする。

(最終改正 2011. 3. 7)

第691条(委任の終了時の緊急処理) 委任の終了の場合において、急迫な事情があるときは、受任者又はその相続人若しくは法定代理人は、委任者又はその相続人若しくは法定代理人が委任事務を処理することができるときまで、その事務の処理を継続しなければならない。この場合においては、委任の存続中と同じ効力を有する。

第692条(委任の終了の対抗要件) 委任の終了の事由は、これを相手方に通知し、又は相手方がこれを知っていたときでなければ、これをもって相手方に対抗することができない。

第12節 寄託

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第693条(寄託の意義) 寄託は、当事者の一方が相手方に金銭又は有価証券その他の物の保管を委託し、相手方がこれを承諾することによって、効力を生じる。

第694条(受寄者による寄託物の使用の禁止) 受寄者は、寄託者の同意なしに、寄託物を使用することができない。

第695条(無報酬の受寄者の注意義務) 無報酬で寄託を受けた者は、寄託物を自己の財産と同一の注意をもって保管しなければならない。

第696条(受寄者の通知義務) 寄託物について権利を主張する第三者が受寄者に対して訴えを提起し、又は差押えをしたときは、受寄者は、遅滞なく寄託者にその事実を通知しなければならない。

第697条(寄託物の性質及び瑕疵による寄託者の損害賠償義務) 寄託者は、寄託物の性質又は瑕疵によって生じた損害を受寄者に賠償しなければならない。ただし、受寄者がその性質又は瑕疵を知っていたときは、この限りでない。

第698条(期間の定めのある寄託の解約告知) 寄託期間の定めがあるときは、受寄者は、やむを得ない事由がなければ、その期間の満了前に契約を解約告知することができない。ただし、寄託者は、いつでも契約を解約告知することができる。

第699条(期間の定めのない寄託の解約告知) 寄託期間の定めがないときは、各当事者は、いつでも契約を解約告知することができる。

第700条(寄託物の返還の場所) 寄託物は、その保管した場所で返還しなければならない。ただし、受寄者が正当な事由によってその物を移動したときは、現に存する場所で返還することができる。

第701条(準用規定) 第682条、第684条から第687条まで並びに第688条第1項及び第2項の規定は、寄託について準用する。

第702条(消費寄託) 受寄者が契約により寄託物を消費することができる場合には、消費貸借に関する規定を準用する。ただし、返還時期の定めがないときは、寄託者は、いつでもその返還を請求することができる。

第13節 組合

編集

第703条(組合の意義)① 組合は、2人以上の者が互いに出資をして共同の事業を営むことを約することによって、効力を生じる。

 前項の出資は、金銭その他の財産又は労務によってすることができる。

第704条(組合財産の合有) 組合員の出資その他の組合財産は、組合員の合有とする。

第705条(金銭出資の遅滞の責任) 金銭を出資の目的とした組合員が出資を遅滞したときは、延滞利息を支払うほか、損害を賠償しなければならない。

第706条(事務の執行の方法)① 組合契約で業務執行者を定めなかった場合には、組合員の3分の2以上の賛成をもってこれを選任する。

 組合の業務の執行は、組合員の過半数をもって決定する。 業務執行者が数人あるときは、その過半数をもって決定する。

 組合の常務は、前項の規定にかかわらず、各組合員又は各業務執行者が単独で行うことができる。ただし、その事務の完了前に他の組合員又は他の業務執行者の異議があるときは、直ちに中止しなければならない。

第707条(準用規定) 組合の業務を執行する組合員については、第681条から第688条までの規定を準用する。

第708条(業務執行者の辞任及び解任) 業務執行者である組合員については、正当な事由がなければ辞任することができず、他の組合員の一致がなければ解任することができない。

第709条(業務執行者の代理権の推定) 組合の業務を執行する組合員は、その業務の執行について代理権を有するものと推定する。

第710条(組合員の業務及び財産状態に関する検査権) 各組合員は、いつでも組合の業務及び財産状態を検査することができる。

第711条(損益分配の割合)① 当事者が損益分配の割合を定めなかったときは、各組合員の出資の価額に応じてこれを定める。

 利益又は損失について分配の割合を定めたときは、その割合は、利益及び損失に共通であるものと推定する。

第712条(組合員に対する債権者の権利の行使) 組合の債権者は、その債権の発生の時に組合員の損失分担の割合を知ることができなかったときは、各組合員に対して等しい割合でその権利を行使することができる。

第713条(無資力の組合員の債務と他の組合員の弁済責任) 組合員の中に弁済をする資力のない者があるときは、その弁済することができない部分は、他の組合員が等しい割合で弁済をする責任を負う。

第714条(持分に対する差押えの効力) 組合員の持分に対する差押えは、その組合員の将来の利益の配当及び持分の返還を受けるべき権利について効力を有する。

第715条(組合の債務者の相殺禁止) 組合の債務者は、その債務と組合員に対する債権を相殺することができない。

第716条(任意脱退)① 組合契約で組合の存続期間を定めなかったとき、又は組合員の終身の間存続すべきことを定めたときは、各組合員は、いつでも脱退することができる。ただし、やむを得ない事由がないときは、組合に不利な時期に脱退することができない。

 組合の存続期間を定めた場合であっても、組合員は、やむを得ない事由があるときは、脱退することができる。

第717条(非任意脱退) 前条の場合のほか、組合員は、次に掲げる事由があるときは、脱退する。

 1. 死亡

 2. 破産

 3. 成年後見の開始

 4. 除名

(最終改正 2011. 3. 7)

第718条(除名)① 組合員の除名は、正当な事由があるときに限り、他の組合員の一致によって決定する。

 前項の除名の決定は、除名された組合員に通知しなければ、その組合員に対抗することができない。

第719条(脱退組合員の持分の計算)① 脱退した組合員と他の組合員との間の計算は、脱退の時における組合財産の状態に従ってする。

 脱退した組合員の持分は、その出資の種類にかかわらず、金銭で返還することができる。

 脱退の時に完結していない事項については、完結後に計算をすることができる。

第720条(やむを得ない事由による解散の請求) やむを得ない事由があるときは、各組合員は、組合の解散を請求することができる。

第721条(清算人)① 組合が解散したときは、清算は、総組合員が共同して、又は総組合員の選任した者がその事務を執行する。

 前項の規定による清算人の選任は、組合員の過半数をもって決定する。

第722条(清算人の業務の執行の方法) 清算人が数人あるときは、第706条第2項後段の規定を準用する。

第723条(組合員である清算人の辞任及び解任) 組合員の中から清算人を定めたときは、第708条の規定を準用する。

第724条(清算人の職務及び権限並びに残余財産の分配)① 清算人の職務及び権限については、第87条の規定を準用する。

 残余財産は、各組合員の出資の価額に応じて分配する。

第14節 終身定期金

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第725条(終身定期金契約の意義) 終身定期金契約は、当事者の一方が、自己、相手方又は第三者の死亡に至るまで、定期に金銭その他の物を相手方又は第三者に給付することを約することによって、その効力を生じる。

第726条(終身定期金の計算) 終身定期金は、日割りで計算する。

第727条(終身定期金契約の解除)① 定期金債務者が定期金債務の元本を受領した場合において、その定期金債務の給付を怠り、又はその他の義務を履行しないときは、定期金債権者は、元本の返還を請求することができる。ただし、既に給付を受けた定期金債務の額からその元本の利息を控除した残額を定期金債務者に返還しなければならない。

 前項の規定は、損害賠償の請求に影響を及ぼさない。

第728条(解除と同時履行) 第536条の規定は、前条の場合について準用する。

第729条(債務者の責めに帰すべき事由による死亡と債権の存続宣告)① 死亡が定期金債務者の責めに帰すべき事由によるときは、裁判所は、定期金債権者又はその相続人の請求により、相当の期間の債権の存続を宣告することができる。

 前項の場合においても、第727条の規定による権利を行使することができる。

第730条(遺贈による終身定期金) この節の規定は、遺贈による終身定期金債権について準用する。

第15節 和解

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第731条(和解の意義) 和解は、当事者が互いに譲歩して当事者間の争いをやめることを約することによって、その効力を生じる。

第732条(和解の創設的効力) 和解契約は、当事者の一方の譲歩した権利が消滅し、相手方が和解によってその権利を取得する効力を有する。

第733条(和解の効力と錯誤) 和解契約は、錯誤を理由として取り消すことができない。ただし、和解の当事者の資格又は和解の目的である争い以外の事項について錯誤があるときは、この限りでない。

第3章 事務管理

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第734条(事務管理の内容)① 義務なく他人のために事務を管理する者は、その事務の性質に従い、最も本人に利益となる方法によって、管理しなければならない。

 管理者は、本人の意思を知り、又は知ることができるときは、その意思に適合するように管理しなければならない。

 管理者は、前2項の規定に違反して事務を管理した場合には、過失がないときであっても、これによる損害を賠償する責任を負う。ただし、その管理行為が公共の利益に適合する場合において、重大な過失がないときは、賠償する責任を負わない。

第735条(緊急事務管理) 管理者は、他人の生命、身体、名誉又は財産に対する急迫な危害を免れさせるためにその事務を管理した場合において、故意又は重大な過失がないときは、これによる損害を賠償する責任を負わない。

第736条(管理者の通知義務) 管理者は、管理を開始したときは、遅滞なく本人に通知しなければならない。ただし、本人が既にこれを知っているときは、この限りでない。

第737条(管理者の管理の継続義務) 管理者は、本人又はその相続人若しくは法定代理人がその事務を管理するときまで、管理を継続しなければならない。ただし、管理の継続が本人の意思に反し、又は本人に不利であることが明らかなときは、この限りでない。

第738条(準用規定) 第683条から第685条までの規定は、事務管理について準用する。

第739条(管理者の費用の償還請求権)① 管理者は、本人のために必要費又は有益費を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる。

 管理者が本人のために必要な又は有益な債務を負担したときは、第688条第2項の規定を準用する。

 管理者が本人の意思に反して管理したときは、本人が現に利益を受けている限度において、前2項の規定を準用する。

第740条(管理者の無過失損害補償請求権) 管理者は、事務管理を行うに当たって過失なく損害を受けたときは、本人が現に利益を受けている限度において、その損害の補償を請求することができる。

第4章 不当利得

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第741条(不当利得の内容) 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、これによって他人に損害を与えた者は、その利益を返還しなければならない。

第742条(非債弁済) 債務が存在しないことを知りながらこれを弁済したときは、弁済したものの返還を請求することができない。

第743条(期限前の弁済) 弁済期にない債務を弁済したときは、弁済したものの返還を請求することができない。ただし、債務者が錯誤によって弁済したときは、債権者は、これによって受けた利益を返還しなければならない。

第744条(道義に適する非債弁済) 債務のない者が錯誤によって弁済した場合において、その弁済が道義に適するときは、弁済したものの返還を請求することができない。

第745条(他人の債務の弁済)① 債務者でない者が錯誤によって他人の債務を弁済した場合において、債権者が善意で証書を毀損し、担保を放棄し、又は時効によってその債権を失ったときは、弁済者は、弁済したものの返還を請求することができない。

 前項の場合において、弁済者は、債務者に対して求償権を行使することができる。

第746条(不法原因給付) 不法な原因によって財産を給付し、又は労務を提供したときは、その利益の返還を請求することができない。ただし、その不法な原因が受益者についてのみ存するときは、この限りでない。

第747条(原物の返還が不能な場合の価額の返還及び転得者の責任)① 受益者が受領した目的物を返還することができないときは、その価額を返還しなければならない。

 受益者が受けた利益を返還することができない場合には、受益者から無償でその利益に係る目的物を譲り受けた悪意の第三者は、前項の規定により返還する責任を負う。

第748条(受益者の返還の範囲)① 善意の受益者は、その受けた利益が存する限度において、前条に規定する責任を負う。

 悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還し、損害があるときは、これを賠償しなければならない。

第749条(受益者の悪意の認定)① 受益者が利益を受けた後に法律上の原因がないことを知ったときは、その時から悪意の受益者として利益を返還する責任を負う。

 善意の受益者が敗訴したときは、その訴えを提起した時から悪意の受益者とみなす。

第5章 不法行為

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第750条(不法行為の内容) 故意又は過失による違法行為によって他人に損害を加えた者は、その損害を賠償する責任を負う。

第751条(財産以外の損害の賠償)① 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害し、又はその他精神上の苦痛を加えた者は、財産以外の損害に対しても賠償する責任を負う。

 裁判所は、前項の規定による損害賠償を定期金債務として支払うことを命じることができ、その履行を確保するため相当の担保の供与を命じることができる。

第752条(生命侵害による慰謝料) 他人の生命を侵害した者は、被害者の直系尊属、直系卑属及び配偶者に対しては、財産上の損害がない場合においても、損害賠償の責任を負う。

第753条(未成年者の責任能力) 未成年者は、他人に損害を加えた場合において、その行為の責任を弁識する知能を備えていないときは、賠償の責任を負わない。

第754条(心身喪失者の責任能力) 心神喪失中に他人に損害を加えた者は、賠償の責任を負わない。ただし、故意又は過失によって心神喪失を招いたときは、この限りでない。

第755条(監督者の責任)① 他人に損害を加えた者が前2条の規定により責任を負わない場合には、その者を監督する法定の義務を負う者がその損害を賠償する責任を負う。 ただし、監督義務を怠らなかった場合は、この限りでない。

 監督義務者に代わって前2条の規定により責任を負わない者を監督する者も、前項の責任を負う。

(最終改正 2011.3.7)

第756条(使用者の賠償責任)① 他人を使用してある事務に従事させた者は、被用者がその事務の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事務の監督について相当の注意をした場合又は相当の注意をしても損害が生じる場合は、この限りでない。

 使用者に代わってその事務を監督する者も、前項の責任を負う。

 前2項の場合において、使用者又は監督者は、被用者に対して求償権を行使することができる。

(最終改正 2014.12.30)

第757条(注文者の責任) 注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文又は指示について注文者に重大な過失があるときは、この限りでない。

第758条(工作物等の占有者及び所有者の責任)① 工作物の設置又は保存の瑕疵によって他人に損害を加えたときは、工作物の占有者は、損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の防止に必要な注意を怠らなかったときは、その所有者が損害を賠償する責任を負う。

 前項の規定は、樹木の栽植又は保存に瑕疵がある場合について準用する。

 前2項の場合において、占有者又は所有者は、その損害の原因について責任を負う者に対して求償権を行使することができる。

(最終改正 2022.12.13)

第759条(動物の占有者の責任)① 動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従いその保管に相当の注意を怠らなかったときは、この限りでない。

 占有者に代わって動物を保管した者も、前項の責任を負う。 

(最終改正 2014.12.30)

第760条(共同不法行為者の責任)① 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、連帯してその損害を賠償する責任を負う。

 共同でない数人の行為のうちいずれの者の行為がその損害を加えたかを知ることができないときも、前項と同様とする。

 教唆者及び幇助者は、共同行為者とみなす。

第761条(正当防衛及び緊急避難)① 他人の不法行為に対し、自己又は第三者の利益を防衛するため、やむを得ず他人に損害を加えた者は、賠償する責任を負わない。ただし、被害者は、不法行為について損害の賠償を請求することができる。

 前項の規定は、急迫な危難を避けるためやむを得ず他人に損害を加えた場合について準用する。

第762条(損害賠償請求権における胎児の地位) 胎児は、損害賠償の請求権については、既に出生したものとみなす。

第763条(準用規定) 第393条、第394条、第396条及び第399条の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。

第764条(名誉毀損の場合の特則) 他人の名誉を損傷した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉の回復のために適当な処分を命じることができる。

(最終改正 2014.12.30)

第765条(賠償額の軽減請求)① この章の規定による賠償義務者は、その損害が故意又は重大な過失によるものでなく、かつ、その賠償によって賠償者の生計に重大な影響を及ぼすこととなる場合には、裁判所にその賠償額の軽減を請求することができる。

 裁判所は、前項の規定による請求があるときは、債権者及び債務者の経済状態並びに損害の原因等を考慮し、賠償額を軽減することができる。

第766条(損害賠償請求権の消滅時効)① 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人がその損害及び加害者を知った日から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。 

 不法行為をした日から10年を経過したときも、前項と同様とする。 

 未成年者が性暴力、性醜行、性戯弄その他の性的侵害を受けた場合において、これによる損害賠償請求権の消滅時効は、その者が成年になる時までは進行しない。

(最終改正 2020.10.20)

第4編 親族

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第1章 総則

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第767条(親族の定義) 配偶者、血族及び姻族を親族とする。

第768条(血族の定義) 直系尊属及び直系卑属を直系血族とし、兄弟姉妹及びその直系卑属並びに直系尊属の兄弟姉妹及びその直系卑属を傍系血族とする。

(最終改正 1990.1.13)

第769条(姻族の定義) 血族の配偶者並びに配偶者の血族及びその配偶者を姻族とする。

(最終改正 1990.1.13)

第770条(血族の親等の計算)① 直系血族は、自己から直系尊属に至る世代数又は自己から直系卑属に至る世代数をもって親等を定める。

 傍系血族は、自己から共通の直系尊属に至る世代数とその直系尊属からその直系卑属に至る世代数を合算して親等を定める。

第771条(姻族の親等の計算) 姻族の親等は、配偶者の血族については配偶者のその血族に対する親等に従い、血族の配偶者については自己のその血族に対する親等に従う。

(最終改正 1990.1.13)

第772条(養子との親系及び親等)① 養子と養父母並びに養父母の血族及び姻族との間の親系及び親等は、養子縁組をした時から、婚姻中の出生子と同じものとみなす。

 養子の配偶者、養子の直系卑属及びその配偶者は、前項の養子の親系を基準として、親等を計算する。

 ※(訳注)親系とは、前2条の親等計算に必要となる「直系・傍系の別」「尊属・卑属の別」のこと。

第773条及び第774条 削除

(最終改正 1990.1.13)

第775条(姻族関係の消滅)① 姻族関係は、婚姻の取消し又は離婚によって終了する。

 夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が再婚したときも、前項と同様とする。

(最終改正 1990.1.13)

第776条(養子縁組による親族関係の消滅) 養子縁組による親族関係は、養子縁組の取消し又は離縁によって終了する。

第777条(親族の範囲) 親族関係による法律上の効力は、この法又は他の法律に特別な規定がない場合には、次に掲げる者に及ぶ。

 1. 8親等以内の血族

 2. 4親等以内の姻族

 3.  配偶者

(最終改正 1990.1.13)

第2章 家族の範囲並びに子の姓及び本

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第778条 削除

(最終改正2005.3.31)

第779条(家族の範囲)① 次に掲げる者は、家族とする。

 1. 配偶者、直系血族及び兄弟姉妹

 2. 直系血族の配偶者並びに配偶者の直系血族及び兄弟姉妹

 前項第2号に掲げる者の場合は、生計を同じくする場合に限る。

(最終改正2005.3.31)

第780条 削除

(最終改正2005.3.31)

第781条(子の姓及び本)① 子は、父の姓及び本を継ぐ。ただし、父母が婚姻の届出の際に母の姓及び本を継ぐ旨協議した場合には、母の姓及び本を継ぐ。

 父が外国人である場合には、子は、母の姓及び本を継ぐことができる。

 父が知れない子は、母の姓及び本を継ぐ。

 父母が知れない子は、裁判所の許可を得て、姓及び本を創設する。ただし、姓及び本を創設した後に父又は母が知れたときは、父又は母の姓及び本を継ぐことができる。

 婚姻外の出生子が認知された場合には、子は、父母の協議によって、従前の姓及び本を引き続き使用することができる。 ただし、父母が協議をすることができず、又は協議が調わない場合には、子は、裁判所の許可を得て、従前の姓及び本を引き続き使用することができる。

 子の福利のために子の姓及び本を変更する必要があるときは、父、母又は子の請求により、裁判所の許可を得て、これを変更することができる。 ただし、子が未成年者の場合であって、法定代理人が請求をすることができないときは、第777条の規定による親族又は検事が請求をすることができる。

(最終改正2005.3.31)

第782条から第799条まで 削除

(最終改正2005.3.31。ただし、第797条~第799条は1990.1.13)

第3章 婚姻

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第1節 婚約

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第800条(婚約の自由) 成年に達した者は、自由に婚約をすることができる。

第801条(婚約年齢) 18歳になった者は、父母又は未成年後見人の同意を得て婚約をすることができる。この場合においては、第808条の規定を準用する。

(最終改正 2022.12.27)

第802条(成年後見と婚約) 成年被後見人は、父母又は成年後見人の同意を得て婚約をすることができる。この場合については、第808条の規定を準用する。

(最終改正 2011.3.7)

第803条(婚約の強制履行の禁止) 婚約については、強制履行を請求することができない。

第804条(婚約の解除の事由) 当事者の一方について次に掲げる場合に該当するときは、相手方は、婚約を解除することができる。

 1. 婚約後に資格停止以上の刑を宣告された場合

 2. 婚約後に成年後見開始又は限定後見開始の審判を受けた場合

 3. 性病又は不治の精神病その他の不治の疾病がある場合

 4. 婚約後に他の者と婚約又は婚姻をした場合

 5. 婚約後に他の者と姦淫した場合

 6. 婚約後1年以上生死が不明な場合

 7. 正当な理由なく、婚姻を拒絶し、又はその時期を遅らせる場合

 8. その他重大な事由がある場合

(最終改正 2011.3.7)

第805条(婚約の解除の方法) 婚約の解除は、相手方に対する意思表示によってする。ただし、相手方に対して意思表示をすることができないときは、その解除の原因があることを知った時に解除されたものとみなす。

第806条(婚約の解除と損害賠償請求権)① 婚約を解除したときは、当事者の一方は、過失のある相手方に対し、これによる損害の賠償を請求することができる。

 前項の場合には、財産上の損害のほか、精神上の苦痛に対しても損害賠償の責任を負う。

 精神上の苦痛に対する賠償請求権は、譲渡し、又は承継することができない。ただし、当事者間において、既にその賠償に関する契約が成立し、又は訴えを提起した後は、この限りでない。

第2節 婚姻の成立

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第807条(婚姻適齢) 18歳になった者は、婚姻をすることができる。 (最終改正2022.12.27)

第808条(同意が必要な婚姻)① 未成年者が婚姻をする場合には、父母の同意を得なければならず、この場合において、父母の一方が同意権を行使することができないときは他の一方の同意を得なければならず、父母が共に同意権を行使することができないときは未成年後見人の同意を得なければならない。

 成年被後見人は、父母又は成年後見人の同意を得て、婚姻をすることができる。

(最終改正2011.3.7)

第809条(近親婚等の禁止)① 8親等以内の血族(特別養子の養子縁組前の血族を含む。)の間では、婚姻をすることができない。

 6親等以内の血族の配偶者、配偶者の6親等以内の血族又は配偶者の4親等以内の血族の配偶者である姻族であり、若しくはこれらの姻族であった者の間では、婚姻をすることができない。

 6親等以内の養父母系の血族であった者及び4親等以内の養父母系の姻族であった者の間では、婚姻をすることができない。

(最終改正2005.3.31)

第810条(重婚の禁止) 配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。

第811条 削除

(最終改正2005.3.31)

第812条(婚姻の成立)① 婚姻は、家族関係の登録等に関する法律の定めるところにより届出をすることによって、その効力を生じる。

 前項の届出は、当事者双方及び成年である証人2人が連署した書面でしなければならない。

(最終改正2007.5.17)

第813条(婚姻の届出の審査) 婚姻の届出は、その婚姻が第807条から第810条まで及び前条第2項の規定その他の法令の規定に違反しないときは、受理しなければならない。

(最終改正2005.3.31)

第814条(外国での婚姻の届出)① 外国に在る本国民間の婚姻は、その外国に駐在する大使、公使又は領事に届出をすることができる。

 前項の届出を受理した大使、公使又は領事は、遅滞なく、その届出書類を本国の在外国民家族関係登録事務所に送付しなければならない。

(最終改正2015.2.3)

第3節 婚姻の無効及び取消し

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第815条(婚姻の無効) 婚姻は、次に掲げる場合には、無効とする。

 1. 当事者間に婚姻の合意がないとき。

 2. 婚姻が第809条第1項の規定に違反したとき。

 3. 当事者間に直系姻族関係があり、又はあったとき。

 4. 当事者間に養父母系の直系血族関係があったとき。

(最終改正2005.3.31)

第816条(婚姻の取消し) 婚姻は、次に掲げる場合には、裁判所に、その取消しを請求することができる。

 1. 婚姻が第807条から第809条まで(前条の規定により婚姻が無効となる場合を除く。次条及び第820条において同じ。)又は第810条の規定に違反したとき。

 2. 婚姻の時において当事者の一方に夫婦生活を継続することができない悪疾その他の重大な事由があることを知らなかったとき。

 3. 詐欺又は強迫によって婚姻の意思表示をしたとき。

(最終改正2005.3.31)

第817条(年齢違反の婚姻等の取消請求権者) 婚姻は、第807条又は第808条の規定に違反したときは当事者又はその法定代理人がその取消しを請求することでき、第809条の規定に違反したときは当事者又はその直系尊属若しくは4親等以内の傍系血族がその取消しを請求することができる。

(最終改正2022.12.27)

第818条(重婚の取消請求権者) 当事者若しくはその配偶者、直系血族若しくは4親等以内の傍系血族又は検事は、第810条の規定に違反した婚姻の取消しを請求することができる。

(最終改正2012.2.10)

第819条(同意のない婚姻の取消請求権の消滅) 第808条の規定に違反した婚姻は、その当事者が19歳になった後若しくは成年後見終了の審判があった後3箇月が経過し、又は婚姻中に妊娠した場合には、その取消しを請求することができない。

(最終改正2011.3.7)

第820条 (近親婚等の取消請求権の消滅) 第809条の規定に違反した婚姻は、その当事者間において婚姻中に妊娠したときは、その取消しを請求することができない。

(最終改正2005.3.31)

第821条 削除

(最終改正2005.3.31)

第822条(悪疾等の事由による婚姻の取消請求権の消滅) 第816条第2号の規定に該当する事由のある婚姻は、相手方がその事由のあることを知った日から6箇月を経過したときは、その取消しを請求することができない。

第823条(詐欺又は強迫による婚姻の取消請求権の消滅) 詐欺又は強迫による婚姻は、詐欺を知った日又は強迫を免れた日から3箇月を経過したときは、その取消しを請求することができない。

第824条(婚姻の取消しの効力) 婚姻の取消しの効力は、既往に遡及しない。

第824条の2(婚姻の取消しと子の養育等) 第837条及び第837条の2の規定は、婚姻の取消しの場合における子の養育責任及び面接交渉権について準用する。

(最終改正2005.3.31)

第825条(婚姻の無効及び取消しと損害賠償請求権) 第806条の規定は、婚姻の無効又は取消しの場合について準用する。

第4節 婚姻の効力

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第1款 一般的効力
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第826条(夫婦間の義務)① 夫婦は、同居し、互いに扶養し、協力しなければならない。ただし、正当な理由によって一時的に同居しない場合については、互いに容認しなければならない。

 夫婦の同居場所は、夫婦の協議によって定める。ただし、協議が調わない場合は、当事者の請求により、家庭裁判所がこれを定める。

(最終改正 2005.3.31) 

第826条の2(成年擬制) 未成年者が婚姻をしたときは、成年者とみなす。

(最終改正 1977.12.31)

第827条(夫婦間の家事代理権)① 夫婦は、日常の家事について、互いに代理権を有する。

 前項の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

第828条 削除

(最終改正 2012.2.10)

第2款 財産上の効力
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第829条(夫婦財産の約定及びその変更)① 夫婦が婚姻の成立前にその財産について別段の約定をしなかったときは、その財産関係は、次条から第833条までの規定に定めるところによる。

 夫婦が婚姻の成立前にその財産について約定をしたときは、婚姻中これを変更することができない。ただ、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、変更することができる。

 前項の約定により夫婦の一方が他の一方の財産を管理する場合において、不適当な管理によってその財産を危うくしたときは、他の一方は、自ら管理することを裁判所に請求することができ、また、その財産が夫婦の共有であるときは、その分割を請求することができる。

 夫婦がその財産について別段の約定をしたときは、婚姻の成立までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人又は第三者に対抗することができない。

⑤ 第2項若しくは第3項の規定又は約定により、管理者を変更し、又は共有財産を分割したときは、その登記をしなければ、これを夫婦の承継人又は第三者に対抗することができない。

第830条(特有財産及び帰属不明の財産)① 夫婦の一方が婚姻前から有する固有財産及び婚姻中に自己の名で取得した財産は、その特有財産とする。

② 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、夫婦の共有と推定する。

(最終改正 1977.12.31)

第831条(特有財産の管理等) 夫婦は、その特有財産を各自が管理し、使用し、及び収益する。

第832条(家事による債務の連帯責任) 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによる債務について連帯責任を負う。ただし、あらかじめ第三者に対して他の一方が責任を負わない旨を明示したときは、この限りでない。

第833条(生活費用) 夫婦の共同生活に必要な費用については、当事者間に特別な約定がないときは、夫婦が共同で負担する。

(最終改正 1990.1.13)

第5節 離婚

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第1款 協議上の離婚
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第834条(協議上の離婚) 夫婦は、協議によって、離婚をすることができる。

第835条(成年後見と協議上の離婚) 成年被後見人の協議上の離婚については、第808条第2項の規定を準用する。

(最終改正 2011.3.7)

第836条(離婚の成立及び届出方式)① 協議上の離婚は、家庭裁判所の確認を受けて、家族関係の登録等に関する法律の定めるところにより届出をすることによって、効力を生じる。

 前項の届出は、当事者双方及び成年者である証人2人の連署した書面で、しなければならない。 

(最終改正 2007.5.17)

第836条の2(離婚の手続)① 協議上の離婚をしようとする者は、家庭裁判所が提供する離婚に関する案内を受けなければならず、家庭裁判所は、必要な場合には、当事者に対して、相談に関し専門的な知識経験を有する専門相談員の相談を受けるべきことを勧告することができる。

 家庭裁判所に離婚意思の確認を申請した当事者は、前項の案内を受けた日から次に定める期間が経過した後に、離婚意思の確認を受けることができる。

 1.養育しなければならない子(胎児を含む。以下この条において同じ。)がいる場合には、3箇月

 2.前号に該当しない場合には、1箇月

 家庭裁判所は、暴力によって当事者の一方に耐え難い苦痛が予想される等離婚をしなければならない急迫な事情がある場合には、前項の期間を短縮し、又は免除することができる。

 養育しなければならない子がいる場合には、当事者は、次条の規定による子の養育及び第909条第4項の規定による子の親権者の決定に関する協議書又は次条及び第909条第4項の規定による家庭裁判所の裁判の正本を提出しなければならない。

 家庭裁判所は、当事者が協議した養育費の負担に関する内容を確認する養育費負担調書を作成しなければならない。 この場合において、養育費負担調書の効力については、家事訴訟法第41条の規定を準用する。

(最終改正 2009.5.8)

第837条(離婚と子の養育責任)① 当事者は、その子の養育に関する事項を協議によって定める。

 前項の協議は、次に掲げる事項を含まなければならない。

 1.養育者の決定

 2.養育費用の負担

 3.面接交渉権の行使の有無及びその方法

 第1項の規定による協議が子の福利に反する場合には、家庭裁判所は、補正を命じ、又は職権で、その子の意思、年齢及び父母の財産状況その他の事情を考慮し、養育に必要な事項を定める。

 養育に関する事項の協議が調わず、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、職権で又は当事者の請求により、これについて決定する。この場合おいて、家庭裁判所は、前項の事情を考慮しなければならない。

 家庭裁判所は、子の福利のために必要と認める場合には、父、母、子及び検事の請求により又は職権で、子の養育に関する事項を変更し、又はその他の適当な処分をすることができる。

 第3項から前項までの規定は、養育に関する事項外においては、父母の権利義務に変更を及ぼさない。

(最終改正 2022.12.27)

第837条の2(面接交渉権)① 子を直接養育しない父母の一方と子は、互いに面接交渉をすることができる権利を有する。

 子を直接養育しない父母の一方の直系尊属は、その父母の一方が死亡し、又は疾病、外国居住その他のやむを得ない事情によって子と面接交渉をすることができない場合には、家庭裁判所に子との面接交渉を請求することができる。 この場合において、家庭裁判所は、子の意思、面接交渉を請求した者と子の関係、請求の動機その他の事情を考慮しなければならない。

 家庭裁判所は、子の福利のために必要なときは、当事者の請求により又は職権で、面接交渉を制限し、排除し、又は変更することができる。

(最終改正 2016.12.2)

第838条(詐欺又は強迫による離婚の取消請求権) 詐欺又は強迫によって離婚の意思表示をした者は、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。

(最終改正 1990.1.13)

第839条(準用規定) 第823条の規定は、協議上の離婚について準用する。

第839条の2(財産分与請求権)① 協議上の離婚をした者の一方は、他の一方に対して財産の分与を請求することができる。

 前項の財産の分与について、協議が調わず、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、当事者の請求により、当事者双方の協力によって築いた財産の額その他の事情を考慮し、分与の額及び方法を定める。

 第1項の規定による財産分与請求権は、離婚した日から2年を経過したときは、消滅する。

(最終改正 1990.1.13)

第839条の3(財産分与請求権保全のための詐害行為取消権)① 夫婦の一方が他の一方の財産分与請求権の行使を害することを知りながらも財産権を目的とする法律行為をしたときは、他の一方は、第406条第1項の規定を準用し、その取消し及び原状回復を家庭裁判所に請求することができる。

 前項の規定による訴えは、第406条第2項に規定する期間内に提起しなければならない。

(最終改正 2007.12.21)

第2款 裁判上の離婚
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第840条(裁判上の離婚の原因) 夫婦の一方は、次に掲げる場合には、家庭裁判所に離婚を請求することができる。

 1.配偶者に不貞な行為があったとき。

 2.配偶者が悪意で他の一方を遺棄したとき。

 3.配偶者又はその直系尊属から著しく不当な待遇を受けたとき。

 4.自己の直系尊属が配偶者から著しく不当な待遇を受けたとき。

 5.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。

 6.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

(最終改正1990.1.13)

第841条(不貞による離婚請求権の消滅) 前条第1号に規定する事由については、他の一方が事前に同意をし、若しくは事後に宥恕をしたとき、又はこれを知った日から6箇月若しくはその事由があった日から2年を経過したときは、離婚を請求することができない。

第842条(その他の事由による離婚請求権の消滅) 第840条第6号の事由については、他の一方がこれを知った日から6箇月又はその事由があった日から2年を経過したときは、離婚を請求することができない。

第843条(準用規定) 裁判上の離婚による損害賠償責任については第806条の規定を準用し、裁判上の離婚による子の養育責任等については第837条の規定を準用し、裁判上の離婚による面接交渉権については第837条の2の規定を準用し、裁判上の離婚による財産分与請求権については第839条の2の規定を準用し、裁判上の離婚による財産分与請求権の保全のための詐害行為取消権については第839条の3の規定を準用する。

(最終改正2012.2.10)

第4章 父母及び子

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第1節 実子[1]

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第844条(夫の嫡出子の推定)① 妻が婚姻中に妊娠した子は、夫の子と推定する。

 婚姻が成立した日から200日後に出生した子は、婚姻中に妊娠したものと推定する。

 婚姻関係が終了した日から300日以内に出生した子は、婚姻中に妊娠したものと推定する。

(最終改正 2017.10.31)

第845条(裁判所による父の決定) 再婚した女性が出産した場合において、前条の規定によりその子の父を定めることができないときは、裁判所が、当事者の請求により、これを定める。

(最終改正 2005.3.31)

第846条(子の嫡出否認) 夫婦の一方は、第844条の場合において、その子が嫡出子であることを否認する訴えを提起することができる。

(最終改正 2005.3.31)

第847条(嫡出否認の訴え)① 嫡出否認の訴えは、夫又は妻が、他の一方又は子を相手として、その事由があることを知った日から2年内に、しなければならない。

 前項の場合において、相手方になるべき者が全て死亡したときは、その死亡を知った日から2年内に、検事を相手として、嫡出否認の訴えを提起することができる。

(最終改正 2005.3.31)

第848条(成年後見と嫡出否認の訴え)① 夫又は妻が成年被後見人である場合には、その成年後見人が、成年後見監督人の同意を得て、嫡出否認の訴えを提起することができる。 成年後見監督人がなく、又は同意することができないときは、家庭裁判所に、その同意に代わる許可を請求することができる。

 前項の場合において、成年後見人が嫡出否認の訴えを提起しないときは、成年被後見人は、成年後見終了の審判があった日から2年内に、嫡出否認の訴えを提起することができる。

(最終改正 2011.3.7)

第849条(子の死亡後の嫡出否認) 子が死亡した後であっても、直系卑属があるときはその母を相手とし、母がないときは検事を相手として、否認の訴えを提起することができる。

第850条(遺言による嫡出否認) 夫又は妻が遺言で否認の意思を表示したときは、遺言執行者は、嫡出否認の訴えを提起しなければならない。

(最終改正 2005.3.31)

第851条(子の出生前の夫の死亡等と嫡出否認) 夫が子の出生前に死亡し、又は夫若しくは妻が第847条第1項に規定する期間内に死亡したときは、夫又は妻の直系尊属又は直系卑属に限り、その死亡を知った日から2年内に、嫡出否認の訴えを提起することができる。

(最終改正 2005.3.31)

第852条(嫡出否認権の消滅) 子の出生後に嫡出子であることを承認した者は、嫡出否認の訴えを提起することができない。

(最終改正 2005.3.31)

第853条 削除

(最終改正 2005.3.31)

第854条(詐欺又は強迫による承認の取消し) 第852条に規定する承認が詐欺又は強迫によるときは、これを取り消すことができる。

(最終改正 2005.3.31)

第854条の2(嫡出否認の許可の請求)① 母又は母の前夫は、第844条第3項の場合において、家庭裁判所に、嫡出否認の許可を請求することができる。 ただし、婚姻中の子として出生届がされた場合は、この限りでない。

 前項に規定する請求がある場合には、家庭裁判所は、血液採取による血液型の検査、遺伝因子の検査等科学的な方法による検査の結果又は長期間の別居等その他の事情を考慮して、許可するかどうかを定める。

 前2項の規定による許可を得た場合には、第844条第1項及び第3項に規定する推定は及ばない。

(最終改正 2017.10.31)

第855条(認知)① 婚姻外の出生子は、その実父又は実母が認知することができる。 父母の婚姻が無効であるときは、出生子は、婚姻外の出生子とみなす。  婚姻外の出生子は、その父母が婚姻したときは、その時から婚姻中の出生子とみなす。

第855条の2(認知の許可の請求)① 実父は、第844条第3項の場合において、家庭裁判所に認知の許可を請求することができる。 ただし、婚姻中の子として出生届がされた場合は、この限りでない。

 前項に規定する請求がある場合には、家庭裁判所は、血液採取による血液型の検査、遺伝因子の検査等科学的な方法による検査の結果又は長期間の別居等その他の事情を考慮し、許可するかどうかを定める。

 前2項の規定による許可を得た実父が家族関係の登録等に関する法律第57条第1項の規定による届出をする場合には、第844条第1項及び第3項に規定する推定は及ばない。

(最終改正 2017.10.31)

第856条(成年被後見人の認知) 父が成年被後見人である場合には、成年後見人の同意を得て、認知することができる。

第857条(死亡した子の認知) 子が死亡した後であっても、その直系卑属があるときは、これを認知することができる。

第858条(胎児の認知) 父は、胎児についても認知することができる。

第859条(認知の効力の発生)① 認知は、家族関係の登録等に関する法律の定めるところにより届出をすることによって、その効力を生じる。

 認知は、遺言によってもすることができる。 この場合においては、遺言執行者がこれを届け出なければならない。

(最終改正 2007.5.17)

第860条(認知の遡及効) 認知は、その子の出生の時に遡って効力を生じる。 ただし、第三者の取得した権利を害することはできない。

第861条(認知の取消し) 詐欺、強迫又は重大な錯誤によって認知をしたときは、詐欺若しくは錯誤を知った日又は強迫を免れた日から6月内に、家庭裁判所に、その取消しを請求することができる。

(最終改正 2005.3.31)

第862条(認知に対する異議の訴え) 子その他利害関係人は、認知の届出があったことを知った日から1年内に、認知に対する異議の訴えを提起することができる。

第863条(認知請求の訴え) 子及びその直系卑属又はその法定代理人は、父又は母を相手として、認知請求の訴えを提起することができる。

第864条(父母の死亡と認知請求の訴え) 前2条の場合において、父又は母が死亡したときは、その死亡を知った日から2年内に、検事を相手として、認知に対する異議又は認知請求の訴えを提起することができる。 

(最終改正 2005.3.31)

第864条の2(認知と子の養育責任等) 第837条及び第837条の2の規定は、子が認知された場合における子の養育責任及び面接交渉権について準用する。

(最終改正 2005.3.31)

第865条(他の事由を原因とする嫡出子関係存否確認の訴え)① 第845条、第846条、第848条、第850条、第851条、第862条及び第863条の規定により訴えを提起することができる者は、他の事由を原因として、嫡出子関係存否確認の訴えを提起することができる。

 前項の場合において、当事者の一方が死亡したときは、その死亡を知った日から2年内に、検事を相手として、訴えを提起することができる。

(最終改正 2005.3.31)

第2節 養子

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第1款 縁組の要件及び効力
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第866条(養子縁組をする能力) 成年になった者は、養子縁組をすることができる。

(最終改正 2012.2.10)

第867条(未成年者の養子縁組に対する家庭裁判所の許可)① 未成年者と養子縁組しようとする者は、家庭裁判所の許可を得なければならない。

 家庭裁判所は、養子となる未成年者の福利のために、その養育状況、養子縁組の動機、養父母の養育能力その他の事情を考慮し、前項の規定による養子縁組の許可をしないことができる。

(最終改正 2012.2.10)

第868条 削除

(最終改正 1990.1.13)

第869条(養子縁組の意思表示)① 養子となる者が13歳以上の未成年者である場合には、法定代理人の同意を得て、養子縁組を承諾する。

 養子となる者が13歳未満である場合には、法定代理人が、その者に代わって、養子縁組を承諾する。

 家庭裁判所は、次に掲げる場合には、第1項の規定による同意又は前項の規定による承諾がなくても、第867条第1項の規定による養子縁組の許可をすることができる。

 1.法定代理人が正当な理由なく同意又は承諾を拒否する場合。ただし、法定代理人が親権者である場合には、次条第2項各号に掲げる場合でなければならない。

 2.法定代理人の所在を知ることができない等の事由で同意又は承諾を得ることができない場合

 前項第1号に掲げる場合には、家庭裁判所は、法定代理人を審問しなければならない。

 第1項の規定による同意又は第2項の規定による承諾は、第867条第1項の規定による養子縁組の許可があるまでは、撤回することができる。

(最終改正 2012.2.10)

第870条(未成年者の養子縁組に対する父母の同意)① 養子となる未成年者は、父母の同意を得なければならない。 ただし、次に掲げる場合においては、この限りでない。

 1.父母が前条第1項の規定による同意をし、又は同条第2項の規定による承諾をした場合

 2.父母が親権喪失の宣告を受けた場合

 3.父母の所在を知ることができない等の事由で同意を得ることができない場合

 家庭裁判所は、次に掲げる場合には、父母が同意を拒否したとしても、第867条第1項の規定による養子縁組の許可をすることができる。 この場合において、家庭裁判所は、父母を審問しなければならない。

 1.父母が3年以上子に対する扶養義務を履行しなかった場合

 2.父母が子を虐待し、若しくは遺棄し、又はその他子の福利を著しく害した場合

 第1項の規定による同意は、第867条第1項の規定による養子縁組の許可があるまでは、撤回することができる。

(最終改正 2012.2.10)

第871条(成年者の養子縁組に対する父母の同意)① 養子となる者が成年である場合には、父母の同意を得なければならない。 ただし、父母の所在を知ることができない等の事由で同意を得ることができない場合は、この限りでない。

 家庭裁判所は、父母が正当な理由なく同意を拒否する場合には、養父母となる者又は養子となる者の請求により、父母の同意に代わる審判をすることができる。 この場合において、家庭裁判所は、父母を審問しなければならない。

(最終改正 2012.2.10)

第872条 削除

(最終改正 2012.2.10)

第873条(成年被後見人の養子縁組)① 成年被後見人は、成年後見人の同意を得て、養子縁組をすることができ、また養子となることができる。

 成年被後見人が養子縁組をし、又は養子となる場合には、第867条の規定を準用する。

 家庭裁判所は、成年後見人が正当な理由なく第1項の規定による同意を拒否し、又は成年被後見人の父母が正当な理由なく第871条第1項の規定による同意を拒否する場合には、その同意がないとしても、養子縁組を許可することができる。この場合において、家庭裁判所は、成年後見人又は父母を審問しなければならない。

(最終改正 2012.2.10)

第874条(夫婦の共同養子縁組等)① 配偶者がある者は、配偶者と共同で養子縁組をしなければならない。

 配偶者がある者は、その配偶者の同意を得て、養子となることができる。

(最終改正 2012.2.10)

第875条及び第876条 削除

(最終改正 1990.1.13)

第877条(養子縁組の禁止) 尊属又は年長者を養子とすることはできない。

(最終改正 2012.2.10)

第878条(養子縁組の成立) 養子縁組は、家族関係の登録等に関する法律に定めるところにより届出をすることによって、効力を生じる。

(最終改正 2012.2.10)

第879条及び第880条 削除

(最終改正 1990.1.13)

第881条(養子縁組の届出の審査) 第866条、第867条、第869条から第871条まで、第873条、第874条及び第877条の規定並びにその他の法令に違反しない養子縁組の届出は、受理しなければならない。

(最終改正 2012.2.10)

第882条(外国における養子縁組の届出) 外国において養子縁組の届出をする場合については、第814条の規定を準用する。

(最終改正 2012.2.10)

第881条の2(養子縁組の効力)① 養子は、養子縁組をした時から養父母の嫡出子と同じ地位を有する。

 養子の養子縁組前の親族関係は、存続する。

(最終改正 2012.2.10)

第2款 縁組の無効及び取消し
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第883条(養子縁組の無効原因) 次に掲げる場合には、養子縁組は、無効とする。

 1.当事者間に養子縁組の合意がない場合

 2.第867条第1項(第873条第2項の規定により準用される場合を含む。)、第869条第2項又は第877条の規定に違反した場合

(最終改正 2012.2.10)

第884条(養子縁組の取消原因)① 養子縁組が次に掲げる場合は、家庭裁判所に、その取消しを請求することができる。

 1.第866条、第869条第1項若しくは第3項第2号、第870条第1項、第871条第1項、第873条第1項又は第874条の規定に違反した場合

 2.養子縁組の時に、養父母と養子のいづれか一方に悪疾又はその他の重大な事由があることを知ることができなかった場合

 3.詐欺又は強迫によって養子縁組の意思表示をした場合

 養子縁組の取消しについては、第867条第2項の規定を準用する。

(最終改正 2012.2.10)

第885条(養子縁組の取消請求権者) 養父母、養子及びその法定代理人又は直系血族は、第866条の規定に違反した養子縁組の取消しを請求することができる。

(最終改正 2012.2.10)

第886条(養子縁組の取消請求権者) 養子及び同意権者は、第869条第1項若しくは第3項第2号又は第870条第1項の規定に違反した養子縁組の取消しを請求することができ、同意権者は、第871条第1項の規定に違反した養子縁組の取消しを請求することができる。

(最終改正 2012.2.10)

第887条(養子縁組の取消請求権者) 成年被後見人及び成年後見人は、第873条第1項の規定に違反した養子縁組の取消しを請求することができる。

(最終改正 2012.2.10)

第888条(養子縁組の取消請求権者) 配偶者は、第874条の規定に違反した養子縁組の取消しを請求することができる。

(最終改正 2012.2.10)

第889条(養子縁組の取消請求権の消滅) 養父母が成年となったときは、第866条の規定に違反した養子縁組の取消しを請求することができない。

(最終改正 2012.2.10)

第890条  削除

(最終改正 1990.1.13)

第891条(養子縁組の取消請求権の消滅)① 養子が、成年となった後3箇月が過ぎ、又は死亡したときは、第869条第1項若しくは第3項第2号又は第870条第1項の規定に違反した養子縁組の取消しを請求することができない。

 養子が死亡したときは、第871条第1項の規定に違反した養子縁組の取消しを請求することができない。

(最終改正 2012.2.10)

第892条  削除

(最終改正 2012.2.10)

第893条(養子縁組の取消請求権の消滅) 成年後見開始の審判が取り消された後3箇月が過ぎたときは、第873条第1項の規定に違反した養子縁組の取消しを請求することができない。

(最終改正 2012.2.10)

第894条(養子縁組の取消請求権の消滅) 第869条第1項若しくは第3項第2号、第870条第1項、第871条第1項、第873条第1項又は第874条の規定に違反した養子縁組は、その事由があることを知った日から6箇月、その事由が生じた日から1年が過ぎたときは、その取消しを請求することができない。

(最終改正 2012.2.10)

第895条  削除

(最終改正 1990.1.13)

第896条(養子縁組の取消請求権の消滅) 第884条第1項第2号に規定する事由がある養子縁組は、養父母と養子のうちの一方がその事由があることを知った日から6箇月が過ぎたときは、その取消しを請求することができない。   (最終改正 2012.2.10)

第897条(準用規定) 養子縁組の無効又は取消しによる損害賠償責任については第806条の規定を準用し、詐欺又は強迫による養子縁組の取消請求権の消滅については第823条の規定を準用し、養子縁組の取消しの効力については第824条の規定を準用する。

(最終改正 2012.2.10)

第3款 離縁
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第1目 協議上の離縁
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第898条(協議上の離縁) 養父母及び養子は、協議して離縁をすることができる。 ただし、養子が未成年者又は成年被後見人である場合は、この限りでない。

(最終改正 2012.2.10)

第899条から第901条まで  削除

(最終改正 2012.2.10)

第902条(成年被後見人の協議上の離縁) 成年被後見人である養父母は、成年後見人の同意を得て、離縁を協議することができる。

(最終改正 2012.2.10)

第903条(離縁の届出の審査) 第898条若しくは第902条の規定又はその他の法令に違反しない離縁の届出は、受理しなければならない。

(最終改正 2012.2.10)

第904条(準用規定) 詐欺又は強迫による離縁の取消請求権の消滅については第823条の規定を準用し、 協議上の離縁の成立については第878条の規定を準用する。

第2目 裁判上の離縁
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第905条(裁判上の離縁の原因) 養父母、養子又は次条の規定による請求権者は、次に掲げる場合には、家庭裁判所に、離縁を請求することができる。

 1.養父母が養子を虐待し、若しくは遺棄し、又はその他養子の福利を著しく害した場合

 2.養父母が養子から著しく不当な待遇を受けた場合

 3.養父母又は養子の生死が3年以上明らかでない場合

 4.その他養親子関係を継続し難い重大な事由がある場合

(最終改正 2012.2.10)

第906条(離縁の請求権者)① 養子が13歳未満である場合には、第869条第2項の規定による承諾をした者が、養子に代わって、離縁を請求することができる。 ただし、離縁を請求することができる者がない場合には、 第777条の規定による養子の親族又は利害関係人が、家庭裁判所の許可を得て、離縁を請求することができる。

 養子が13歳以上の未成年者である場合には、第870条第1項の規定による同意をした父母の同意を得て、離縁を請求することができる。 ただし、父母が死亡し、又はその他の事由によって同意することができない場合には、同意なしに、離縁を請求することができる。

 養父母又は養子が成年被後見人である場合には、成年後見人の同意を得て、離縁を請求することができる。

 検事は、未成年者又は成年被後見人である養子のために、離縁を請求することができる。

(最終改正 2012.2.10)

第907条(離縁請求権の消滅) 離縁の請求権者は、第905条第1号、第2号又は第4号に規定する事由があることを知った日から6箇月、その事由が生じた日から3年が過ぎたときは、離縁を請求することができない。

(最終改正 2012.2.10)

第908条(準用規定) 裁判上の離縁による損害賠償責任については、第806条の規定を準用する。

(最終改正 2012.2.10)

第4款 親養子
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第908条の2(親養子縁組の要件等)① 親養子を縁組しようとする者は,次の各号の要件を備え,家庭裁判所に親養子縁組を請求しなければならない。

1. 3年以上婚姻中である夫婦であって,共同で縁組すること。但し,1年以上婚姻中である夫婦の一方が,その配偶者の実子を親養子とするときは,この限りではない。
2. 親養子となる者が未成年者であること
3. 親養子となる者の実父母が親養子縁組に同意すること。但し,父母が親権喪失の言渡を受け,所在が知れず,又はその他の事由により同意をすることのできないときは,この限りではない。
4. 親養子となる者が13歳以上であるときは,法定代理人の同意を受けて縁組を承諾すること
5. 親養子となる者が13歳未満であるときは,法定代理人がその者に代えて縁組を承諾すること

② 家庭裁判所は,次の各号のいずれか一に該当するときは,第1項第3号・第4号による同意又は同項第5号による承諾がなくても第1項の請求を認容することができる。この場合において,家庭裁判所は,同意権者又は承諾権者を審問しなければならない。

1. 法定代理人が正当な理由なく同意又は承諾を拒否するとき。但し,法定代理人が親権者であるときは,第2号又は第3号の事由がなければならない。
2. 実父母が自らに責任がある事由によって3年以上子女に対する扶養義務を履行せず,及び面接交渉をしなかったとき
3. 実父母が子女を虐待又は遺棄し,その他子女の福利を著しく害したとき

③ 家庭裁判所は,親養子となる者の福利のため,その養育状況,親養子縁組の登記,養父母の養育能力その他の事情を考慮して親養子縁組が適当でないと認めるときは,第1項の請求を棄却することができる。

[全文改正 2012.2.10.]

第908条の3(親養子縁組の効力)①親養子は,夫婦の嫡出子と見なす。

②親養子の縁組前の親族関係は,第908条の2第1項の請求による親養子縁組が確定したときに終了する。但し,夫婦の一方がその配偶者の実子を単独で縁組した場合における配偶者及びその親族と実子の間の親族関係は,この限りではない。

[本条新設 2005.3.31.]

第908条の4(親養子縁組の取消等)① 親養子となる者の実方の父又は母は,自らに責任のない事由により第908条の2第1項第3号但書による同意を得ることができなかった場合において,親養子縁組の事実を知った日から6箇月内に家庭裁判所に親養子縁組の取消を請求することができる。

② 親養子縁組については,第883条,第884条を適用しない。

[全文改正 2012.2.10.]

第908条の5(親養子の離縁)①養親,親養子,実方の父若しくは母又は検事は,次の各号のいずれか一の事由があるときは,家庭裁判所に親養子の離縁を請求することができる。

1. 養親が親養子を虐待又は遺棄し,その他親養子の福利を著しく害するとき
2. 親養子の養親に対する背倫行為により親養子関係を維持させることができなくなったとき

②第898条及び第905条の規定は,親養子の離縁についてこれを適用しない。

[本条新設 2005.3.31.]

第908条の6(準用規定)第908条の2第3項は,親養子縁組の取消又は第908条の5第1項第2号による離縁の請求についてこれを準用する。<改正 2012.2.10.>

[本条新設 2005.3.31.]

第908条の7(親養子縁組の取消・離縁の効力)①親養子縁組が取り消され,又は離縁したときは,親養子関係は消滅し,縁組前の親族関係は復活する。

②第1項の場合において,親養子縁組の取消の効力は,遡及しない。

[本条新設 2005.3.31.]

第908条の8(準用規定)親養子についてこの款に特別の規定がある場合を除いては,その性質に反しない範囲内において養子に関する規定を準用する。

[本条新設 2005.3.31.]

第3節 親権

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第1款 総則
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第909条(親権者)① 父母は、未成年者である子の親権者となる。 養子の場合には、養父母が親権者となる。

 親権は、父母が婚姻中であるときは、父母が共同で行使する。ただし、父母の意見が一致しない場合には、当事者の請求により、家庭裁判所がこれを定める。

 父母の一方が親権を行使することができないときは、他の一方がこれを行使する。

 婚姻外の子が認知された場合及び父母が離婚している場合には、父母の協議で親権者を定めなければならず、協議をすることができず、又は協議が調わない場合には、家庭裁判所は、職権で又は当事者の請求により、親権者を指定しなければならない。 ただし、父母の協議が子の福利に反する場合には、家庭裁判所は、補正を命じ、又は職権で、親権者を定める。

 家庭裁判所は、婚姻の取消し、裁判上の離婚又は認知の請求の訴えの場合には、職権で、親権者を定める。

 家庭裁判所は、子の福祉のために必要と認める場合には、子の4親等以内の親族の請求により、定められた親権者を他の一方に変更することができる。

(最終改正 2007.12.21)

第909条の2(親権者の指定等)① 第909条第4項から第6項までの規定により単独親権者に定められた父母の一方が死亡した場合には、生存する父若しくは母、未成年者又は未成年者の親族は、その事実を知った日から1箇月内、死亡した日から6箇月内に、家庭裁判所に、生存する父又は母を親権者に指定するよう請求することができる。

 養子縁組が取り消され、若しくは離縁された場合又は養父母が全て死亡した場合は、実父母の一方若しくは双方、未成年者又は未成年者の親族は、その事実を知った日から1箇月内、養子縁組が取り消され、若しくは離縁された日又は養父母が全て死亡した日から6箇月内に、家庭裁判所に、実父母の一方又は双方を親権者に指定するよう請求することができる。 ただし、特別養子の養父母が死亡した場合は、この限りでない。

 第1項又は前項に規定する期間内に親権者指定の請求がないときは、家庭裁判所は、職権で又は未成年者、未成年者の親族、利害関係人、検事若しくは地方自治団体の長の請求により、未成年後見人を選任することができる。この場合において、生存する父若しくは母若しくは実父母の一方若しくは双方の所在を知ることができず、又はそれらの者が正当な事由なく召喚に応じない場合を除き、それらの者に意見を陳述する機会を与えなければならない。

 家庭裁判所は、第1項若しくは第2項の規定による親権者指定請求又は前項の規定による後見人選任請求が、生存する父若しくは母又は実父母の一方若しくは双方の養育意思、養育能力及び請求動機並びに未成年者の意思その他の事情を考慮し、未成年者の福利のために適切でないと認めるときは、請求を棄却することができる。 この場合において、家庭裁判所は、職権で、未成年後見人を選任し、又は生存する父若しくは母若しくは実父母の一方若しくは双方を親権者に指定しなければならない。

  家庭裁判所は、次に掲げる場合には、職権で又は未成年者、未成年者の親族、利害関係人、検事若しくは地方自治団体の長の請求により、第1項から前項までの規定により親権者が指定され、又は未成年後見人が選任されるときまで、その任務を代行する者を選任することができる。 この場合において、その任務を代行する者については、第25条及び第954条の規定を準用する。

 1.単独親権者が死亡した場合

 2.養子縁組が取り消され、又は離縁された場合

 3.養父母が全て死亡した場合

  家庭裁判所は、第3項又は第4項の規定により未成年後見人が選任された場合であっても、未成年後見人の選任後の養育状況及び養育能力の変動並びに未成年者の意思その他の事情を考慮し、未成年者の福利のために必要なときは、生存する父若しくは母、実父母の一方若しくは双方又は未成年者の請求により、後見を終了して、生存する父若しくは母又は実父母の一方若しくは双方を親権者に指定することができる。

(最終改正 2011.5.19)

第910条(子の親権の代行) 親権者は、その親権に服する子に代わって、その子の子に対する親権を行使する。

(最終改正 2005.3.31)

第911条(未成年者である子の法定代理人) 親権を行使する父又は母は、未成年者である子の法定代理人になる。

第912条(親権行使及び親権者指定の基準)① 親権を行使するに当たっては、子の福利を優先的に考慮しなければならない。

 家庭裁判所が親権者を指定するに当たっては、子の福利を優先的に考慮しなければならない。このために、家庭裁判所は、関連分野の専門家又は社会福祉機関から助言を受けることができる。

(最終改正 2011.5.19)

第2款 親権の効力
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第913条(保護及び教育の権利義務) 親権者は、子を保護し、及び教育する権利義務がある。

第914条(居所指定権) 子は、親権者の指定した場所に居住しなければならない。

第915条 削除

(最終改正 2021.1.26)

第916条(子の特有財産及びその管理) 子が自己の名義で取得した財産は、その特有財産とし、法定代理人である親権者が管理する。

第917条 削除

(最終改正 1990.1.13)

第918条(第三者が無償で子に授与した財産の管理)① 無償で子に財産を授与した第三者が親権者の管理に反対する意思を表示したときは、親権者は、その財産を管理することができない。

 前項の場合において、第三者がその財産管理人を指定しなかったときは、裁判所は、財産の授与を受けた子又は第777条の規定による親族の請求により、財産管理人を選任する。

 第三者の指定した財産管理人の権限が消滅し、又は財産管理人を改任する必要がある場合において、第三者が改めて財産管理人を指定しなかったときも、前項と同様とする。

 第24条第1項、第2項及び第4項、第25条前段並びに第26条第1項及び第2項の規定は、前2項の場合について準用する。

第919条(委任に関する規定の準用) 第691条及び第692条の規定は、第916条及び前条の規定による財産管理について準用する。

第920条(子の財産に関する親権者の代理権) 法定代理人である親権者は、子の財産に関する法律行為について、その子を代理する。ただし、その子の行為を目的とする債務を負担する場合には、本人の同意を得なければならない。

第920の2(共同親権者の一方が共同名義でした行為の効力) 父母が共同で親権を行使する場合において、父母の一方が共同名義で、子を代理し、又は子の法律行為に同意したときは、他の一方の意思に反するときであっても、その効力を有する。ただし、相手方が悪意であるときは、この限りでない。

(最終改正 1990.1.13)

第921条(親権者とその子の間又は数人の子の間の利害相反行為)① 法定代理人である親権者とその子の間で利害の相反する行為をするには、 親権者は、裁判所に、その子の特別代理人の選任を請求しなければならない。

 法定代理人である親権者がその親権に服する数人の子の間で利害の相反する行為をするには、裁判所に、その子の一方の特別代理人の選任を請求しなければならない。

(最終改正 2005.3.31)

第922条(親権者の注意義務) 親権者がその子についての法律行為の代理権又は財産管理権を行使するには、自己の財産に関する行為と同じ注意をしなければならない。

第922条の2(親権者の同意に代わる裁判) 家庭裁判所は、親権者の同意が必要な行為について親権者が正当な理由なく同意しないことによって、子の生命、身体又は財産に重大な損害が生じるおそれのある場合には、子、子の親族、検事又は地方自治団体の長の請求により、親権者の同意に代わる裁判をすることができる。

(最終改正 2014.10.15)

第923条(財産管理の計算)① 法定代理人である親権者の権限が消滅したときは、その子の財産に関する管理の計算をしなければならない。

 前項の場合において、その子の財産から収取した果実は、その子の養育及び財産管理の費用と相殺したものとみなす。ただし、無償で子に財産を授与した第三者が反対の意思を表示したときは、その財産については、この限りでない。

第3款 親権の喪失、一時停止及び一部制限
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第924条(親権の喪失又は一時停止の宣告)① 家庭裁判所は、父又は母が親権を濫用して子の福利を著しく害し、又は害するおそれのある場合には、子、子の親族、検事又は地方自治団体の長の請求により、その親権の喪失又は一時停止を宣告することができる。

 家庭裁判所は、親権の一時停止を宣告するときは、子の状態、養育状況その他の事情を考慮して、その期間を定めなければならない。この場合において、その期間は、2年を超えることができない。

 家庭裁判所は、子の福利のために親権の一時停止の期間の延長が必要と認める場合には、子、子の親族、検事、地方自治団体の長、未成年後見人又は未成年後見監督人の請求により、2年の範囲でその期間を1回に限り、延長することができる。

(最終改正 2014.10.15)

第924条の2(親権の一部制限の宣告) 家庭裁判所は、居所の指定その他の身上に関する決定等特定の事項について親権者が親権を行使することが困難な又は不適当な事由があって、子の福利を害し、又は害するおそれがある場合には、子、子の親族、検事又は地方自治団体の長の請求により、具体的な範囲を定めて親権の一部制限を宣告することができる。

(最終改正 2021.1.26)

第925条(代理権及び財産管理権の喪失の宣告) 家庭裁判所は、法定代理人である親権者が不適当な管理によって子の財産を危うくした場合には、 子の親族、検事又は地方自治団体の長の請求により、その法律行為の代理権及び財産管理権の喪失を宣告することができる。

(最終改正 2014.10.15)

第925条の2(親権喪失の宣告等の判断基準)① 第924条の規定による親権の喪失の宣告は、同条の規定による親権の一時停止、第924条の2の規定による親権の一部制限、前条の規定による代理権及び財産管理権の喪失の宣告又はその他の措置によっては子の福利を十分に保護することができない場合に限り、することができる。

 第924条の規定による親権の一時停止、第924条の2の規定による親権の一部制限又は前条の規定による代理権及び財産管理権の喪失の宣告は、第922条の2の規定による同意に代わる裁判又はその他の措置によっては子の福利を十分に保護することができない場合に限り、することができる。

(最終改正 2014.10.15)

第925条の3(父母の権利及び義務) 第924条、第924条の2及び第925条の規定により親権の喪失、一時停止、一部制限又は代理権及び財産管理権の喪失が宣告された場合であっても、父母の子に対するその他の権利及び義務は、変更されない。

(最終改正 2014.10.15)

第926条(失権回復の宣告) 家庭裁判所は、第924条、第924条の2又は第925条の規定による宣告の原因が消滅した場合には、本人、子、子の親族、検事又は地方自治団体の長の請求により、失権の回復を宣告することができる。

(最終改正 2014.10.15)

第927条(代理権及び管理権の辞退及び回復)① 法定代理人である親権者は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、その法律行為の代理権及び財産管理権を辞退することができる。

 前項の事由が消滅したときは、その親権者は、裁判所の許可を得て、辞退した権利を回復することができる。

第927条の2(親権の喪失、一時停止又は一部制限と親権者の指定等)① 第909条第4項から第6項までの規定により単独親権者となった父若しくは母又は養父母(特別養子の養父母を除く。)の双方が次に掲げる場合に該当するときは、第909条の2第1項及び第3項から第5項までの規定を準用する。ただし、第1号の3、第2号及び第3号の場合に新たに定められた親権者又は未成年後見人の任務は、制限された親権の範囲に属する行為に限定される。

 1.第924条の規定による親権喪失の宣告がある場合

 1の2.第924条の規定による親権の一時停止の宣告がある場合

 1の3.第924条の2の規定による親権の一部制限の宣告がある場合

 2.第925条の規定による代理権及び財産管理権の喪失の宣告がある場合

 3.前条第1項の規定により代理権及び財産管理権を辞退した場合

 4.所在不明等親権を行使することができない重大な事由がある場合

 家庭裁判所は、前項の規定により親権者が指定され、又は未成年後見人が選任された後に、単独親権者であった父若しくは母又は養父母の一方若しくは双方が次に掲げる場合に該当するときは、その父母の一方若しくは双方、未成年者又は未成年者の親族の請求により、親権者を新たに指定することができる。

 1.第926条の規定により失権の回復が宣告された場合

 2.前条第2項の規定により辞退した権利を回復した場合

 3.所在不明であった父又は母が発見される等親権を行使することができるようになった場合

(最終改正 2014.10.15)

第5章 後見

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第1節 未成年後見及び成年後見

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第1款 後見人
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第928条(未成年者に対する後見の開始) 未成年者に親権者がなく、又は親権者が第924条、第924条の2、第925条若しくは第927条第1項の規定により親権の全部若しくは一部を行使することができない場合には、未成年後見人を置かなければならない。

(最終改正 2014.10.15)


第929条(成年後見審判による後見の開始) 家庭裁判所の成年後見開始の審判がある場合には、その審判を受けた者の成年後見人を置かなければならない。

(最終改正 2011.3.7)

第930条(後見人の数及び資格)① 未成年後見人の数は、一人とする。

 成年後見人は、成年被後見人の身上及び財産に関するすべての事情を考慮して、数人置くことができる。

 法人も、成年後見人となることができる。 

(最終改正 2011.3.7)

第931条(遺言による未成年後見人の指定等)① 未成年者に親権を行使する父母は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。 ただし、法律行為の代理権及び財産管理権を有しない親権者は、この限りでない。

 家庭裁判所は、前項の規定により未成年後見人が指定された場合であっても、 未成年者の福利のために必要なときは、生存する父若しくは母又は未成年者の請求により、後見を終了して、生存する父又は母を親権者に指定することができる。

(最終改正 2011.5.19)

第932条(未成年後見人の選任)① 家庭裁判所は、前条の規定により指定された未成年後見人がない場合には、職権で又は未成年者、親族、利害関係人、検事若しくは地方自治団体の長の請求により、未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けた場合も、同様とする。

 家庭裁判所は、第924条、第924条の2及び第925条の規定による親権の喪失、一時停止若しくは一部制限の宣告又は法律行為の代理権及び財産管理権の喪失の宣告によって未成年後見人を選任する必要がある場合には、職権で、未成年後見人を選任する。

 親権者が代理権及び財産管理権を辞退した場合には、遅滞なく家庭裁判所に未成年後見人の選任を請求しなければならない。

(最終改正 2014.10.15)

第933条から第935条まで 削除

(最終改正 2011.3.7)

第936条(成年後見人の選任)① 第929条の規定による成年後見人は、家庭裁判所が、職権で、選任する。

 家庭裁判所は、成年後見人が死亡、欠格その他の事由によって欠けた場合においても、職権で又は成年被後見人、親族、利害関係人、検事若しくは地方自治団体の長の請求により、成年後見人を選任する。

 家庭裁判所は、成年後見人が選任されている場合においても、必要と認めるときは、職権で又は前項に規定する請求権者若しくは成年後見人の請求により、更に成年後見人を選任することができる。

 家庭裁判所が成年後見人を選任するときは、成年被後見人の意思を尊重しなければならないほか、成年被後見人の健康、生活関係及び財産状況並びに成年後見人となる者の職業、経験及び成年被後見人との利害関係の有無(法人が成年後見人となるときは、事業の種類及び内容並びに法人及びその代表者と成年被後見人の間の利害関係の有無をいう。)等の事情も考慮しなければならない。

(最終改正 2011.3.7)

第937条(後見人の欠格事由) 次に掲げる者は、後見人となることができない。

 1.未成年者

 2.成年被後見人、限定被後見人、特定被後見人又は任意被後見人

 3.再生手続開始決定又は破産宣告を受けた者

 4.資格停止以上の刑の宣告を受け、その刑期中にある者

 5.裁判所から解任された法定代理人

 6.裁判所から解任された成年後見人、限定後見人、特定後見人及び任意後見人並びにこれらの監督人

 7.行方が不明な者

 8.被後見人を相手として訴訟をしたことがあり、又は現にしている者

 9.前号に規定する者の配偶者及び直系血族。 ただし、被後見人の直系卑属は除く。

(最終改正 2016.12.20)

第938条(後見人の代理権等)① 後見人は、被後見人の法定代理人となる。

 家庭裁判所は、成年後見人が前項の規定により有する法定代理権の範囲を定めることができる。

 家庭裁判所は、成年後見人が成年被後見人の身上について決定することができる権限の範囲を定めることができる。

 第2項及び前項の規定による法定代理人の権限の範囲が適切でなくなった場合において、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等以内の親族、成年後見人、成年後見監督人、検事又は地方自治団体の長の請求により、その範囲を変更することができる。

(最終改正 2011.3.7)

第939条(後見人の辞任) 後見人は、正当な事由がある場合には、家庭裁判所の許可を得て、辞任することができる。 この場合には、その後見人は、辞任の請求と同時に、家庭裁判所に新たな後見人の選任を請求しなければならない。

(最終改正 2011.3.7)

第940条(後見人の変更) 家庭裁判所は、被後見人の福利のために後見人を変更する必要があると認めるときは、職権で又は被後見人、親族、後見監督人、検事若しくは地方自治団体の長の請求により、後見人を変更することができる。

(最終改正 2011.3.7)

第2款 後見監督人
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第940条の2(未成年後見監督人の指定) 未成年後見人を指定することができる者は、遺言で、未成年後見監督人を指定することができる。 

(最終改正 2011.3.7)

第940条の3(未成年後見監督人の選任)① 家庭裁判所は、前条の規定により指定された未成年後見監督人がない場合において必要と認めるときは、職権で又は未成年者、親族、未成年後見人、検事若しくは地方自治団体の長の請求により、未成年後見監督人を選任することができる。

 家庭裁判所は、未成年後見監督人が死亡、欠格その他の事由によって欠けた場合には、職権で又は未成年者、親族、未成年後見人、検事、地方自治団体の長の請求により、未成年後見監督人を選任する。

(最終改正 2011.3.7)

第940条の4(成年後見監督人の選任)① 家庭裁判所は、必要と認めるときは、職権で又は成年被後見人、親族、成年後見人、検事若しくは地方自治団体の長の請求により、成年後見監督人を選任することができる。

 家庭裁判所は、成年後見監督人が死亡、欠格その他の事由によって欠けた場合には、職権で又は成年被後見人、親族、成年後見人、検事若しくは地方自治団体の長の請求により、成年後見監督人を選任する。

(最終改正 2011.3.7)

第940条の5(後見監督人の欠格事由) 第779条の規定による後見人の家族は、後見監督人となることができない。

(最終改正 2011.3.7)

第940条の6(後見監督人の職務)① 後見監督人は、後見人の事務を監督するほか、後見人が欠けた場合には、遅滞なく、家庭裁判所に後見人の選任を請求しなければならない。

 後見監督人は、被後見人の身上又は財産について急迫な事情がある場合には、その保護のために必要な行為又は処分をすることができる。

 後見人と被後見人の間で利害が相反する行為については、後見監督人が被後見人を代理する。

(最終改正 2011.3.7)

第940条の7(委任及び後見人の規定の準用) 後見監督人については、第681条、第691条、第692条、第930条第2項及び第3項、第936条第3項及び第4項、第937条、第939条、第940条、第947条の2第3項から第5項まで、第949条の2、第955条並びに第955条の2の規定を準用する。

(最終改正 2011.3.7)

第3款 後見人の任務
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第941条(財産の調査及び目録作成)① 後見人は、遅滞なく被後見人の財産を調査し、2箇月内に、その目録を作成しなければならない。 ただし、正当な事由がある場合には、裁判所の許可を得て、その期間を延長することができる。

 後見監督人がある場合には、前項の規定による財産の調査及び目録作成は、後見監督人の立会いがなければ、効力を有しない。

(最終改正 2011.3.7)

第942条(後見人の債権債務の提示)① 後見人と被後見人の間に債権債務の関係がある場合において、後見監督人があるときは、後見人は、財産目録の作成を完了する前に、その内容を後見監督人に提示しなければならない。

 後見人が、被後見人に対する債権を有することを知りながら、前項の規定による提示を怠った場合には、その債権を放棄したものとみなす。

(最終改正 2011.3.7)

第943条(目録作成前の権限) 後見人は、財産の調査及び目録作成を完了するまでは、緊急に必要な場合でなければ、その財産に関する権限を行使することができない。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

第944条(被後見人が取得した包括的財産の調査等) 前3条の規定は、後見人の就任後に被後見人が包括的財産を取得した場合について準用する。

第945条 (未成年者の身分に関する後見人の権利義務) 未成年後見人は、第913条及び第914条に規定する事項については、親権者と同じ権利義務を有する。 ただし、次に掲げる場合において、未成年後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。

 1.親権者が定めた教育方法、養育方法又は居所を変更する場合

 2.削除

 3.親権者が許諾した営業を取り消し、又は制限する場合

(最終改正 2021.1.26)

第946条(親権の一部に限定された後見) 未成年者の親権者が、第924条の2、第925条又は第927条第1項の規定により、親権の一部を行使することができない場合には、未成年後見人の任務は、その制限された親権の範囲に属する行為に限定される。

(最終改正 2014.10.15)

第947条(成年被後見人の福利及び意思の尊重) 成年後見人は、成年被後見人の財産管理及び身上保護を行うときは、諸事情を考慮して、その者の福利に適する方法によって事務を処理しなければならない。この場合において、成年後見人は、成年被後見人の福利に反しないときは、成年被後見人の意思を尊重しなければならない。

(最終改正 2011.3.7)

第947条の2(成年被後見人の身上の決定等)① 成年被後見人は、その身上について、その状態が許す範囲において、単独で決定する。

 成年後見人が成年被後見人を治療等の目的で精神病院又はその他の場所に隔離しようとする場合には、家庭裁判所の許可を得なければならない。

 成年被後見人の身体を侵害する医療行為について、成年被後見人が同意することができない場合には、成年後見人は、その者に代わって、同意することができる。

 前項の場合において、成年被後見人が医療行為の直接的な結果として死亡し、又は相当な障害を受けるおそれがあるときは、家庭裁判所の許可を得なければならない。 ただし、許可手続によって医療行為が遅滞して、成年被後見人の生命に危険を招き、又は心身上の重大な障害を招くときは、事後に許可を請求することができる。

 成年後見人が成年被後見人を代理して、成年被後見人が居住している建物又はその宅地について、売渡し、賃貸、伝貰権設定、抵当権設定、賃貸借の解約告知、伝貰権の消滅又はこれらに準じる行為をする場合には、家庭裁判所の許可を得なければならない。

(最終改正 2011.3.7)

第948条(未成年者の親権の代行)① 未成年後見人は、未成年者に代わって、未成年者の子に対する親権を行使する。

 前項に規定する親権の行使については、未成年後見人の任務に関する規定を準用する。

(最終改正 2011.3.7)

第949条(財産管理権及び代理権)① 後見人は、被後見人の財産を管理し、その財産に関する法律行為について被後見人を代理する。

 第920条ただし書の規定は、前項の法律行為について準用する。

第949条の2(成年後見人が数人いる場合の権限の行使等)① 家庭裁判所は、職権で、数人の成年後見人が、共同して又は事務を分掌して、その権限を行使するよう定めることができる。

 家庭裁判所は、職権で、前項の規定による定めを変更し、又は取り消すことができる。

 数人の成年後見人が共同して権限を行使しなければならない場合において、ある成年後見人が、成年被後見人の利益が侵害されるおそれがあるにもかかわらず、法律行為の代理等必要な権限の行使に協力しないときは、家庭裁判所は、成年被後見人、成年後見人、後見監督人又は利害関係人の請求により、その成年後見人の意思表示に代わる裁判をすることができる。

(最終改正 2011.3.7)

第949条の3(利害相反行為) 後見人については、第921条の規定を準用する。 ただし、後見監督人がある場合は、この限りでない。

(最終改正 2011.3.7)

第950条(後見監督人の同意を要する行為)① 後見人が、被後見人を代理して次に掲げる行為をし、又は未成年者の次に掲げる行為について同意をする場合において、後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。

 1.営業に関する行為

 2.金銭を借りる行為

 3.義務のみを負担する行為

 4.不動産又は重要な財産に関する権利の得喪変更を目的とする行為

 5.訴訟行為

 6.相続の承認、限定承認又は放棄及び相続財産の分割に関する協議

 後見監督人の同意が必要な行為について、後見監督人が被後見人の利益が侵害されるおそれがあるにもかかわらず、同意をしない場合には、家庭裁判所は、後見人の請求により、後見監督人の同意に代わる許可をすることができる。

 後見監督人の同意が必要な法律行為については、後見人が後見監督人の同意なしにしたときは、被後見人又は後見監督人は、その行為を取り消すことができる。

(最終改正 2011.3.7)

第951条(被後見人の財産等の譲受けに対する取消し)① 後見人が被後見人に対する第三者の権利を譲り受けた場合には、被後見人は、これを取り消すことができる。

 前項の規定による権利の譲受けの場合において、後見監督人があるときは、後見人は、後見監督人の同意を得なければならず、後見監督人の同意がないときは、被後見人又は後見監督人は、これを取り消すことができる。

(最終改正 2011.3.7)

第952条(相手方の追認の可否の催告) 第950条及び前条の場合については、第15条の規定を準用する。

(最終改正 2011.3.7)

第953条(後見監督人の後見事務の監督) 後見監督人は、いつでも、後見人に対しその任務の遂行に関する報告及び財産目録の提出を求めることができ、被後見人の財産状況を調査することができる。

(最終改正 2011.3.7)

第954条(家庭裁判所の後見事務に関する処分) 家庭裁判所は、職権で又は被後見人、後見監督人、第777条の規定による親族、その他の利害関係人、検事若しくは地方自治団体の長の請求により、被後見人の財産状況を調査し、及び後見人に財産管理等の後見の任務の遂行について必要な処分を命じることができる。

(最終改正 2011.3.7)

第955条(後見人に対する報酬) 裁判所は、後見人の請求により、被後見人の財産状態その他の事情を考慮して、被後見人の財産から、相当な報酬を後見人に与えることができる。

第955条の2(支出金額の予定及び事務費用) 後見人が後見事務を遂行するために必要な費用は、被後見人の財産から支出する。 

(最終改正 2011.3.7)

第956条(委任及び親権の規定の準用) 第681条及び第918条の規定は、後見人について準用する。

第4款 後見の終了
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第957条(後見事務の終了と管理の計算)① 後見人の任務が終了したときは、後見人又はその相続人は、1箇月内に被後見人の財産に関する計算をしなければならない。 ただし、正当な事由がある場合には、裁判所の許可を得て、その期間を延長することができる。

 前項の計算は、後見監督人がある場合には、その者が立ち会わなければ、効力を有しない。

(最終改正 2011.3.7)

第958条(利息の付加及び金銭消費に対する責任)① 後見人が被後見人に支払うべき金額及び被後見人が後見人に支払うべき金額には、計算終了の日から利息を付さなければならない。

 後見人が自己のために被後見人の金銭を消費したときは、その消費した日から利息を付し、なお被後見人に損害があるときは、これを賠償しなければならない。

第959条(委任の規定の準用) 第691条及び第692条の規定は、後見の終了について準用する。

第2節 限定後見及び特定後見

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第959条の2(限定後見の開始) 家庭裁判所の限定後見開始の審判がある場合は、その審判を受けた者の限定後見人を置かなければならない。

(最終改正 2011.3.7)

第959条の3(限定後見人の選任等)① 前条の規定による限定後見人は、家庭裁判所が、職権で、選任する。

 限定後見人については、第930条第2項及び第3項、第936条第2項から第4項まで、第937条、第939条、第940条並びに第949条の3の規定を準用する。

(最終改正 2011.3.7)

第959条の4(限定後見人の代理権等)① 家庭裁判所は、限定後見人に代理権を授与する審判をすることができる。

 限定後見人の代理権等については、第938条第3項及び第4項の規定を準用する。

(最終改正 2011.3.7)

第959条の5(限定後見監督人)① 家庭裁判所は、必要と認めるときは、職権で又は限定被後見人、親族、限定後見人、検事若しくは地方自治団体の長の請求により、限定後見監督人を選任することができる。

 限定後見監督人については、第681条、第691条、第692条、第930条第2項及び第3項、第936条第3項及び第4項、第937条、第939条、第940条、第940条の3第2項、第940条の5、第940条の6、第947条の2第3項から第5項まで、第949条の2、第955条並びに第955条の2の規定を準用する。 この場合において、第940条の6第3項中「被後見人を代理する」とあるのは、「限定被後見人を代理し、又は限定被後見人がその行為をすることに同意する」と読み替えるものとする

(最終改正 2011.3.7)

第959条の6(限定後見の事務) 限定後見の事務については、第681条、第920条ただし書、第947条、第947条の2及び第949条から第955条の2までの規定を準用する。

(最終改正 2011.3.7)

第959条の7(限定後見人の任務の終了等) 限定後見人の任務が終了した場合については、第691条、第692条、第957条及び第958条の規定を準用する。

(最終改正 2011.3.7)

第959条の8(特定後見による保護措置) 家庭裁判所は、特定被後見人の特定後見のために必要な処分を命じることができる。

(最終改正 2011.3.7)

第959条の9(特定後見人の選任等)① 家庭裁判所は、前条の規定による処分によって、特定被後見人を特定後見し、又は代理するための特定後見人を選任することができる。

 特定後見人については、第930条第2項及び第3項、第936条第2項から第4項まで、第937条、第939条並びに第940条の規定を準用する。

(最終改正 2011.3.7)

第959条の10(特定後見監督人)① 家庭裁判所は、必要と認めるときは、職権で又は特定被後見人、親族、特定後見人、検事若しくは地方自治団体の長の請求により、特定後見監督人を選任することができる。

 特定後見監督人については、第681条、第691条、第692条、第930条第2項及び第3項、第936条第3項及び第4項、第937条、第939条、第940条、第940条の5、第940条の6、第949条の2、第955条並びに第955条の2の規定を準用する。

(最終改正 2011.3.7)

第959条の11(特定後見人の代理権)① 特定被後見人の特定後見のために必要と認めるときは、家庭裁判所は、期間及び範囲を定めて、特定後見人に代理権を授与する審判をすることができる。  前項の場合において、家庭裁判所は、特定後見人の代理権の行使について、家庭裁判所又は特定後見監督人の同意を得るよう命じることができる。

(最終改正 2011.3.7)

第959条の12(特定後見事務) 特定後見の事務については、第681条、第920条ただし書、第947条、第949条の2及び第953条から第955条の2までの規定を準用する。

(最終改正 2011.3.7)

第959条の13(特定後見人の任務の終了等) 特定後見人の任務が終了した場合については、第691条、第692条、第957条及び第958条の規定を準用する。

(最終改正 2011.3.7)

第3節 任意後見契約

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第959条の14(任意後見契約の意義と締結方法等)① 任意後見契約は、疾病、障害、老齢その他の事由による精神的制約により事務を処理する能力が不足する状況にあり、又は不足になる状況に備えて、自己の財産管理及び身上保護に関する事務の全部又は一部を他の者に委託し、その委託事務について代理権を授与することを内容とする。

 任意後見契約は、公正証書によって締結しなければならない。

 任意後見契約は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から効力を生じる。

 家庭裁判所、任意後見人、任意後見監督人等は、任意後見契約を履行し、及び運営するときは、本人の意思を最大限尊重しなければならない。

(最終改正 2011.3.7)

第959の15(任意後見監督人の選任)① 家庭裁判所は、任意後見契約が登記されている場合において、本人の事務を処理する能力が不足する状況にあると認めるときは、本人、配偶者、4親等以内の親族、任意後見人, 検事又は地方自治団体の長の請求により、任意後見監督人を選任する。

 前項の場合において、本人以外の者の請求により家庭裁判所が任意後見監督人を選任するときは、あらかじめ本人の同意を得なければならない。 ただし、本人が意思を表示することができないときは、この限りでない。

 家庭裁判所は、任意後見監督人が欠けた場合には、職権で又は本人、親族、任意後見人、 検事若しくは地方自治団体の長の請求により、任意後見監督人を選任する。

 家庭裁判所は、任意後見監督人が選任されている場合においても、必要と認めるときは、職権で又は前項に規定する請求権者の請求により、任意後見監督人を更に選任することができる。

  任意後見監督人については、第940条の5の規定を準用する。

(最終改正 2011.3.7)

第959条の16(任意後見監督人の職務等)① 任意後見監督人は、任意後見人の事務を監督して、その事務について家庭裁判所に定期的に報告しなければならない。

 家庭裁判所は、必要と認めるときは、任意後見監督人に対し、監督事務に関する報告を求めることができ、任意後見人の事務又は本人の財産状況に関する調査を命じ、その他任意後見監督人の職務について必要な処分を命じることができる。

 任意後見監督人については、第940条の6第2項及び第3項、第940条の7並びに第953条の規定を準用する。 

(最終改正 2011.3.7)

第959条の17(任意後見開始の制限等)① 任意後見人が第937条各号に掲げる者又はその他著しい非行を行い、若しくは任意後見契約で定めた任務に適しない事由がある者であった場合には、家庭裁判所は、任意後見監督人を選任しない。

 任意後見監督人を選任した後において、任意後見人が著しい非行を行い、又はその他その任務に適しない事由がある場合には、家庭裁判所は、任意後見監督人、本人、親族、検事又は地方自治団体の長の請求により、任意後見人を解任することができる。

(最終改正 2011.3.7)

第959条の18(任意後見契約の終了)① 任意後見監督人の選任前においては、本人又は任意後見人は、いつでも、公証人の認証を受けた書面によって、任意後見契約の意思表示を撤回することができる。

 任意後見監督人の選任後においては、本人又は任意後見人は、正当な事由があるときに限り、家庭裁判所の許可を得て、任意後見契約を終了することができる。

(最終改正 2011.3.7)

第959条の19(任意後見人の代理権の消滅と第三者との関係) 任意後見人の代理権の消滅は、登記しなければ、善意の第三者に対抗することができない。

(最終改正 2011.3.7)

第959条の20(任意後見契約と成年後見、限定後見及び特定後見との関係)① 任意後見契約が登記されている場合には、家庭裁判所は、本人の利益のため特に必要なときに限り、任意後見人又は任意後見監督人の請求により、成年後見、限定後見又は特定後見の開始の審判をすることができる。 この場合において、任意後見契約は、本人が成年後見又は限定後見の開始の審判を受けた時に終了する。

 本人が成年被後見人、限定被後見人又は特定被後見人である場合において、家庭裁判所は、任意後見監督人を選任するに当たっては、従前の成年後見、限定後見又は特定後見の終了の審判をしなければならない。 ただし、成年後見又は限定後見の措置の継続が本人の利益のために特に必要と認めるときは、家庭裁判所は、任意後見監督人を選任しない。

(最終改正 2011.3.7)

第6章 削除<2011.3.7>

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    (改正前「親族会」)

第960条から第973条まで 削除

(最終改正 2011.3.7)

第7章 扶養

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第974条(扶養義務) 次に掲げる親族間においては、互いに扶養の義務を負う.

 1.直系血族及びその配偶者の間

 2.削除

 3.その他の親族間(生計を同じくする場合に限る。)

(最終改正 1990.1.13)

第975条(扶養義務と生活能力) 扶養の義務は、扶養を受ける者が自己の資力又は労働によって生活を維持することができない場合に限り、これを履行する責任を負う。

第976条(扶養の順位)① 扶養の義務を負う者が数人ある場合において、扶養をすべき者の順位について当事者間に協定がないときは、裁判所は、当事者の請求により、これを定める。扶養を受ける権利者が数人ある場合において、扶養義務者の資力がその全員を扶養することができないときも、同様とする。

 前項の場合において、裁判所は、数人の扶養義務者又は権利者を選定することができる。

第977条(扶養の程度及び方法) 扶養の程度又は方法について当事者間に協定がないときは、裁判所は、当事者の請求により、扶養を受ける者の生活の程度及び扶養義務者の資力その他の諸般の事情を考慮して、これを定める。

第978条(扶養関係の変更又は取消し) 扶養をする者又は扶養を受ける者の順位又は扶養の程度若しくは方法に関する当事者の協定又は裁判所の判決があった後これらに関する事情の変更があったときは、裁判所は、当事者の請求により、その協定又は判決を取り消し、又は変更することができる。

第979条(扶養請求権の処分の禁止) 扶養を受ける権利は、処分することができない。

第8章 削除<2005.3.31>

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    (改正前「戸主承継」
      第1節 総則
       第980条-第983条
      第2節 戸主承継人
       第984条-第994条
      第3節 戸主承継の効力
       第995条・第996条 )

第980条から第996条まで 削除

(最終改正2005.3.31)

第5編 相続

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第1章 相続

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第1節 総則

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第997条(相続開始の原因) 相続は、死亡によって開始する。

(最終改正 1990.1.13)

第998条(相続開始の場所) 相続は、被相続人の住所地において開始する。

(最終改正 1990.1.13)

第998条の2(相続費用) 相続に関する費用は、相続財産から支払う。

(最終改正 1990.1.13)

第999条(相続回復請求権)① 相続権が僭称相続人によって侵害されたときは、相続人又はその法定代理人は、相続回復の訴えを提起することができる。

 前項の規定による相続回復請求権は、その侵害を知った日から3年、相続権の侵害行為があった日から10年を経過したときは、消滅する。

(最終改正 2002.1.14)

第2節 相続人

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第1000条(相続の順位)

①相続においては、次の順位で相続人となる。<改正1990年1月13日>

1.被相続人の直系卑属

2.被相続人の直系尊属

3.被相続人の兄弟姉妹

4.被相続人の4親等内の傍系血族

②前項の場合において、同順位の相続人が数人あるときは、最近親者を優先とし、同親等の相続人が数人あるときは、共同相続人となる。

③胎児は、相続順位については、既に生まれたものとみなす。<改正1990.1.13.>

[見出し改正1990年1月13日]

第1001条(代襲相続)

前条第1項第1号及び第3号の規定により相続人になる直系卑属又は兄弟姉妹が相続開始前に死亡し又は欠格者となった場合において、これに直系卑属があるときは、その直系卑属は、死亡し又は欠格となった者の順位で共同相続人となる。

第1002条 削除

(最終改正 1990.1.13)

第1003条(配偶者の相続順位)

①被相続人の配偶者は、第1000条第1項第1号及び第2号の規定による相続人があるときは、その相続人と同順位で共同相続人となり、その相続人がないときは、単独相続人となる。<改正1990年1月13日>

②第1001条の場合には、相続開始前に死亡又は欠格となった者の配偶者は、同条の規定による相続人と同順位で共同相続人となり、その相続人がないときは、単独相続人となる。≪改正1990年1月13日>

[見出し改正1990年1月13日]

第1004条(相続人の欠格事由) 次に掲げる者は、相続人となることができない。

 1.故意に直系尊属、被相続人、その配偶者又は相続の先順位若しくは同順位にある者を殺害し、又は殺害しようとした者

 2.故意に直系尊属、被相続人又はその配偶者に傷害を加えて、死亡に至らせた者

 3.詐欺又は強迫によって、被相続人の相続に関する遺言又は遺言の撤回を妨害した者

 4.詐欺又は強迫によって、被相続人の相続に関する遺言をさせた者

 5.被相続人の相続に関する遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

(最終改正 2005.3.31)

第3節 相続の効力

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第1款 一般的効力
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第1005条(相続と権利義務の包括的承継) 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に関する権利義務を包括的に承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

(最終改正 1990.1.13)

第1006条(共同相続と財産の共有) 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有とする。

(最終改正 1990.1.13)

第1007条(共同相続人の権利義務の承継) 共同相続人は、各自の相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。

第1008条(特別受益者の相続分) 共同相続人中に被相続人から財産の贈与又は遺贈を受けた者がある場合において、その受贈財産が自分の相続分に達しないときは、その不足する部分の限度で相続分を有する。

(最終改正 1977.12.31)

第1008条の2(寄与分)① 共同相続人中に、相当な期間、同居、看護その他の方法によって被相続人を特別に扶養し、又は被相続人の財産の維持若しくは増加について特別に寄与した者があるときは、相続開始の時の被相続人の財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第1009条及び第1010条の規定により算定した相続分に寄与分を加算した額をもって、その者の相続分とする。

 前項の協議が調わず、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与者の請求により、寄与の時期、方法及び程度並びに相続財産の額その他の事情を考慮して、寄与分を定める。

 寄与分は、相続開始の時における被相続人の財産の価額から遺贈の価額を控除した額を超えることができない。

 第2項の規定による請求は、第1013条第2項の規定による請求があった場合又は第1014条に規定する場合にすることができる。

(最終改正 2005.3.31)

第1008条の3(墳墓等の承継) 墳墓に属する1町歩以内の禁養林野及び600坪以内の墓土である農地並びに族譜及び祭具の所有権は、祭祀を主宰する者が承継する。

(最終改正 1990.1.13)

第2款 相続分
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第1009条(法定相続分)

①同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は均分とする。<改正1977年12月31日、1990年1月13日>

②被相続人の配偶者の相続分は、直系卑属と共同で相続するときは、直系卑属の相続分に5割を加算し、直系尊属と共同で相続するときは、直系尊属の相続分に5割を加算する。<改正1990年1月13日>

③削除<1990年1月13日>

第1010条(代襲相続分)

①第1001条の規定により死亡又は欠格となった者に代襲して相続人となった者の相続分は、死亡又は欠格となった者の相続分による。

②前項の場合において、死亡又は欠格となった者の直系卑属が数人あるときは、その相続分は、死亡又は欠格となった者の相続分の限度で、第1009条の規定により、これを定める。第1003条第2項の場合も、同様である。

第1011条(共同相続分の譲受け)① 共同相続人中にその相続分を第三者に譲り渡した者があるときは、 他の共同相続人は、その価額及び譲渡費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。

 前項の規定による権利は、その事由を知った日から3箇月内に、その事由があった日から1年内に行使しなければならない。

第3款 相続財産の分割
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第1012条(遺言による分割方法の指定及び分割の禁止) 被相続人は、遺言で、相続財産の分割方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託することができ、又は相続開始の日から5年を超えない期間内でその分割を禁止することができる。

第1013条(協議による分割)① 前条の場合を除き、共同相続人は、いつでも協議で相続財産を分割することができる。  第269条の規定は、前項の規定による相続財産の分割について準用する。

第1014条(分割後の被認知者等の請求権) 相続開始後の認知又は裁判の確定によって共同相続人となった者は、相続財産の分割を請求する場合において、他の共同相続人が既に分割その他の処分をしていたときは、その相続分に相当する価額の支払を請求する権利を有する。

第1015条(分割の遡及効) 相続財産の分割は、相続開始の時に遡って効力を生じる。 ただし、第三者の権利を害することはできない。

第1016条(共同相続人の担保責任) 共同相続人は、他の共同相続人が分割によって取得した財産について、その相続分に応じて売主と同じ担保責任を負う。

第1017条(相続債務者の資力についての担保責任)① 共同相続人は、他の相続人が分割によって取得した債権について、分割の時における債務者の資力を担保する。

 弁済期に至らない債権及び停止条件付債権については、弁済を請求することができる時における債務者の資力を担保する。

第1018条(無資力の共同相続人の担保責任の分担) 担保責任を負う共同相続人中に償還の資力のない者があるときは、その負担部分は、求償権者及び資力を有する他の共同相続人がその相続分に応じて分担する。ただし、求償権者の過失によって償還を受けることができなかったときは、他の共同相続人に分担を請求することができない。

第4節 相続の承認及び放棄

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第1款 総則
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第1019条(承認及び放棄の期間)① 相続人は、相続の開始があったことを知った日から3箇月内に、単純承認若しくは限定承認又は放棄をすることができる。ただし、その期間は、利害関係人又は検事の請求により、家庭裁判所が延長することができる。

 相続人は、前項に規定する承認又は放棄をする前に、相続財産を調査することができる。

 第1項の規定にかかわらず、相続人は、相続債務が相続財産を超過する事実(以下この条において「相続債務超過事実」という。)を重大な過失なく同項に規定する期間内に知ることができず、 単純承認(第1026条第1号及び第2号の規定により単純承認をしたものとみなす場合を含む。以下この条において同じ。)をした場合には、その事実を知った日から3箇月内に限定承認をすることができる。

 第1項の規定にかかわらず、未成年者である相続人は、相続債務が相続財産を超過する相続について成年となる前に単純承認をした場合には、成年となった後その相続の相続債務超過事実を知った日から3箇月内に限定承認をすることができる。未成年者である相続人が前項の規定により限定承認をせず、又はすることができなかった場合も、また同様とする。

(最終改正 2022.12.13)

第1020条(制限能力者の承認及び放棄の期間) 相続人が制限行為能力者である場合には、前条第1項に規定する期間は、その親権者又は後見人が相続の開始したことを知った日から起算する。

(最終改正 2011.3.7)

第1021条(承認及び放棄の期間の計算に関する特則) 相続人が承認又は放棄をしないで第1019第1項に規定する期間内に死亡したときは、その相続人が自己のための相続開始があったことを知った日から同項に規定する期間を起算する。

第1022条(相続財産の管理) 相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって相続財産を管理しなければならない。ただし、単純承認又は放棄をしたときは、この限りでない。

第1023条(相続財産の保存に必要な処分)① 裁判所は、利害関係人又は検事の請求により、相続財産の保存に必要な処分を命じることができる。

 裁判所が財産管理人を選任した場合については、第24条から第26条までの規定を準用する。

第1024条(承認及び放棄の取消しの禁止)① 相続の承認及び放棄は、第1019条第1項に規定する期間内でも、取り消すことができない。

 前項の規定は、総則編の規定による取消しに影響を及ぼさない。ただし、その取消権は、追認をすることができる日から3箇月、承認又は放棄をした日から1年内に行使しないときは、時効によって消滅する。

(最終改正 1990.1.13)

第2款 単純承認
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第1025条(単純承認の効果) 相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。

(最終改正 1990.1.13)

第1026条(法定単純承認) 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。

 1.相続人が相続財産に対する処分行為をしたとき。

 2.相続人が、第1019条第1項に規定する期間内に、限定承認又は放棄をしなかったとき。

 3.相続人が、限定承認又は放棄をした後に、相続財産を隠匿し、不正に消費し、又は故意に財産目録に記入しなかったとき。

(最終改正 2002.1.14)

第1027条(法定単純承認の例外) 相続人が相続を放棄したことによって次順位の相続人が相続を承認したときは、前条第3号に掲げる場合は、相続の承認とみなさない。

第3款 限定承認
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第1028条(限定承認の効果) 相続人は、相続によって取得する財産の限度で被相続人の債務及び遺贈を弁済することを条件として、相続を承認することができる。

(最終改正 1990.1.13)

第1029条(共同相続人の限定承認) 相続人が数人あるときは、各相続人は、その相続分に応じて取得する財産の限度でその相続分による被相続人の債務及び遺贈を弁済することを条件として、相続を承認することができる。

第1030条(限定承認の方式)① 相続人が限定承認をするときは、第1019条第1項、第3項又は第4項に規定する期間内に、相続財産の目録を添付し、裁判所に限定承認の届出をしなければならない。

 第1019条第3項又は第4項の規定により限定承認をした場合において、相続財産中に既に処分した財産があるときは、その目録及び価額を併せて提出しなければならない。

(最終改正 2022.12.13)

第1031条(限定承認と財産上の権利義務の不消滅) 相続人が限定承認をしたときは、被相続人に対する相続人の財産上の権利義務は、消滅しない。

第1032条(債権者に対する公告及び催告)① 限定承認者は、限定承認をした日から5日内に、一般相続債権者及び受遺者に対し、限定承認の事実及び一定の期間内にその債権又は受贈を届け出るべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、2箇月以上でなければならない。

 第88条第2項及び第3項並びに第89条の規定は、前項の場合について準用する。

第1033条(催告期間中の弁済の拒絶) 限定承認者は、前条第1項の期間の満了前においては、相続債権の弁済を拒絶することができる。

第1034条(配当弁済)① 限定承認者は、第1032条第1項に規定する期間の満了後に、相続財産をもって、その期間内に届け出た債権者及び限定承認者が知っている債権者に対し、各債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。ただし、優先権を有する債権者の権利を害することはできない。

 第1019条第3項又は第4項の規定により限定承認をした場合には、その相続人は、相続財産中に残っている相続財産及び既に処分した財産の価額を合算して、前項の弁済をしなければならない。 ただし、限定承認をする前に相続債権者及び受遺者に弁済した価額は、既に処分した財産の価額から除外する。

(最終改正 2022.12.13)

第1035条(弁済期前の債務等の弁済)① 限定承認者は、弁済期に至らない債権についても、前条の規定により弁済をしなければならない。

 条件付債権又は存続期間の不確定な債権は、裁判所が選任した鑑定人の評価によって弁済をしなければならない。

第1036条(受遺者への弁済) 限定承認者は、前2条の規定により相続債権者に対する弁済を完了した後でなければ、受遺者に弁済をすることができない。

第1037条(相続財産の競売) 前3条の規定による弁済をするために相続財産の全部又は一部を売却する必要があるときは、民事執行法により競売しなければならない。

(最終改正 2001.12.29)

第1038条(不当弁済等による責任)① 限定承認者が第1032条の規定による公告若しくは催告を怠り、又は第1033条から第1036条までの規定に違反してある相続債権者若しくは受遺者に弁済をすることによって他の相続債権者若しくは受遺者に弁済をすることができなくなったときは、限定承認者は、その損害を賠償しなければならない。第1019条第3項の規定により限定承認をした場合において、それ以前に相続債務が相続財産を超過することを知り得なかったことについて過失のある相続人が相続債権者又は受遺者に弁済をしたときも、また同様とする。

 前項前段の場合において、弁済を受けることができなかった相続債権者又は受遺者は、その事情を知って弁済を受けた相続債権者又は受遺者に対して求償権を行使することができる。第1019条第3項又は第4項の規定により限定承認をした場合において、それ以前に相続債務が相続財産を超過することを知って弁済を受けた相続債権者又は受遺者があるときも、また同様とする。

 第766条の規定は、前2項の場合について準用する。

(最終改正 2022.12.13)

第1039条(届出をしなかった債権者等) 第1032条第1項に規定する期間内に届け出なかった相続債権者及び受遺者で、限定承認者が知り得なかったものは、相続財産の残余がある場合に限り、その弁済を受けることができる。ただし、相続財産について特別担保権を有するときは、この限りでない。

第1040条(共同相続財産とその管理人の選任)① 相続人が数人ある場合には、裁判所は、各相続人その他の利害関係人の請求により、共同相続人の中から相続財産の管理人を選任することができる。

 裁判所が選任した管理人は、共同相続人を代表して、相続財産の管理及び債務の弁済に関するすべての行為を行う権利義務を有する。

 第1022条及び第1032条から前条までの規定は、前項の管理人について準用する。ただし、第1032条の規定により公告する5日の期間は、管理人がその選任を知った日から起算する。

第4款 放棄
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第1041条(放棄の方式) 相続人が相続を放棄するときは、第1019条第1項に規定する期間内に、家庭裁判所に放棄の届出をしなければならない。

(最終改正 1990.1.13)

第1042条(放棄の遡及効) 相続の放棄は、相続開始の時に遡って、その効力を生じる。

第1043条(放棄した相続財産の帰属) 相続人が数人ある場合において、ある相続人が相続を放棄したときは、その相続分は、他の相続人の相続分の割合に応じ、その相続人に帰属する。

第1044条(放棄した相続財産の管理継続義務)① 相続を放棄した者は、その放棄によって相続人になった者が相続財産を管理することができるときまで、その財産の管理を継続しなければならない。

 第1022条及び第1023条の規定は、前項の規定による財産管理について準用する。

第5節 財産の分離

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第1045条(相続財産の分離請求権)① 相続債権者、受遺者又は相続人の債権者は、相続開始の日から3箇月内に、相続財産と相続人の固有財産の分離を裁判所に請求することができる。

 相続人が相続の承認又は放棄をしない間は、前項に規定する期間の経過後も、財産の分離を裁判所に請求することができる。

(最終改正 1990.1.13)

第1046条(分離命令と債権者等に対する公告及び催告)① 裁判所が前条に規定する請求により財産の分離を命じたときは、その請求者は、5日内に、一般相続債権者及び受遺者に対して財産分離の命令があった事実及び一定の期間内にその債権又は受贈を届け出るべき旨を公告しなければならない。 この場合において、その期間は、2箇月以上でなければならない。

 第88条第2項及び第3項並びに第89条の規定は、前項の場合について準用する。

第1047条(分離後の相続財産の管理)① 裁判所が財産の分離を命じたときは、相続財産の管理について必要な処分を命じることができる。

 裁判所が財産管理人を選任した場合については、第24条から第26条までの規定を準用する。

第1048条(分離後の相続人の管理義務)① 相続人が単純承認をした後でも、財産分離の命令があったときは、相続財産について、自己の固有財産におけるのと同一の注意をもって、管理しなければならない。

 第683条から第685条まで並びに第688条第1項及び第2項の規定は、前項の規定による財産管理について準用する。

第1049条(財産分離の対抗要件) 財産分離は、相続財産である不動産については、登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

第1050条(財産分離と権利義務の不消滅) 財産分離の命令があるときは、被相続人に対する相続人の財産上の権利義務は、消滅しない。

第1051条(弁済の拒絶と配当弁済)① 相続人は、第1045条及び第1046条に規定する期間の満了前においては、相続債権者及び受遺者に対して弁済を拒絶することができる。

 前項の期間の満了後に、相続人は、相続財産をもって、財産分離の請求又はその期間内に届出をした相続債権者及び受遺者並びに相続人が知っている相続債権者及び受遺者に対し、各債権額又は受贈額の割合に応じて弁済をしなければならない。ただし、優先権を有する債権者の権利を害することはできない。

 第1035条から第1038条までの規定は、前項の場合について準用する。

第1052条(固有財産からの弁済)① 前条の規定による相続債権者及び受遺者は、相続財産をもって全額の弁済を受けることができない場合に限り、相続人の固有財産からその弁済を受けることができる。

 前項の場合において、相続人の債権者は、相続人の固有財産から優先弁済を受ける権利を有する。

第6節 相続人の不存在

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第1053条(相続人のない財産の管理人)① 相続人の存否が明らかでないときは、裁判所は、第777条の規定による被相続人の親族その他の利害関係人又は検事の請求により、相続財産の管理人を選任し、遅滞なく、これを公告しなければならない。

 第24条から第26条までの規定は、前項の管理人について準用する。

(最終改正 1990.1.13)

第1054条(財産目録の提示及び状況の報告) 管理人は、相続債権者又は受遺者の請求があるときは、いつでも相続財産の目録を提示し、その状況を報告しなければならない。

第1055条(相続人の存在が明らかになった場合)① 管理人の任務は、その相続人が相続の承認をしたときに終了する。

 前項の場合には、管理人は、遅滞なく相続人に対して管理の計算をしなければならない。

第1056条(相続人のない財産の清算)① 第1053条第1項の公告があった日から3箇月内に相続人の存否を知ることができないときは、管理人は、遅滞なく一般相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその債権又は受贈を届け出るべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、2箇月以上でなければならない。

 第88条第2項及び第3項、第89条並びに第1033条から第1039条までの規定は、前項の場合について準用する。

第1057条(相続人捜索の公告) 前条第1項に規定する期間が経過しても相続人の存否を知ることができない場合には、裁判所は、管理人の請求により、相続人があるときは一定の期間内にその権利を主張すべきことを公告しなければならない。この場合において、その期間は、1年以上でなければならない。

(最終改正 2005.3.31)

第1057条の2(特別縁故者に対する分与)① 前条の期間内に相続権を主張する者がないときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を共にしていた者、被相続人の療養看護をした者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求により、相続財産の全部又は一部を分与することができる。

 前項の請求は、前条の期間の満了後2箇月以内にしなければならない。

(最終改正 2005.3.31)

第1058条(相続財産の国への帰属)① 前条の規定により分与されなかったときは、相続財産は、国に帰属する。

 第1055条第2項の規定は、前項の場合について準用する。

(最終改正 2005.3.31)

第1059条(国に帰属した財産に対する弁済請求の禁止) 前条第1項の場合には、相続財産をもって弁済を受けることができなかった相続債権者又は受遺者があるときでも、国に対してその弁済を請求することができない。

第2章 遺言

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第1節 総則

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第1060条(遺言の要式性) 遺言は、この法の定めた方式によらなければ、効力を生じない。

第1061条(遺言適齢) 17歳に達しない者は、遺言をすることができない。

(最終改正 2022.12.27)

第1062条(制限行為能力者の遺言) 遺言については、第5条、第10条及び第13条の規定を適用しない。

(最終改正 2011.3.7)

第1063条(成年被後見人の遺言能力)① 成年被後見人は、意思能力が回復したときに限り、遺言をすることができる。

 前項の場合には、医師が、心神回復の状態を遺言書に付記し、署名押印しなければならない。

(最終改正 2011.3.7)

第1064条(遺言と胎児及び相続欠格者) 第1000条第3項及び第1004条の規定は、受遺者について準用する。

(最終改正 1990.1.13)

第2節 遺言の方式

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第1065条(遺言の普通方式) 遺言の方式は、自筆証書、録音、公正証書、秘密証書及び口授証書の5種とする。

第1066条(自筆証書による遺言)① 自筆証書による遺言は、遺言者が、その全文並びに年月日、住所及び姓名を自書し、押印しなければならない。

 前項の証書において文字の挿入、削除又は変更をするには、遺言者が、これを自書し、押印しなければならない。

第1067条(録音による遺言) 録音による遺言は、遺言者が遺言の趣旨、その姓名及び年月日を口述し、これに立ち会った証人が遺言の正確なこと及びその姓名を口述しなければならない

第1068条(公正証書による遺言) 公正証書による遺言は、遺言者が証人2人の立ち会った公証人の面前において遺言の趣旨を口授し、公証人がこれを筆記朗読し、遺言者及び証人がその正確なことを承認した後に各自署名又は記名押印をしなければならない。

第1069条(秘密証書による遺言)① 秘密証書による遺言は、遺言者が、筆者の姓名を記入した証書を厳封押印し、これを2人以上の証人の面前に提出し、自己の遺言書である旨を表示した後、その封書表面に提出年月日を記載して、遺言者及び証人が各自署名又は記名押印をしなければならない。

 前項の方式による遺言の封書は、その表面に記載した日から5日内に公証人又は裁判所書記に提出し、その封印上に確定日付印を受けなければならない。

第1070条(口授証書による遺言)① 口授証書による遺言は、疾病その他の急迫な事由によって第1066条から前条までの方式によることができない場合に、遺言者が2人以上の証人の立会いをもってその一人に遺言の趣旨を口授し、その口授を受けた者がこれを筆記朗読し、遺言者及び証人がその正確なことを承認した後に各自署名又は記名押印をしなければならない。

 前項の方式による遺言は、その証人又は利害関係人が、急迫な事由の終了した日から7日内に、裁判所にその検認を申請しなければならない。

 第1063条第2項の規定は、口授証書による遺言について適用しない。

第1071条(秘密証書による遺言の転換) 秘密証書による遺言がその方式に欠缺のある場合において、その証書が自筆証書の方式に適するときは、自筆証書による遺言とみなす。

第1072条(証人の欠格事由)① 次に掲げる者は、遺言に立ち会う証人となることができない。

 1.未成年者

 2.成年被後見人及び限定被後見人

 3.遺言により利益を受けるべき者並びにその配偶者及び直系血族

 公正証書による遺言においては、公証人法の規定による欠格者は、証人となることができない。

(最終改正 2011.3.7)

第3節 遺言の効力

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第1073条(遺言の効力発生時期)① 遺言は、遺言者が死亡した時から効力を生じる。

 遺言に停止条件がある場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、その条件が成就した時から遺言の効力を生じる。

第1074条(遺贈の承認及び放棄)① 受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈を承認し、又は放棄することができる。

 前項に規定する承認又は放棄は、遺言者の死亡した時に遡って効力を生じる。

第1075条(遺贈の承認及び放棄の取消禁止)① 遺贈の承認又は放棄は、取り消すことができない。

 第1024条第2項の規定は、遺贈の承認及び放棄について準用する。

第1076条(受遺者の相続人の承認及び放棄) 受遺者が承認又は放棄をしないで死亡したときは、その相続人は、相続分の限度で承認又は放棄をすることができる。ただし、遺言者が遺言に別段の意思を表示したときは、その意思による。

第1077条(遺贈義務者の催告権)① 遺贈義務者又は利害関係人は、相当の期間を定め、その期間内に承認又は放棄を確答すべき旨を受遺者又はその相続人に催告をすることができる。

 前項の期間内に受遺者又は相続人が遺贈義務者に催告に対する確答をしないときは、遺贈を承認したものとみなす。

第1078条(包括受遺者の権利義務) 包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。

(最終改正 1990.1.13)

第1079条(受遺者の果実取得権) 受遺者は、遺贈の履行を請求することができる時からその目的物の果実を取得する。ただし、遺言者が遺言に別段の意思を表示したときは、その意思による。

第1080条(果実の収取費用の償還請求権) 遺贈義務者が遺言者の死亡後にその目的物の果実を収取するために必要費を支出したときは、その果実の価額の限度で、果実を取得した受遺者に償還を請求することができる。

第1081条(果実の収取費用の償還請求権) 遺贈義務者が遺贈者の死亡後にその目的物に関し費用を支出した場合については、第325条の規定を準用する。

第1082条(不特定物の遺贈義務者の担保責任)① 不特定物を遺贈の目的とした場合には、遺贈義務者は、その目的物について売主と同じ担保責任を負う。

 前項の場合において、目的物に瑕疵があるときは、遺贈義務者は、瑕疵のない物を引き渡さなければならない。

第1083条(遺贈の物上代位性) 遺贈者が遺贈の目的物の滅失、毀損又は占有の侵害によって第三者に損害賠償を請求する権利を有するときは、その権利を遺贈の目的としたものとみなす。

第1084条(債権の遺贈の物上代位性)① 債権を遺贈の目的とした場合において、遺言者がその弁済を受けた物が相続財産中にあるときは、その物を遺贈の目的としたものとみなす。

 前項の債権が金銭を目的とした場合においては、その弁済を受けた債権額に相当する金銭が相続財産中にないときでも、その金額を遺贈の目的としたものとみなす。

第1085条(第三者の権利の目的であった物又は権利の遺贈) 遺贈の目的である物又は権利が遺言者の死亡の時に第三者の権利の目的であった場合には、受遺者は、遺贈義務者に対してその第三者の権利を消滅させることを請求することができない。

第1086条(遺言者が別段の意思表示をした場合) 前3条の場合において、遺言者が遺言に別段の意思を表示したときは、その意思による。

第1087条(相続財産に属さない権利の遺贈)① 遺言の目的となった権利が遺言者の死亡の時に相続財産に属さなかったときは、遺言は、効力を生じない。ただし、遺言者が自己の死亡の時にその目的物が相続財産に属さない場合であっても遺言の効力が生じるものとする意思であるときは、遺贈義務者は、その権利を取得し、受遺者に移転する義務を負う。

 前項ただし書の場合において、その権利を取得することができず、又はその取得に過分な費用を要するときは、その価額を弁償することができる。

第1088条(負担付遺贈と受遺者の責任)① 負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度で、負担した義務を履行する責任を負う。

 遺贈の目的の価額が限定承認又は財産分離によって減少したときは、受遺者は、その減少した限度で、負担すべき義務を免れる。

第1089条(遺贈の効力発生前の受遺者の死亡)① 遺贈は、遺言者の死亡前に受遺者が死亡したときは、効力を生じない。

 停止条件付遺贈は、受遺者がその条件の成就前に死亡したときは、効力を生じない。

第1090条(遺贈の無効及び失効の場合と目的財産の帰属) 遺贈が効力を生ぜず、又は受遺者がこれを放棄したときは、遺贈の目的である財産は、相続人に帰属する。ただし、遺言者が遺言に別段の意思を表示したときは、その意思による。

第4節 遺言の執行

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第1091条(遺言証書、録音の検認)①遺言の証書若しくは録音を保管する者又はこれを発見した者は、遺言者の死亡後、遅滞なく、これを法院に提出し、その検認を申請しなければならない。
②前項の規定は、公正証書又は口授証書による遺言には適用しない。

第1092条(遺言証書の開封)法院が封印された遺言書を開封するときは、遺言者の相続人、その代理人その他の利害関係人を参加させなければならない。

第1093条(遺言執行者の指定)遺言者は、遺言により遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。

第1094条(委託による遺言執行者の指定)①前条の委託を受けた第三者は、その委託を知った後、遅滞なく、遺言執行者を指定して相続人に通知しなければならず、その委託を辞退するときは、その旨を相続人に通知しなければならない。
②相続人その他の利害関係人は、相当な期間を定めて、その期間内に遺言執行者を指定すべき旨を委託された者に催告することができる。その期間内に指定の通知を受けなかったときは、その指定の委託を辞退したものとみなす。

第1095条(指定遺言執行者がないとき)前2条の規定により指定された遺言執行者がないときは、相続人が遺言執行者となる。

第1096条(法院による遺言執行者の選任)①遺言執行者がないとき又は死亡、欠格その他の事由によりなくなったときは、法院は、利害関係人の申請により、遺言執行者を選任しなければならない。
②法院は、遺言執行者を選任したときは、その任務に関して必要な処分を命ずることができる。

第1097条(遺言執行者の承諾、辞退)①指定による遺言執行者は、遺言者の死亡後、遅滞なく、これを承諾し又は辞退する旨を相続人に通知しなければならない。
②選任による遺言執行者は、選任の通知を受けた後、遅滞なく、これを承諾し又は辞退する旨を法院に通知しなければならない。
③相続人その他の利害関係人は、相当な期間を定めて、その期間内に承諾するや否やを確答すべき旨を指定又は選任による遺言執行者に催告することができる。その期間内に催告の確答を受けなかったときは、遺言執行者がその就任を承諾したものとみなす。

第1098条(遺言執行者の欠格事由)制限能力者及び破産宣告を受けた者は、遺言執行者になることができない。[全文改正2011.3.7]

第1099条(遺言執行者の任務の着手)遺言執行者がその就任を承諾したときは、遅滞なく、その任務を履行しなければならない。

第1100条(財産目録の作成)①遺言が財産に関するものであるときは、指定又は選任による遺言執行者は、遅滞なく、その財産目録を作成し、相続人に交付しなければならない。
②相続人の請求があるときは、前項の財産目録の作成に相続人を参加させなければならない。

第1101条(遺言執行者の権利義務)遺言執行者は、遺贈の目的である財産の管理その他の遺言の執行に必要な行為をする権利義務を有する。

第1102条(共同遺言執行)遺言執行者が数人あるときは、任務の執行は、その過半数の賛成により決定する。ただし、保存行為は、各自がこれをすることができる。

第1103条(遺言執行者の地位)①指定又は選任による遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。
②第681条から第685条まで、第687条、第691条及び第692条の規定は、遺言執行者に準用する。

第1104条(遺言執行者の報酬)①遺言者が遺言でその執行者の報酬を定めなかったときは、法院は、相続財産の状況その他の事情を参酌して、指定又は選任による遺言執行者の報酬を定めることができる。
②遺言執行者が報酬を受けるときは、第686条第2項、第3項の規定を準用する。

第1105条(遺言執行者の辞退)指定又は選任による遺言執行者は、正当な事由があるときは、法院の許可を得て、その任務を辞退することができる。

第1106条(遺言執行者の解任)指定又は選任による遺言執行者がその任務を懈怠し、又はこれに適当でない事由があるときは、法院は、相続人その他の利害関係人の申請により、遺言執行者を解任することができる。

第1107条(遺言執行の費用)遺言の執行に関する費用は、相続財産の中からこれを支給する。

第5節 遺言の撤回

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第1108条(遺言の撤回)① 遺言者は、いつでも遺言又は生前行為をもって遺言の全部又は一部を撤回することができる。

 遺言者は、その遺言を撤回する権利を放棄することができない。

第1109条(遺言の抵触) 前後の遺言が抵触し、又は遺言後の生前行為が遺言と抵触する場合には、その抵触した部分に係る従前の遺言は、撤回したものとみなす。

第1110条(破棄による遺言の撤回) 遺言者が故意に遺言証書又は遺贈の目的物を破棄したときは、その破棄した部分に係る遺言は、撤回したものとみなす。

第1111条(負担付遺贈の取消し) 負担付遺贈を受けた者がその負担義務を履行しないときは、相続人又は遺言執行者は、相当の期間を定めて履行すべき旨を催告し、その期間内に履行しないときは、裁判所に遺言の取消しを請求することができる。 ただし、第三者の利益を害することができない。

第3章 遺留分

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第1112条 (遺留分の権利者及び遺留分)

相続人の遺留分は、次の各号による。

1.被相続人の直系卑属は、その法定相続分の2分の1

2.被相続人の配偶者は、その法定相続分の2分の1

3.被相続人の直系尊属は、その法定相続分の3分の1

4.被相続人の兄弟姉妹は、その法定相続分の3分の1

[本条新設1977.12.31.]

第1113条(遺留分の算定)

①遺留分は、被相続人の相続開始時における財産の価額に贈与財産の価額を加算し、債務の全額を控除して、これを算定する。

②条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価によって、その価額を定める。

[本条新設197712.31.]

第1114条(算入される贈与)

贈与は、相続開始前の1年間にしたものに限り、第1113条の規定によりその価額を算定する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1年前にしたのも同様とする。

[本条新設1977.12.31.]

第1115条(遺留分の保全)

①遺留分権利者は、被相続人の第1114条に規定する贈与及び遺贈によりその遺留分に不足を生じたときは、不足している限度で、その財産の返還を請求することができる。

②第1項の場合において、贈与及び遺贈を受けた者が数人あるときは、各自が得た増加額に比例して返還しなければならない。

[本条新設1977 12. 31.]

第1116条(返還の順序)

贈与については、遺贈の返還を受けた後でなければ、これの返還を請求することができない。

[本条新設1977.12.31.]

第1117条(消滅時効)

返還請求権は、遺留分権利者が相続の開始及び返還されなければならない贈与又は遺贈がされた事実を知ったときから1年以内に行使しなければ、時効によって消滅する。相続が開始した時から10年を経過したときも、同様である。

[本条新設1977.12.31.]

第1118条(準用規定)

第1001条、第1008条及び第1010条の規定は、遺留分にこれを準用する。

[本条新設1977.12.31.]

  1. 原文では「親生子」と表記。韓国民法において「親生(子)」というのは,血縁関係を有する子をいい,わが国民法における「実子」に対応する概念であることから本文では実子としたが,「嫡出子」と翻訳する例もある。
 

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