死刑宣告/女の唇は虚偽に割れてゐる


生梅のやうなレストラントの女の投げ言葉は
ウヰスキーと強い粉煙草なぞでは消せない
私の悲しい神経を
紙のやうに燃やす

強度の焼火の下には
白い骨がくずれ残つてゐる
微笑も憎悪も陰毛も
柔い足で蹴らうとした女優の
タンバリンの音も消えて
霜げた薔薇ばつかが傷のやうに真赤だ
女の唇は虚偽に割れてゐる
胸にはゼンマイのやうな手段がまかれてゐる
生梅のやうな言葉で
胸の内部をしびれさす

私の衰弱してゐる空気の中を
私は骨だらけの部屋へ
質草を見つけに帰つて来る


女の唇は虚偽に割れてゐる
萩原恭次郎



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