死刑宣告/女の唇は虚偽に割れてゐる
< 死刑宣告
生梅のやうなレストラントの女の投げ言葉は
ウヰスキーと強い粉煙草なぞでは消せない
私の悲しい神経を
紙のやうに燃やす
強度の焼火の下には
白い骨がくずれ残つてゐる
微笑も憎悪も陰毛も
柔い足で蹴らうとした女優の
タンバリンの音も消えて
霜げた薔薇ばつかが傷のやうに真赤だ
女の唇は虚偽に割れてゐる
胸にはゼンマイのやうな手段がまかれてゐる
生梅のやうな言葉で
胸の内部をしびれさす
私の衰弱してゐる空気の中を
私は骨だらけの部屋へ
質草を見つけに帰つて来る
女の唇は虚偽に割れてゐる
萩原恭次郎
この著作物は、1938年に著作者が亡くなって(団体著作物にあっては公表又は創作されて)いるため、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(回復期日を参照)の時点で著作権の保護期間が著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)50年以下である国や地域でパブリックドメインの状態にあります。
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