歴代志略下(文語訳)

<聖書<文語訳旧約聖書

『舊新約聖書 [文語]』日本聖書協会、1953年

明治元訳聖書

歴代志略下

第1章

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ダビデの子ソロモン堅くその國にたてりその神ヱホバこれとともに在して之を甚だ大ならしめたまひき

茲にソロモン、イスラエルの一切の人々すなはち千人の長百人の長裁判人ならびにイスラエルの全地の諸の牧伯等宗家の長などに告る所あり

而してソロモンおよび全會衆ともにギベオンなる崇邱に往りヱホバの僕モーセが荒野にて作りたる神の集會の幕屋かしこにあればなり

されど神の契約の櫃はダビデすでにキリアテヤリムよりこれが爲に備へたる處に携へ上れりダビデ曩にヱルサレムにて之が爲に幕屋を張まうけたりき

またホルの子ウリの子なるベザレルが作りたる銅の壇彼處においてヱホバの幕屋の前にありソロモンおよび會衆これに就きて求む

即ちソロモン彼處に上りゆき集會の幕屋の中にあるヱホバの前なる銅の壇に就き燔祭一千を其上に献げたり

その夜神ソロモンに顯れてこれに言たまひけるは我なんぢに何を與ふべきか求めよ

ソロモン神に申しけるは汝は我父ダビデに大なる恩惠をほどこし又我をして彼に代りて王とならしめたまへり

今ヱホバ神よ願くは我父ダビデに宣ひし事を堅うしたまへ其は汝地の塵のごとき衆多の民の上に我を王となしたまへばなり

我が此民の前に出入することを得んために今我に智慧と智識とを與へたまへ斯のごとき大なる汝の民を誰か鞫きえんや

神ソロモンに言たまひけるは此事なんぢの心にあり汝は富有をも財寶をも尊貴をも汝を惡む者の生命をも求めずまた壽長からんことをも求めず惟智慧と智識とを己のためにもとめて我が汝を王となしたる我民を鞫かんとすれば

智慧と智識は已に汝に授かれり我また汝の前の王等の未だ得たること有ざる程の富有と財寳と尊貴とを汝に與へん汝の後の者もまた是のごときを得ざるべし

斯てソロモンはギベオンの崇邱を去り集會の幕屋の前を去りてヱルサレムに歸りイスラエルを治めたり

ソロモン戰車と騎兵とを集めしに戰車一千四百輛騎兵一萬二千人ありきソロモンこれを戰車の邑々に置き又ヱルサレムにて王の所に置り

王銀と金とを石のごとくヱルサレムに多からしめまた香柏を平野の桑樹のごとく多からしめたり

ソロモンの有る馬は皆エジプトよりひききたれり王の商買一群一群となして之を取いだし群ごとに價金をはらへり

エジプトより取いだして携へ上る戰車一輛は銀六百馬一匹は百五十なりき是のごとくヘテ人の諸の王等およびスリアの王等のためにもその手をもて取いだせり

第2章

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茲にソロモン、ヱホバの名のために一の家を建てまた己の國のために一の家を建んとし

ソロモンすなはち荷を負べき者七萬人山において木や石を斫べき者八萬人是等を監督すべき者三千六百人を數へ出せり

ソロモンまづツロの王ヒラムに人を遣して言しめけるは汝はわが父ダビデにその住むべき家を建る香柏をおくれり請ふ彼になせしごとく亦我にもせよ

今我わが神ヱホバの名のために一の家を建て之を聖別て彼に奉つり彼の前に馨しき香を焚き常に供前のパンを供へ燔祭を朝夕に献げまた安息日月朔ならびに我らの神ヱホバの節期などに献げんとす是はイスラエルの永く行ふべき事なればなり

我建る家は大なり其は我らの神は諸の神よりも大なればなり

然ながら天も諸天の天も彼を容ること能はざれば誰か彼のために家を建ることを得んや我は何人ぞや爭か彼のために家を建ることを得ん唯彼の前に香を焚くためのみ

然ば請ふ今金銀銅鐵の細工および紫赤靑の製造に精しく雕刻の術に巧なる工人一箇を我に遣り我父ダビデが備へおきたるユダとヱルサレムのわが工人とともに操作しめよ

請ふ汝また香柏松木および白檀をレバノンより我におくれ我なんぢの僕等がレバノンにて木を斫ることを善するを知るなり我僕また汝の僕と共に操作べし

是のごとくして我ために材木を多く備へしめよ其は我が建んとする家は高大を極むる者なるべければなり

我は木を斫る汝の僕に搗麥二萬石大麥二萬石酒二萬バテ油二萬バテを與ふべしと

是においてツロの王ヒラム書をソロモンにおくりて之に答へて云ふヱホバその民を愛するが故に汝をもて之が王となせりと

ヒラムまた言けるは天地の造主なるイスラエルの神ヱホバは讃べきかな彼はダビデ王に賢き子を與へて之に分別と才智とを賦け之をしてヱホバのために家を建てまた己の國のために家を建ることを得せしむ

今我わが達人ヒラムといふ才智ある工人一人を汝におくる

彼はダンの子孫たる婦の產る者にて其父はツロの人なるが金銀銅鐵木石の細工および紫布靑布細布赤布の織法に精しく又能く各種の雕刻を爲し奇巧を凝して諸の工をなすなり然ば彼を用ひてなんぢの工人および汝の父わが主ダビデの工人とともに操作しめよ

是については我主の宣まへる小麥大麥油および酒をその僕等に遣りたまへ

汝の凡て需むるごとく我らレバノンより木を斫いだしこれを筏にくみて海よりヨツバにおくるべければ汝これをヱルサレムに運びのぼりたまへと

ここにおいてソロモンその父ダビデが核數しごとくイスラエルの國にをる異邦人をことごとく核數みるに合せて十五萬三千六百人ありければ

その七萬人をもて荷を負ふ者となし八萬人をもて山にて木や石を斫る者となし三千六百人をもて民を操作かしむる監督者となせり

第3章

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ソロモン、ヱルサレムのモリア山にヱホバの家を建ることを始む彼處はその父ダビデにヱホバの顯はれたまひし所にて即ちヱブス人オルナンの打場の中にダピデが備へし處なり

之を建ることを始めたるはその治世の四年の二月二日なり

神の家を建るためにソロモンの置たる基は是のごとし長六十キユビト濶二十キユビト皆古の尺に循がふ

家の前の廊は家の濶にしたがひてその長二十キユビトまたその高は百二十キユビトその内は純金をもて蔽ふ

またその大殿は松の木をもて張つめ美金をもて之を蔽ひその上に棕櫚と鏈索の形を施こし

また寶石をもてその家を美しく飾るその金はパルワイムの金なり

彼また金をもてその家その樑その閾その壁およびその戸を蔽ひ壁の上にケルビムを刻つく

また至聖所の家を造りしがその長は家の濶にしたがひて二十キユビトその濶も二十キユビト、美金をもてこれを蔽ふその金六百タラント

その釘の金は重五十シケルまた上の室も金にて覆ふ

また至聖所の家の内に刻鐫めたる二のケルビムを造り金をこれに覆ふ

そのケルビムの翼は長二十キユビト此ケルブの一の翼は五キユビトにして家の壁に達しその他の翼も五キユビトにして彼のケルブの翼に達す

また彼ケルブの一の翼は五キユビトにして家の壁に達しその他の翼も五キユビトにして此ケルブの翼と相接はる

是等のケルビムの翼はその舒ひろがること二十キユビト共にその足にて立ちその面を家に向く

彼また靑紫赤の布および細布をもて障蔽の幕を作りケルビムをその上に繍ふ

また家の前に柱二本を作るその高は三十五キユビトその頂の頭は五キユビト

また環飾を造り鏈索を之に繞らしてこれを柱の頂に施こし石榴一百をつくりてその鏈索の上に施こす

この柱を拝殿の前に竪て一本を右に一本を左に置ゑ右なる者をヤキンと名け左なる者をボアズと名く

第4章

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ソロモンまた銅の壇を作れりその長二十キユビト濶二十キユビトその高十キユビト

また海を鋳造れり此邊より彼邊まで十キユビトにしてその周圍は圓くその高は五キユビトその周圍には三十キユビトの繩をめぐらすべし

その下には牛の像ありてその周圍を繞る即ち一キユビトに十宛ありて海の周圍を繞れり此牛は二行にして海を鋳る時に鋳付たるなり

その海は十二の牛の上に立りその三は北にむかひ三は西にむかひ三は南にむかひ三は東にむかふ海はその上にありて牛の後はみな内にむかふ

その厚は手寛その邊は百合花形にして杯の邊の如くに作れり是は三千バテを受容る

彼また洗盤十箇を作りて五箇を右に五箇を左に置たり是はものを洗ふ所にして燔祭の品をその中にて灌ぐ海は祭司が其身を洗ふ處なり

また金の燈臺十をその例規に從ひて作り拝殿の中に五を右に五を左に置き

また案十を作りて拝殿の中に五を右に五を左に据ゆ又金の鉢一百を作れり

彼また祭司の庭と大庭および庭の戸を作り銅をもてその扉を覆ふ

海は東のかた右の方に置て南に向はしむ

ヒラムまた鍋と火鏟と鉢とを作れり/斯ヒラムはソロモン王のためになせる神の家の諸の工事を終たり

即ち二の柱と毬とその二の柱の頂の頭およびその柱の頂なる頭の二の毬を包む二の網工

ならびに其ふたつの網工の上にほどこす石榴四百この石榴は各々の網工の上に二行づつありて柱の頂なる頭の二の毬を包む

また臺を作り臺の上の洗盤を作れり

また一の海とその下なる十二の牛

および鍋火鏟肉叉などヱホバの家の諸の器具を達人ヒラム ソロモン王の爲に作りたり是みな磨銅なり

王ヨルダンの窪地に於てスコテとゼレダタの間の黏土の地にて是等を鋳させたり

是のごとくソロモン是らの諸の器皿を甚だ多く造りたればその銅の重は測られざりき

ソロモン神の家の一切の器皿を造れり即ち金の壇供前のパンを載る案

また定規のごとく神殿の前にて火をともすべき純金の燈臺およびその燈盞

その花その燈盞その燈鉗是等は金の純精なる者なり

また剪刀鉢匙火盤是等も純金なり又家の内の戸すなはち至聖所の戸および拝殿の戸の肘鈕是も金なり

第5章

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斯ソロモンがヱホバの家のために爲る一切の工事をはれり是においてソロモンその父ダビデが奉納たる物なる金銀および諸の器皿を携へいりて神の家の府庫の中に置り

茲にソロモン、ヱホバの契約の櫃をダビデの邑シオンより舁のぼらんとてイスラエルの長老者と諸の支派の長等イスラエルの子孫の宗家の長をヱルサレムに召集めければ

イスラエルの人みな七月の節筵に當りて王の所に集まり

イスラエルの長老等みな至りレビ人契約の櫃を執あげ

その契約の櫃と集會の幕屋と幕屋にありし諸の聖器を舁のぼれり即ち祭司レビ人これを舁のぼりぬ

時にソロモン王および彼の許に集まれるイスラエルの會衆契約の櫃の前にありて羊と牛を献げたりしがその數多くして書すことも數ふることも能はざりき

かくて祭司等ヱホバの契約の櫃をその處に舁いれたり即ち室の神殿なる至聖所の中のケルビムの翼の下に舁いりぬ

ケルビムは翼を契約の櫃の所の上に舒べケルビム上より契約の櫃とその杠を掩ふ

杠長かりければ杠の末は神殿の前の契約の櫃より見えたり然れども外には見えざりき其は今日まで彼處にあり

契約の櫃の内には二枚の板の外何もあらず是はイスラエルの子孫のエジプトより出たる時ヱホバが彼らと契約を結びたまへる時にモーセがホレブにて蔵めたる者なり

斯て祭司等は聖所より出たり此にありし祭司はみな身を潔めその班列によらずして職務をなせり

またレビ人の謳歌者すなはちアサフ、ヘマン、ヱドトン及び彼らの子等と兄弟等はみな細布を纒ひ鐃鈸と瑟と琴とを操て壇の東に立りまた祭司百二十人彼らとともにありて喇叭を吹り

喇叭を吹く者と謳歌者とは一人のごとくに聲を斉うしてヱホバを讃かつ頌へたりしが彼ら喇叭鐃鈸等の樂器をもちて聲をふりたて善かなヱホバその矜憫は世々限なしと言てヱホバを讃ける時に雲その室すなはちヱホバの室に充り

祭司は雲の故をもて立て奉事をなすことを得ざりきヱホバの榮光神の室に充たればなり

第6章

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是においてソロモン言けるはヱホバは濃き雲の中に居んと言たまひしが

我汝のために住むべき家永久に居べき所を建たりと

而して王その面をふりむけてイスラエルの全會衆を祝せり時にイスラエルの會衆は皆立をれり

彼いひけるはイスラエルの神ヱホバは讃べき哉ヱホバはその口をもて吾父ダビデに言ひその手をもて之を成とげたまへり

即ち言たまひけらく我はわが民をエジプトの地より導き出せし日より我名を置べき家を建しめんためにイスラエルの諸の支派の中より何の邑をも選みしこと無く又何人をも選みて我民イスラエルの君となせしこと無し

只我はわが名を置くためにヱルサレムを選みまた我民イスラエルを治めしむるためにダビデを選めり

夫イスラエルの神ヱホバの名のために家を建ることは我父ダビデの心にありき

然るにヱホバわが父ダビデに言たまひけるは我名のために家を建ること汝の心にあり汝の心にこの事あるは善し

然れども汝はその家を建べからず汝の腰より出る汝の子その人わが名のために家を建べしと

而してヱホバその言たまひし言をおこなひたまへり即ち我わが父ダビデに代りて立ちヱホバの言たまひしごとくイスラエルの位に坐しイスラエルの神ヱホバの名のために家を建て

その中にヱホバがイスラエルの子孫になしたまひし契約を容る櫃ををさめたりと

ソロモン、イスラエルの全會衆の前にてヱホバの壇の前に立てその手を舒ぶ

ソロモンさきに長五キユビト濶五キユビト高三キユビトの銅の臺を造りてこれを庭の眞中に据おきたりしが乃ちその上に立ちイスラエルの全會衆の前にて膝をかがめ其手を天に舒て

言けるはイスラエルの神ヱホバ天にも地にも汝のごとき神なし汝は契約を保ちたまひ心を全うして汝の前に歩むところの汝の僕等に恩惠を施こしたまふ

汝は汝の僕わが父ダビデにのたまひし所を保ちたまへり汝は口をもて言ひ手をもて成就たまへること今日のごとし

イスラエルの神ヱホバよ然ば汝が僕わが父ダビデに語りて若し汝の子孫その道を愼みて汝がわが前に歩めるごとくに我律法にあゆまばイスラエルの位に坐する人わが前にて汝に缺ること無るべしと言たまひし事をダビデのために保ちたまへ

然ばイスラエルの神ヱホバよ汝が僕ダビデに言たまへるなんぢの言に效驗あらしめたまへ

但し神果して地の上に人とともに居たまふや夫天も諸天の天も汝を容るに足ず况て我が建たる此家をや

然れども我神ヱホバよ僕の祈祷と懇願をかへりみて僕が今汝の前に祈るその號呼と祈祷を聽たまへ

願くは汝の目を夜晝此家の上即ち汝が其名を置んと言たまへる所の上に開きたまへ願くは僕がこの處にむかひて祈らん祈祷を聽たまへ

願くは僕と汝の民イスラエルがこの處にむかひて祈る時にその懇願を聽たまへ請ふ汝の住處なる天より聽き聽て赦したまへ

人その隣人にむかひて罪を犯せることありてその人誓をもて誓ふことを要められんに若し來りてこの家において汝の壇の前に誓ひなば

汝天より聽て行ひ汝の僕等を鞫き惡き者に返報をなしてその道をその首に歸し義者を義としてその義にしたがひて之を待ひたまへ

汝の民イスラエルなんぢに罪を犯したるがために敵の前に敗れんに若なんぢに歸りて汝の名を崇め此家にて汝の前に祈り願ひなば

汝天より聽て汝の民イスラエルの罪を赦し汝が彼等とその先祖に與へし地に彼等を歸らしめたまへ

彼らが汝に罪を犯したるがために天閉て雨なからんに彼ら若この處にむかひて祈り汝の名を崇め汝が彼らを苦しめたまふ時にその罪を離れなば

汝天より聽きて汝の僕等なんぢの民イスラエルの罪を赦したまへ汝旣にかれらにその歩むべき善道を敎へたまへり汝の民に與へて產業となさしめたまひし汝の地に雨を降したまへ

若くは國に饑饉あるか若くは疫病枯死朽腐蟊賊稲蠹あるか若くは其敵かれらをその國の邑に圍む等如何なる災禍如何なる疾病あるとも

もし一人或は汝の民イスラエルみな各々おのれの災禍と憂患を知てこの家にむかひて手を舒なば如何なる祈祷如何なる懇願をなすとも

汝の住處なる天より聽て赦し各々の人にその心を知たまふごとくその道々にしたがひて報いたまへ其は汝のみ人々の心を知たまへばなり

汝かく彼らをして汝が彼らの先祖に與へたまへる地に居る日の間つねに汝を畏れしめ汝の道に歩ましめたまへ

且汝の民イスラエルの者にあらずして汝の大なる名と強き手と伸たる腕とのために遠き國より來れる異邦人においてもまた若來りてこの家にむかひて祈らば

汝の住處なる天より聽き凡て異邦人の汝に龥もとむるごとく成たまへ汝かく地の諸の民をして汝の名を知らしめ汝の民イスラエルの爲ごとくに汝を畏れしめ又わが建たる此家は汝の名をもて稱らるるといふことを知しめたまへ

汝の民その敵と戰はんとて汝の遣はしたまふ道に進める時もし汝が選びたまへるこの邑およびわが汝の名のために建たる家にむかひて汝に祈らば

汝天より彼らの祈祷と懇願を聽て彼らを助けたまへ

人は罪を犯さざる者なければ彼ら汝に罪を犯すことありて汝かれらを怒り彼らをその敵に付したまひて敵かれらを虜として遠き地または近き地に曳ゆかん時

彼らその擄れゆきし地において自ら心に了るところあり其俘擄の地において翻へりて汝に祈り我らは罪を犯し悖れる事を爲し惡き事を行ひたりと言ひ

その擄へゆかれし俘擄の地にて一心一念に汝に立歸り汝がその先祖に與へたまへる地にむかひ汝が選びたまへる邑と我が汝の名のために建たる家にむかひて祈らば

汝の住處なる天より彼らの祈祷と懇願を聽て彼らを助け汝の民が汝にむかひて罪を犯したるを赦したまへ

然ば我神よ願くは此處にて爲す祈祷に汝の目を開き耳を傾むけたまヘ

ヱホバ神よ今汝および汝の力ある契約の櫃起て汝の安居の所にいりたまへヱホバ神よ願くは汝の祭司等に拯救の衣を纒はせ汝の聖徒等に恩惠を喜こばせたまヘ

ヱホバ神よ汝の膏そそぎし者の面を黜ぞけたまふ勿れ汝の僕ダビデの徳行を記念たまへ

第7章

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ソロモン祈ることを終し時天より火くだりて燔祭と犠牲とを焚きヱホバの榮光その家に充り

ヱホバの榮光ヱホバの家に充しに因て祭司はヱホバの家に入ことを得ざりき

イスラエルの子孫は皆火の降れるを見またヱホバの榮光のその家にのぞめるを見て敷石の上にて地に俯伏て拝しヱホバを讃て云り善かなヱホバその恩惠は世々限なしと

斯て王および民みなヱホバの前に犠牲を献ぐ

ソロモン王の献げたる犠牲は牛二萬二千羊十二萬斯王と民みな神の家を開けり

祭司は立てその職をなしレビ人はヱホバの樂器を執て立つ其樂器はダビデ王彼らの手によりて讃美をなすに當り自ら作りてヱホバの恩惠は世々限なしと頌へしめし者なり祭司は彼らの前にありて喇叭を吹きイスラエルの人は皆立をる

ソロモンまたヱホバの家の前なる庭の中を聖め其處にて燔祭と酬恩祭の脂とを献げたり是はソロモンの造れる銅の壇その燔祭と素祭と脂とを受るに足ざりしが故なり

その時ソロモン七日の間節筵をなしけるがイスラエル全國の人々すなはちハマテの入口よりエジプトの河までの人々あつまりて彼とともにあり其會はなはだ大なりき

かくて第八日に聖會を開けり彼らは七日のあひだ壇奉納の禮をおこなひまた七日のあひだ節筵を守りけるが

七月の二十三日にいたりてソロモン民をその天幕に歸せり皆ヱホバがダビデ、ソロモンおよびその民イスラエルに施こしたまひし恩惠のために喜こび且心に樂しみて去り

ソロモン、ヱホバの家と王の家とを造了へヱホバの家と己の家とにつきて爲んと心に思ひし事を盡く成就たり

時にヱホバ夜ソロモンに顯れて之に言たまひけるは我すでに汝の祈祷を聽きまた此處をわがために選びて犠牲を献ぐる家となす

我天を閉て雨なからしめ又は蟊賊に命じて地の物を食はしめ又は疫病を我民の中におくらんに

我名をもて稱らるる我民もし自ら卑くし祈りてわが面を求めその惡き道を離れなば我天より聽てその罪を赦しその地を醫さん

今より我この處の祈祷に目を啓き耳を傾むけん

今我すでに此家を選びかつ聖別む我名は永く此にあるべしまた我目もわが心も恒に此にあるべし

汝もし汝の父ダビデの歩みしごとく我前に歩み我が汝に命じたるごとく凡て行ひてわが法度と律例を守らば

我は汝の父ダビデに契約してイスラエルを治むる人汝に缺ること無るべしと言しごとく汝の國の祚を堅うすべし

然ど汝ら若ひるがへり我が汝らの前に置たる法度と誡命を棄て往て他の神々に事へかつ之を拝まば

我かれらを我が與へたる地より抜さるべし又我名のために我が聖別たる此家は我これを我前より投棄て萬國の中に諺語となり嘲笑とならしめん

且又この家は高くあれども終にはその傍を過る者は皆これに驚きて言んヱホバ何故に此地に此家に斯なしたるやと

人これに答へて言ん彼ら己の先祖をエジプトの地より導き出ししその神ヱホバを棄て他の神々に附從がひ之を拝み之に事へしによりてなりヱホバ之がためにこの諸の災禍を彼らに降せりと

第8章

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ソロモン二十年を經てヱホバの家と己の家を建をはりけるが

ヒラム邑幾何をソロモンに歸しければソロモンまた之を建なほしイスラエルの子孫をしてその中に住しむ

ソロモンまたハマテゾバに往て之に勝り

彼また曠野のタデモルを建てハマテの諸の府庫邑を建つ

また上ベテホロンおよび下ベテホロンを建つ是は堅固の邑にして石垣あり門あり關木あり

ソロモンまたバアラテとおのが有る府庫の邑々と戰車の諸の邑々と騎兵の邑々ならびにそのエルサレム、レバノンおよび己が治むるところの全地に建んと望みし者を盡く建つ

凡てイスラエルの子孫にあらざるヘテ人アモリ人ペリジ人ヒビ人ヱブス人の遺れる者

その地にありて彼らの後に遺れるその子孫即ちイスラエルの子孫の滅ぼし盡さざりし民はソロモンこれを使役して今日にいたる

然れどもイスラエルの子孫をばソロモン一人も奴隸となして其工事に使ふことをせざりき彼らは軍人となり軍旅の長となり戰車と騎兵の長となれり

ソロモン王の有司の首は二百五十人ありて民を統ぶ

ソロモン、パロの女をダビデの邑より携へのぼりて曩にこれがために建おきたる家にいたる彼すなはち言り我妻はイスラエルの王ダビデの家に居べからずヱホバの契約の櫃のいたれる處は皆聖ければなりと

茲にソロモン曩に廊の前に築きおきたるヱホバの壇の上にてヱホバに燔祭を献ぐることをせり

即ちモーセの命令にしたがひて毎日例のごとくに之を献げ安息日月朔および年に三次の節會すなはち酵いれぬパンの節と七週の節と結茅節とに之を献ぐ

ソロモンその父ダビデの定めたる所にしたがひて祭司の班列を定めてその職に任じ又レビ人をその勤務に任じて日々例のごとく祭司の前にて頌讃をなし奉事をなさしめ又門を守る者をしてその班列にしたがひて諸門を守らしむ神の人ダビデの命ぜしところ是の如くなりければなり

祭司とレビ人は諸の事につきまた府庫の事につきて王に命ぜられたる所に違ざりき

ソロモンはヱホバの家の基を置る日までにその工事の準備をことごとく爲しおきて遂に之を成をへたればヱホバの家は全備せり

茲にソロモン、ヱドムの地の海邊にあるエジオンゲベルおよびエロテに往り

時にヒラムその僕等の手に託て船を彼に遣りまた海の事を知る僕等を遣りけるが彼等すなはちソロモンの僕とともにオフルに往て彼處より金四百五十タラントを取てソロモン王の許に携へ來れり


第9章

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茲にシバの女王ソロモンの風聞を聞および難問をもてソロモンを試みんとて甚だ衆多の部從をしたがへ香物と夥多き金と寶石とを駱駝に負せてヱルサレムに來りソロモンの許にいたりてその心にある所をことごとく之に陳けるに

ソロモンこれが問に盡く答へたりソロモンの知ずして答へざる事は無りき

シバの女王ソロモンの智慧とその建たる家を觀

またその席の食物とその諸臣の列坐る状とその侍臣の伺候状と彼らの衣服およびその酒人とその衣服ならびに彼がヱホバの家に上りゆく昇道を觀におよびて全くその氣を奪はれたり

是において彼王に言けるは我が自己の國にて汝の行爲と汝の智慧とにつきて聞およびたる言は眞實なりき

然るに我は來りて目に觀るまではその言を信ぜざりしが今視ば汝の智慧の大なる事我が聞たるはその半分にも及ばざりき汝は我が聞たる風聞に愈れり

汝の人々は幸福なるかな汝の前に常に立て汝の智慧を聽る此なんぢの臣僕等は幸福なるかな

汝の神ヱホバは讃べき哉彼なんぢを悦こびてその位に上らせ汝の神ヱホバの爲に汝を王となしたまへり汝の神イスラエルを愛して永く之を堅うせんとするが故に汝を之が王となして公平と正義を行はせたまふなりと

すなはち金百二十タラントおよび莫大の香物と寶石とを王に饋れりシバの女王がソロモン王に饋りたるが如き香物は未だ曾て有ざりしなり

(かのオフルより金を取きたりしヒラムの臣僕とソロモンの臣僕等また白檀木と寶石とをも携さへいたりければ

王その白檀木をもてヱホバの家と王の宮とに段階を作りまた謳歌者のために琴と瑟とを作れり是より前には是のごとき者ユダの地に見しこと無りき)

ソロモン王シバの女王に物を饋りてその携へきたれる所に報いたるが上にまた之が望にまかせて凡てその求むる者を與へたり斯て彼はその臣僕とともに去てその國に還りぬ

一年にソロモンの所に來れる金の重量は六百六十六タラントなり

この外にまた商賣および商旅の携へきたる者ありアラビアの一切の王等および國の知事等もまた金銀をソロモンに携へ至れり

ソロモン王展金の大楯二百を作れりその大楯一枚には展金六百シケルを用ふ

また展金の小干三百を作れり其小干一枚には金三百シケルを用ふ王これらをレバノン森の家に置り

王また象牙をもて大なる寳座一を造り純金をもて之を蔽へり

その寳座には六の階級あり又金の足臺ありて共にその寳座に連なりその坐する處の此旁彼旁に按手ありて按手の側に二頭の獅子立をり

その六の階級に十二の獅子ありて此旁彼旁に立り是のごとき者を作れる國は未だ曾て有ざりしなり

ソロモン王の用ゐる飮料の器は皆金なりまたレバノン森の家の器もことごとく精金なり銀はソロモンの世には何とも算ざりしなり

其は王の舟ヒラムの僕を乗てタルシシに往き三年毎に一回その舟タルシシより金銀象牙猿および孔雀を載て來りたればたり

ソロモン王は天下の諸王に勝りて富有と智慧とをもちたれば

天下の諸王みな神がソロモンの心に授けたまへる智慧を聽んとてソロモンの面を見んことを求め

各々その禮物を携さへ來る即ち銀の器金の器衣服甲冑香物馬騾など年々定分ありき

ソロモン戰車の馬四千厩騎兵一萬二千あり王これを戰車の邑々に置きまたヱルサレムにて自己の所に置り

彼は河よりペリシテの地とエジプトの界までの諸王を統治めたり

王は銀を石のごとくヱルサレムに多からしめまた香柏を平野の桑木のごとく多からしめたり

また人衆エジプトなどの諸國より馬をソロモンに率いたれり

ソロモンのその餘の始終の行爲は預言者ナタンの書とシロ人アヒヤの預言と先見者イドがネバテの子ヤラベアムにつきて述たる默旨の中に記さるるにあらずや

ソロモンはヱルサレムにて四十年の間イスラエルの全地を治めたり

ソロモンその先祖等と倶に寝りてその父ダビデの邑に葬られ其子レハベアムこれに代りて王となれり

第10章

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爰にレハベアム、シケムに往り其はイスラエルみな彼を王となさんとてシケムに到りたればたり

ネバテの子ヤラベアムはさきにソロモン王の面を避てエジプトに逃れ居しがこのことを聞てエジプトより歸れり

人衆人を遣はして之を招きたるなり斯てヤラベアムとイスラエルの人みな來りてレハベアムに語りて言けるは

汝の父我らの軛を苦しくせり然ば汝今汝の父の苦しき役とその我らに蒙むらせたる重き軛を軽くしたまへ然れば我儕なんぢに事へん

レハベアムかれらに言けるは汝ら三日を經て再び我に來れと民すなはち去り

是においてレハベアム王その父ソロモンの生る間これが前に立たる老人等に計りて言けるは汝ら如何に敎へて此民に答へしむるや

彼らレハベアムに語りて言けるは汝もし此民を厚く待ひ之を悦こばせ善言を之に語らば永く汝の僕たらんと

然るに彼その老人等の敎へし敎を棄て自己とともに生長て己の前に立ところの少年等と計れり

即ち彼らに言けるは汝ら如何に敎へて我らをして此我に語りて汝の父の我らに蒙むらせし軛を軽くせよと言ふ民に答へしむるやと

彼とともに生長たる少年等かれに語りて言けるは汝に語りて汝の父我らの軛を重くしたれば汝これを我らのために軽くせよと言たる此民に汝かく答へ斯これに言べし吾小指は我父の腰よりも太し

我父は汝らに重き軛を負せたりしが我は更に汝らの軛を重くせん我父は鞭をもて汝らを懲せしが我は蠍をもて汝らを懲さんと

偖またヤラベアムと民等は皆王の告て第三日に再び我にきたれと言しごとく第三日にレハベアムに詣りしに

王荒々しく彼らに答へたり即ちレハベアム王老人の敎を棄て

少年の敎のごとく彼らに告て言けるは我父は汝らの軛を重くしたりしが我は更に之を重くせん我父は鞭をもて汝らを懲せしが我は蠍をもて汝らを懲さんと

王かく民に聽ことをせざりき此事は神より出たる者にしてその然るはヱホバかつてシロ人アヒヤによりてネバテの子ヤラベアムに告たる言を成就んがためなり

イスラエルの民みな王の己に聽ざるを見しかば王に答へて言けるは我らダビデの中に何の分あらんやヱッサイの子の中には所有なしイスラエルよ汝ら各々その天幕に歸れダビデ族よ今おのれの家を顧みよと斯イスラエルは皆その天幕に歸れり

但しユダの邑々に住るイスラエルの子孫の上にはレハベアムなほ王たりき

レハベアム王役夫の頭なるアドラムを遣はしけるにイスラエルの子孫石をもてこれを撃て死しめたればレハベアム王急ぎてその車に登りてエルサレムに逃かへれり

是のごとくイスラエルはダビデの家に背きて今日にいたる

第11章

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茲にレハベアム、ヱルサレムに至りてユダとベニヤミンの家より倔強の武者十八萬を集め而してレハベアム國を己に歸さんためにイスラエルと戰はんとせしに

ヱホバの言神の人シマヤに臨みて云ふ

ソロモンの子ユダの王レハベアムおよびユダとベニヤミンにあるイスラエルの人々に告て言べし

ヱホバかく言ふ汝ら攻上るべからず又なんぢらの兄弟と戰ふべからず各々その家に歸れ此事は我より出たる者なりと彼ら乃はちヱホバの言にしたがひヤラベアムに攻ゆくことを止て歸れり

斯てレハベアム、ヱルサレムに居りユダに守衛の邑々を建たり

即ちその建たる者はベテレヘム、エタム、テコア

ベテズル`シヨコ、アドラム

ガテ、マレシヤ、ジフ

アドライム、ラキシ、アゼカ

ゾラ、アヤロン、ヘブロン是等はユダとベニヤミンにありて守衛の邑なり

彼その守衛の邑々を堅固にし之に軍長を置き糧食と油と酒とを貯はへ

またその一切の邑に盾と矛とを備へて之を甚だ強からしむユダとベニヤミンこれに附り

イスラエルの全地の祭司とレビ人は四方の境より來りてレハベアムに投ず

即ちレビ人はその郊地と產業とを離れてユダとヱルサレムに至れり是はヤラベアムとその子等かれらを廢して祭司の職をヱホバの前に爲しめざりし故なり

ヤラベアムは崇邱と牡山羊と己が作れる犢とのために自ら祭司を立つ

またイスラエルの一切の支派の中凡てその心を傾むけてイスラエルの神ヱホバを求むる者はその先祖の神ヱホバに禮物を献げんとてレビ人にしたがひてヱルサレムに至れり

是のごとく彼等ユダの國を固うしソロモンの子レハベアムをして三年の間強からしめたり即ち民は三年の間ダビデとソロモンの道に歩めり

レハベアムはダビデの子ヱレモテの女マハラテを妻に娶れりマハラテはヱッサイの子エリアブの女アビハイルの產し者なり

彼ヱウシ、シヤマリヤおよびザハムの三子を產む

また之が後にアブサロムの女マアカを娶れり彼アビヤ、アツタイ、ジザおよびシロミテを產む

レハベアムはアブサロムの女マアカをその一切の妻と妾とにまさりて愛せり彼は妻十八人妾六十人を取り男子二十八人女子六十人を擧く

レハベアム、マアカの子アビヤを王となさんと思ふが故に之を立て首となしその兄弟の長となせり

斯るが故に慧く取行ひ其男子等を盡くユダとベニヤミンの地なる守衛の邑々に散し置き之に糧食を多く與へかつ衆多の妻を求得させたり

第12章

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レハベアムその國を固くしその身を強くするに及びてヱホバの律法を棄たりイスラエルみな之に傚ふ

彼ら斯ヱホバにむかひて罪を犯すによりてレハベアムの五年にエジプトの王シシヤク、ヱルサレムに攻のぼれり

その戰車は一千二百騎兵は六萬また彼に從がひてエジプトより來れる民ルビ人スキ人エテオピヤ人等は數しれず

彼すなはちユダの守衛の邑々を取り進てヱルサレムに至る

是においてレハベアムおよびユダの牧伯等シシヤクの故によりてヱルサレムに集まり居けるに預言者シマヤこれが許にいたりて之に言けるはヱホバかく言たまふ汝等は我を棄たれば我も汝らをシシヤクの手に遺おけりと

是をもてイスラエルの牧伯等および王は自ら卑くしてヱホバは義と言り

ヱホバかれらが自ら卑くするを見たまひければヱホバの言シマヤに臨みて言ふ彼等は自ら卑くしたれば我かれらを滅ぼさず少く拯救を彼らに施こさん我シシヤクの手をもて我忿怒をヱルサレムに洩さじ

然ながら彼等は之が臣とならん是彼らが我に事ふる事と國々の王等に事ふる事との辨をしらん爲なりと

エジプトの王シシヤクすなはちヱルサレムに攻のぼりヱホバの家の寶物と王の家の寶物とを奪ひて盡くこれを取り又ソロモンの作りたる金の楯を奪ひされり

是をもてレハベアム王その代に銅の楯を作り王の家の門を守る侍衛の長等の手にこれを交し置けるが

王ヱホバの家に入る時には侍衛きたりて之を負ひまた侍衛の房にこれを持かへれり

レハベアム自ら卑くしたればヱホバの忿怒かれを離れこれを盡く滅ぼさんとは爲たまはず又ユダにも善事ありき

レハベアム王はヱルサレムにありてその力を強くし世を治めたり即ちレハベアムは四十一歳のとき位に即き十七年の間ヱルサレムにて世を治む是すなはちヱホバがその名を置んとてイスラエルの一切の支派の中より選びたまへる邑なり彼の母はアンモニ人にしてその名をナアマといふ

レハベアムはヱホバを求むる事に心を傾けずして惡き事を行へり

レハベアムの始終の行爲は預言者シマヤの書および先見者イドの書の中に系圖の形に記さるるに非ずやレハベアムとヤラベアムの間には絶ず戰爭ありき

レハベアムその先祖等とともに寝りてダビデの邑に葬られ其子アビヤ之にかはりて王となれり

第13章

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ヤラベアム王の十八年にアビヤ、ユダの王となり

ヱルサレムにて三年の間世を治めたり其母はギベアのウリエルの女にして名をミカヤといふ茲にアビヤとヤラベアムの間に戰爭あり

アビヤは四十萬の軍勢をもて戰闘に備ふ是みな倔強の猛き武夫なり又ヤラベアムは倔強の人八十萬をもて之にむかひて戰爭の行伍を立つ是また大勇士なり

時にアビヤ、エフライムの山地なるゼマライム山の上に立て言けるはヤラベアムおよびイスラエルの人々皆聽よ

汝ら知ずやイスラエルの神ヱホバ鹽の契約をもてイスラエルの國を永くダビデとその子孫に賜へり

然るにダビデの子ソロモンの臣たるネバテの子ヤラベアム興りてその主君に叛き

邪曲なる放蕩者これに集り附き自ら強くしてソロモンの子レハベアムに敵せしがレハベアムは少くまた心弱くして之に當る力なかりき

今またなんぢらはダビデの子孫の手にあるヱホバの國に敵對せんとす汝らは大軍なり又ヤラベアムが作りて汝らの神と爲たる金の犢なんぢらと偕にあり

汝らはアロンの子孫たるヱホバの祭司とレビ人とを逐放ち國々の民の爲がごとくに祭司を立るにあらずや即ち誰にもあれ少き牡牛一匹牡羊七匹を携へきたりて手に充す者は皆かの神ならぬ者の祭司となることを得るなり

然ど我儕に於てはヱホバ我儕の神にましまして我儕は之を棄ずまたヱホバに事ふる祭司はアロンの子孫にして役事をなす者はレビ人なり

彼ら朝ごと夕ごとにヱホバに燔祭を献げ香を焚くことを爲し又供前のパンを純精の案の上に供へまた金の燈臺とその燈盞を整へて夕ごとに點すなり斯われらは我らの神ヱホバの職守を守れども汝らは却て彼を棄たり

視よ神みづから我らとともに在して我らの大將となりたまふまた其祭司等は喇叭を吹ならして汝らを攻むイスラエルの子孫よ汝らの先祖の神ヱホバに敵して戰ふ勿れ汝ら利あらざるべければなりと

ヤラベアム伏兵を彼らの後に回らせたればイスラエルはユダの前にあり伏兵は其後にあり

ユダ後を顧みるに敵前後にありければヱホバにむかひて號呼り祭司等喇叭を吹り

ユダの人々すなはち吶喊を擧けるがユダの人々吶喊を擧るにあたりて神ヤラベアムとイスラエルの人々をアビヤとユダの前に打敗り給ひしかば

イスラエルの子孫はユダの前より逃はしれり神かく彼らを之が手に付したまひければ

アビヤとその民彼らを夥多く撃殺せりイスラエルの殺されて倒れし者は五十萬人みな倔強の人なりき

是時にはイスラエルの子孫打負されユダの子孫勝を得たり是は彼らその先祖の神ヱホバを賴みしが故なり

アビヤすなはちヤラベアムを追撃て邑數箇を彼より取れり即ちベテルとその郷里ヱシヤナとその郷里エフロンとその郷里是なり

ヤラベアムはアビヤの世に再び權勢を奮ふことを得ずヱホバに撃れて死り

然どアビヤは權勢を得妻十四人を娶り男子二十二人女子十六人を擧けたり

アビヤのその餘の作爲とその行爲とその言は預言者イドの註釋に記さる

第14章

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アビヤその先祖等とともに寝りてダビデの邑に葬られその子アサこれに代りて王となれりアサの代になりて其國十年の間平穩なりき

アサはその神ヱホバの目に善と視正義と視たまふ事を行へり

即ち異なる祭壇を取のぞき諸の崇邱を毀ち柱像を打碎きアシラ像を斫倒し

ユダに命じてその先祖等の神ヱホバを求めしめその律法と誡命を行はしめ

ユダの一切の邑々より崇邱と日の像とを取除けり而して國は彼の前に平穩なりき

彼また守衛の邑數箇をユダに建たり是はその國平安を得て此年頃戰爭なかりしに因る即ちヱホバ彼に安息を賜ひしなり

彼すなはちユダに言けるは我儕是等の邑を建てその四周に石垣を築き戌樓を起し門と門閂とを設けん我儕の神ヱホバを我儕求めしに因て此國なほ我儕の前にあり我ら彼を求めたれば四方において我らに平安を賜へりと斯彼ら阻滞なく之を建了たり

アサの軍勢はユダより出たる者三十萬ありて楯と戈とを執りベニヤミンより出たる者二十八萬ありて小楯を執り弓を彎く是みな大勇士なり

茲にエテオピア人ゼラ軍勢百萬人戰車三百輌を率ゐて攻きたりマレシヤに至りければ

アサこれにむかひて進み出で共にマレシヤのゼパタの谷において戰爭の陣列を立つ

時にアサその神ヱホバにむかひて呼はりて言ふヱホバよ力ある者を助くるも力なき者を助くるも汝においては異ること無し我らの神ヱホバよ我らを助けたまへ我らは汝に倚賴み汝の名に託りて往て此群集に敵るヱホバよ汝は我らの神にましませり人をして汝に勝せたまふ勿れと

ヱホバすなはちアサの前とユダの前においてエテオピア人を撃敗りたまひしかばエテオピア人逃はしりけるに

アサと之に從がふ民かれらをゲラルまで追撃り斯エテオピア人は倒れて再び振ふことを得ざりき其は彼等ヱホバとその軍旅に打敗られたればなりユダの人々の得たる掠取物は甚だ多りき

かれらはまたゲラルの四周の邑々を盡く撃やぶれり是その邑々ヱホバを畏れたればなり是において彼らその一切の邑より物を掠めたりしがその中より得たる掠取物は夥多かりき

また家畜のをる天幕を襲ふて羊と駱駝を多く奪ひ取り而してヱルサレムに歸りぬ

第15章

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茲に神の霊オデデの子アザリヤに臨みければ

彼出ゆきてアサを迎へ之に言けるはアサおよびユダとベニヤミンの人々よ我に聽け汝等がヱホバと偕にをる間はヱホバも汝らと偕に在すべし汝ら若かれを求めなば彼に遇ん然どかれを棄なば彼も汝らを棄たまはん

抑イスラエルには眞の神なく敎訓を施こす祭司なく律法なきこと日久しかりしが

患難の時にイスラエルの神ヱホバに立かへりて之を求めたれば即ちこれに遇り

當時は出る者にも入る者にも平安なく惟大なる苦患くにぐにの民に臨めり

國は國に邑は邑に撃碎かる其は神諸の患難をもて之を苦しめたまへばなり

然ば汝ら強かれよ汝らの手を弱くする勿れ汝らの行爲には賞賜あるべければなりと

アサこれらの言および預言者オデデの預言を聽て力を得憎むべき者をユダとベニヤミンの全地より除きまた其エフライムの山地に得たる邑々より除きヱホバの廊の前なるヱホバの壇を再興せり

彼またユダとベニヤミンの人々およびエフライム、マナセ、シメオンより來りて寄寓る者を集めたりイスラエルの人々の中ヱホバ神のアサと偕に在すを見てアサに降れる者夥多しかりしなり

彼等すなはちアサの治世の十五年の三月にヱルサレムに集り

其たづさへ來れる掠取物の中より牛七百羊七千をその日ヱホバに献げ

皆契約を結びて曰く心を盡し精神を盡して先祖の神ヱホバを求めん

凡てイスラエルの神ヱホバを求めざる者は大小男女の區別なく之を殺さんと

而して大聲を擧げ號呼をなし喇叭を吹き角を鳴してヱホバに誓を立て

ユダみなその誓を喜べり即ち彼ら一心をもて誓を立て一念にヱホバを求めたればヱホバこれに遇ひ四方において之に安息をたまへり

偖またアサ王の母マアカ、アシラ像を作りしこと有ければアサこれを貶して太后たらしめずその像を斫たふして粉々に碎きキデロン川にてこれを焚り

但し崇邱は尚イスラエルより除かざりき然どもアサの心は一生の間全かりしなり

彼はまたその父の納めたる物および己が納めたる物すなはち金銀ならびに器皿等をヱホバの家に携へいれり

アサの治世の三十五年までは再び戰爭あらざりき

第16章

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アサの治世の三十六年にイスラエルの王バアシヤ、ユダに攻のぼりユダの王アサの所に誰をも往來せざらしめんとてラマを建たり

是においてアサ、ヱホバの家と王の家との府庫より金銀を取いだしダマスコに住るスリアの王ベネハダデに餽りて言けるは

我父と汝の父の間の如く我と汝の間に約を立ん視よ我今汝に金銀を餽れり往て汝とイスラエルの王バアシヤとの約を破り彼をして我を離れて去しめよ

ベネハダデすなはちアサ王に聽き自己の軍勢の長等をイスラエルの邑々に攻遣ければ彼等イヨン、ダン、アベルマイムおよびナフタリの一切の府庫の邑々を撃たり

バアシヤ聞てラマを建ることを罷めその工事を廢せり

是においてアサ王ユダ全國の人を率ゐバアシヤがラマを建るに用ひたる石と材木を運びきたらしめ之をもてゲバとミズパを建たり

その頃先見者ハナニ、ユダの王アサの許にいたりて之に言けるは汝はスリアの王に倚賴みて汝の神ヱホバに倚賴まざりしに因てスリア王の軍勢は汝の手を脱せり

かのエテオピア人とルビ人は大軍にして戰車および騎兵はなはだ多かりしにあらずや然るも汝ヱホバに倚賴みたればヱホバかれらを汝の手に付したまへり

ヱホバは全世界を徧く見そなはし己にむかひて心を全うする者のために力を顯したまふこの事において汝は愚なる事をなせり故に此後は汝に戰爭あるべしと

然るにアサその先見者を怒りて之を獄舎にいれたり其は烈しくこの事のために彼を怒りたればなりアサまた其頃民を虐げたる事ありき

アサの始終の行爲はユダとイスラエルの列王の書に記さる

アサはその治世の三十九年に足を病みその病患つひに劇しくなりしがその病患の時にもヱホバを求めずして醫師を求めたり

アサその先祖等と偕に寝りその治世の四十一年に死り

人衆これをその己のためにダビデの邑に堀おける墓に葬り製香の術をもて製したる種々の香物を盈せる床の上に置き之がために夥多しく焚物をなせり

第17章

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アサの子ヨシヤパテ、アサに代りて王となりイスラエルにむかひて力を強くし

ユダの一切の堅固なる邑々に兵を置きユダの地およびその父アサが取たるエフライムの邑々に鎮臺を置く

ヱホバ、ヨシヤパテとともに在せり其は彼その父ダビデの最初の道に歩みてバアル等を求めず

その父の神を求めてその誡命に歩みイスラエルの行爲に傚はざればなり

このゆゑにヱホバ國を彼の手に堅く立たまへりまたユダの人衆みなヨシヤパテに禮物を餽れり彼は富と貴とを極めたり

是において彼ヱホバの道にその心を勵まし遂に崇邱とアシラ像とをユダより除けり

彼またその治世の三年にその牧伯ベネハイル、オバデヤ、ゼカリヤ、ネタンエルおよびミカヤを遣はしてユダの邑々にて敎誨をなさしめ

またレビ人の中よりシマヤ、ネタニヤ、ゼバデヤ、アサヘル、セミラモテ、ヨナタン、アドニヤ、トビヤ、トバドニヤなどいふレビ人を遣して之と偕ならしめ且祭司エリシヤマとヨラムをも之と偕に遣はしけるが

彼らはヱホバの律法の書を携ヘユダにおいて敎誨をなしユダの邑々を盡く行めぐりて民を敎へたり。

是においてユダの周圍の地の國々みなヱホバを懼れてヨシヤパテを攻ることをせざりき

またペリシテ人の中に禮物および貢の銀をヨシヤパテに餽れる者あり且又アラビヤ人は家畜をこれに餽れり即ち牡羊七千七百牡山羊七千七百

ヨシヤパテは益々大になりゆきてユダに城および府庫邑を多く建て

ユダの邑々に多くの工事を爲し大勇士たる軍人をヱルサレムに置り

彼等を數ふるにその宗家に循へば左のごとしユダより出たる千人の長の中にはアデナといふ軍長あり大勇士三十萬これに從がふ

その次は軍長ヨハナン之に從ふ者は二十八萬人

その次はジクリの子アマシヤ彼は悦びてその身をヱホバに献げたり大勇士二十萬これに從がふ

ベニヤミンより出たる者の中にはエリアダといふ大勇士あり弓および楯を持もの二十萬これに從がふ

その次はヨザバデ戰門の準備をなせる者十八萬これに從がふ

是等は皆王に事ふる者等なり此外にまたユダ全國の堅固なる邑々に王の置る者あり

第18章

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ヨシヤパテは富と貴とを極めアハブと縁を結べり

かれ數年の後サマリアに下りてアハブを訪ければアハブ彼およびその部從のために牛羊を多く宰りギレアデのラモテに倶に攻上らんことを彼に勸む

すなはちイスラエルの王アハブ、ユダの王ヨシヤパテに言けるは汝我とともにギレアデのラモテに攻ゆくやヨシヤパテこれに答へけるは我は汝のごとく我民は汝の民のごとし汝とともに戰門に臨まんと

ヨシヤパテまたイスラエルの王に言けるは請ふ今日ヱホバの言を問たまへと

是においてイスラエルの王預言者四百人を集めて之に言けるは我らギレアデのラモテに往て戰ふべきや又は罷べきや彼等いひけるは攻上りたまへ神これを王の手に付したまふべしと

ヨシヤパテいひけるは此外に我らの由て問べきヱホバの預言者此にあらざるや

イスラエルの王こたへてヨシヤパテに言けるは外になほ一人あり我ら之によりてヱホバに問ことを得ん然ど彼は今まで我につきて善事を預言せず恒に惡き事のみを預言すれば我彼を惡むなり其者は即ちイムラの子ミカヤなりと然るにヨシヤパテこたへて王しか宣ふ勿れと言ければ

イスラエルの王一人の官吏を呼てイムラの子ミカヤを急ぎ來らしめよと言り

イスラエルの王およびユダの王ヨシヤパテは朝衣を纏ひサマリアの門の入口の廣場にて各々その位に坐し居り預言者は皆その前に預言せり

時にケナアナの子ゼデキヤ鐵の角を造りて言けるはヱホバかく言たまふ汝是等をもてスリア人を衝て滅ぼし盡すべしと

預言者みな斯預言して云ふギレアデのラモテに攻上りて勝利を得たまへヱホバこれを王の手に付したまふべしと

茲にミカヤを召んとて往たる使者これに語りて言けるは預言者等の言は一の口より出るがごとくにして王に善し請ふ汝の言をも彼らの一人のごとくなして善事を言ヘ

ミカヤ言けるはヱホバは活く我神の宣ふ所を我は陳べんと

かくて王に至るに王彼に言けるはミカヤよ我らギレアデのラモテに往て戰かふべきや又は罷べきや彼言けるは上りゆきて利を得たまへ彼らは汝の手に付されんと

王かれに言けるは我幾度なんぢを誓はせたらば汝ヱホバの名をもて唯眞實のみを我に告るや

彼言けるは我イスラエルが皆牧者なき羊のごとく山に散をるを見たるがヱホバ是等の者は主なし各々やすらかに其家に歸るべしと言たまへり

イスラエルの王是においてヨシヤパテに言けるは我なんぢに告て彼は善事を我に預言せず只惡き事のみを預言せんと言しに非ずやと

ミカヤまた言けるは然ば汝らヱホバの言を聽べし我視しにヱホバその位に坐し居たまひて天の萬軍その傍に右左に立をりしが

ヱホバ言たまひけるは誰かイスラエルの王アハブを誘ひて彼をしてギレアデのラモテにのぼりゆきて彼處に斃れしめんかと即ち一は此ごとくせんと言ひ一は彼ごとくせんと言ければ

遂に一の霊すすみ出てヱホバの前に立ち我かれを誘はんと言たればヱホバ何をもてするかと之に問たまふに

我いでて虚言を言ふ霊となりてその諸の預言者の口にあらんと言りヱホバ言たまひけるは汝は誘なひ且これを成就ん出て然すべしと

故に視よヱホバ虚言を言ふ霊を汝のこの預言者等の口に入たまへり而してヱホバ汝に災禍を降さんと定めたまふと

時にケナアナの子ゼデキヤ近よりてミカヤの頬を批て言けるはヱホバの霊何の途より我を離れゆきて汝と言ふや

ミカヤ言けるは汝奧の室にいりて身を匿す日に見るべし

イスラエルの王いひけるはミカヤを取てこれを邑の宰アモンおよび王の子ヨアシに曳かへりて言べし

王かく言ふ我が安然に歸るまで比者を牢にいれて苦惱のパンを食せ苦惱の水を飮せよと

ミカヤ言けるは汝もし眞に平安に歸るならばヱホバ我によりて斯宣ひし事あらずと而してまた言り汝ら民よ皆聽べしと

かくてイスラエルの王およびユダの王ヨシヤパテはギレアデのラモテに上りゆけり

イスラエルの王時にヨシヤパテに言けるは我は服装を變て戰陣の中にいらん汝は朝衣を纒ひたまへとイスラエルの王すなはち服装を變へ二人倶に戰陣の中にいれり

スリアの王その戰車の長等にかねて命じおけり云く汝ら小き者とか大なる者とも戰ふなかれ惟イスラエルの王とのみ戰へと

戰車の長等ヨシヤパテを見て是はイスラエルの王ならんと言ひ身をめぐらして之と戰はんとせしがヨシヤパテ號呼ければヱホバこれを助けたまへり即ち神彼らを感動して之を離れしめたまふ

戰車の長等彼がイスラエルの王にあらざるを見しかば之を追ことをやめて引返せり

茲に一箇の人何心なく弓を彎てイスラエルの王の胸當と草摺の間に射あてたれば彼その御者に言けるは我傷を受たれば汝手を旋らして我を軍中より出せと

此日戰爭烈しくなりぬイスラエルの王は車の中に自ら扶持て立ち薄暮までスリア人をささへをりしが日の沒る頃にいたりて死り

第19章

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ユダの王ヨシヤパテは恙なくヱルサレムに歸りてその家に至れり

時に先見者ハナニの子ヱヒウ、ヨシヤパテ王を出むかへて之に言けるは汝惡き者を助けヱホバを惡む者を愛して可らんや之がためにヱホバの前より震怒なんぢの上に臨む

然ながら善事もまた汝の身に見ゆ即ち汝はアシラ像を國中より除きかつ心を傾けて神を求むるなりと

ヨシヤパテはヱルサレムに住をりしが復出てベエルシバよりエフライムの山地まで民の間を行めぐりその先祖の神ヱホバにこれを導き歸せり

彼またユダの一切の堅固なる邑に裁判人を立つ國中の邑々みな然り

而して裁判人に言けるは汝等その爲ところを愼め汝らは人のために裁判するに非ずヱホバのために裁判するなり裁判する時にはヱホバ汝らと偕にいます

然ば汝らヱホバを畏れ愼みて事をなせ我らの神ヱホバは惡き事なく人を偏視ことなく賄賂を取こと無ればなり


ヨシヤパテまたレビ人祭司およびイスラエルの族長を選びてヱルサレムに置きヱホバの事および訴訟を審判しむ彼らはヱルサレムにかへれり

ヨシヤパテこれに命じて云く汝らヱホバを畏れ眞實と誠心をもて斯おこなふべし

凡てその邑々に住む汝らの兄弟血を相流せる事または律法と誡命法度と條例などの事につきて汝らに訴へ出ること有ばこれを諭してヱホバに罪を犯さざらしめよ恐らくは震怒なんぢと汝らの兄弟にのぞまん汝ら斯おこなはば愆なかるべし

視よ祭司の長アマリヤ汝らの上にありてヱホバの事を凡て司どりユダの家の宰イシマエルの子ゼバデヤ王の事を凡て司どる亦レビ人汝らの前にありて官吏とならん汝ら心を強くして事をなせヱホバ善人を祐けたまふべし

第20章

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この後モアブの子孫アンモンの子孫およびマオニ人等ヨシヤパテと戰はんとて攻きたれり

時に或人きたりてヨシヤパテに告て云ふ海の彼旁スリアより大衆汝に攻きたる視よ今ハザゾンタマルにありとハザゾンタマルはすなはちエンゲデなり

是においてヨシヤパテ懼れ面をヱホバに向てその助を求めユダ全國に斷食を布令しめたれば


ユダ擧て集りヱホバの助を求めたり即ちユダの一切の邑より人々きたりてヱホバを求む

時にヨシヤパテ、ヱホバの室の新しき庭の前においてユダとヱルサレムの會衆の中に立ち

言けるは我らの先祖の神ヱホバよ汝は天の神にましますに非ずや異邦人の諸國を統たまふに非ずや汝の手には能力あり權勢ありて誰もなんぢを禦ぐこと能はざるに非ずや

我らの神よ汝は此國の民を汝の民イスラエルの前より逐はらひて汝の友アブラハムの子孫に之を永く與へたまひしに非ずや

彼らは此に住み汝の名のために此に聖所を建て言へり

刑罰の劍疫病饑饉などの災禍われらに臨まん時は我らこの家の前に立て汝の前にをりその苦難の中にて汝に呼號らんしかして汝聽て助けたまはん汝の名はこの家にあればなりと

今アンモン、モアブおよびセイル山の子孫を視たまへ在昔イスラエル、エジプトの國より出きたれる時汝イスラエルに是等を侵さしめたまはざりしかば之を離れさりて滅ぼさざりしなり

かれらが我らに報ゆる所を視たまへ彼らは汝がわれらに有たしめたまへる汝の產業より我らを逐はらはんとす

我らの神よ汝かれらを鞫きたまはざるや我らは此斯く攻よせたる此の大衆に當る能力なく又爲ところを知ず唯汝を仰ぎ望むのみと

ユダの人々はその小者および妻子とともに皆ヱホバの前に立をれり

時に會衆の中にてヱホバの霊アサフの子孫たるレビ人ヤハジエルに臨めりヤハジエルはゼカリヤの子ゼカリヤはベナヤの子ベナヤはヱイエルの子ヱイエルはマツタニヤの子なり

ヤハジエルすなはち言けるはユダの人衆およびヱルサレムの居民ならびにヨシヤパテ王よ聽べしヱホバかく汝らに言たまふ此大衆のために懼るる勿れ慄くなかれ汝らの戰に非ずヱホバの戰なればなり

なんぢら明日彼らの所に攻くだれ彼らはヂヅの坡より上り來る汝らヱルエルの野の前なる谷の口にて之に遇ん

この戰爭には汝ら戰ふにおよばずユダおよびヱルサレムよ汝ら惟進みいでて立ち汝らとともに在すヱホバの拯救を見よ懼る勿れ慄くなかれ明日彼らの所に攻いでよヱホバ汝らとともに在せばなりと

是においてヨシヤパテ首をさげて地に俯伏りユダの人衆およびヱルサレムの民もヱホバの前に伏てヱホバを拝す

時にコハテの子孫およびコラの子孫たるレビ人立あがり聲を高くあげてイスラエルの神ヱホバを讃美せり

かくて皆朝はやく起てテコアの野に出ゆけり其いづるに當りてヨシヤパテ立て言けるはユダの人衆およびヱルサレムの民よ我に聽け汝らの神ヱホバを信ぜよ然ば汝ら堅くあらんその預言者を信ぜよ然ば汝ら利あらん

彼また民と議りて人々を選び之をして聖き飾を著て軍勢の前に進ましめヱホバにむかひて歌をうたひ且これを讃美せしめヱホバに感謝せよ其恩惠は世々かぎりなしと言しむ

その歌を歌ひ讃美をなし始むるに當りてヱホバ伏兵を設けかのユダに攻きたれるアンモン、モアブ、セイル山の子孫をなやましたまひければ彼ら打敗られたり

即ちアンモンとモアブの子孫起てセイル山の民にむかひ盡くこれを殺して滅ししがセイルの民を殺し盡すに及びて彼らも亦力をいだして互に滅ぼしあへり

ユダの人々野の觀望所に至りてかの群衆を觀たりければ唯地に仆れたる死屍のみにして一人だに逃れし者なかりき

是においてヨシヤパテおよびその民彼らの物を奪はんとて來り觀にその死屍の間に財寳衣服および珠玉などおびただしく在たれば則ち各々これを剥とりけるが餘に多くして携さへ去こと能はざる程なりき其物多かりしに因て之を取に三日を費しけるが

第四日にベラカ(感謝)の谷に集り其處にてヱホバに感謝せり是をもてその處の名を今日までベラカ(感謝)の谷と呼ぶ

而してユダとヱルサレムの人々みな各々歸りきたりヨシヤパテの後にしたがひ歓びてヱルサレムに至れり其はヱホバ彼等をしてその敵の故によりて歓喜を得させたまひたればなり

即ち彼ら瑟と琴および喇叭を合奏してヱルサレムに往てヱホバの室にいたる

諸の國の民ヱホバがイスラエルの敵を攻撃たまひしことを聞て神を畏れたれば

ヨシヤパテの國は平穩なりき即ちその神四方において之に安息を賜へり

ヨシヤパテはユダの王となり三十五歳のときその位に即き二十五年の間ヱルサレムにて世を治めたり其母はシルヒの女にして名をアズバといふ

ヨシヤパテはその父アサの道にあゆみて之を離れずヱホバの目に善と觀たまふ事を行へり

然れども崇邱はいまだ除かず又民はいまだその先祖の神に心を傾けざりき

ヨシヤパテのその餘の始終の行爲はハナニの子ヱヒウの書に記さるヱヒウの事はイスラエルの列王の書に載す

ユダの王ヨシヤパテ後にイスラエルの王アハジアと相結べりアハジアは大に惡を行ふ者なりき

ヨシヤパテ、タルシシに遣る舟を造らんとて彼と相結びてエジオンゲベルにて共に舟數隻を造れり

時にマレシヤのドダワの子エリエゼル、ヨシヤパテにむかひて預言して云ふ汝アハジアと相結びたればヱホバなんぢの作りし者を毀ちたまふと即ちその舟は皆壞れてタルシシに往くことを得ざりき

第21章

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ヨシヤパテその先祖等とともに寝りてダビデの邑にその先祖等とともに葬られその子ヨラムこれに代て王となる

ヨシヤパテの子たるその兄弟はアザリヤ、ヱヒエル、ゼカリヤ、アザリヤ、ミカエルおよびシバテヤ是みなイスラエルの王ヨシヤパテの子なり

その父彼らに金銀寶物の賜物を多く與へまたユダの守衛の邑々を與へけるが國はヨラムに與へたりヨラム長子なりければなり

ヨラムその父の位に登りて力つよくなりければその兄弟等をことごとく劍にかけて殺し又イスラエルの牧伯等數人を殺せり

ヨラムは三十二歳の時位に即ヱルサレムにて八年の間世を治めたり

彼はアハブの家のなせるごとくイスラエルの王等の道にあゆめりアハブの女を妻となしたればなり斯かれヱホバの目に惡と觀たまふ事をなせしかども

ヱホバ曩にダビデに契約をなし且彼とその子孫とに永遠に光明を與へんと言たまひし故によりてダビデの家を滅ぼすことを欲み給はざりき

ヨラムの世にエドム人叛きてユダの手に服せず自ら王を立たれば

ヨラム其牧伯等および一切の戰車をしたがへて渉りゆき夜の中に起いでて自己を圍めるエドム人を撃ちその戰車の長等を撃り

エドム人は斯叛きてユダの手に服せずなりしが今日まで然り此時にあたりてリブナもまた叛きてユダの手に服せずなりぬ是はヨラムその先祖の神ヱホバを棄たるに因てなり

彼またユダの山々に崇邱を作りてヱルサレムの民に姦淫をおこなはせユダを惑はせり

時に預言者エリヤの書ヨラムの許に達せり其言に云く汝の先祖ダビデの神ヱホバかく言たまふ汝はその父ヨシヤパテの道にあゆまずまたユダの王アサの道にあゆまずして

イスラエルの王等の道にあゆみユダの人とヱルサレムの民をしてアハブの家の姦淫をなせるごとくに姦淫を行はしめまた汝の父の家の者にて汝に愈れるところの汝の兄弟等を殺せり

故にヱホバ大なる災禍をもて汝の民汝の子女汝の妻等および汝の一切の所有を撃たまふべし

汝はまた臓腑の疾を得て大病になりその疾日々に重りて臓腑つひに墜んと

即ちヱホバ、ヨラムを攻させんとてエテオピアに近きところのペリシテ人とアラビヤ人の心を振起したまひければ

彼らユダに攻のぼりて之を侵し王の家に在ところの貨財を盡く奪ひ取りまたヨウムの子等と妻等をも携へ去れり是をもてその末子ヱホアハズの外には一人も遺れる者なかりき

此もろもろの事の後ヱホバ彼を撃て臓腑に愈ざる疾を生ぜしめたまひければ

月日を送り二年を經るにおよびてその臓腑疾のために墜ち重き病苦によりて死ねり民かれの先祖のために焚物をなせし如く彼のためには焚物をなさざりき

彼は三十二歳の時位に即き八年の間ヱルサレムにて世を治めて終に薨去れり之を惜む者なかりき人衆これをダビデの邑に葬れり但し王等の墓にはあらず

第22章

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ヱルサレムの民ヨラムの季子アハジアを王となして之に継しむ其は曾てアラビヤ人とともに陣營に攻きたりし軍兵その長子をことごとく殺したればなり是をもてユダの王ヨラムの子アハジア王となれり

アハジアは四十二歳の時位に即きヱルサレムにて一年の間世を治めたりその母はオムリの女にして名をアタリヤといふ

アハジアもまたアハブの家の道に歩めり其母かれを敎へて惡をなさしめたるなり

即ち彼はアハブの家のごとくにヱホバの目の前に惡をおこなへり其父の死し後彼かくアハブの家の者の敎にしたがひたれば終に身を滅ぼすに至れり

アハジアまた彼らの敎にしたがひイスラエルの王アハブの子ヨラムとともにギレアデのラモテにゆきてスリアの王ハザエルと戰ひけるにスリア人ヨラムに傷を負せたり

是においてヨラムはそのスリアの王ハザエルと戰ふにあたりてラムにて負たる傷を療さんとてヱズレルに歸れりユダの王ヨラムの子アザリヤはアハブの子ヨラムが病をるをもてヱズレルに下りてこれを訪ふ

アハジアがヨラムを訪ふて害に遇しは神の然らしめたまへるなり即ちアハジアは來り居てヨラムとともに出てニムシの子ヱヒウを迎へたりヱヒウはヱホバが曩にアハブの家を絶去しめんとて膏を沃ぎたまひし者なり

ヱヒウ、アハブの家を罰するに方りてユダの牧伯等およびアハジアの兄弟等の子等がアハジアに奉へをるに遇て之を殺せり

アハジアはサマリヤに匿れたりしがヱヒウこれを探求めければ人々これを執ヘヱヒウの許に曳きたりて之を殺せり但し彼は心を盡してヱホバを求めたるヨシヤパテの子なればとてこれを葬れり斯りしかばアハジアの家は國を統治むる力なくなりぬ

茲にアハジアの母アタリヤその子の死たるを見て起てユダの家の王子をことごとく滅ぼしたりしが

王の女ヱホシバ、アハジアの子ヨアシを王の子等の殺さるる者の中より竊み取り彼とその乳媼を夜衣の室におきて彼をアタリヤに匿したればアタリヤかれを殺さざりきヱホシバはヨラム王の女アハジアの妹にして祭司ヱホヤダの妻なり

かくてヨアシはヱホバの家に匿れて彼らとともにをること六年アタリヤ國に王たりき

第23章

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第七年にいたりヱホヤダ力を強してヱロハムの子アザリヤ、ヨハナンの子イシマエル、オベデの子アザリア、アダヤの子マアセヤ、ジクリの子エシヤパテなどいふ百人の長等を招きて己と契約を結ばしむ

是において彼らユダを行めぐりてユダの一切の邑よりレビ人を集めまたイスラエルの族長を集めてヱルサレムに歸り

而してその會衆みな神の家において王と契約を結べり時にヱホヤダかれらに言けるけるはダビデの子孫の事につきてヱホバの宣まひしごとく王の子位に即べきなり

然ば汝ら斯なすべし汝ら祭司およびレビ人の安息日に入きたる者は三分の一は門を守り

三分の一は王の家に居り三分の一は基礎の門に居り民はみなヱホバの室の庭に居べし

祭司と奉事をするレビ人の外は何人もヱホバの家に入べからず彼らは聖者なれば入ことを得るなり民はみなヱホバの殿を守るべし

レビ人はおのおの手に武器を執て王を繞りて立べし家に入る者をば凡て殺すべし汝らは王の出る時にも入る時にも王とともに居れと

是においてレビ人およびユダの人衆は祭司ヱホヤダが凡て命じたる如くに行ひ各々その手の人の安息日に入來べき者と安息日に出ゆくべき者とを率ゐ居れり祭司ヱホヤダ班列の者を去せざればなり

祭司ヱホヤダすなはち神の家にあるダビデ王の鎗および大楯小楯を百人の長等に交し

一切の民をして各々武器を手に執て王の四周に立ち殿の右の端より殿の左の端におよびて壇と殿にそふて居しむ

斯て人衆王の子を携へ出し之に冠冕を戴かせ證詞をわたして王となし祭司ヱホヤダおよびその子等これに膏をそそげり而して皆王長壽かれと言ふ

茲にアタリヤ民と近衛兵と王を讃る者との聲を聞きヱホバの室に入て民の所に至り

視に王は入口にてその柱の傍に立ち王の側に軍長と喇叭手立をり亦國の民みな喜びて喇叭を吹き謳歌者樂を奏し先だちて讃美を歌ひをりしかばアタリヤその衣を裂き叛逆なり叛逆なりと言り

時に祭司ヱホヤダ軍兵を統る百人の長等を呼出してこれに言ふ彼をして列の間を通りて出しめよ凡て彼に從がふ者をば劍をもて殺すべしと祭司は彼をヱホバの室に殺すべからずとて斯いへるなり

是をもて之がために路をひらき王の家の馬の門の入口まで往しめて其處にて之を殺せり

斯てヱホヤダ己と一切の民と王との間にわれらは皆ヱホバの民とならんことの契約を結べり

是において民みなバアルの室にゆきて之を毀ちその壇とその像を打碎きバアルの祭司マツタンを壇の前に殺せり

ヱホヤダまたヱホバの室の職事を祭司レビ人の手に委ぬ昔ダビデ、レビ人を班列にわかちてヱホバの室におきモーセの律法に記されたる所にしたがひて歓喜と謳歌とをもてヱホバの燔祭を献げしめたりき今このダビデの例に傚ふ

彼またヱホバの室の門々に看守者を立せ置き身の汚れたる者には何によりて汚れたるにもあれ凡て入ことを得ざらしむ

斯てヱホヤダ百人の長等と貴族と民の牧伯等および國の一切の民を率ゐてヱホバの家より王を導きくだり上の門よりして王の家にいり王を國の位に坐せしめたり

斯りしかば國の民みな喜こびて邑は平穩なりきアタリヤは劍にて殺さる

第24章

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ヨアシは七歳の時位に即きヱルサレムにて四十年の間世を治めたりその母はベエルシバより出たる者にして名をヂビアといふ

ヨアシは祭司ヱホヤダの世にある日の間は恒にヱホバの善と觀たまふことを行へり

ヱホヤダ彼のために二人の妻を娶れり男子女子生る

此後ヨアシ、ヱホバの室を修繕んと志し

祭司とレビ人を集めて之に言けるは汝ら出てユダの邑々に往き汝らの神ヱホバの室を歳々修繕ふべき金子をイスラエルの人衆より聚むべし其事を亟にせよと然るにレビ人これを亟にせざりき

王ヱホヤダ長を召てこれに言けるは汝なんぞレビ人に求めてヱホバの僕モーセおよびイスラエルの會衆の古昔證詞の幕屋のために集めたるが如き税をユダとヱルサレムより取きたらせざるやと

かの惡き婦アタリヤの子等神の家を壞りかつヱホバの家の諸の奉納物をバアルに供へたり

是において王の命にしたがひて一箇の匱を作りヱホバの室の門の外にこれを置き

ユダとヱルサレムに宣布て汝ら神の僕モーセが荒野にてイスラエルに課したる如き税をヱホバに携へきたれと言けるに

一切の牧伯等および一切の民みな喜びて携へきたりその匱に投いれて遂に納めをはれり

レビ人その匱に金の多くあるを見てこれを王の廳に携へゆく時は王の書記と祭司の長の下役きたりてその匱を傾むけ復これを取て本の處に持ゆけり日々に斯のごとくして金を聚むること夥多し

而して王とヱホヤダこれをヱホバの家の工事を爲す者に付し石工および木匠を雇ひてヱホバの室を修繕はせまた鐵工および銅工を雇ひてヱホバの室を修復せしめけるが

工人動作てその工事を成をへ神の室を本の状に復してこれを堅固にす

その旣に成るにおよびて餘れる金を王とヱホヤダの前に持いたりければ其をもてヱホバの室のために器皿を作れり即ち奉事の器献祭の器および匙ならびに金銀の器を作れりヱホヤダが世に在る日の間はヱホバの室にて燔祭をささぐること絶ざりき

ヱホヤダは年邁み日滿て死りその死る時は百三十歳なりき

人衆ダビデの邑にて王等の中間にこれを葬むる其は彼イスラエルの中において神とその殿とにむかひて善事をおこなひたればなり

ヱホヤダの死たる後ユダの牧伯等きたりて王を拝す是において王これに聽したがふ

彼らその先祖の神ヱホバの室を棄てアシラ像および偶像に事へたればその愆のために震怒ユダとヱルサレムに臨めり


ヱホバかれらを己にひきかへさんとて預言者等を遣はし之にむかひて證をたてさせたまひしかども聽ことをせざりき

是において神の霊祭司ヱホヤダの子ゼカリヤに臨みければ彼民の前に高く起あがりて之に言けるは神かく宣ふ汝らヱホバの誡命を犯して災禍を招くは何ぞや汝らヱホバを棄たればヱホバも汝らを棄たまふと

然るに人衆かれを害せんと謀り王の命によりて石をもてこれをヱホバの室の庭にて撃殺せり

斯ヨアシ王はゼカリヤの父ヱホヤダが己にほどこせし恩を念ずしてその子を殺せり彼死る時にヱホバこれを顧みこれを問討したまへと言り

かくてその年の終るにおよびてスリアの軍勢かれにむかひて攻のぼりユダとヱルサレムにいたりて民の牧伯等をことごとく民の中より滅ぼし絶ちその掠取物を凡てダマスコの王に遣れり

この時スリアの軍勢は小勢にて來りけるにヱホバ大軍をこれが手に付したまへり是はその先祖の神ヱホバを棄たるが故なり斯かれらヨアシを罰せり

スリア人ヨアシに大傷をおはせて遺去けるがヨアシの臣僕等祭司ヱホヤダの子等の血のために黨をむすびて之に叛き之をその床の上に弑して死しめたり人衆これをダビデの邑に葬れり但し王の墓には葬らざりき

黨をむすびて之に叛きし者はアンモンの婦シメアテの子ザバデおよびモアブの婦シムリテの子ヨザバデなりき

ヨアシの子等の事ヨアシの告られし預言および神の室を修繕し事などは列王の書の註釋に記さるヨアシの子アマジヤこれに代りて王となれり

第25章

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アマジヤは二十五歳の時位に即きヱルサレムにて二十九年の間世を治めたりその母はヱルサレムの者にして名をヱホアダンといふ

アマジヤはヱホバの善と視たまふ事を行なひしかども心を全うしてこれを爲ざりき

彼國のおのが手に堅く立つにおよびてその父王を弑せし臣僕等を殺せり

然どその子女等をば殺さずしてモーセの書の律法に記せるごとく爲り即ちヱホバ命じて言たまはく父はその子女の故によりて殺さるべからず子女はその父の故によりて殺さるべからず各々おのれの罪によりて殺さるべきなりと

アマジヤ、ユダの人を集めその父祖の家にしたがひて或は千人の長に附屬せしめ或に百人の長に附屬せしむユダとベニヤミンともに然り且二十歳以上の者を數へ戈と楯とを執て戰闘に臨む倔強の士三十萬を得

また銀百タラントをもてイスラエルより大勇士十萬を傭へり

時に神の人かれに詣りて言けるは王よイスラエルの軍勢をして汝とともに往しむる勿れヱホバはイスラエル人すなはちエフライムの子孫とは偕にいまさざるなり

汝もし往ば心を強くして戰闘を爲せ神なんぢをして敵の前に斃れしめたまはん神は助くる力ありまた倒す力あるなり

アマジヤ神の人にいひけるは然ば已にイスラエルの軍隊に與へたる百タラントを如何にすべきや神の人答へけるはヱホバは其よりも多き者を汝に賜ふことを得るなりと

是においてアマジヤかのエフライムより來りて己に就る軍隊を分離してその處に歸らしめければ彼らユダにむかひて烈しく怒を發し火のごとくに怒りてその處に歸れり

かくてアマジヤは力を強くしその民を率ゐて鹽の谷に往きセイル人一萬を撃殺せり

ユダの子孫またこの外に一萬人を生擒て磐の頂に曳ゆき磐の頂よりこれを投おとしければ皆微塵に碎けたり

前にアマジヤが己とともに戰闘に往べからずとして歸し遣たる軍卒等サマリアよりベテホロンまでのユダの邑々を襲ひ人三千を撃ころし物を多く奪ふ

アマジヤ、エドム人を戮して歸る時にセイル人の神々を携さへ來り之を安置して己の神となしその前に禮拝をなし之に香を焚り

是をもてヱホバ、アマジヤにむかひて怒を發し預言者をこれに遣はして言しめたまひけるは彼民の神々は己の民を汝の手より救ふことを得ざりし者なるに汝なにとて之を求むるや

彼かく王に語れる時王これにむかひ我儕汝を王の議官となせしや止よ汝なんぞ撃殺されんとするやと言ければ預言者すなはち止て言り我知る汝この事を行びて吾諌を聽いれざるによりて神なんぢを滅ぼさんと決めたまふと

斯てユダの王アマジヤ相議りて人をヱヒウの子ヱホアハズの子なるイスラエルの王ヨアシに遣し來れ我儕たがひに面をあはせんと言しめければ

イスラエルの王ヨアシ、ユダの王アマジヤに言おくりけるはレバノンの荊蕀かつてレバノンの香柏に汝の女子を我子の妻に與へよと言おくりたること有しにレバノンの野獣とほりてその荊蕀を踏たふせり

汝はエドム人を撃破れりと謂ひ心にたかぶりて誇る然ば汝家に安んじ居れ何ぞ禍を惹おこして自己もユダもともに亡びんとするやと

然るにアマジヤ聽ことをせざりき此事は神より出たる者にて彼らをその敵の手に付さんがためなり是は彼らエドムの神々を求めしに因る

是においてイスラエルの王ヨアシ上りきたりユダのベテシメシにてユダの王アマジヤと面をあはせたりしが

ユダ、イスラエルに撃敗られて各々その天幕に逃かへりぬ

時にイスラエルの王ヨアシはヱホアハズの子ヨアシの子なるユダの王アマジヤをベテシメシに執へてヱルサレムに携へゆきヱルサレムの石垣をエフライムの門より隅の門まで四百キユビト程を毀ち

また神の室の中にてオベデエドムが守り居る一切の金銀および諸の器皿ならびに王の家の財寳を取りかつ人質をとりてサマリアに歸れり

ユダの王ヨアシの子アマジヤはイスラエルの王ヱホアハズの子ヨアシの死てより後なほ十五年生存らへたり

アマジヤのその餘の始終の行爲はユダとイスラエルの列王の書に記さるるにあらずや

アマジヤ翻へりてヱホバに從がはずなりし後ヱルサレムにおいて黨を結びて彼に敵する者ありければ彼ラキシに逃ゆきけるにその人々ラキシに人をやりて彼を其處に殺さしめたり

人衆これを馬に負せてきたりユダの邑にてその先祖等とともにこれを葬りぬ

第26章

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是においてユダの民みなウジヤをとりて王となしてその父アマジヤに代らしめたり時に年十六なりき

彼エラテの邑を建てこれを再びユダに歸せしむ是はかの王がその先祖等とともに寝りし後なりき

ウジヤは十六歳の時位に即きヱルサレムにて五十二年の間世を治めたりその母はヱルサレムの者にして名をヱコリアといふ

ウジヤはその父アマジヤが凡てなしたる如くヱホバの善と觀たまふ事を行ひ

神の默示に明なりしかのゼカリヤの世にある日の間心をこめてヱホバを求めたりそのヱホバを求むる間は神これをして幸福ならしめたまへり

彼いでてペリシテ人と戰ひガテの石垣ヤブネの石垣およびアシドドの石垣を圮しアシドドの地ならびにペリシテ人の中間に邑を建つ

神かれを助けてペリシテ人グルバアルに住むアラビヤ人およびメウニ人を攻撃しめたまへり

アンモニ人はまたウジヤに貢を納るウジヤの名つひにエジプトの入口までも廣まれり其は甚だ強くなりければなり

ウジヤ、ヱルサレムの隅の門谷の門および角隅に戌樓を建てこれを堅固にし

また荒野に戌樓を建て許多の水溜を掘り其は家畜を多く有たればなり亦平野にも平地にも家畜を有り又山々およびカルメルには農夫と葡萄を修る者を有り農事を好みたればなり

ウジヤ戰士一旅團あり書記ヱイエルと牧伯マアセヤの數調査によりて隊々にわかれて戰爭に出づ皆王の軍長ハナニヤの手に屬す

大勇士の族長の數は都合二千六百

その手に屬する軍勢は三十萬七千五百人みな大なる力をもて戰ひ王を助けて敵に當る

ウジヤその全軍のために楯戈兜鎧弓および投石器の石を備ふ

彼またヱルサレムにおいて工人に機械を案へ造らしめ之を戌樓および石垣に施こし之をもて矢ならびに大石を射出せり是においてその名遠く廣まれり其は非常の援助を蒙りて旺盛になりたればなり

然るに彼旺盛になるにおよびその心に高ぶりて惡き事を行なへり即ち彼その神ヱホバにむかひて罪を犯しヱホバの殿に入て香壇の上に香を焚んとせり

時に祭司アザリヤ、ヱホバの祭司たる勇者八十人を率ゐて彼の後にしたがひ入り

ウジヤ王を阻へてこれに言けるはウジヤよヱホバに香を焚ことは汝のなすべき所にあらずアロンの子孫にして香を焚ために潔められたる祭司等のなすべき所なり聖所より出よ汝は罪を犯せりヱホバ神なんぢに榮を加へたまはじと

是においてウジヤ怒を發し香爐を手にとりて香を焚んとせしがその祭司にむかひて怒を發しをる間に癩病その額に起れり時に彼はヱホバの室にて祭司等の前にあたりて香壇の側にをる

祭司の長アザリヤおよび一切の祭司等彼を見しに已にその額に癩病生じゐたれば彼を其處より速にいだせり彼もまたヱホバの己を撃たまへるを見て自ら急ぎて出去り

ウジヤ王はその死る日まで癩病人となり居しがその癩病人となるにおよびては別殿に住りヱホバの室より斷れたればなり其子ヨタム王の家を管理て國の民を審判り

ウジヤのその餘の始終の行爲はアモツの子預言者イザヤこれを書記したり

ウジヤその先祖等とともに寝りたれば彼は癩病人なりとて王等の墓に連接る地にこれを葬りてその先祖等とともならしむその子ヨタムこれに代りて王となれり

第27章

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ヨタムは二十五歳の時位に即きヱルサレムにて十六年の間世を治めたり其母はザドクの女にして名をヱルシヤといふ

ヨタムはその父ウジヤの凡て爲たるごとくヱホバの善と視たまふ事をなせり但しヱホバの殿には入ざりき民は尚惡き事を爲り

彼ヱホバの家の上の門を建なほしオペルの石垣を多く築き増し

ユダの山地に數箇の邑を建て林の間に城および戌楼を築けり

彼アンモニ人の王と戰ひこれに勝り其年アンモンの子孫銀百タラント小麥一萬石大麥一萬石を彼におくれりアンモンの子孫は第二年にも第三年にも是のごとく彼に貢をいる

ヨタムその神ヱホバの前においてその行を堅うしたるに因て權能ある者となれり

ヨタムのその餘の行爲その一切の戰闘およびその行などはイスラエルとユダの列王の書に記さる

彼は二十五歳の時位に即きヱルサレムにて十六年の間世を治めたり

ヨタムその先祖等とともに寝りたればダビデの邑にこれを葬れりその子アハズこれに代りて王となる

第28章

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アハズは二十歳の時位に即きヱルサレムにて十六年の間世を治めたりしがその父ダビデと異にしてヱホバの善と觀たまふ所を行はず

イスラエルの王等の道にあゆみ亦諸のバアルのために像を鋳造り

ベンヒンノムの谷にて香を焚きその子を火に燒きなどしてヱホバがイスラエルの子孫の前より逐はらひたまひし異邦人の行ふところの憎むべき事に傚ひ

また崇邱の上丘の上一切の靑木の下にて犠牲をささげ香を焚り

是故にその神ヱホバかれをスリアの王の手に付したまひてスリア人つひに彼を撃破りその人々を衆く虜囚としてダマスコに曳ゆけり彼はまたイスラエルの王の手にも付されたればイスラエルの王かれを撃て大にその人を殺せり

すなはちレマリヤの子ペカ、ユダにおいて一日の中に十二萬人を殺せり皆勇士なりき是は彼らその先祖の神ヱホバを棄しによるなり

その時にエフライムの勇士ジクリといふ者王の子マアセヤ宮内卿アズリカムおよび王に亞ぐ人エルカナを殺せり

イスラエルの子孫つひにその兄弟の中より婦人ならびに男子女子など合せて二十萬人を俘擄にしまた衆多の掠取物を爲しその掠取物をサマリアに携へゆけり

時に彼處にヱホバの預言者ありその名をオデデといふ彼サマリアに歸れる軍勢の前に進みいでて之に言けるは汝らの先祖の神ヱホバ、ユダを怒りてこれを汝らの手に付したまひしが汝らは天に達するほどの忿怒をもて之を殺せり

然のみならず汝ら今ユダとヱルサレムの子孫を圧つけて己の奴婢となさんと思ふ然ども汝ら自身もまた汝らの神ヱホバに罪を獲たる身にあらずや

然ば今我に聽き汝らがその兄弟の中より擄へ來りし俘擄を放ち歸せヱホバの烈しき怒なんぢらの上に臨まんとすればなりと

是においてエフライム人の長たる人々すなはちヨハナンの子アザリヤ、メシレモテの子ベレキヤ、シヤルムの子ヒゼキヤ、ハデライの子アマサ等戰爭より歸れる者等の前に立ふさがりて

之にいひけるは汝ら俘擄を此に曳いるべからず汝らは我らをしてヱホバに愆を得せしめて更に我らの罪愆を増んとす我らの愆は大にして烈しき怒イスラエルにのぞまんとするなりと

是において兵卒等その俘擄と掠取物を牧伯等と全會衆の前に遺おきければ

上に名を擧げたる人々たちて俘擄を受取り掠取物の中より衣服を取てその裸なる者に着せ之に靴を穿せ食飮を爲しめ膏油を沃ぎ等しその弱き者をば盡く驢馬に乗せ斯して之を棕櫚の邑ヱリコに導きゆきてその兄弟に詣らしめ而してサマリアに歸れり

當時アハズ王人をアツスリヤの王等に遣はして援助を乞しむ

其はエドム人また來りてユダを攻撃ち民を擄へて去たればなり

ベリシテ人もまた平野の邑々およびユダの南の邑々を侵してベテシメシ、アヤロン、ゲデロテおよびシヨコとその郷里テムナとその郷里ギムゾとその郷里を取て其處に住めり

イスラエルの王アハズの故をもてヱホバかくユダを卑くしたまふ其は彼ユダの中に淫逸なる事を行ひかつヱホバにむかひて大に罪を犯したればなり

アツスリヤの王テグラテピレセルは彼の所に來りしかども彼に力をそへずして反てこれを煩はせり

アハズ、ヱホバの家と王の家および牧伯等の家の物を取てアツスリヤの王に與へけれどもアハズを援くることをせざりき

このアハズ王はその困難の時に當りてますますヱホバに罪を犯せり

即ち彼おのれを撃るダマスコの神々に犠牲を献げて言ふスリアの王等の神々はその王等を助くれば我もこれに犠牲を献げん然ば彼ら我を助けんと然れども彼等はかへつてアハズとイスラエル全國を仆す者となれり

アハズ神の室の器皿を取聚めて神の室の器皿を切やぶりヱホバの室の戸を閉ぢヱルサレムの隅々に凡て祭壇を造り

ユダの一切の邑々に崇邱を造りて別神に香を焚き等してその先祖の神ヱホバの忿怒を惹おこせり

アハズのその餘の始終の行爲およびその一切の行跡はユダとイスラエルの列王の書に記さる

アハズその先祖等とともに寝りたればエルサレムの邑にこれを葬れり然どイスラエルの王等の墓にはこれを持ゆかざりき其子ヒゼキヤこれに代りて王となる

第29章

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ヒゼキヤは二十五歳の時位に即きヱルサレムにて二十九年の間世を治めたりその母はゼカリヤの女にして名をアビヤといふ

ヒゼキヤはその父ダビデの凡てなしたる如くヱホバの目に善と視たまふ事をなせり

即ち彼その治世の第一年一月にヱホバの室の戸を開きかつ之を修繕ひ

祭司およびレビ人を携さへいりて東の廣場にこれを集め

而して之にいひけるはレビ人よ我に聽け汝等いま身を潔めて汝等の先祖の神ヱホバの室を潔め汚穢を聖所より除きされ

夫我らの先祖は罪を犯し我らの神ヱホバの目に惡しと見たまふことを行ひてヱホバを棄てヱホバの住所に面を背けて後をこれに向け

また廊の戸を閉ぢ燈火を消し聖所にてイスラエルの神に香を焚ず燔祭を献けざりし

是をもてヱホバの忿怒ユダとヱルサレムに臨みヱホバ彼等をして打ただよはされしめ詑異とならしめ胡盧とならしめたまへり汝らが目に覩るごとし

即ち我儕の父は劍に斃れ我らの男子女子及び妻等はこれがために俘擄となれり

今我イスラエルの神ヱホバと契約を結ばんとする意志ありその烈しき怒我らを離るることあらん

我子等よ今は怠たる勿れヱホバ汝らを擇びて己の前に立て事へしめ己に事ふる者となし香を焚く者となしたまひたればなりと

是においてレビ人起り即ちコハテの子孫の中にてはアマサイの子マハテおよびアザリヤの子ヨエル、メラリの子孫の中にてはアブデの子キシおよびヱハレレルの子アザリヤ、ゲルシヨン人の中にてはジンマの子ヨアおよびヨアの子エデン

エリザパンの子孫の中にてはシムリおよびヱイエル、アサフの子孫の中にてはゼカリヤおよびマツタニヤ

ヘマンの子孫の中にてはヱヒエルおよびシメイ、ヱドトンの子孫の中にてはシマヤおよびウジエル

かれらその兄弟を集へて身を潔めヱホバの言に依りて王の傳へし命令にしたがひてヱホバの室を潔めんとて入きたり

祭司等ヱホバの室の奧に入りてこれを潔めヱホバの殿にありし汚穢をことごとくヱホバの室の庭に携へいだせばレビ人それを受て外にいだしキデロン河に持いたる

彼ら正月の元日に潔むることを始めてその月の八日にヱホバの廊におよびまたヱホバの家を潔むるに八日を費し正月の十六日にいたりて之を終れり

かくて彼らヒゼキヤ王の處に入て言ふ我らヱホバの室をことごとく潔めまた燔祭の壇とその一切の器具および供前のパンの案とその一切の器皿とを潔めたり

またアハズ王がその治世に罪を犯して棄たりし一切の器皿をも整へてこれを潔めヱホバの壇の前にこれを据置りと

是においてヒゼキヤ王蚤に起いで邑の牧伯等をあつめてヱホバの家にのぼり往き

牡牛七匹牡羊七匹羔羊七匹牡山羊七匹を牽きたらしめ國と聖所とユダのためにこれを罪祭となしアロンの子孫たる祭司等に命じてこれをヱホバの壇の上に献げしむ

即ち牡牛を宰れば祭司等その血を受て壇に灑ぎまた牡羊を宰ればその血を壇に灑ぎまた羔羊を宰ればその血を壇に灑げり

かくて人々罪祭の牡山羊を王と會衆の前に牽きたりければ彼らその上に手を按り

而して祭司これを宰りその血を罪祭として壇の上に献げてイスラエル全國のために贖罪をなせり是は王イスラエル全國の爲に燔祭および罪祭を献ぐることを命じたるに因る

王レビ人をヱホバの室に置きダビデおよび王の先見者ガデと預言者ナタンの命令にしたがひて之に鐃鈸瑟および琴を執しむ是はヱホバがその預言者によりて命じたまひし所なり

是においてレビ人はダビデの樂器をとり祭司は喇叭をとりて立つ

時にヒゼキヤ燔祭を壇の上に献ぐることを命ぜり燔祭をささげ始むるときヱホバの歌をうたひ喇叭を吹きイスラエルの王ダビデの樂器をならしはじめたり

しかして會衆みな禮拝をなし謳歌者歌をうたひ喇叭手喇叭を吹ならし燔祭の終るまで凡て斯ありしが

献ぐる事の終るにおよびて王および之と偕に在る者皆身をかがめて禮拝をなせり

かくて又ヒゼキヤ王および牧伯等レビ人に命じダビデと先見者アサフの詞をもてヱホバを讃美せしむ彼等喜樂をもて讃美し首をさげて禮拝す

時にヒゼキヤこたへて言けるは汝らすでにヱホバに事へんために身を潔めたれば進みよりてヱホバの室に犠牲および感謝祭を携へきたれと會衆すなはち犠牲および感謝祭を携へきたる又志ある者はみな燔祭を携ふ

會衆の携へきたりし燔祭の數は牡牛七十牡羊一百羔羊二百是みなヱホバに燔祭として奉つる者なり

また奉納物は牛六百羊三千なりき

然るに祭司寡くしてその燔祭の物の皮を剥つくすこと能はざりければその兄弟たるレビ人これを助けてその工を終ふ斯る間に他の祭司等も身を潔むレビ人は祭司よりも心正しくして身を潔めたり

燔祭夥多しくあり酬恩祭の脂及びすべての燔祭の酒も然り斯ヱホバの室の奉事備はれり

この事俄なりしかども神かく民の爲に備をなしたまひしに因てヒゼキヤおよび一切の民喜べり

第30章

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茲にヒゼキヤ、イスラエルとユダに遍ねく人を遣しまた書をエフライムとマナセに書おくりヱルサレムなるヱホバの室に來りてイスラエルの神ヱホバに逾越節を行はんことを勸む

王すでにその牧伯等およびヱルサレムにある會衆と議り二月をもて逾越節を行はんと定めたり

其は祭司の身を潔めし者足ず民またヱルサレムに集らざりしに因て彼時にこれを行ふことを得ざればなり

王も會衆もこの事を見て善となし

即ちこの事を定めてベエルシバよりダンまでイスラエルに遍ねく宣布しめしヱルサレムに來りてイスラエルの神ヱホバに逾越節を行はんことを勸む是はその録されたるごとくにこれを行ふ事久しく無りしが故なり

飛脚すなはち王とその牧伯等が授けし書をもちてイスラエルとユダを遍ねく行めぐり王の命を傳へて云ふイスラエルの子孫よ汝らアブラハム、イサク、イスラエルの神ヱホバに起歸れ然ばヱホバ、アツスリヤの王等の手より逃れて遺るところの汝らに歸りたまはん

汝らの父および兄弟の如くならざれ彼らその先祖の神ヱホバにむかひて罪を犯したればこれを滅亡に就しめたまへり汝らが見るごとし

然ば汝らの父のごとく汝ら項を強くせずしてヱホバに歸服しその永久に聖別たまひし聖所に入り汝らの神ヱホバに事へよ然ればその烈しき怒なんぢらを離れん

汝ら若ヱホバに歸らば汝らの兄弟および子女その己を擄へゆきし者の前に衿憫を得て遂にまた此國にかへらん汝らの神ヱホバは恩惠あり憐憫ある者にましませば汝らこれに起かへるにおいては面を汝らに背けたまはじと

かくのごとく飛脚エフライム、マナセの國にいりて邑より邑に行めぐりて遂にゼブルンまで至りしが人衆これを嘲り笑へり

但しアセル、マナセおよびゼブルンの中より身を卑くしてヱルサレムに來りし者もあり

またユダに於ては神その力をいだして人々に心を一にせしめ王と牧伯等がヱホバの言に依て傳へし命令を之に行はしむ

斯りしかば二月にいたりて民酵いれぬバンの節をおこなはんとて多くヱルサレムに來り集れりその會はなはだ大なりき

彼等すなはち起てヱルサレムにある諸の壇を取のぞきまた一切の香壇を取のぞきてこれをキデロン川に投すて

二月の十四日に逾越の物を宰れり是において祭司等およびレビ人は自ら恥ぢ身を潔めてヱホバの室に燧祭を携へきたり

神の人モーセの律法に循ひ例に依て各々その所に立ち而して祭司等レビ人の手より血を受て灑げり

時に會衆の中に未だ身を潔めざる者多かりければレビ人その潔からざる一切の人々に代りて逾越の物を宰りてヱホバに潔め献ぐ

また衆多の民すたはちエフライム、マナセ、イツサカル、ゼブルンより來りし衆多の者未だ身を潔むる事をせずその書録されし所に違ひて逾越の物を食へり是をもてヒゼキヤこれがために祈りて云ふ

惠ふかきヱホバよ凡そその心を傾けて神を求めその先祖の神ヱホバを求むる者は假令聖所の潔斎に循はざるとも願くは是を赦したまへと

ヱホバ、ヒゼキヤに聽て民を醫したまへり

ヱルサレムにきたれるイスラエルの子孫は大なる喜悦をいだきて七日の間酵いれぬパンの節をおこなへり又レビ人と祭司は日々にヱホバを讃美し高聲の樂を奏してヱホバを頌へたり

ヒゼキヤ、ヱホバの奉事に善通じをる一切のレビ人を深く勞らふ斯人衆酬恩祭を献げその先祖の神ヱホバに感謝して七日のあひだ節の物を食へり

かくて又全會あひ議りて更に七日を守らんと決め喜悦をいだきてまた七日を守れり

時にユダの王ヒゼキヤは牡牛一千羊七千を會衆に餽り又牧伯等は牡牛一千羊一萬を會衆に餽れり祭司もまた衆く身を潔めたり

ユダの全會衆および祭司レビ人ならびにイスラエルより來れる全會衆およびイスラエルの地より來れる異邦人とユダに住む異邦人みな喜べり

かくヱルサレムに大なる喜悦ありきイスラエルの王ダビデの子ソロモンの時より以來かくのごとき事ヱルサレムに在ざりしなり

この時祭司レビ人起て民を祝しけるにその言聽れその祈祷ヱホバの聖き住所なる天に達せり

第31章

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この事すべて終りしかば其處に在しイスラエル人みなユダの邑々に出ゆき柱像を碎きアシラ像を斫たふしユダとベニヤミンの全地より崇邱と祭壇を崩し絶ちエフライム、マナセにも及ぼして遂にまつたく之を毀ち而してイスラエルの子孫おのおのその邑々に還りて己の產業にいたれり

ヒゼキヤ祭司およびレビ人の班列を定めその班列にしたがひて各々にその職を行はしむ即ち祭司とレビ人をして燔祭および酬恩祭を献げしめヱホバの營の門において奉事をなし感謝をなし讃美をなさしめ

また己の財產の中より王の分を出して燔祭のためにす即ち朝夕の燔祭および安息日朔日節會などの燔祭のために之を出してヱホバの律法に記さるる如くす

彼またヱルサレムに住む民に祭司とレビ人にその分を與へんことを命ず是かれらをしてヱホバの律法に身を委ねしめんとてなり

其命令の傳はるや否やイスラエルの子孫穀物酒油蜜ならびに田野の諸の產物の初を多く献げまた一切の物の什一を夥多しく携へきたる

ユダの邑々に住るイスラエルとユダの子孫もまた牛羊の什一ならびにその神ヱホバに納むべき聖物の什一を携へきたりてこれを積疊ぬ

三月に之を積疊ぬることを始め七月にいたりて之を終れり

ヒゼキヤおよび牧伯等きたりて其積疊ねたる物を見ヱホバとその民イスラエルを祝せり

ヒゼキヤその積疊ねたる物の事を祭司とレビ人に問尋ねければ

ザドクの家より出し祭司の長アザリヤ彼に應へて言けるは民ヱホバの室に禮物を携ふることを始めしより以來我儕飽までに食ひしがその餘れる所はなはだ多しヱホバその民をめぐみたまひたればなりその餘れる所かくのごとく夥多しと

ヒゼキヤ、ヱホバの家の内に室を設くることを命じければ則ちこれを設け

忠實にその禮物什一および奉納物を携へいれりレビ人コナニヤこれを主どりその兄弟シメイこれに副ふ

ヱヒエル、アザジヤ、ナハテ、アサヘル、ヱレモテ、ヨザバデ、ヱリエル、イスマキヤ、マハテ、ベナヤ等ヒゼキヤ王および神の室の宰アザリヤの命に依りコナニヤ及びその兄弟シメイの手下につきてこれが監督者となる

東の門を守る者レビ人ヱムナの子コレ神に献ぐる誠意よりの禮物を司どりてヱホバの献納物および至聖物を頒つ

その手につく者はエデン、ミニヤミン、ヱシユア、シマヤ、アマリヤおよびシカニヤみな祭司の邑々に居てその職を盡しその兄弟に班列に依て之を頒つ大小ともに均し

此外にまた凡て名簿に載たる男子三歳以上にしてヱホバの室に入りその班列にしたがひて日々の職分を盡し擔任の勤務を爲すところの者に之を頒つ

またその宗家にしたがひて名簿に載られその班列にしたがひて擔任の事を執行ふところの祭司および二十歳以上のレビ人

ならびに名簿に載たるその小き者その妻その男子その女子などに盡く之を頒つ會中すべて然り即ち彼等は潔白忠實にその職を盡せり

また邑々の郊地に居るアロンの子孫たる祭司等のためには邑ごとに人を名指し選び祭司の中の一切の男およびレビ人の中の名簿に載せたる一切の者にその分を予へしむ

ヒゼキヤ、ユダ全國に斯のごとく爲し善事正き事忠實なる事をその神ヱホバの前に行へり

凡てその神の室の職務につき律法につき誡命につきて行ひ始めてその神を求めし工は悉く心をつくして行ひてこれを成就たり

第32章

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ヒゼキヤが此等の事を行ひ且つ忠實なりし後アツスリヤの王セナケリブ來りてユダに入り堅固なる邑々にむかひて陣を張り之を攻取んとす

ヒゼキヤ、セナケリブの旣に來りヱルサレムに攻むかはんとするを見

その牧伯等および勇士等と謀りて邑の外なる一切の泉水を塞がんとす彼等これを助く

衆多の民あつまりて一切の泉水および國の中を流れわたる渓河を塞ぎていひけるはアツスリヤの王等來りて水を多く得ば豈で可らんやと

ヒゼキヤまた力を強くし破れたる石垣をことごとく建なほして之を戌樓まで築き上げその外にまた石垣をめぐらしダビデの邑のミロを堅くし戈盾を多く造り

軍長を多く民の上に立て邑の門の廣場に民を集めてこれを努ひて言ふ

汝ら心を強くし且勇めアツスリヤの王のためにも彼とともなる群衆のためにも懼るる勿れ慄く勿れ我らとともなる者は彼とともになる者よりも多きぞかし

彼とともなる者は肉の腕なり然れども我らとともなる者は我らの神ヱホバにして我らを助け我らに代りて戰かひたまふべしと民はユダの王ヒゼキヤの言に安んず

此後アツスリヤの王セナケリブその全軍をもてラキシを攻圍み居りて臣僕をヱルサレムに遣はしてユダの王ヒゼキヤおよびヱルサレムにをる一切のユダ人に告しめて云く

アツスリヤの王セナケリブかく言ふ汝ら何を恃みてヱルサレムに閉籠りをるや

ヒゼキヤ我らの神ヱホバ、アツスリヤの王の手より我らを救ひ出したまはんと言て汝らを浚かし汝らをして饑渇て死しめんとするに非ずや

此ヒゼキヤはすなはちヱホバの諸の崇邱と祭壇を取のぞきユダとヱルサレムとに命じて汝らは唯一の壇の前にて崇拝を爲しその上に香を焚べしと言し者にあらずや

汝らは我およびわが先祖等が諸の國の民に爲したる所を知ざるか其等の國々の民の神少許にてもその國をわが手より救ひ取ることを得しや

わが先祖等の滅ぼし盡せし國民の諸の神の中誰か己の民をわが手より救ひ出すことを得し者あらんや然れば汝らの神いかでか汝らをわが手より救ひいだすことを得ん

然れば斯ヒゼキヤに欺かるる勿れ浚かさるる勿れまた彼を信ずる勿れ何の民何の國の神もその民を我手または我父祖の手より救ひ出すことを得ざりしなれば况て汝らの神いかでか我手より汝らを救ひ出すことを得んと

セナケリブの臣僕等この外にも多くヱホバ神およびその僕ヒゼキヤを誹れり

セナケリブまた書をかきおくりてイスラエルの神ヱホバを嘲りかつ誹り諸國の民の神々その民をわが手より救ひいださざりし如くヒゼキヤの神もその民をわが手より救ひ出さじと云ふ

彼ら遂に大聲を擧げユダヤ語をもて石垣の上なるヱルサレムの民に語ひ之を威しかつ擾せり是は邑を取んとてなり

斯かれらはヱルサレムの神を論ずること人の手の作なる地上の民の神々を論ずるがごとくせり

是によりてヒゼキヤ王およびアモツの子預言者イザヤともに祈祷て天に呼はりければ

ヱホバ天の使一箇を遣はしてアツスリヤ王の陣營にある一切の大勇士および將官軍長等を絶しめたまへり斯りしかば王面を赧らめて己の國に還りけるがその神の家にいりし時其身より出たる者等劍をもて之を其處に弑せり

是のごとくヱホバ、ヒゼキヤとヱルサレムの民をアツスリヤの王セナケリブの手および諸人の手より救ひいだし四方において之を守護たまへり

是において衆多の人献納物をヱルサレムに携へきたりてヱホバに奉りまた財寳をユダの王ヒゼキヤに餽れり此後ヒゼキヤは萬國の民に尊び見らる

當時ヒゼキヤ病て死んとせしがヱホバに祈りければヱホバこれに告をなし之に休徴を賜へり

然るにヒゼキヤその蒙むりし恩に酬ゆることをせずして心に高ぶりければ震怒これに臨まんとしまたユダとヱルサレムに臨まんとせしが

ヒゼキヤその心に高慢を悔て身を卑くしヱルサレムの民も同じく然なしたるに因てヒゼキヤの世にはヱホバの震怒かれらに臨まざりき

ヒゼキヤは富と貴を極め府庫を造りて金銀寶石香物楯および各種の寶貴き器物を蔵め

また倉廩を造りて穀物酒油などの產物を蔵め圈を造りて種々の家畜を置き牢を造りて羊の群を置き

また許多の邑を設けかつ牛羊を夥多しく有り是は神貨財を甚だ多くこれに賜ひしが故なり

このヒゼキヤまたギホンの水の上の源を塞ぎてこれを下より眞直にダビデの邑の西の方に引り斯ヒゼキヤはその一切の工を善なし就たり

但しバビロンの君等が使者を遣はしてこの國にありし奇蹟を問しめたる時には神かれを棄おきたまへり是その心に有ところの事を盡く知んがために之を試みたまへるなり

ヒゼキヤのその餘の行爲およびその徳行はユダとイスラエルの列王紀の書の中なるアモツの子預言者イザヤの默示の中に記さる

ヒゼキヤその先祖等と偕に寝りたればダビデの子孫の墓の中なる高き處にこれを葬りユダの人々およびヱルサレムの民みな厚くその死を送れり其子マナセこれに代りて王となる

第33章

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マナセは十二歳の時位に即きヱルサレムにて五十五年の間世を治めたり

彼はヱホバの目に惡と觀たまふことを爲しイスラエルの子孫の前よりヱホバの逐はらひたまひし國人の行ふところの憎むべき事に傚へり

即ちその父ヒゼキヤの毀ちたりし崇邱を改ため築き諸のバアルのために壇を設けアシラ像を作り天の衆群を拝みて之に事へ

またヱホバが我名は永くヱルサレムに在べしと宣まひしヱホバの室の内に數箇の壇を築き

天の衆群のためにヱホバの室の兩の庭に壇を築き

またベンヒンノムの谷にてその子女に火の中を通らせかつ占卜を行ひ魔術をつかひ禁厭を爲し憑鬼者と卜筮師を取用ひなどしてヱホバの目に惡と視たまふ事を多く行ひてその震怒を惹起せり

彼またその作りし偶像を神の室に安置せり神此室につきてダビデとその子ソロモンに言たまひし事あり云く我この室と我がイスラエルの諸の支派の中より選びたるヱルサレムとに我名を永く置ん

彼らもし我が凡て命ぜし事すなはちモーセが傳へし一切の律法と法度と例典を謹みて行はば我が汝らの先祖のために定めし地より我これが足を重てうつさじと

マナセかくユダとヱルサレムの民とを迷はして惡を行はしめたり其状イスラエルの子孫の前にヱホバの滅ぼしたまひし異邦人よりも甚だし

ヱホバ、マナセおよびその民を諭したまひしかども聽ことをせざりき

是をもてヱホバ、アッスリヤの王の軍勢の諸將をこれに攻來らせたまひて彼等つひにマナセを鉤にて擄へ之を杻械に繋ぎてバビロンに曳ゆけり

然るに彼患難に罹るにおよびてその神ヱホバを和めその先祖の神の前に大に身を卑くして

神に祈りければその祈祷を容れその懇願を聽きこれをヱルサレムに携へかへりて再び國に莅ましめたまへり是によりてマナセ、ヱホバは誠に神にいますと知り

この後かれダビデの邑の外にてギホンの西の方なる谷の内に石垣を築き魚門の入口までに及ぼし又オベルに石垣を環らして甚だ高く之を築き上げユダの一切の堅固なる邑に軍長を置き

またヱホバの室より異邦の神々および偶像を取除きヱホバの室の山とヱルサレムとに自ら築きし一切の壇を取のぞきて邑の外に投すて

ヱホバの壇を修復ひて酬恩祭および感謝祭をその上に献げユダに命じてイスラエルの神ヱホバに事へしめたり

然れども民は猶崇邱にて犠牲を献ぐることなを爲り但しその神ヱホバに而已なりき

マナセのその餘の行爲その神になせし祈祷およびイスラエルの神ヱホバの名をもて彼を諭せし先見者等の言はイスラエルの列王の言行録に見ゆ

またその祈祷を爲たる事その聽れたる事その諸の罪愆その身を卑くする前に崇邱を築きてアシラ像および刻たる像を立たる處々などはホザイの言行録の中に記さる

マナセその先祖とともに寝りたれば之をその家に葬れり其子アモンこれに代りて王となる

アモンは二十二歳の時位に即きヱルサレムにて二年の間世を治めたり

彼は其父マナセの爲しごとくヱホバの目に惡と觀たまふ事を爲り即ちアモンその父マナセが作りたる諸の刻たる像に犠牲を献げてこれに事へ

その父マナセが身を卑くせしごとくヱホバの前に身を卑くすることを爲ざりき斯このアモン愈その愆を増たりしが

その臣僕黨を結びて之に叛きこれをその家の内に弑せり

然るに國の民その黨を結びてアモン王に叛きし者等を盡く誅し而して國の民その子ヨシアを王となしてその後を嗣しむ

第34章

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ヨシアは八歳の時位に即きヱルサレムにて三十一年の間世を治めたり

彼はヱホバの善と觀たまふ事を爲しその父ダビデの道にあゆみて右にも左にも曲らざりき

即ち尚若かりしかどもその治世の八年にその父ダビデの神を求むる事を始めその十二年には崇邱アシラ像刻たる像鋳たる像などを除きてユダとヱルサレムを潔むることを始め

諸のバアルの壇を己の前にて毀たしめ其上に立る日の像を斫たふしアシラ像および雕像鋳像を打碎きて粉々にし是等に犠牲を献げし者等の墓の上に其を撒ちらし

祭司の骨をその諸の壇の上に焚き斯してユダとヱルサレムを潔めたり

またマナセ、エフライム、シメオンおよびナフタリの荒たる邑々にも斯なし

諸壇を毀ちアシラ像および諸の雕像を微塵に打碎きイスラエル全國の日の像を盡く斫たふしてヱルサレムに歸りぬ

ヨシアその治世の十八年にいたりて已に國と殿とを潔め了りその神ヱホバの家を修繕はしめんとてアザリヤの子シヤパン邑の知事マアセヤおよびヨアハズの子史官ヨアを遣せり

彼ら祭司の長ヒルキヤの許に至りてヱホバの室に入し金を交せり是は門守のレビ人がマナセ、エフライムおよび其餘の一切のイスラエル人ならびにユダとベニヤミンの人およびヱルサレムの民の手より斂めたる者なり

やがてヱホバの室を監督するところの工師等の手にこれを交しければ彼等ヱホバの室にて操作ところの工人にこれを交して室を繕ひ修めしむ

即ち木匠および建築者に之を交しユダの王等が壞りたる家々のために琢石および骨木を買しめ梁木をととのはしむ

その人々忠實に操作けりその監督者はメラリの子孫たるヤハテ、オバデヤおよびコハテの子孫たるゼカリヤ、メシユラムなどのレビ人なりき彼等すなはち之を主どる又樂器を弄ぶに精巧なるレビ人凡て之に伴なふ

彼等亦荷を負ものを監督し種々の工事に操作ところの諸の工人をつかさどれり別のレビ人書記となり役人となり門守となれり

ヱホバの室にいりし金を取いだすに當りて祭司ヒルキヤ、モーセの傳へしヱホバの律法の書を見いだせり

ヒルキヤ是において書記官シヤパンにきて言けるは我ヱホバの室にて律法の書を見いだせりと而してヒルキヤその書をシヤパンに付しければ

シヤパンその書を王の所に持ゆき王に復命まうして言ふ僕等その手に委ねられし所を盡く爲し

ヱホバの室にありし金を打あけて之を監督者の手および工人の手に交せりと

書記官シヤパン亦王に告て祭司ヒルキヤ我に一の書を交せりと言ひシヤパンそれを王の前に讀けるに

王その律法の言を聞て衣服を裂り

而して王ヒルキヤとシヤパンの子アヒカムとミカの子アブドンと書記官シヤパンと王の内臣アサヤとに命じて言ふ

汝ら往てこの見當りし書の言につきて我の爲またイスラエルとユダに遺れる者等のためにヱホバに問へ我らの先祖等はヱホバの言を守らず凡て此書に記されたる所を行ふことを爲ざりしに因てヱホバ我等に大なる怒を斟ぎ給ふべければなりと

是においてヒルキヤおよび王の人々シヤルムの妻なる女預言者ホルダの許に往りシヤルムはハルハスの子なるテクワの子にして衣裳を守る者なり時にホルダはヱルサレムの第二の邑に住をれり彼等すなはちホルダに斯と語りしかば

ホルダこれに答へけるはイスラエルの神ヱホバかく言たまふ汝らを我に遣はせる人に告よ

ヱホバかく言たまふユダの王の前に讀し書に記されたる諸の呪詛に循ひて我この處と此に住む者に災害を降さん

其は彼ら我を棄て他の神に香を焚きおのが手にて作れる諸の物をもて我怒を惹起さんとしたればなりこの故にわが震怒この處に斟ぎて滅ざるべし

されど汝らを遣はしてヱホバに問しむるユダの王には汝ら斯いふべしイスラエルの神ヱホバかく言たまふ汝が聞る言につきては

汝此處と此にすむ者を責る神の言を聞し時に心やさしくして神の前に於て身を卑くし我前に身を卑くし衣服を裂て我前に泣たれば我も汝に聽りとヱホバ宣まふ

然ば我汝をして汝の先祖等に列ならしめん汝は安然に墓に歸する事を得べし汝は我が此處と此に住む者に降すところの諸の災害を目に見る事あらじと彼等即ち王に復命まうしぬ

是において王人を遣はしてユダとヱルサレムの長老をことごとく集め

而して王ヱホバの室に上りゆけりユダの人々ヱルサレムの民祭司レビ人及び一切の民大より小にいたるまでことごとく之にともなふ王すなはちヱホバの室に見あたりし契約の書の言を盡く彼らの耳に讀聞せ

而して王己の所に立ちてヱホバの前に契約を立てヱホバにしたがひて歩み心を盡し精神を盡してその誡命と證詞と法度を守り此書にしるされたる契約の言を行はんと言ひ

ヱルサレムおよびベニヤミンの有ゆる人々をみな之に加はらしめたりヱルサレムの民すなはちその先祖の神にまします御神の契約にしたがひて行へり

かくてヨシア、イスラエルの子孫に屬する一切の地より憎むべき者を盡く取のぞきイスラエルの有ゆる人をしてその神ヱホバに事まつらしめたりヨシアの世にある日の間は彼らその先祖の神ヱホバに從ひて離れざりき

第35章

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茲にヨシア、ヱルサレムにおいてヱホバに逾越節を行はんとし正月の十四日に逾越の物を宰らしめ

祭司をしてその職を執行はせ之を勵してヱホバの室の務をなさしめ

またヱホバの聖者となりてイスラエルの人衆を誨ふるレビ人に言ふ汝らイスラエルの王ダビデの子ソロモンが建たる家に聖契約の匱を放け再び肩に擔ふこと有ざるべし然ば今汝らの神ヱホバおよびその民イスラエルに事ふべし

汝らまたイスラエルの王ダビデの書およびその子ソロモンの書に本づきて父祖の家に循がひその班列に依て自ら準備をなし

汝らの兄弟なる民の人々の宗家の區分に循ひて聖所に立ち之にレビ人の宗族の分缺ること無らしむべし

汝ら逾越の物を宰り身を潔め汝らの兄弟のために準備をなしモーセが傳へしヱホバの言のごとく行ふべしと

ヨシアすなはち羔羊および羔山羊を民の人々に餽る其數三萬また牡牛三千を餽る是みな王の所有の中より出して其處に居る一切の人のために逾越の祭物となせるなり

その牧伯等も民と祭司とレビ人に誠意より與ふる所ありまた神の室の長等ヒルキヤ、ゼカリヤ、ヱヒエルも綿羊二千六百牛三百を祭司に與へて逾越の祭物と爲す

またレビ人の長たる人々すなはちコナニヤおよびその兄弟シマヤ、ネタンエル並にハシヤビヤ、ヱイエル、ヨザバデなども綿羊五千牛五百をレビ人に餽りて逾越の祭物となす

是のごとく献祭の事備はりぬれば王の命にしたがひて祭司等はその擔任場に立ちレビ人はその班列に循がひ居り

やがて逾越の物を宰りければ祭司その血をこれが手より受て洒げりレビ人その皮を剥り

かくて燔祭の物を移して民の人々の父祖の家の區分に付してヱホバに献げしむモーセの書に記されたるが如し其牛に行ふところも亦是のごとし

而して例規のごとくに逾越の物を火にて炙りその他の聖物を鍋釜鼎などに烹て一切の民の人々に奔配れり

かくて後かれら自身のためと祭司等のために備ふ其はアロンの子孫たる祭司等は燔祭と脂を献げて夜に入たればなり是に因て斯レビ人自分のためとアロンの子孫たる祭司等のために備ふるなり

アサフの子孫たる謳歌者等はダビデ、アサフ、ヘマンおよび王の先見者ヱドトンの命にしたがひてその擔任場に居り門を守る者等は門々に居てその職務を離るるに及ばざりき其はその兄弟たるレビ人これがために備へたればなり

斯のごとく其日ヱホバの献祭の事ことごとく備はりければヨシア王の命にしたがひて逾越節を行ひヱホバの壇に燔祭を献げたり

即ち其處に來れるイスラエルの子孫その時逾越節を行ひ七日の間酵いれぬパンの節を行へり

預言者サムエルの日より以來イスラエルにて是のごとくに逾越節を行ひし事なし又イスラエルの諸王の中にはヨシアが祭司レビ人ならびに來りあつまれるユダとイスラエルの諸人およびヱルサレムの民とともに行ひし如き逾越節を行ひし者一人もあらず

この逾越節はヨシアの治世の十八年に行ひしなり

是のごとくヨシア殿をととのへし後エジプトの王ネコ、ユフラテの邊なるカルケミシを攻撃んとて上り來りけるにヨシアこれを禦がんとて出往り

是においてネコ使者をかれに遣はして言ふユダの王よ是あに汝の與る所ならんや今日は汝を攻んとには非ず我敵の家を攻んとするなり神われに命じて急がしむ神われとともにあり汝神に逆ふことを罷よ恐らくは彼なんぢを滅ぼしたまはんと

然るにヨシア面を轉して去ことを肯はず却てこれと戰はんとて服装を變へ神の口より出しネコの言を聽いれずしてメギドンの谷に到りて戰ひけるが

射手の者等ヨシア王に射中たれば王その臣僕にむかひて我を扶け出せ我太痍を負ふと言り

是においてその臣僕等かれをその車より扶けおろし其引せたる次の車に乗てヱルサレムにつれゆきけるが遂に死たればその先祖の墓にこれを葬りぬユダとヱルサレムみなヨシアのために哀しめり

時にヱレミヤ、ヨシアのために哀歌を作れり謳歌男謳歌女今日にいたるまでその哀歌の中にヨシアの事を述べイスラエルの中に之を例となせりその詞は哀歌の中に書さる

ヨシアのその餘の行爲そのヱホバの律法に録されたる所にしたがひて爲し徳行

およびその始終の行爲などはイスラエルとユダの列王の書に記さる

第36章

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是において國の民ヨシアの子ヱホアハズを取りヱルサレムにてその父にかはりて王とならしむ

ヱホアハズは二十三歳の時位に即きヱルサレムにて三月が間世を治めけるが

エジプトの王ヱルサレムにて彼を廢し且銀百タラント金一タラントの罰金を國に課せり

而してエジプトの王ネコ彼の兄弟エリアキムをもてユダとヱルサレムの王となして之が名をヱホヤキムと改めその兄弟ヱホアハズを執へてエジプトに曳ゆけり

ヱホヤキムは二十五歳の時位に即きヱルサレムにて十一年の間世を治めその神ヱホバの惡と視たまふことを爲り

彼の所にバビロンの王ネブカデネザル攻のぼりバビロンに曳ゆかんとて之を杻械に繋げり

ネブカデネザルまたヱホバの家の器具をバビロンに携へゆきてバビロンにあるその宮にこれを蔵めたり

ヱホヤキムのその餘の行爲その行ひし憎むべき事等およびその心に企みし事などはイスラエルとユダの列王の書に記さる其子ヱホヤキンこれに代りて王となる

ヱホヤキンは八歳の時位に即きヱルサレムにて三月と十日の間世を治めヱホバの惡と視たまふ事を爲けるが

歳の歸るにおよびてネブカデネザル王人を遣はして彼とヱホバの室の貴き器皿とをバビロンに携へいたらしめ之が兄弟ゼデキヤをもてユダとヱルサレムの王となせり

ゼデキヤは二十一歳の時位に即きヱルサレムにて十一年の間世を治めたり

彼はその神ヱホバの惡と視たまふ事を爲しヱホバの言を傳ふる預言者ヱレミヤの前に身を卑くせざりき

ネブカデネザル彼をして神を指て誓はしめたりしにまた之にも叛けり彼かくその項を強くしその心を剛愎にしてイスラエルの神ヱホバに立かへらざりき

祭司の長等および民もまた凡て異邦人の中にある諸の憎むべき事に傚ひて太甚しく大に罪を犯しヱホバのヱルサレムに聖め置たまへるその室を汚せり

其先祖の神ヱホバその民とその住所とを恤むが故に頻りにその使者を遣はして之を諭したまひしに

彼ら神の使者等を嘲けり其御言を軽んじその預言者等を罵りたればヱホバの怒その民にむかひて起り遂に救ふべからざるに至れり

即ちヱホバ、カルデヤ人の王を之に攻きたらせたまひければ彼その聖所の室にて劍をもて少者を殺し童男をも童女をも老人をも白髮の者をも憐まざりき皆ひとしく彼の手に付したまへり

神の室の諸の大小の器皿ヱホバの室の貨財王とその牧伯等の貨財など凡て之をバビロンに携へゆき

神の室を焚きヱルサレムの石垣を崩しその中の宮殿を盡く火にて焚きその中の貴き器を盡く壞なへり

また劍をのがれし者等はバビロンに擄れゆきて彼處にて彼とその子等の臣僕となりペルシヤの國の興るまで斯てありき

是ヱレミヤの口によりて傳はりしヱホバの言の應ぜんがためなりき斯この地遂にその安息を享たり即ち是はその荒をる間安息して終に七十年滿ぬ

ペルシヤ王クロスの元年に當りヱホバ曩にヱレミヤの口によりて傳へたまひしその聖言を成んとてペルシヤ王クロスの心を感動したまひければ王すなはち宣命をつたへ詔書を出して徧く國中に告示して云く

ペルシヤ王クロスかく言ふ天の神ヱホバ地上の諸國を我に賜へりその家をユダのエルサレムに建ることを我に命ず凡そ汝らの中もしその民たる者あらばその神ヱホバの助を得て上りゆけ