天の王慰る者や真実の神 在らざる所なき者 満たざる所なき者や萬善の宝蔵なる者 生命を賜ふの主や来て我等の中に居り我等を諸の穢より潔くせよ至善者や我等の霊を救ひ給へ
問 是は誰に捧ぐる祈祷なりや
答 聖三者の第三の位なる聖神に捧ぐる祈祷なり
問 此祈祷は何處より採られしや
答 此祈祷は聖使徒等に聖神の降臨せられしを記憶する所の五旬節祭の詠歌より採られたるものなり
問 我等は此祈祷に於て聖神に如何なることを願ひ求むるや
答 聖神の我等にも降りて我等を諸の罪より潔め永遠の罰より救ふことを願ひ求むるなり
問 此祈祷の中に『王』と云はれしは誰のことなりや
答 聖神のことなり
問 何故に聖神を『王』と名づけられしや
答 聖神は神父神子と同じく天地万物の主宰にして全世界を統べ治むればなり
問 何故に聖神を『天の王』と名づけられしや
答 聖神は天のみに限らず何處にも在すなり然れども天は神の光栄の殊に顕はるる處なればなり
問 此祈祷のうちに『慰むる者』と云はれしは誰のことなりや
答 聖神のことなり
問 何故に聖神を『慰むる者』と名づけられしや
答 聖神は我等の憂愁悲痛を慰むる者なればなり
問 『真実の神』とは誰のことなりや
答 矢張り聖神を指すなり
問 何故に聖神を『真実の神』と名づけられしや
答 聖神は我等に真理を教へ善を勧めて悪を懲らす者なればなり
問 『在らざる處なき者 満たざる處なき者』とは如何なる意なりや
答 聖神は何處にも在し又何處にも臨みて我等に現世と来世の必要なるものを賜ふを云ふなり
問 『萬善の宝蔵なる者生命を賜ふの主』とは如何なる意なりや
答 聖神は諸善の源にして萬物に生命を與へ殊に我等人間に霊の生命を與ふることを云ふなり
問 『至善者や我等の霊を救ひ給へ』とは如何なる意なりや
答 此語は聖神が我等を罪の罰より救ひ我等を天国に入るに堪ゆる者と為さしむることを願ひ求むるなり
- ○ 此祈祷は常に他の祈祷より先に唱へらるるなり其故は我等が他の祈祷を神に捧ぐる前に先づ己の悪き思慮慾念を清めて専ら其心を聖神に向かはしむる為なり