横川法語

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• 底本：国訳大蔵経編輯部 編『国訳大蔵経 : 昭和新纂』宗典部 第1巻,東方書院,昭和3-7. 国立国会図書館デジタルコレクション:info:ndljp/pid/1172199/1/248 p.485
• 書誌情報：国訳大蔵経編輯部 編（東方書院　1932年）

横（よ）川（かは）法（ほふ）語（ご）

夫（そ）れ一切（いつさい）衆（しゆ）生（じやう）、三惡道（さんあくだう）をのがれて人間（にんげん）に生（うま）るること大（おほい）なるよろこびなり。身（み）はいやしくとも畜生（ちくしやう）におとらんや、家（いへ）貧（まづ）しくとも餓鬼（がき）にはまさるべし、心（こころ）に思（おも）ふことかなはずとも、地（じ）獄（ごく）の苦（くる）しみには比（くら）ぶべからず。世（よ）の住（す）みうきは厭（いと）ふたよりなり、人（ひと）かずならぬ身（み）のいやしきは菩（ぼ）提（だい）をねがふしるべなり、このゆゑに人間（にんげん）に生（うま）るることを悦（よろこ）ぶべし。信心（しんじん）あさくとも本（ほん）願（ぐわん）深（ふか）きがゆゑにたのめば必（かなら）ず往（わう）生（じやう）す、念佛（ねんぶつ）ものうけれども唱（とな）ふれば定（さだ）めて來迎（らいがう）にあづかる功（く）徳（どく）莫大（ばくだい）なり、このゆゑに本（ほん）願（ぐわん）にあふことをよろこぶべし。又（また）妄念（まうねん）はもとより凡（ぼん）夫（ぶ）の地（ぢ）體（たい）なり、妄念（まうねん）の外（ほか）に別（べつ）の心（こころ）もなきなり。臨終（りんじう）のときまでは一向（いつかう）に妄念（まうねん）の凡（ぼん）夫（ぶ）にてあるべきぞと心（こころ）え、念佛（ねんぶつ）すれば、來迎（らいがう）にあづかりて蓮臺（れんだい）にのるときこそ妄念（まうねん）をひるがへして悟（さと）りの心（こころ）とはなれ。妄念（まうねん）の中（うち）より申（まを）し出（いだ）したる念佛（ねんぶつ）は濁（にご）りに染（そ）まぬ蓮（はちす）の如（ごと）くにして、決（けつ）定（ぢやう）往（わう）生（じやう）うたがひあるべからず。妄念（まうねん）をいとはずして信心（しんじん）のあさきを歎（なげ）き、こころざしを深（ふか）くして常（つね）に名（みやう）號（がう）を唱（とな）ふべし。

横（よ）川（かは）法（ほふ）語（ご）　畢