極左暴力集団の現状等

平成30年1月現在

警察庁


極左暴力集団の現状等

1 極左暴力集団とは

  • 極左暴力集団は、社会主義革命・共産主義革命を目指し、平和な民主主義社会を暴力で破壊することを企てている集団
  • 昭和30年代初頭、路線対立等の理由から、日本共産党を除名されたり、離党した者が中心となって誕生した組織等、成立の経緯や指導理論等から多数のセクト(注1)が存在
  • 誕生から半世紀以上が経過し、この間、街頭で火炎びん、鉄パイプ等の武器を使用した暴力的な行為を繰り返してきたほか、基地、皇室及び成田空港建設等に反対し、民間人を巻き込む凶悪な「テロ、ゲリラ」事件を引き起こすなど、市民生活を混乱させ、我が国の治安に大きな影響
  • この他、自らの主義主張を通すために、対立するセクト間で殺人や傷害等の内ゲバ(注2)事件を敢行
  • 極左暴力集団は、依然として「テロ、ゲリラ」事件を敢行する一方で、周囲に警戒心を抱かせないよう、暴力性・党派性を隠しながら大衆運動や労働運動に介入するなどして、組織の維持・拡大をもくろんでおり、勢力は約2万人

注1: 党派

注2: 内部ゲバルト。ゲバルトは暴力の意味でセクト間で行われる暴力を伴う抗争


2 極左暴力集団の主なセクト

「革マル派」(正式名称:日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派)

  • 昭和38年2月、中核派と分裂し発足
  • 勢力は約5,500人、機関紙「解放」を発行
  • 非公然組織を有し、警察や対立する団体、個人等に対し、住居侵入、窃盗、電話盗聴等の違法行為を伴う調査活動も敢行
  • 創始者である故・黒田前議長の遺志を継承、組織建設を重視し基幹産業(注3)の労働組合内で組織拡大を企図


「中核派」(正式名称:革命的共産主義者同盟全国委員会)

  • 昭和38年2月、革マル派と分裂し発足
  • 勢力は約4,700人、機関紙「前進」を発行
  • 非公然組織を有し、過去には数多くの「テロ、ゲリラ」事件を敢行
※平成2年、「90年天皇決戦」を主張して1年間に124件の「テロ、ゲリラ」事件を敢行国鉄闘争を基軸に、反原発闘争等を中心とした闘争を継続し、組織の維持・拡大を企図


「革労協」(正式名称:革命的労働者協会)

  • 昭和44年10月発足。平成11年に主流派、反主流派に分裂
  • 勢力は約500人、機関紙「解放」を発行
  • 非公然組織を有し、多くの「テロ、ゲリラ」事件のほか、死傷者を出す凄惨な内ゲバを敢行
  • 「成田闘争」、「反戦、反基地闘争」等を通じて、両派とも組織の維持・拡大を企図

注3: 全日本鉄道労働組合総連合会(JR総連)及び東日本鉄道労働組合(JR東労組)には相当浸透しているとみられる


3 極左暴力集団の主な活動

  • 極左暴力集団は、社会情勢を反映した様々な問題を捉え、暴力性・党派性を隠して労働運動・大衆運動に介入するほか、集会・デモの場で同調者の獲得を目指す
  • 大衆運動では、平成23年3月に発生した東日本大震災後、同調者の獲得を図るため、セクト色を隠し原発の即時停止等を訴えるなど、反原発闘争の盛り上げを図る中、中核派は、「すべての原発いますぐなくそう!全国会議」(略称:な全)を立ち上げ
  • 特に、誕生から半世紀以上が経過し、組織の高齢化が進む中、若者の獲得を目指し、様々な取組(事例1)を図るほか、学生部門として組織されている全学連(全日本学生自治会総連合)等は、新たな活動家や活動資金の獲得を図るため、大学における自治会活動やサークル活動に介入
  • こうした活動に伴って、学校、一般学生との間でトラブルが発生しているほか、威力業務妨害事件(事例2)や公務執行妨害事件等を敢行
事例1 若者の獲得を目指した中核派の取組
  • 高校生向けに機関紙「前進」を発行
  • インターネット動画共有サイト「前進チャンネル」を開設し、機関紙の解説、集会・デモの状況を紹介
事例2 大学における威力業務妨害事件被疑者の検挙
京都府警察等は、平成27年10月27日、京都市内の大学で「安全保障関連法案反対」等と主張、「反戦ストライキ」と称して校舎入口に立て看板等でバリケードを築いて封鎖し、授業を妨害したとして、平成28年2月29日及び3月1日、中核派系全学連活動家ら6人を威力業務妨害罪で逮捕するとともに、中核派の活動拠点、大学の学生寮等の捜索を行った。


4 極左暴力集団対策の推進

  • 警察は、極左暴力集団に対する事件捜査及び(違法行為の準備等が行われるおそれのある)非公然アジト発見に向けたマンション、アパート等に対するローラーを推進し、平成29年中、非公然アジト3か所を摘発したほか、極左活動家ら30人を検挙

【29年中の検挙事例】

事例 警察庁指定重要指名手配被疑者の検挙
警察では、昭和46年11月に発生した警察官殺害事件(渋谷暴動事件)に関する警察庁指定重要指名手配被疑者である大坂正明が、中核派(党中央)の組織的な支援を受けながら逃亡、潜伏しているものとみて、平成28年11月に同事件を捜査特別報奨金制度の対象事件に指定したほか、同人の検挙に向けた各種対策を推進した。
平成29年5月18日、大阪府警察が中核派(党中央)の非公然アジトを摘発した際に公務執行妨害罪で現行犯逮捕した同派非公然活動家が、大坂正明であると判明したため、同年6月7日、警視庁は、同人を殺人罪等で再逮捕した。
事例 ゲリラ事件被疑者の検挙
警視庁は、平成25年11月28日、東京都に所在する米軍横田基地に向けて飛翔弾2発を発射し、うち1発を基地周辺で爆発させたゲリラ事件で、平成29年7月14日、革労協反主流派非公然活動家の男を、爆発物取締罰則違反で逮捕した。
また、同非公然活動家が、平成26年10月20日に埼玉県川口市内で発生した、米軍普天間飛行場の辺野古移設工事関連会社に向けて金属弾が打ち込まれたゲリラ事件にも関与していたとして、警視庁及び埼玉、神奈川両県警は、平成29年11月28日、銃砲刀剣類所持等取締法違反等で再逮捕した。
  • 警察では、ポスターを始めとする各種媒体を活用した広報活動を推進するとともに、引き続き、国民の理解と協力を得ながら、極左暴力集団による違法行為の取締りを実施