朝鮮貴族令
朕惟フニ李家ノ懿親及其ノ邦家ニ大勞アリタル者ハ宜ク之ヲ優列ニ陛シ敍シテ朝鮮貴族ト爲シ用テ寵光ヲ示スヘシ茲ニ其ノ舊德前功ヲ秩シ世爵ノ典ヲ定メテ朝鮮貴族令トシ之ヲ裁可シ公布セシム
明治四十三年八月二十九日
宮內大臣 子爵渡邊千秋
皇室令第十四號
朝鮮貴族令
第一條 本令ニ依リ爵ヲ授ケラレ又ハ爵ヲ襲キタル者ヲ朝鮮貴族トス
有爵者ノ婦ハ朝鮮貴族ノ族稱ヲ享ク
第二條 爵ハ李王ノ現在ノ血族ニシテ皇族ノ禮遇ヲ享ケサル者及門地又ハ功勞アリタル朝鮮人ニ之ヲ授ク
第三條 爵ハ公侯伯子男ノ五等トス
第四條 爵ヲ授クルハ勅旨ヲ以テシ宮內大臣之ヲ奉行ス
第五條 有爵者ハ其ノ爵ニ應シ華族令ニ依ル有爵者ト同一ノ禮遇ヲ享ク
第六條 有爵者ノ婦ハ其ノ夫ノ爵ニ相當スル禮遇及名稱ヲ享ク
有爵者ノ寡婦其ノ家ニ在ルトキハ特ニ貴族ノ族稱ヲ保有セシメ從前ノ禮遇及名稱ヲ享ケシム
第七條 有爵者ノ家族ニシテ左ニ揭ケタル者ハ華族ト同一ノ禮遇及貴族ノ族稱ヲ享ク
第八條 有爵者又ハ前二條ノ禮遇ヲ享クヘキ者身體若ハ精神ニ重患アリ又ハ貴族ノ體面ニ關スル事故アリタルトキハ其ノ重患又ハ事故ノ止ムマテ其ノ禮遇ヲ享クルコトヲ得ス
前項ノ重患又ハ事故ノ有無ハ宮內高等官中ヨリ勅命シタル審査委員ヲシテ審査セシメタル後宮內大臣ノ上奏ニ依リ之ヲ勅裁ス
第九條 有爵者ハ家範ヲ定ムルコトヲ得
家範ハ宮內大臣ノ認許ヲ受クヘシ之ヲ廢止變更スルトキ亦同シ
有爵者二十年未滿ナルトキ又ハ前條ノ場合ニ該當スル者ナルトキハ家範ヲ定メ又ハ之ヲ廢止變更スルコトヲ得ス
第十條 爵ハ家ノ相續人タル男子ヲシテ之ヲ襲カシム
第十一條 爵ヲ襲クコトヲ得ヘキ相續人ハ相續開始ノ時ヨリ六箇月內ニ宮內大臣ニ家督相續ノ屆出ヲ爲スヘシ
前項ノ屆出アリタルトキハ宮內大臣ハ勅許ヲ經テ襲爵ノ辭令書ヲ交付ス
第十二條 襲爵ハ相續開始ノ時ヨリ其ノ效力ヲ生ス
第十三條 左ノ場合ニ於テハ相續人ハ襲爵ノ特權ヲ失フ
第十四條 相續人忠順ヲ缺クノ行爲アリタルトキハ襲爵ヲ勅許セラルルコトナシ
第十五條 有爵者及第六條又ハ第七條ノ禮遇ヲ享クヘキ者ノ身分ニ關シ監督上必要ノ事項ハ宮內大臣之ヲ管掌ス
第十六條 有爵者國籍ヲ喪失シタルトキ又ハ禁錮若ハ禁獄以上ノ刑ノ宣吿ヲ受ケ其ノ裁判確定シタルトキハ其ノ爵ヲ失フ
第六條又ハ第七條ノ禮遇ヲ享クヘキ者前項ノ場合ニ該當スルトキハ貴族ノ族稱ヲ除キ又ハ其ノ禮遇ヲ禁止ス
第十七條 有爵者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ爵ヲ返上セシメ又ハ其ノ禮遇ヲ停止若ハ禁止ス
一 貴族ノ體面ヲ汚辱スル失行アル者
二 貴族ノ品位ヲ保ツコト能ハサル者
三 忠順ヲ缺クノ行爲アル者
四 宮內大臣ノ命令又ハ家範ニ違反シ情狀重キ者
第十八條 第六條又ハ第七條ノ禮遇ヲ享クヘキ者前條ノ場合ニ該當スルトキハ貴族ノ族稱ヲ除キ又ハ禮遇ヲ停止若ハ禁止ス
第十九條 有爵者禮遇ノ停止又ハ禁止中ニ在ルトキハ第六條第一項及第七條ノ禮遇ヲ享クヘキ者モ共ニ其ノ禮遇ヲ享クルコトヲ得ス
第二十條 有爵者其ノ品位ヲ保ツコト能ハサルトキハ宮內大臣ヲ經テ爵ノ返上ヲ請願スルコトヲ得
禮遇ノ禁止ヲ解除スルハ特旨ニ由ル
第二十二條 審査委員ニ關スル規程ハ宮內大臣勅裁ヲ經テ之ヲ定ム
附則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。
- 法律命令及官公󠄁文󠄁書
- 新聞紙及定期刊行物ニ記載シタル雜報及政事上ノ論說若ハ時事ノ記事
- 公󠄁開セル裁判󠄁所󠄁、議會竝政談集會ニ於󠄁テ爲シタル演述󠄁
この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。