朝鮮民主主義人民共和国刑事訴訟法
朝鮮民主主義人民共和国刑事訴訟法
(1992年1月15日最高人民会議常設会議決定第12号で採択)
第1章:刑事訴訟法の基本 第2章:一般規定
第3章:証拠
第4章:捜査及び予審
第1節 捜査
第2節 予審の任務及び管轄
第3節 予審の開始及び刑事責任追及
第4節 被疑者尋問
第5節 拘束処分
第6節 検証及び検診
第7節 鑑定
第8節 捜索及び押収
第9節 証人尋問
第10節 財産担保処分
第11節 予審終結 第5章:検事の事件処理
第6章:弁護
第7章:裁判
第1節 裁判の任務及び管轄
第2節 裁判準備
第3節 裁判審理
第4節 起訴の追加及び変更
第5節 判決
第8章:第2審裁判
第9章:非常上訴及び再審
第1節 非常上訴
第2節 再審
第10章:判決、判定の執行
◆第1章:刑事訴訟法の基本◆
<第1条>朝鮮民主主義人民共和国刑事訴訟法は、犯罪との闘争を通じて国家主権及び社会主義制度を保衛し、人民の自主的で創造的な生活を保障する。
<第2条>国家は、刑事事件の取扱処理活動において労働階級的原則を確固として堅持し、大衆の力及び知恵に依拠する。
<第3条>国家は、反国家犯罪との闘争において敵味方を厳格に区別し、ごく少数の敵対分子及び主動分子を徹底的に鎮圧し、多数の被動分子を包摂し、一般犯罪との闘争において社会的教育を中心にしながらこれに法的制裁を正しく配合する。
<第4条>国家は、刑事事件の取扱処理活動において人権を徹底的に保障する。
<第5条>国家は、公民の中で遵法教育及び法的統制を強化し、国家社会生活のすべての分野で制度及び秩序を確立し、犯罪を未然に防止する。
<第6条>国家は、刑事事件を取扱処理する場合において、科学性及び客観性、慎重性を保障する。
◆第2章:一般規定◆
<第7条>捜査、予審、検察裁判機関において刑事事件に対する取扱及び処理は、この法律に規定された原則及び方法、手続に従って行う。
<第8条>捜査は、社会安全、国家保衛機関の捜査員が行う。
検事は、必要により捜査をすることができる。
<第9条>予審は、社会安全、検察、国家保衛機関の予審員が行う。
<第10条>刑事事件に対する起訴は、検事だけが行う。
<第11条>法に規定されていない場合又は法に規定された手続によらずしては、人を逮捕し、又は勾留することができない。
人を逮捕したときは、48時間内にその者の家族又は所属団体に逮捕日時、理由等を報せなければならない。
検事は、不法に逮捕勾留されている者を発見したときは、その者を釈放しなければならない。
<第12条>次の事由がある場合は、刑事責任を追及せず、刑事責任を追及した後にそれが判明したときは、刑事事件を棄却する。
1.14歳に達しない者の行為であるとき
2.被疑者、被告人の行為が罪にならないとき又は罪にはなるが刑事責任を追及する程度に至らないとき
3.刑事責任を追及することができる法的期間が経過したとき
4.特赦、大赦により刑罰が免除されたとき
5.確定した判決、判定があった行為であるとき
6.刑事責任の追及を受けなければならない者が死亡したとき
<第13条>被疑者、被告人を社会的教育を通じて改造することができると認める充分の根拠がある場合は、刑罰を与えないで社会的教育に引き渡すことができる。
社会的教育に社会的教育に引き渡した者が、刑法に規定された刑事責任を追及することができる法的期間に新たな罪を犯した場合は、その者に適用した教育処分を取り消し、刑罰を与えることができる。
<第14条>事件の調査審理は、朝鮮語で行う。
朝鮮語を知らない人には、通訳を付する。
外国人は、事件と関連した文書を自国語の文で提出することができる。
<第15条>裁判は、各級裁判所が行い、刑罰の適用は、裁判所の判決で行う。
<第16条>すべての裁判は、公開する。
国家又は個人の秘密を守らなければならない必要があり、又は社会的に悪い影響が及び得るときは、裁判の全部又は一部を公開しないことができる。
裁判審理を公開しないときにも判決の宣告は、公開しなければならない。
<第17条>刑事事件の取扱処理においては、被疑者、被告人の弁護権を保障する。
<第18条>刑事裁判以外の裁判で確定した事実は、刑事裁判においてもそのまま認められる。ただし、その事実が罪となるか否かについては、刑事裁判で審理確定されなければならない。
<第19条>犯罪行為で損害を受けた機関、企業所、団体及び公民は、それを補償する責任がある相手に刑事事件を審理する裁判所に損害補償を請求することができる。
損害補償請求は、犯罪者に刑事責任を追及したときから裁判審理をする前までいつでもすることができる。
損害補償請求には、国家手数料を要しない。
刑事事件を審理する裁判所に損害補償を請求することができない被害者は、別に損害補償請求を提起することができる。
検事は、国家、社会又は公民の利益のために裁判所に損害補償請求を直接提起することができる。
<第20条>損害補償請求は、該当刑事事件を審理する裁判所において共に審理する。ただし、それが刑事事件審理に支障を与える場合は、別に損害補償請求を審理する裁判手続で解決することができる。
損害補償請求の棄却は、裁判によってのみ行うことができる。
刑事裁判において損害補償請求が棄却されたときは、その事件に対して更に請求を提起することができない。既に損害補償請求を審理した裁判において請求が棄却されたときにも、刑事事件を審理する裁判所に更に請求を提起することができない。
<第21条>捜査員、予審員、検事、判事、人民参審員、裁判書記、鑑定人、通訳人、解釈人は、自身及び親戚が該当刑事事件の処理結果に対して利害関係を有する場合は、その事件を取扱処理することに参加することができない。
<第22条>お互い親戚になる判事、人民参審員は、同一裁判所の成員となることができない。
<第23条>第1審裁判に参加した判事、人民参審員は、その事件を再度審理する第1審又は第2審裁判所の成員となることができない。
<第24条>この法律第93条の要求に違反して事件を誇張、ねつ造したことが裁判所が事件を検事に差し戻した判定の根拠となったとき、既にその事件を予審を行った予審員は、再度予審を行うことができない。
<第25条>捜査員、予審員、検事は、自分が取り扱った事件に対して判事、人民参審員、裁判書記、証人、鑑定人、通訳人、解釈人となることができない。
<第26条>判事、人民参審員、裁判書記、弁護人、証人、鑑定人、通訳人、解釈人は、該当事件の調査審理において、互いの任務を兼ねることができない。ただし、証人は、損害補償請求者となることができる。
<第27条>訴訟関係者は、この法律第21条から第26条までの事由があるときは、裁判所又は検事に、判事、人民参審員、検事、裁判書記、捜査員、予審員、鑑定人、通訳人、解釈人を交代させるよう申請することができる。
<第28条>判事、人民参審員、検事、裁判書記を交代させることに対する申請は、裁判で事実審理を開始する前にしなければならない。事実審理が開始された後にその者を交代させるべき事由が生まれ、又はそれを知るに至ったときは、事実審理が開始された後においても申請することができる。
<第29条>裁判に参加した検事、裁判書記、鑑定人、通訳人、解釈人を交代させることに対する申請は、その事件を審理する裁判所が判定で解決する。
判事、人民参審員を交代させることに対する申請は、交代させる対象として指摘された判事又は人民参審員を除き、その他の裁判所構成員が判定で解決する。この場合、裁判所構成員中、一人でも交代させなければならないと主張するときは、交代しなければならない。
<第30条>検事は、捜査員、予審員、鑑定人、通訳人、解釈人を交代させることに対する申請を受けたときは、3日内に解決しなければならない。
検事の解決があるときまで、捜査、予審は、継続しなければならない。
<第31条>刑事事件の取扱処理期間は、時間、日、月、年により計算する。
期間は、それを計算しなければならない事由が発生した翌日又は次の時間から計算する。
日で定めた期間は、最終日24時で終了する。
月で定めた期間は、最後月中に、その期間を計算しなければならない事由が発生した日と同じ日が経過すれば終了する。最後月中に、その期間を計算しなければならない事由が発生した日と同じ日がないときは、その月の最終日が経過すれば終了する。
期間が終了する日が国家的名節日又は日曜日であるときは、その次の最初の労働日が経過すれば期間が終了する。
<第32条>上訴状、抗議書その他の文書を法が定めた期間が経過する前に送付したときは、その期間内に提出したものと認める。
この法律が定めた期間が経過したとしても相当な理由があるときは、該当事件を取扱処理する期間がその期間を超えることができる。
<第33条>証人、鑑定人、通訳人、解釈人は、刑事事件を調査釈明するのに動員された期間の生活費又は労力報酬及び旅費を、自分が属する機関、企業所、団体から受け、機関、企業所、団体に勤務しない者は、その者を呼んだ機関から旅費を受ける。
<第34条>捜査、予審、裁判準備、裁判においては、陳述書、調書、決定書、判決書、判定書を作成しなければならない。
捜査、予審において作成した陳述書、調書及びそれを訂正した個所には、作成者の印鑑及び陳述者の拇印又は印鑑を押し、決定書には、作成者が印鑑を押す。
裁判準備調書及び裁判調書には、裁判書記及び裁判長が印鑑を押し、訂正した個所には、作成者が印鑑を押す。
判決書、判定書には、判事及び人民参審員が印鑑を押す。
事件調査に立会人が参加したときは、調書に立会人も印鑑を押す。
担保処分した財産、押収品、没収品、証拠物に対する調書には、品名、形態、品質、規格、数量、所有関係等を具体的に明らかにし、作成者、所有者、立会人が印鑑を押す
◆第3章:証拠◆
<第35条>刑事事件の取扱処理は、科学的で具体的な証拠に基づかなければならない。
<第36条>犯罪の表徴をなす事実等及び刑罰を定めるのに影響を与える得る条件等は、必ず証拠で確定しなければならない。
<第37条>証拠は、証人の証言、鑑定結果、検証結果、証拠物、証拠文書、被告人の供述等から得たものでなければならない。
<第38条>証拠物として、犯罪行為を遂行するのに用い、又は犯罪の痕跡がある物、犯罪行為の対象となった物、犯罪及び犯罪者を摘発して犯罪事実を明らかにするのに助けとなった物が該当し得る。
<第39条>証拠文書としては、捜査、予審機関及び裁判所が作成した各種調書、陳述書等の訴訟書類をはじめとしてその内容が証拠的意義を有する文書が該当し得る。
<第40条>捜査員、予審員、検事、裁判所は、法が定めたところに従い、制限を受けることなく必要なすべての証拠を捜し出すことができ、それを利用することができる。
<第41条>証拠は、大衆の力に依拠し、科学的方法に基づいて捜し出さなければならない。
<第42条>犯罪現場又は証拠物を発見し、又は証拠となる事実を知った者は、それについて社会安全、検察、国家保衛機関に直ちに通報し、犯罪現場状態が変化し、又は証拠物が使えなくならないようによく保存しなければならない。
捜査員、予審員、検事、裁判所が陳述を要求し、又は事件解決に意義を有する物、文書を要求するときは、何人もそれに応じなければならない。
<第43条>捜し出した証拠は、調書、陳述書等を作る方法で固着させなければならない。必要なときは、写真を撮り、又は図面を描き、又は録音、録画することができる。
<第44条>証拠は、客観的に十分に検討されて初めて判断の基礎とすることができる。
<第45条>捜査員、予審員、検事、裁判所は、法が規定したところに従って収集され、調査検討された証拠を自らの確信により個別的に又は相互に連関させて総合的に評価しなければならない。
<第46条>証拠物は、それをどこでいかなる方法で入手したのかを明らかにした調書及び証拠物添付決定書を付して、事件記録と共にその事件を調査審理する機関が保管する。
事件を調査審理する機関が保管することができない証拠物は、封印して関係者に保管させ、保管証を受けて事件記録に添付しなければならない。
<第47条>事件を他の捜査機関、予審員、検事、裁判所に送るときは、証拠物を事件記録と共に引き渡さなければならない。
<第48条>腐敗し、又は使用することができなくなる証拠物は、捜査、予審機関の決定で所有者に返還し、又は該当機関に引き渡すことができる。
捜査、予審機関が証拠物を返還し、又は引き渡すときは、検事の承認を受けなければならず根拠文件を検証調書等と共に事件記録に添付しなければならない。
<第49条>判決、判定、事件棄却決定等をするときは、証拠物の処理に対して明らかにしなければならない。
◆第4章:捜査及び予審◆
【第1節 捜査】
<第50条>刑事事件取扱は、捜査開始決定をしたときから始まる。
捜査をする必要がない刑事事件取扱は、事件を予審に移す決定をし、又は予審開始決定をしたときから始まる。
<第51条>捜査開始決定は、捜査員が行う。
<第52条>捜査開始決定は、機関、企業所、団体行う公民の申告又は直接得た犯罪資料に基づいて行う。
<第53条>機関、企業所、団体及び公民は、犯罪行為が準備され、又は遂行されたことを知ったときは、それについて直ちに社会安全、検察、国家保衛機関に申告しなければならない。
<第54条>犯罪に対する申告は、文書又は口頭ですることができる。
申告書には、申告者の住所及び氏名を明らかにしなければならない。
申告を受ける機関は、申告者に虚偽申告をすれば刑事責任を負う旨を通知しなければならない。
申告を受けるときは、申告調書を作成しなければならず、調書には、申告者の身分、申告内容、申告者に虚偽申告に対する責任を知らせた状況等を記載しなければならない。
<第55条>社会安全、検察、国家保衛機関は、犯罪に対する申告があるときは、管轄に関係なくすべて受けなければならず、受けた申告のうち自らの管轄に属しないものは、直ちに該当機関に引き渡さなければならない。
<第56条>犯罪に対する申告を受けた機関は、1ケ月内に処理し、その結果を申告者に通知しなければならない。
申告者は、申告処理結果に対して意見があるとき、該当上級機関に更に申告することができる。
<第57条>捜査員は、捜査をしなければならない犯罪があるという資料を得たときは、直ちにその根拠を明らかにした捜査開始決定をし、捜査を開始しなければならない。
<第58条>捜査員は、捜査開始決定をしたときから24時間内に決定書謄本を検事に送付しなければならない。
検事は、決定で捜査開始決定を取り消すことができる。
<第59条>捜査は、法に従い、犯罪者を摘発し、予審に移すことを任務とする。
<第60条>捜査員は、機関、企業所、団体及び公民から犯罪者を摘発するのに必要な資料を要求し、又は陳述を受けることができる。
捜査員は、陳述者に虚偽陳述をすれば刑事責任を負う旨を通知しなければならない。
<第61条>捜査員は、犯罪者を摘発するために検証、検診、捜索、押収をすることができ、鑑定を委託することができる。
<第62条>捜査員は、犯罪者を摘発した後は、証拠収集活動をすることができない。ただし、時機を逸すると犯罪の痕跡がなくなり、又は証拠を得ることができなくなり、又は記録することができなくなる等、証拠収集を先送りすることができない場合は、収集することができる。
<第63条>捜査員は、捜査開始決定をした後、その事件を他の捜査機関に移送するときは、検事に通知し、事件を移送する決定をして、該当捜査機関に移送しなければならない。
<第64条>捜査員は、自らの管轄地域外で個別的な捜査行為をする必要があるときは、該当管轄地域の捜査員に委託することができる。
個別的な捜査行為を引き受けた捜査員は、捜査を正確に行い、その結果を直ちに回報しなければならない。
<第65条>次のような場合は、検事の承認なく犯罪者又は犯罪嫌疑者を逮捕することができる。
1.犯罪者が犯罪行為に着手し、又は犯罪を遂行している最中に又は遂行した後直ちに発見されたとき
2.被害者又は犯罪行為をすることを直接見た者が犯罪嫌疑者を犯罪者であると指摘したとき
3.犯罪嫌疑者の身体又は住居において犯罪の痕跡が現れた時
4.犯罪嫌疑者が逃亡しようとし、又は犯罪者として追跡されているとき
5.犯罪嫌疑者の住居が明確でないとき
<第66条>この法律第65条により逮捕した犯罪者又は犯罪嫌疑者を拘禁しようとするときは、逮捕したときから48時間内に拘禁決定書を作成し、検事の承認を受けなければならず検事の承認を受けた後は、逮捕した日から10日以内に調査し、予審に移さなければならない。検事の承認を受けることができず、又は逮捕した日から10日以内に犯罪者ということが確認されなければ、直ちに釈放しなければならない。
<第67条>捜査員は、犯罪者が摘発、確認されれば直ちにその事件を予審に移す決定をし、予審に移さなければならない。
<第68条>捜査員は、捜査開始決定をした後、この法律第12条に規定された事由が現れたときは、捜査開始決定を取り消し、検事に通知しなければならない。
<第69条>捜査に対する監視は、検事が行う。
検事は、捜査行為に参加し、又は事件記録を検討することができ、違法的な捜査行為を正し、又は捜査員に必要な捜査行為を行うことに対し書面で指示することができる。
【第2節 予審の任務及び管轄】
<第70条>予審は、科学的な証拠を捜し出し、検討する過程を通じて被疑者を確定し、その者の犯罪事実を残らず明らかにし、連座者を摘発することを始めとして事件の全貌を完全で正確に明らかにすることを任務とする。
<第71条>予審員は、現実的に現れた行動と客観的証拠に基づいて被疑者が犯した犯罪の性格、犯罪を行った動機及び目的、犯罪の手段及び方法、犯罪行為の程度及び結果、被疑者が犯罪遂行においてにおいて担った役割及び責任の程度等、事件解決に意義を有するすべての事情を事実そのまま残らず明らかにしなければならない。
<第72条>予審員は、事件の全貌及び事件解決に意義を有するすべての事情を完全で正確に明らかにするために被疑者、証人、鑑定人を尋問し、鑑定を委託し、又は検証、検診、捜索、押収をすることができる。
<第73条>予審員は、予審を開始した日から2ケ月内に終了しなければならない。
予審を追加するために裁判所から差し戻された事件に対する予審は、1ケ月内に終了しなければならない。
第1項の期間に予審を終了することができない特別に複雑な事件に対する予審は、この法律第108条に規定した手続に従い、予審を開始した日から6ケ月まで、することができる。
<第74条>予審員は、自分の管轄地域内において発生した犯罪事件を予審する。特別に必要な場合は、検事の承認下に該当管轄予審員に知らせて犯罪者が生活する場所又は事件を摘発した地域の該当管轄予審員が予審することができる。
反国家犯罪事件は、国家保衛機関予審員が予審し、一般犯罪事件は、それを摘発した社会安全機関又は検察機関予審員が予審する。
軍事上の犯罪事件及び軍隊内の一般犯罪事件は、軍事検察機関予審員が予審し、鉄道運輸部門の従業員が犯した犯罪事件及び鉄道運輸事業の正常な活動を侵害する犯罪事件は、それを摘発した鉄道安全部、鉄道検察所予審員が予審する。
<第75条>予審員は、事件が自己の管轄に属しないときは、緊急な予審行為だけをした後、検事の承認を受けて事件を移す決定をし、該当管轄予審員に送致しなければならない。
<第76条>予審員は、自己の管轄地域外で個別的な予審行為をする必要があるときは、該当管轄地域の予審員に委託することができる。
個別的な予審行為を引き受けた予審員は、予審を正確にし、その結果を10日以内に回報しなければならない。
<第77条>複数人が共に罪を犯し、又は一人で複数の罪を犯した事件であって、それが相互に関連する場合は、一つの事件として取り扱わなければならない。
一つの事件として取り扱うべき事件が別に提起されたときは、事件を併合する決定をして一つの事件として取り扱わなければならない。
やむを得ない事情があるときは、複数人が共に罪を犯した事件であっても、事件を分離する決定をして、別に分離して取り扱うことができる。
事件を併合し、又は分離するときは、検事の承認を受けなければならない。
<第78条>予審資料は、予審員の承認なく公開することができない。
<第79条>予審に対する監視は、検事が行う。
検事は、予審行為に参加し、又は予審記録を検討することができ、違法な予審行為を正し、又は予審員に必要な予審行為をすることに対し書面で指示することができる。
【第3節 予審の開始及び刑事責任追及】
<第80条>予審員は、捜査機関から事件を送致されると48時間内に予審開始決定をし、予審を開始しなければならない。
予審員は、予審過程でその事件と関連がない犯罪及び犯罪者を摘発したときは、検事に知らせ、予審開始決定をし、又は該当捜査機関に資料を引き渡さなければならない。
<第81条>予審員は、証拠を捜し出し、検討する過程を通じて被疑者を確定するのに充分な資料を得たときは、刑事責任追及決定をしなければならない。
<第82条>刑事責任追及決定書には、予審員の氏名、決定する日、被疑者の氏名、適用した刑法条項、刑事責任を追及することになる理由等を明らかにしなければならない。
<第83条>予審員は、刑事責任追及決定をしたとき、それを48時間内に被疑者に通知しなければならない。
予審員は、刑事責任追及決定を被疑者に知らせる際、弁護人を選定し、援助を受けることができる旨を通知しなければならず、その状況を刑事責任追及決定書に明らかにしなければならない。
<第84条>予審員は、刑事責任追及決定をした後、決定書謄本を直ちに検事に送付しなければならない。
<第85条>刑事責任追及決定をした後、既に適用した刑法条項を変更し、又は補充する事情が明らかになった場合は、それに対する決定をしなければならない。
【第4節 被疑者尋問】
<第86条>予審員は、被疑者に刑事責任追及決定を知らせた時から48時間内にその者を尋問しなければならない。
<第87条>勾留されていない被疑者を召喚して尋問しようとするときは、その者に召喚状を送付する。
被疑者が適当な理由なく出頭しないときは、勾引する。
勾引は、勾引決定書により社会安全、国家保衛機関が執行する。
<第88条>勾留されている被疑者を尋問するときは、予審員の要求により戒護員がその者を予審場所まで護送する。
<第89条>予審員は、被疑者が逃走し、又は居所が明確でないときは、捜索決定をする。
捜索決定書には、被疑者を捜し出すのに必要な資料を書かなければならず、その決定書を検事の承認を受けた勾留の拘束処分決定書と共に捜査機関に送付しなければならない。
<第90条>予審員は、被疑者が重病にあり、又は一時的に精神異常が発生して予審することができないときは、検事の承認を受けて予審を中止する決定をし、治療対策を立てなければならない。
前項の場合、法の鑑定専門家の鑑定又は人民病院の医師協議鑑定がなければならない。
<第91条>予審を中止した事由がなくなったときは、予審を継続する決定をし、それについて検事に通知しなければならない。
<第92条>被疑者が精神病状態で罪となる行為をし、又は罪を犯した後に精神異常が発生したことが確証され、今後もその者の精神状態が回復し得ないことが証明される場合、予審員は、検事の承認を受けて該当事件を棄却し、検事は、医療処分を適用することができる。
前項の場合、法医学鑑定専門家の鑑定がなければならない。
<第93条>予審員は、被疑者に強圧的な方法で犯罪事実を是認させ、又は陳述を誘導してはならない。強圧的な方法で受けた被疑者の陳述は、証拠として使用することができない。
<第94条>予審員は、被疑者が自白し、又は告白した場合にも、自白又は告白と結びつく他の証拠を捜し出さなければならない。
被疑者の自白又は告白が唯一の証拠であるときは、その者の罪が証明されないものと認める。
被疑者が自らの罪を認めない場合においても、それが他の証拠により客観的で明確に証明されるときは、被疑者の罪が証明されたものと認める。
<第95条>予審員は、被疑者が数名であるときは、お互い連係を有することができないようにしなければならず、他の被疑者がない場所で被疑者尋問をしなければならない。
犯罪事件を明らかにするのに必要なときは、被疑者と被疑者、被疑者と証人をお互い対面させて尋問することができる。
<第96条>被疑者を尋問するときは、被疑者にまず自らの犯罪事実に対して供述させなければならない。
<第97条>朝鮮語を理解しない者を尋問するときは、通訳を付さなければならず、聾唖者を尋問するときは、その者の意思表示を解釈することができる者を付さなければならない。
予審員は、通訳人及び解釈人に通訳又は解釈を意識的に誤らせるときは、刑事責任を負う旨を通知しなければならない。
通訳人又は解釈人が尋問に参加したときは、その事実を調書に明らかにしなければならない。
<第98条>被疑者を尋問したときは、審問調書を作成しなければならない。
審問調書には、犯罪と関連して被疑者が供述したことをそのまま書かなければならず、特に必要なときは、被疑者が供述したことを調書に自分が直接書かせることができる。
<第99条>予審員は、被疑者に対する尋問が終わればその者に調書を読み聞かせた後、被疑者にその者が供述したことが調書に正しく書かれているかを尋ねなければならない。
調書を訂正することに対する被疑者の申請がある場合、それが正当であれば訂正し、不当なときは拒否し、それにつき調書に明らかにしなければならない。
【第5節 拘束処分】
<第100条>予審員は、被疑者が予審又は裁判を回避し、又は事件調査を妨害できなくするために拘束処分をすることができる。
<第101条>拘束処分をするときは、被疑者に適用した刑法条項及び拘束処分をする理由を明らかにした決定書を作成しなければならない。
<第102条>拘束処分決定は、検事の承認を受けなければ執行することができない。
検事は、予審員に拘束処分決定をし、又は取り消し、又は訂正することについて、書面で指示することができる。
<第103条>拘束処分決定をしたときは、被疑者に直ちに通知しなければならない。
<第104条>拘束処分の種類は、次の通りである。
1.被疑者を勾留する拘束処分
2.被疑者を自宅に抑留する拘束処分
3.被疑者を一定の地域又は居所所から逃亡できないようにする拘束処分
<第105条>拘束処分は、刑事責任追及決定をした後にしなければならない。
<第106条>勾留の拘束処分は、1年以上の労働教化刑又は死刑を与えることができる犯罪事件の被疑者が証拠を隠滅し、又は調査を妨害し、又は予審若しくは裁判を回避することができると認める場合にのみすることができる。
妊娠した被疑者に対しては、産前3ケ月から産後7ケ月までの期間には、勾留の拘束処分をすることができない。
<第107条>勾留の拘束処分決定により被疑者を逮捕するときは、検事の承認を受けた勾留の拘束処分決定書を提示しなければならず、被疑者を勾留する機関には、決定書謄本を送付しなければならない。
<第108条>予審のために被疑者を勾留する期間は、2ケ月を超えることはできない。
予審を2ケ月の中に終えることができないときは、市(区域)、郡の予審機関と道(直轄市)予審機関は道(直轄市)検察所所長、中央予審機関は中央検察所の承認を受けて勾留期間を1ケ月間伸ばすことができる。
勾留期間を更に延長しようとするときは、中央検察所所長の承認を受けて2ケ月間更に延長することができる。
勾留期間に予審を終えることができなかったときは、被疑者を釈放し、予審を継続することができる。
<第109条>被疑者を自宅に抑留する拘束処分をするときは、2人以上の保証人を立てなければならず、保証人から被疑者をいつでも予審員又は裁判所の要求通り出頭させるという保証書を受けなければならない。
<第110条>被疑者を一定の地域又は居所から逃亡することができないようにする拘束処分をするときは、被疑者から誓約書を受けなければならない。
<第111条>予審員は、検事の承認を受けて予審過程においていつでも、理由を明らかにした決定により拘束処分を解除し、又はその種類を変更させることができる。
【第6節 検証及び検診】
<第112条>捜査員、予審員は、犯罪現象を調査し、証拠を捜し出し、証拠物の特徴を記録させるために犯罪現場又は証拠物を検証し、人の身体から事件と関連した痕跡及び特徴を捜し出すために検診をする。
検事及び裁判所は、必要により検証及び検診をすることができる。
<第113条>犯罪現場で捜し出し、又は押収した物及び文書は、現場で検証する。
検証時間が長くかかる特別な事情があるときは、他の場所に移して検証することができる。
<第114条>検証及び検診をするときは、2人の立会人を立てなければならず、女性を検診するときは、女性を立ち会わせなければならない。
特別に必要であるときは、検証に鑑定人を参加させることができ、法医学鑑定専門家に検診をさせることができる。
<第115条>検証及び検診をしたときは、それに対する調書を作成しなければならない。
調書には、検証、検診した順にその当時の状態及び特徴、検証及び検診結果を書かなければならず、略図及び写真を添付することができる。
法医学鑑定専門家が検診したときは、その者が検診調書を作成しなければならない。
<第116条>捜査員、予審員は、場所又は物体の状態及び特徴等を確認するために心理実験をすることができる。
心理実験をするときは、2人の立会人を立て、調書を作成しなければならない。
【第7節 鑑定】
<第117条>捜査員、予審員は、事件調査に専門知識が必要であるときは、鑑定を委託しなければならない。
検事及び裁判所も鑑定を委託させることができる。
<第118条>非正常的な死骸、身体に受けた傷害の程度及び精神病の症状がある証人、犯罪者の精神状態は、必ず鑑定しなければならない。
<第119条>鑑定は、国家の専門的鑑定機関に委託しなければならない。
該当部門の専門鑑定機関がないときは、その部門の国家的資格又は専門知識を有する者に鑑定させることができる。
<第120条>鑑定を委託するときは、鑑定するもの等及び鑑定人の義務を明らかにした決定、判定をしなければならず決定書、判定書を鑑定機関又は鑑定人に送付しなければならない。
<第121条>鑑定を委託するときは、鑑定人に鑑定すべきものを資料と共に通知し、鑑定するのに必要なものをその者が知ることができるようにしなければならない。
<第122条>鑑定を引き受けた機関又は鑑定人は、義務的に鑑定しなければならず、鑑定を委託した機関が呼び出すときは、相応の時に出頭しなければならない。
<第123条>鑑定人は、鑑定が終われば鑑定書を作成しなければならない。
鑑定書には、鑑定で明らかになった事実をそのまま書かなければならない。
同じ問題に対する数名の鑑定人の鑑定結果がお互い違うときは、鑑定書を個別的に作成しなければならない。
<第124条>鑑定人は、鑑定を委託した機関の承認の下に記録上の資料を見、又は証人若しくは犯罪者に尋ねることができ、鑑定を委託した機関に鑑定に助けになる資料を要求し、又は専門知識が必要であるときは、該当専門員を付することを要求することができる。
<第125条>鑑定資料が正確でなく、又は鑑定で事実がよく明らかにならなかったとき又は鑑定結果に疑問が生じるときは、理由を明らかにした決定、判定でその鑑定人に更に鑑定させ、又は他の鑑定人に鑑定を委託することができる。
<第126条>鑑定を委託する機関は、鑑定をだれに委託したかということを被疑者、被告人に通知しなければならない。
<第127条>鑑定を委託した機関は、鑑定により明白でないものがあるときは、鑑定人を尋問することができる。
鑑定人を尋問するときの手続は、この法律第98条から第99条まで、第148条による。
<第128条>同一事件の鑑定に数名の鑑定人が参加した場合、その者の鑑定結果がお互い異なるときは、全員に自らの意見を言わせた後、個別的に尋問し、又はお互い対面させて尋問することができる。
【第8節 捜索及び押収】
<第129条>捜査員、予審員は、犯罪者を捜し出して犯罪事実を明らかにするのに必要な物又は文書を捜し出し、記録させるために捜索、押収をすることができる。
<第130条>捜索は、犯罪者が隠れており、又は犯罪事実を明らかにするのに必要な物、文書があると認める十分な根拠がなければすることができない。
<第131条>捜索、押収は、検事の承認の下に行う。
捜査員、予審員が捜索、押収しようとするときは、捜索、押収決定書を作成し、検事の承認を受けなければならない。
この法律第65条により犯罪者又は犯罪嫌疑者を逮捕するときは、検事の承認なしにその者の身体又は住居を捜索し、証拠物を押収することができる。
<第132条>捜索、押収をするときは、検事の承認を受けた捜索、押収決定書を捜索、押収される者に提示して行う。
<第133条>捜索をするとき必要な場合は、社会安全員それ以外の警備員で捜索場所に警備を立てることができる。
<第134条>捜索、押収は、緊急な場合を除いては、昼間にしなければならない。
<第135条>捜索、押収をするときは、2人の立会人を立てなければならない。
機関、企業所、団体の物又は文書を押収する場合には、該当機関、企業所、団体の代表者を立会させなければならない。
逓信機関で管理している手紙、電報等を押収しようとするときは、該当逓信機関の代表者を立会させなければならない。
女性の身体を捜索するときは、女性を立会させなければならない。
<第136条>我が国に駐在する外国外交代表部、領事代表部、貿易代表部の建物又は住宅を犯罪及び犯罪者の摘発と関連して捜索し、又は物、文書等を押収しようとするときは、我が国外交部を通じて外交的手続を踏まなければならない。
捜索、押収をするときは、検事が参加し、該当代表部の代表者及び我が国対外事業員を立会させなければならない。
<第137条>捜索する過程で犯罪事件と関連がない個人的秘密を知ったときは、それが公開されないようにしなければならない。
<第138条>押収するときは、犯罪事件と関連がある物及び文書だけを押収しなければならない。
物又は文書を押収したときは、押収品目録を作成し、事件記録に添付しなければならず、押収された者には、押収品目録謄本を付与しなければならない。
<第139条>捜索、押収をしたときは、調書を作成しなければならない。
調書には、捜索、押収をした結果と共に、提起された意見を明らかにしなければならない。
【第9節 証人尋問】
<第140条>証人には、該当事件に対して聞き、又は見て感じたことがあるすべての人がなることができる。
この法律第25条から第26条までに規定された者及び精神病その他の身体上の欠陥により事件に対して聞き、又は見た事実を正しく理解することができず、又は正確に表現することができない者は、証人となることができない。
<第141条>証人訊問は、証人がいる場所に行ってしなければならない。ただし、必要であるときは、証人を召喚して尋問することができる。
<第142条>証人は、予審員が呼び出す場合、相応の時に出頭しなければならない。
正当な理由なく出頭しないときは、その者を勾引することができる。
勾引は、勾引決定により社会安全、国家保衛機関が執行する。
検事及び裁判所が証人を勾引するときにも前項を適用する。
<第143条>証人は、自分が知っていることをそのまま証言しなければならず、質問に答えなければならない。
<第144条>証人は、尋問を受けるとき、威嚇又は強制から保護され、自分がした陳述を調書に直接書き、又は修正若しくは添加することを要求することができる。
<第145条>朝鮮語を理解しない者又は聾唖者を証人として尋問する場合の手続は、この法律第97条による。
<第146条>証人訊問は、他の証人がないところで個別的にしなければならない。
予審員は、証人尋問が終了する時までその事件の証人らがお互い連係を有することができないようにしなければならない。必要なときは、証人を対面させて尋問することができる。
<第147条>14歳に達していない証人を尋問するときは、教員、父母、後見人その他の保護者の中から立会人を立てなければならない。
<第148条>証人を尋問するときは、まず証人の身分、被疑者又は被害者との関係を確認した後、尋問する理由及び証人の義務を説明し、その者に犯罪と関連して嘘をつくときは、刑事責任を負う旨を通知しなければならない。
<第149条>証人を尋問するときは、証人が知っている事実をまず証言させなければならない。
証人を尋問するときは、この法律第98条から第99条までにより調書を作成しなければならない。
<第150条>予審員は、事件解決と関連した人又は物を確定するためにその者と類似するいろいろな人又は物を被疑者あるいは証人に見させ、区別させることができる。
この場合、2名の立会人を立てなければならず、調書を作成しなければならない。
【第10節 財産担保処分】
<第151条>予審員は、刑法に財産没収刑が規定されている事件を取り扱うときは、没収しなければならない財産に対して担保処分をしなければならない。
予審員は、犯罪行為により受けた国、社会協同団体及び公民の財産上の損害を補償させるために、補償する責任がある者の財産に対して担保処分をすることができる。
<第152条>予審員は、被疑者の犯罪行為により損害を受けた機関、企業所、団体及び公民に損害補償請求をすることができるということを通知しなければならない。
<第153条>財産担保処分をしようとするときは、その理由を明らかにした決定をしなければならない。
財産担保処分をするときは、それに関する決定書を担保処分される人に提示しなければならず、2人の立会人を立て、財産上価値があるもののみを担保処分しなければならない。
財産担保処分をした後には、財産担保処分調書及び2通の財産目録を作成しなければならず、財産目録1通は、財産保管者に付与する。
予審員は、財産保管者に担保処分した財産を正確に保管することに対する責任を通知しなければならない。
財産担保処分が必要なくなり、又は誤っていたということが確証される場合は、それを解除又は取り消さなければならない。
<第154条>財産担保処分決定に基づいて担保処分をしようとしたが財産がないときは、その理由を明らかにした調書を作成しなければならない。
<第155条>担保処分した財産中に腐敗し、又は使用することができなくなる物に対しては、該当機関に引き渡し、その理由を明らかにした決定書及び根拠文件を事件記録に付さなければならない。
【第11節 予審終結】
<第156条>予審員は、被疑者を裁判に付するに足りる充分な証拠を得たと認めるときは、予審を終えると旨を被疑者に通知し、その者の犯罪と関連する事件記録を見せなければならず、申請するか否かを尋ねなければならない。
被疑者の申請が正当であるときは、予審を更に行い、不当なときは、決定によりそれを拒否しなければならない。
被疑者の申請に基づいて予審を更に行ったときは、その部分に該当した事件記録を被疑者に見せなければならない。
<第157条>予審を終える手続は、検事の参加の下にしなければならない。
<第158条>予審を終えるときは、調書を作成しなければならない。
<第159条>予審が終われば予審員は、起訴状を作成する。
起訴状には、次のようなことを明らかにしなければならない。
1.被疑者及びその者が罪を犯した日、時間、場所及び犯罪の動機、目的、手段、方法、結果など、予審において調査確証された事実及びそれを証明する証拠
2.被疑者の刑事責任を確定し、刑罰の程度を決定するのに意義を有し得る事情
3.被疑者の犯罪行為に該当する刑法の条項
起訴状には、被疑者、裁判に召喚しなければならない人々の名前、居所、被疑者を勾留した日、証拠物、損害補償請求及び財産担保処分状況を明らかにした文件を添付しなければならない。
<第160条>予審員は、予審を終えた日から3日以内に起訴状を事件記録と共に検事に送致しなければならない。
<第161条>予審員は、次の事由があるときは、検事の承認を受け、刑事事件を棄却する決定をする。
1.この法律第12条に規定された事由があるとき
2.予審を始めた後、6ケ月が経過するまでに被疑者を裁判に付するに足りるだけの充分の証拠を得ることができなかったとき
事件を棄却する決定は、被疑者、被害者、申告者に通知しなければならない。
事件を棄却するときは、拘束処分、財産担保処分に関する問題を正確に解決しなければならず、証拠物中で所有者に戻することができないものは没収し、それ以外の物は、所有者に戻さなければならない。
<第162条>証人、鑑定人、通訳人、解釈人、立会人、被害者、被疑者及び被疑者の保証人は、自らの権利が侵害されたことを知ったときは、その日から7日以内に検事に意見を提起することができる。
意見を受けた検事は、3日以内に処理し、その結果を通知しなければならない。
予審員は、第1項の意見が自分に提起されたときは、48時間内に意見を付して検事に送致しなければならない。この場合、検事の決定がある時まで予審は、継続しなければならない。
◆第5章:検事の事件処理◆
<第163条>予審員から起訴状及び事件記録を受けた検事は、10日以内にそれを検討処理しなければならない。
<第164条>検事は、次のような問題に中心を置き、起訴状及び事件記録を検討しなければならない。
1.事件の全貌及び事件解決に意義を有するすべての事情が完全に正確に明らかにされ、それを証明する証拠があるか
2.予審過程でこの法律に規定された要求が守られたか
3.認定された事実に対して刑法条項が正しく適用されているか
4.起訴状が正しく作られたか
<第165条>検事は、事件を裁判に付すように予審が充分に正しく進行されたときは、被疑者を裁判所に起訴する。
被疑者を裁判所に起訴することを決定した検事は、起訴状と共に事件記録を裁判所に送致しなければならない。
<第166条>検事は、予審に追加又は補充すべきことがあるときは、それを書面で指摘し、予審員に戻す。
検事は、必要により起訴状を更に作成し、又は訂正することができる。
第1項により予審に追加又は補充した期間は、この法律第73条に規定された予審期間に含める。
<第167条>検事は、事件審理を中止する事由があるときは、起訴を中止しなければならず、事件を棄却する事由があるときは、事件を棄却しなければならない。
事件を棄却するときの証拠物処理手続は、この法律第161条第3項による。
<第168条>検事は、この法律第13条の事由があるときは、上級検察所の承認を受け、被疑者を社会的教育に付す決定をすることができる。
◆第6章:弁護◆
<第169条>被疑者、被告人は、刑事責任追及決定を受けた時からいつでも弁護人を選定し、その者の援助を受けることができる。
<第170条>弁護士及び被疑者、被告人の近親者、所属団体代表者は、弁護人になることができる。
それ以外の者は、検事又は裁判所の承認を受けて弁護人となることができる。
<第171条>被疑者が弁護人を選定したとき、予審機関は、3日以内に被疑者が選定した弁護人にそれについて通知しなければならない。
<第172条>弁護人が選任されることなく事件が裁判所に起訴されたときは、裁判所が該当弁護士会に依頼し、弁護人を選定しなければならない。
<第173条>弁護人は、法に従って事件の真相が正確に明らかにされ、被疑者、被告人の権利が正確に保障されるようにする。
<第174条>弁護人は、弁護人に選任されたことを知った時から、被疑者、被告人に面会し、話をすることができる。
予審機関又は裁判所は、被疑者、被告人が要求するときは、弁護人と会わせなければならない。
<第175条>弁護人は、予審が終わった後、いつでも事件記録を見ることができる。
<第176条>弁護人は、被疑者、被告人を弁護するのに必要な証拠を収集確認することができる。
<第177条>弁護人は、被疑者、被告人の法的権利が保障されないでいる事実を知ったときは、検事に意見を提起することができる。
意見を受けた検事は、3日以内に処理し、弁護人に通知しなければならない。
◆第7章:裁判◆
【第1節 裁判の任務及び管轄】
<第178条>裁判は、法に従い、裁判所が裁判関係等の参加下に刑事事件を審理し、客観的な証拠資料に基づいて犯罪者及び犯罪事実を正確に確定し、それを法律的に正しく分析評価したことに基づいて判決を下すことを任務とする。
<第179条>裁判所は、大衆を覚醒させ、犯罪をあらかじめ防止するために必要により現地裁判を組織進行する。この場合は、労働者、農民の代表が犯罪者の罪を暴露糾弾させることができ、被告人に対する教育に責任があり、又は犯罪の機会を与えた該当関係者を参加させて教訓を探させることができる。
<第180条>人民裁判所は、道(直轄市)裁判所、特別裁判所及び中央裁判所の管轄に属しない一般犯罪事件を裁判する。
<第181条>道(直轄市)裁判所は、次の事件を第1審で裁判する
1.反国家犯罪
2.刑法の条項に死刑又は15年までの労働教化刑が規定された一般犯罪
道(直轄市)裁判所は、道(直轄市)内の人民裁判所の裁判に対する上訴、抗議事件を第2審として裁判する。
道(直轄市)裁判所は、必要により道(直轄市)内の人民裁判所の管轄に属する事件を直接裁判し、又は他の人民裁判所に送致することができる。
<第182条>軍事裁判所は、次の事件を裁判する。
1.朝鮮人民軍及び朝鮮人民警備隊軍人、社会安全員が犯した罪
2.軍事機関、社会安全機関の従業員が犯した罪
3.このほか法によってその管轄に属する犯罪
<第183条>鉄道裁判所は、鉄道運輸部門の従業員が犯した罪及び鉄道運輸事業の正常活動を侵害した犯罪事件を裁判する。
<第184条>中央裁判所は、道(直轄市)裁判所、軍事裁判所、鉄道裁判所の第1審裁判に対する上訴、抗議事件を第2審として裁判する。
中央裁判所は、必要によりすべての裁判所の管轄に属する第1審事件でも直接裁判し、又は同じ級又は同じ種類の他の裁判所に送致することができる。
<第185条>裁判所は、管轄地域内において発生した犯罪事件を裁判する。
事件審理に支障がない場合は、犯罪者の居所、摘発された場所を管轄する裁判所でも裁判することができる。
<第186条>事件が種々の原因により同じ級の種々の裁判所の管轄に属するときは、最初にその事件の審理を開始した裁判所で裁判する。
<第187条>管轄を異にする種々の犯罪を犯した被告人又は管轄を異にする数名の被告人を共に裁判することとなる場合、その中で一部が上級裁判所の管轄に属するときは、上級裁判所で裁判し、一部が特別裁判所の管轄に属するときは、特別裁判所で裁判する。
軍事上の秘密に属しない事件であるときは、軍事裁判所以外の裁判所でも裁判することができる。
<第188条>他の裁判所から移送された事件は、更に他の裁判所に移送することができない。
移送を受けた事件が他の級又は他の種類の裁判所の管轄に属するときは、上級裁判所の承認を受け、該当裁判所にそれを移送しなければならない。
<第189条>裁判所は、事件を受けた日から1ケ月内に裁判しなければならない。
【第2節 裁判準備】
<第190条>起訴された事件は、裁判準備会議を経て裁判に付する。
<第191条>裁判準備会議は、判事の裁判長及び人民参審員2人で構成された裁判所が行う。
裁判準備会議には、裁判書記が参加する。
<第192条>裁判準備会議には、検事が参加する。
裁判準備会議日を3日前に検事に知らせる。
検事が参加しない場合にも裁判準備会議をすることができる。
<第193条>裁判準備会議では、判事が事件報告をした後、検事の意見を聞き、該当する判定を行う。
判定は、裁判所構成員が多数決の方法で採択する。
<第194条>裁判準備会議では、次のような問題を検討しなければならない。
1.予審における事件調査が十分になされたか
2.起訴事実に根拠があるか
3.刑法条項が正しく適用されているか
4.予審においてこの法律に規定された原則及び手続を守ったか
5.被疑者の申請をどのように解決するか
6.被疑者に対する拘束処分問題をどのように扱ったか
<第195条>裁判準備会議においては、事件を次のように処理しなければならない。
1.予審が充分で裁判に付することができると認めるときは、被疑者を裁判に付する判定をする。
2.予審での事件調査が充分でなく、又は起訴状に本質的意義を有する誤りがあるときは、事件を検事に戻す判定を行う。
3.起訴された犯罪事実自体には誤りがないが、法律条項を誤って適用した場合は、判定でそれを訂正する。
4.事件を棄却する事由があるときは、棄却する判定をする。
<第196条>裁判準備会議において被疑者を裁判に付する判定をする場合は、裁判する日、場所、裁判審理に参加させる証人、鑑定人及び裁判審理を公開又は非公開とするかを定めなければならない。
<第197条>裁判準備会議でにおいて下した判定に対しては、検事だけが上級裁判所に抗議することができる。
検事は、判定書謄本を受けた日から裁判に付する判定をした事件に対しては3日以内に、それ以外の事件に対しては10日以内に抗議書を裁判所に提出しなければならない。
裁判所は、検事が抗議をするために要求するときは、判定書謄本を判定を下した日から2日以内に検事に送付しなければならない。
<第198条>裁判所は、被告人に裁判審理をする3日前までに起訴状謄本を送付しなければならない。
裁判準備会議において起訴された法条項を訂正する判定をしたときは、被告人及び弁護人に裁判審理をする3日前までに判定書謄本を送付しなければならない。
<第199条>裁判所は、裁判審理をする3日前までに検事、被告人、弁護人に裁判審理日を通知しなければならない。
<第200条>事件が裁判所に起訴された後、その事件と関連して提起されたすべての問題は、裁判所だけが解決する。
裁判審理がある前に事件と関連して提起されたすべての申請及び意見は、事件を受けた判事が1人で判定により解決する。
<第201条>判事は、現地裁判の教育的目的を達成するために現地調査をすることができる。
証人、鑑定人を対象として現地調査をする場合は、検事と共に会わなければならない。検事の同意の下に判事1人でも会うことができる。
【第3節 裁判審理】
<第202条>裁判審理は、裁判長である判事及び人民参審員2人で構成された裁判所が行う。
裁判審理には、裁判書記が参加する。
<第203条>同一事件は、同じ裁判所成員で裁判する。
裁判審理をしている途中で裁判所成員を交代させたときは、裁判審理を最初から再度行う。
<第204条>裁判審理は、検事及び弁護人の参加の下で行う。ただし、特別な事情により検事が参加することができなかったときにも裁判審理をすることができる。
<第205条>裁判審理には、被告人を参加させる。
被告人が裁判審理に参加することを拒否し、又は裁判を回避するときは、被告人を勾引して裁判する。
被告人を勾引する手続は、この法律第87条による。
<第206条>損害補償請求者又はその者の代理人が裁判審理に参加しなかったときは、損害補償請求を審理しない。
損害補償請求を審理しなかった場合、被害者は、別に損害補償請求を提起することができる。
<第207条>裁判長は、事件の真相が正確に明らかになるように裁判審理し、裁判関係者等の活動を指揮し、その者が裁判秩序を徹底的に守るように統制する。
<第208条>裁判審理において検事は、被告人の罪を徹底的に暴露し、科学的に証明し、その罪の程度に見合う法的責任が被告人に課されるようにする。
<第209条>裁判審理において弁護人は、事件の真相が正確に明らかにされ、被告人の行為が正しく分析評価され、その者の法的権利が正確に保障されるようにする。
<第210条>裁判長は、裁判開始を知らせ、被告人が本人が間違いないかを確認した後、その者に起訴状謄本を受け取ったか否かを聞き、裁判におけるその者の権利を知らせる。
<第211条>裁判長は、被告人及び裁判関係者等に裁判所成員及び検事、裁判書記、鑑定人、通訳人、解釈人を知らせた後、その者を交代させることに対する意見がないかを聞く。
<第212条>裁判長は、裁判審理に召喚した証人、鑑定人中に在廷していない者があるときは、その理由を被告人及び裁判関係者等に知らせ、意見を聞いて新たな証拠を申請する必要がないかを聞き、該当する判定をする。
<第213条>事実審理は、裁判書記が起訴状を読むことから始める。
裁判長は、被告人に起訴事実を認めるか否かを聞く。
<第214条>裁判所は、検事、弁護人の意見を聞き、審理順序を定める。
<第215条>被告人に対する尋問は、被告人に自らの犯罪事実を先に供述させた後、検事、損害補償請求者、弁護人、裁判長、人民参審員の順に行う。
数名の被告人を共に裁判するときは、弁護人が尋問した後、その事件の他の被告人等に質問する機会を与える。
<第216条>数名の被告人を共に裁判するとき、裁判所は、事件の性質を考慮して被告人等を1人ずつ法廷に召喚して尋問することができる。
<第217条>被告人が裁判長の警告を受けても継続して裁判秩序を紊乱させるときは、裁判所の判定により被告人を法廷から退廷させて審理を継続する。
このときは、事実審理を終えた後、被告人を参加させる。
<第218条>証人に対する尋問は、順序により1人ずつ法廷に召喚する。
裁判長は、まず証人が本人であることに間違いないか、被告人といかなる関係にあるかを確認し、嘘をつくと刑事責任を負う旨を知らせた後、その者が知っていることを言わせるようにする。
<第219条>裁判長は、証人の証言が終わった後、その者を裁判で審理することを要求した者にまず証人に質問させる。その後、裁判関係者等が裁判長の承認を受けて証人に尋ねることができる。
裁判長は、被告人にも証人に尋ねる機会を与える。
既に尋問した証人を他の証人の前で更に尋問し、又は証人を対面させて尋問することができる。
14歳に達していない証人を尋問するときの手続は、この法律第147条による。
<第220条>尋問を受けた証人は、その事件の審理が終了する前に裁判所から離れることができない。
裁判長は、必要により裁判関係者等の意見を聞き、既に尋問を受けた証人をその事件の審理が終了する前に帰すことができる。
<第221条>裁判審理においては、必要な場合、予審調書を読む方法により証拠を検討することができる。
<第222条>裁判審理において事実が明確に明らかになったときは、いつでも証人尋問を中止することができる。
<第223条>鑑定人は、初めから裁判に参加しなければならない。必要により鑑定させる時にだけ参加させることができる。
<第224条>裁判審理において鑑定を委託し、又は鑑定人を尋問するときの手続は、この法律第120条から第121条まで、第126条から第128条までによる。
裁判審理において鑑定を新たにさせた場合は、鑑定人に鑑定結果を述べさせ、鑑定書を提出させる。
<第225条>裁判所は、鑑定結果が完全でなく、又は疑問があるとき又は数人の鑑定人の鑑定結果が相互に合致しないときは、更に鑑定をさせることができる。
<第226条>裁判審理においては、証拠物及び証拠文書を徹底的に調査検討しなければならない。
裁判関係者等は、事実審理過程にいつでも証拠物及び証拠文書を調査検討することができる。
<第227条>裁判所は、事件を迅速正確に処理するために裁判関係者等の参加の下に犯罪現場を検証し、又は現地に赴いて証拠資料を確認することができる。
前項の検証又は証拠資料の確認は、裁判所の委任により裁判長もすることができる。この場合、調書を作成しなければならず、それは、裁判審理において検討しなければ判決、判定の基礎とすることができない。
<第228条>裁判所は、証拠を更に収集する必要があるときは、裁判審理を延期し、裁判関係者等の参加の下に証拠を直接収集することができる。
裁判所が直接証拠を収集することが適当でない場合は、事件を検事に戻す。
<第229条>裁判長は、起訴された事件に対する真実が明らかになったときは、証拠審理を終え、損害補償請求に対する審理をした後、裁判関係者等に審理することがないかを聞き、事実審理を終える旨を通知する。
被告人に対する教育に責任があり、又は犯罪の機会を与えた該当関係者が裁判に参加したときは、その者を前面に立たせ、教訓を与えた後、事実審理を終える旨を通知する。
<第230条>事実審理が終われば、裁判所は、検事、損害補償請求者、弁護人の順序で論告及び弁論をさせる。
裁判審理に労働者、農民の代表が参加したときは、その者にまず被告人の罪を暴露糾弾させる。
<第231条>裁判審理において検討されない証拠は、論告又は弁論の根拠とすることができない。
<第232条>裁判長は、検事、損害補償請求者、弁護人が補充的な論告又は弁論をすることを要求するときは、それを許すことができる。
<第233条>裁判長は、論告及び弁論があった後、被告人に最後に供述する機会を与える。
裁判所は、事件解決に本質的意義を有する新たな事実が被告人の最後の供述において提起されたときは、それを審理するために裁判審理を更に行う。
<第234条>裁判長は、被告人の最後の供述が終われば裁判審理が終わった旨を知らせ、人民参審員等と共に合意室で判決を採択するための協議をする。
<第235条>裁判所は、被告人が重病に罹り、又は精神異常が発生したときは、その者の病気が治る時まで事件審理を中止する。
被告人の精神病が治る可能性がないと認められるときは、事件を棄却し、医療処分を適用することに対する判定をする。
<第236条>裁判においては、次のような内容で調書を作る。
1.裁判日、場所
2.裁判所成員、検事、弁護人、裁判書記の名前
3.事件名
4.被告人の名前、身分関係
5.損害補償請求者の名前、居所
6.裁判進行順序により裁判所がしたすべての行為
7.裁判関係者等及び証人、鑑定人が提起した意見及びその者が述べた言葉
8.裁判審理過程に裁判所が下した判定
9.論告及び弁論の内容
10.被告人がした最後の供述
<第237条>裁判調書は、裁判が終わった日から3日以内に作成しなければならない。
裁判関係者は、裁判調書作成期間が経過した翌日から5日以内に調書を見ることができ、調書に洩れたところがあり、又は正確でない表現があるときは、その期間内に訂正に対する意見を書面で提起することができる。
裁判長は、提起された意見が正しいときは、判定で調書を訂正し、不当なときは、理由を明らかにした判定で拒否する。
【第4節 起訴の追加及び変更】
<第238条>裁判所は、裁判審理過程において既に起訴された犯罪のほか、新たな法条項を追加しなければならない新たな犯罪事実が被告人にあるということを発見し、又は新たな法条項を追加するのではないが重い刑罰を与えることになる新たな犯罪事実を発見したとき又は起訴された法条項を重い刑罰を与えることになる法条項に訂正しなければならない新たな事実を知り得たときは、その理由を明らかにした判定で事件記録を検事に戻す。
<第239条>裁判所は、裁判審理で起訴された法条項を軽い刑罰を与えることになる法条項に訂正しなければならない新たな事実を知り得たときは、継続して審理し、判決することができる。
<第240条>裁判所は、裁判審理において起訴された犯罪事実自体は誤りがないが、法律条項を誤って適用したということが明らかになったときは、検事の意見を聞き、それを判定により訂正する。
法条項を訂正することが被告人に軽い刑罰を与えることになるならば継続して審理し、判決を下し、それが重い刑罰を与えることになるときは、被告人及び弁護人の申請がある場合、裁判審理を10日まで延期する。
<第241条>裁判所は、裁判審理において被告人でない他の者が罪を犯したことを知ったときは、その処理に対する検事の意見を聞き、刑事責任を追及することに対する判定をし、検事に送致する。この場合に、裁判所は、拘束処分判定をすることができる。
【第5節 判決】
<第242条>裁判所は、裁判審理において十分に検討確認された科学的な証拠に基づいて事件の真実が完全に明らかにされたときは、法の要求に合わせて判決を下す。
<第243条>判決を採択するときは、該当事件を審理した判事及び人民参審員だけが参加する。
<第244条>判決を採択するときは、次の問題を慎重に討議決定しなければならない。
1.起訴された犯罪行為自体があったのか
2.犯罪行為をその被告人が行ったのか
3.犯罪行為が犯罪の表徴を備えているか
4.被告人にどの刑罰をどの程度与えるべきか
5.提起された損害補償請求をどのように解決するか
6.証拠物をどのように処理するか
7.拘束処分問題をどのように処理するか
8.担保処分した財産をどのように処理するか
<第245条>判決は、裁判所構成員が多数決の方法で採択する。
多数の意見に同意しない判事又は人民参審員は、意見書を出すことができる。意見書は、判決を下すときに読みあげない。
<第246条>裁判所は、次のような判決を下す。
1.被告人に刑罰を適用する判決
2.被告人を社会的教育に付する判決
3.被告人に大赦を適用し、刑罰を免除する判決
4.被告人に罪がないという判決
社会的教育に付する判決は、刑法第11条第2項及びこの法律第13条の事由があるときに下し、罪がないという判決は、犯罪事実自体がなく、又は被告人が罪を犯さなかったとき又は被告人の行為が犯罪にならないときに下す。
<第247条>裁判所は、損害補償請求を次のように解決する。
1.損害補償請求が正しいときは、損害を補償させる。
2.犯罪事実自体がなく、又は被告人が罪を犯さないときは、損害補償請求を棄却する。
3.被告人の行為が罪にならないときは、損害補償請求を解決しない。この場合、被害者は、別に損害補償請求を提起することができる。
<第248条>判決、判定を下す際、証拠物及び担保処分した財産に対する処理は、この法律第161条第3項に規定された手続による。
<第249条>裁判所は、判決書を次のように作成する。
判決書の最初の部分には、裁判日及び裁判所成員、検事、弁護人、裁判書記の名前、事件名、裁判審理の公開又は非公開状況、被告人の名前及び身分関係、損害補償請求者の名前及び居所、犯罪事実に対する裁判所の認定及びそれに対する証拠の説明、損害補償請求及びそれに対する裁判所の認定、その他事件の性質により必ず指摘しなければならない問題を書く。
判決書の次の部分には、被告人に罪があり、又はないということを明らかにし、その者に適用する法条項及び刑罰又は教育処分を指摘し、損害補償請求、証拠物、拘束処分、財産担保処分等に対する問題をどのように処理するかということを書く。
判決書には、その判決に対する上訴手続を指摘する。
<第250条>判決は、朝鮮民主主義人民共和国の名前で宣告する。
<第251条>第1審判決、判定に対して意見がある場合、被告人、弁護人、損害補償請求者は、上級裁判所に上訴することができ、検事は、抗議することができる。
上訴、抗議が提起された場合、その判決、判定は、執行されない。
<第252条>上訴、抗議をしようとするときは、判決書又は判定書の謄本を受けた日から10日以内に上訴状、抗議書を第1審裁判所に提出しなければならない。
判決書、判定書の謄本は、判決、判定を下した日から2日以内に検事、被告人に付与する。
<第253条>市(区域)、軍検察所検事は、該当人民裁判所の判決、判定に対して、道(直轄市)検察所検事は、該当道(直轄市)裁判所及び人民裁判所の判決、判定に対して、特別検察所検事は、該当特別裁判所の判決、判定に対して、中央検察所検事は、各道(直轄市)裁判所及び人民裁判所及び特別裁判所の判決、判定に対して抗議することができる。
下級検察所検事の抗議が不当であると認めた上級検察所検事は、その抗議を取り消すことができる。
<第254条>第1審裁判所は、上訴、抗議期間が経過した場合、受けた上訴状、抗議書を事件記録と共に該当上級裁判所に送付しなければならない。
<第255条>中央裁判所の第1審判決、判定に対しては、上訴、抗議することができず、中央裁判所判事会議に非常上訴だけを提起することができる。
<第256条>判決は、次の場合に確定する。
1.上訴、抗議がなくその期間が経過したとき
2.上訴、抗議があるが第2審裁判所で第1審判決を支持したとき
3.上訴、抗議することができない判決を下したとき、判決の一部に対して上訴、抗議があった場合に残りの部分は、上訴、抗議期間が経過すると確定する。
<第257条>拘留されている被告人に罪がないという判決、刑罰を免除し、又は執行猶予をし、又は社会的教育に付する判決又は事件を棄却する判定を下した場合は、被告人を直ちに釈放しなければならない。
<第258条>労働教化刑の期間は、その判決を執行する日から計算する。
労働教化刑を受けた被告人が既に勾留されていたときは、勾留された日から計算する。
◆第8章:第2審裁判◆
<第259条>第2審裁判においては、事件記録及び上訴、抗議資料に基づき、第1審判決、判定が法律の要求に合致し、科学的な証拠資料に基礎を置いているか否かを全面的に検討し、誤りを訂正する。
<第260条>第2審裁判所は、上訴、抗議された事件を受けた日から1ケ月内に処理しなければならない。
<第261条>第2審裁判は、判事3人で構成された裁判所が行う。
第2審裁判には、検事が参加し、弁護人が上訴した場合は、弁護人を参加させる。特別な事情により検事、弁護人が参加することができなかったときにも裁判をすることができる。
裁判所は、第2審裁判日を裁判3日前に検事、弁護人に通知する。
<第262条>第2審裁判は、判事の事件報告から始め、検事、弁護人の意見を聞き、該当する判定をする。
<第263条>第2審裁判では、第1審判決、判定が法律の要求に合致して下されたと認められるときは、それを支持する判定をする。
<第264条>第2審裁判では、予審又は第1審裁判所において判決に影響を与える程度に犯罪事実に対して十分に証明することができず、又はこの法律に規定された手続を著しく破ったときは、判決を取り消し、事件を予審又は第1審裁判所に差し戻す。この場合に、事件をどの段階から更に審理すべきかを第2審判定書に指摘しなければならない。
<第265条>この法律に規定された手続を著しく破って採択した判決を取り消すべき事由は、次の通りである。
1.裁判所構成に関するこの法律の要求を破ったとき
2.裁判管轄を破ったとき
3.被告人を裁判に参加させないとき
4.法により棄却しなければならない事件を棄却しなかったとき
5.弁護人を参加させないとき
前項の場合は、判決中において上訴、抗議が提起されない部分に対しても第2審裁判において取り消すことができる。
<第266条>第2審裁判所は、第1審裁判所が管轄に違反して採択した判決を取り消したときは、事件を該当所轄裁判所に移送する。
<第267条>第2審裁判所は、第1審裁判所で罪にならない行為に対して罪となると判決したとき又は棄却しなければならない事件を棄却しなかったときは、判決を取り消し、直接その事件を棄却する。
<第268条>第2審裁判所は、第1審裁判所が認めた事実と合致しないように法を適用し、又は刑罰を定めたときは、その判決を取り消し、事件を第1審裁判所に差し戻す。
<第269条>次のような場合は、第2審裁判所が第1審裁判所の判決を直接訂正することができる。
1.第1審裁判所が適用した法条項より軽い刑罰が規定された法条項に訂正する場合
2.第1審裁判所が定めた刑罰より軽い刑罰に訂正する場合
3.第1審裁判所で附加刑罰又は大赦を適用しなければならないのに適用せず、又は誤って適用した場合
<第270条>第2審裁判所が新たな審理のために差し戻した事件を受けた裁判所は、第2審裁判所の判定に従わなければならない。
<第271条>被告人の上訴に基づき、判決が取り消された事件を更に裁判する第1審裁判所は、最初に判決を下した裁判所が定めた刑罰より重い刑罰を科することができない。
<第272条>第2審裁判所は、判決を取り消さない場合においても必要であるときは、第1審裁判の不足点を別に判定で指摘する。第1審裁判所は、この指摘に従わなければならない。
<第273条>第2審裁判所の判定に対しては、上訴、抗議することができない。
<第274条>裁判所は、判定書謄本を判定を下した日から2日以内に検事及び上訴人に送付しなければならない。
◆第9章:非常上訴及び再審◆
【第1節 非常上訴】
<第275条>確定した判決、判定が法の要求に違反したとき、それを訂正することは、非常上訴の手続で行う。
<第276条>非常上訴は、中央裁判所所長又は中央検察所所長が中央裁判所に提起する。
<第277条>中央裁判所は、非常上訴事件を受けた日から1ケ月内に処理しなければならない。
<第278条>非常上訴は、事件を処理する際に法を本質的に反したことが事件記録に現れている場合に提起する。
<第279条>中央裁判所所長及び中央検察所所長は、非常上訴を提起するためにどの裁判所で処理した事件でもその記録を要求することができる。
地方各級裁判所及び検察所は、非常上訴の提起を申請するために自己管轄内において処理された事件記録を要求することができる。非常上訴を提起しなければならない事件は、該当する意見を付し、事件記録を中央裁判所所長又は中央検察所所長に送付する。
非常上訴を提起しない事件の記録は、直ちに返戻する。
<第280条>中央裁判所所長及び中央検察所所長は、非常上訴を提起するために事件記録を要求した事件に対する判決、判定の執行を停止させることができる。ただし、中央裁判所の判決、判定に対しては、その執行を停止させることができない。
<第281条>中央裁判所以外のすべての裁判所の確定した判決、判定に対する非常上訴事件は、中央裁判所の判事3人で構成された裁判所が審理解決する。
判事3人で構成された裁判所が下した判定に対して中央検察所が意見を提起したときは、中央裁判所判事会議で更に審理解決する。
前項の意見は、書面で提出しなければならない。
<第282条>中央裁判所の判決、判定に対する非常上訴事件は、中央裁判所判事会議において審理解決する。
中央裁判所判事会議は、中央裁判所所長、副所長、判事で構成する。
中央裁判所判事会議は、その成員全員の3分の2以上が参加して行うことができる。
判事会議判定は、会議に参加した構成員の多数可決で採択する。
<第283条>中央裁判所判事会議には、中央検察所所長が参加する。
中央裁判所判事3人で構成された裁判所の非常上訴事件の審理には、中央検察所検事が参加する。
非常上訴事件の審理日は、3日前までに中央検察所に通知しなければならない。
<第284条>非常上訴事件の審理は、事件報告から始め、必要な審理をした後、中央検察所所長又は検事の意見を聞き、該当する判定を採択する。
<第285条>非常上訴事件を審理した中央裁判所は、この法律第263条から第269条までにより事件を処理する。
【第2節 再審】
<第286条>判決又は判定が確定した事件の再審は、次のような新たな事実が現れたときに提起する。
1.判決、判定の基礎とした証拠が虚偽であったとき
2.判決、判定に影響を与え得る事実であって裁判当時は、知られていなかったことが判明したとき
<第287条>有罪判決に対する再審は、その判決を受けた者が死んだ後でも提起することができる。
<第288条>再審提起の申請は、個人又は機関、企業所、団体が検事に行う。
前項の申請を受けた検事は、1ケ月内に必要な調査を行い、自らの意見を付してそれを中央検察所に送付する。
検事の判断により再審を提起する必要があると認める場合の手続も同じである。
<第289条>中央検察所所長は、再審提起申請理由が正当なときは、中央裁判所に再審を提起し、不当なときは、申請を拒否する決定をする。
<第290条>再審事件は、中央裁判所の判事3人で構成された裁判所が審理解決する。
<第291条>再審事件の審理は、検事の事件報告から始め、必要な審理をした後、該当する判定をする。
再審事件の審理日は、3日前までに中央検察所に通知しなければならない。
<第292条>中央裁判所は、再審提起の理由が正当な場合は、確定した判決、判定を取り消し、事件を予審又は第1審裁判所に送致して更に審理させ、又は直接棄却して再審提起理由が不当な場合は、再審を拒否する判定をする。
<第293条>中央裁判所は、再審事件を受けた日から1ケ月内に処理しなければならない。
◆第10章:判決、判定の執行◆
<第294条>判決、判定は、確定した後に執行する。
<第295条>裁判長は、判決、判定が確定すればその執行のために該当執行機関に執行指揮文件を送付する。
1.労働教化刑判決、判定に対しては、該当社会安全機関に判決、判定確定通知書を送付する。
2.死刑判決に対しては、該当社会安全機関に死刑執行指揮文件及び判決書謄本を送付する。
3.財産に対する判決、判定に対しては、執行員に執行文を送付する。
<第296条>判決、判定の執行に対する監視は、検事が行う。
死刑執行は、検事の参加の下に行う。
<第297条>死刑は、朝鮮民主主義人民共和国中央人民委員会の承認を受けなければ執行することができない。
<第298条>死刑執行は、死刑執行指揮文件を受けた後に行い、財産執行は、執行文件を受けた日から1ケ月内に行い、該当裁判所に回報しなければならない。
<第299条>労働教化刑を受けた者が重病にあるときは、その者の病気が治る時まで執行を停止することができる。
労働教化刑を受けた者が妊娠している者であるときは、事前3ケ月から産後7ケ月まで執行を停止する。
<第300条>労働教化刑を受けている者が病気で病院に受容された場合、その期間は、労働教化刑執行期間に算入する。
<第301条>労働教化刑執行を停止させることは、労働教化刑判決を下した裁判所又は労働教化刑執行機関がある地域を管轄する道(直轄市)裁判所が判定で審理解決する。
<第302条>労働教化刑を受けている者を刑期が終了する前に釈放することは、労働教化刑執行機関がある地域を管轄する道(直轄市)裁判所又は中央裁判所が判定で審理解決する。
<第303条>判決、判定の執行と関連した申請は、その判決、判定を下した裁判所又はその判決、判定を執行する地域を管轄する裁判所で審理解決する。
<第304条>この法律第301条から第303条までにより提起された問題を審理する裁判所は、審理日を3日前までに検事に通知し、第303条の場合は、判決を受けた者及び損害補償請求者を審理に参加させることができる。
<第305条>財産没収刑に対する執行は、裁判所の執行員が行う。
執行員の執行行為と関連して提起された意見に対しては、その執行員が属する裁判所の判事が審理解決する。
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