有機加工食品の日本農林規格


有機加工食品の日本農林規格

(目的)

第1条 この規格は、有機加工食品の生産の方法についての基準等を定めることを目的とする。

(有機加工食品の生産の原則)

第2条 有機加工食品は、原材料である有機農産物の日本農林規格(平成17年10月27日農林水産省告示第1605号)第3条に規定する有機農産物(以下「有機農産物」という。)及び有機畜産物の日本農林規格(平成17年10月27日農林水産省告示第1608号)第3条に規定する有機畜産物(以下「有機畜産物」という。)の有する特性を製造又は加工の過程において保持することを旨とし、物理的又は生物の機能を利用した加工方法を用い、化学的に合成された添加物及び薬剤の使用を避けることを基本として、生産することとする。

(定義)

第3条 この規格において、次の表左欄の用語の定義は、それぞれ同表右欄のとおりとする。

用語 定義
有機加工食品 次条の基準に従い生産された加工食品であって、原材料(食塩及び水を除く。)及び添加物(加工助剤を除く。)の重量に占める農産物(有機農産物を除く。)、畜産物(有機畜産物を除く。)、水産物及びこれらの加工品並びに添加物(有機加工食品として格付された一般飲食物添加物(一般に食品として飲食に供されている物であって添加物として使用されるものをいう。以下同じ。)及び加工助剤を除く。)の重量の割合が5%以下であるものをいう。
有機農産物加工食品 有機加工食品のうち、原材料(食塩及び水を除く。)及び添加物(加工助剤を除く。)の重量に占める農産物(有機農産物を除く。)、畜産物、水産物及びこれらの加工品並びに添加物(有機加工食品として格付された一般飲食物添加物及び加工助剤を除く。)の重量の割合が5%以下であるものをいう。
有機畜産物加工 有機加工食品のうち、原材料(食塩及び水を除く。)及び添加物(加工助剤を除く。)の重量に占める農産物、畜産物(有機畜産物を除く。)、水産物及びこれらの加工品並びに添加物(有機加工食品として格付された一般飲食物添加物及び加工助剤を除く。)の重量の割合が5%以下であるものをいう。
有機農畜産物加工食品 有機加工食品のうち、有機農産物加工食品及び有機畜産物加工食品以外のものをいう。
化学的処理 次のいずれかに該当することをいう。
1 化学的手段(燃焼、焼成、溶融、乾留及びけん化を除く。以下同じ。)によって、化合物を構造の異なる物質に変化させること。
2 化学的手段により得られた物質を添加すること(最終的な製品に当該物質を含有しない場合を含む。)。
組換えDNA技術 酵素等を用いた切断及び再結合の操作によって、DNAをつなぎ合わせた組換えDNA分子を作製し、それを生細胞に移入し、かつ、増殖させる技術をいう。
転換期間中有機農産物 有機農産物の日本農林規格第4条の表ほ場の項基準の欄2に規定する転換期間中のほ場において生産された農産物をいう。
(生産の方法についての基準)

第4条 有機加工食品の生産の方法についての基準は、次のとおりとする。

事項 基準
原材料及び添加物(加工助剤を含む。) 次に掲げるものに限り使用することができる。ただし、2又は4に掲げるものについては、使用する原材料と同一の種類の有機農産物、有機畜産物又は有機加工食品の入手が困難な場合に限る。
1 以下のうち、その包装、容器又は送り状に格付の表示が付されているもの。ただし、その有機加工食品を製造し、又は加工する者により生産され、日本農林規格等に関する法律(昭和25年法律第175号)第10条又は第30条の規定により格付されたものにあってはこの限りでない。
(1)有機農産物
(2)有機加工食品
(3)有機畜産物
2 1以外の農畜産物。ただし、以下のものを除く。
(1)原材料として使用した有機農産物及び有機畜産物と同一の種類の農畜産物
(2)放射線照射が行われたもの
(3)組換えDNA技術を用いて生産されたもの
3 水産物(放射線照射が行われたもの及び組換えDNA技術を用いて生産されたものを除く。)
4 農畜水産物の加工品(1に掲げるもの((2)に掲げるものに限る。)、原材料として使用した有機加工食品と同一の種類の加工食品、放射線照射が行われたもの及び組換えDNA技術を用いて生産されたものを除く。)
5 食塩
6 水
7 別表1の添加物(組換えDNA技術を用いて製造されたものを除く。以下同じ。)
原材料及び添加物の使用割合 原材料(食塩及び水を除く。)及び添加物(加工助剤を除く。)の重量に占めるこの表原材料及び添加物(加工助剤を含む。)の項基準の欄2、3、4及び7(有機加工食品として格付された一般飲食物添加物及び加工助剤を除く。)に掲げるものの重量の割合が5%以下であること。
製造、加工、包装、保管その他の工程に係る管理
1 製造又は加工は、物理的又は生物の機能を利用した方法(組換えDNA技術を用いて生産された生物を利用した方法を除く。以下同じ。)によることとし、添加物を使用する場合は、必要最小限度とすること。
2 原材料として使用される有機農産物、有機加工食品及び有機畜産物は、他の農畜産物又はその加工食品が混入しないように管理を行うこと。
3 有害動植物の防除は、物理的又は生物の機能を利用した方法によること。ただし、物理的又は生物の機能を利用した方法のみによっては効果が不十分な場合には、別表2の薬剤並びに食品及び添加物(これらを原材料として加工したものを含み、農産物に対して病害虫を防除する目的で使用するものを除く。)に限り使用することができる。この場合においては、原材料、添加物及び製品への混入を防止すること。
4 3の方法のみによっては有害動植物の防除の効果が不十分な場合には、有機加工食品を製造し、又は保管していない期間に限り、別表2に掲げられていない薬剤を使用することができる。この場合においては、有機加工食品の製造開始前に、これらの薬剤を除去すること。
5 有害動植物の防除、食品の保存又は衛生の目的での放射線照射を行わないこと。
6 この表原材料及び添加物(加工助剤を含む。)の項の基準及びこの項1から5までに掲げる基準に従い製造され、又は加工された食品が農薬、洗浄剤、消毒剤その他の資材により汚染されないように管理を行うこと。
(有機加工食品の表示)

第5条 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)の規定に従うほか、有機加工食品の名称及び原材料名の表示は、次に規定する方法により行うものとする。

区分 基準
名称の表示
1 次の例のいずれかにより記載すること。
(1)「有機○○」又は「○○(有機)」
(2)「オーガニック○○」又は「○○(オーガニック)」
(注)「○○」には、当該加工食品の一般的な名称を記載すること。
2 1の基準にかかわらず、転換期間中有機農産物又はこれを製造若しくは加工したものを原材料として使用したものにあっては、1の例のいずれかにより記載する名称の前又は後に「転換期間中」と記載すること。ただし、商品名の表示されている箇所に近接した箇所に、背景の色と対照的な色で、日本産業規格Z8305(1962)に規定する14ポイントの活字以上の大きさの統一のとれた活字で、「転換期間中」と記載する場合は、この限りでない。
原材料名の表示
1 使用した原材料のうち、有機農産物(転換期間中有機農産物を除く。)、有機加工食品(転換期間中有機農産物を原材料としたものを除く。)又は有機畜産物にあっては、その一般的な名称に「有機」等の文字を記載すること。
2 転換期間中有機農産物又はこれを製造若しくは加工したものを原材料として使用したものにあっては、1の基準により記載する原材料名の前又は後に「転換期間中」と記載すること。ただし、商品名の表示されている箇所に近接した箇所に、背景の色と対照的な色で、日本産業規格Z8305(1962)に規定する14ポイントの活字以上の大きさの統一のとれた活字で、「転換期間中」と記載する場合は、この限りでない。


別表1 添加物

INS番号 添加物 基準
330 クエン酸 pH調整剤として使用するもの又は野菜の加工品若しくは果実の加工品に使用する場合に限ること。
331ⅲ クエン酸ナトリウム ソーセージ、卵白の低温殺菌又は乳製品に使用する場合に限ること。
296 DL―リンゴ酸 農産物の加工品に使用する場合に限ること。
270 乳酸 野菜若しくは米の加工品に使用する場合、ソーセージのケーシングに使用する場合、凝固剤として乳製品に使用する場合又はpH調整剤としてチーズの塩漬に使用する場合に限ること。
300 L―アスコルビン酸 農産物の加工品に使用する場合に限ること。
301 L―アスコルビン酸ナトリウム 食肉の加工品に使用する場合に限ること。
タンニン(抽出物) ろ過助剤として農産物の加工品に使用する場合に限ること。
513 硫酸 pH調整剤として砂糖類の製造における抽出水のpH調整に使用する場合に限ること。
500ⅰ 炭酸ナトリウム 菓子類、砂糖類、豆類の調製品、麺・パン類又は中和剤として乳製品に使用する場合に限ること。
500ⅱ 炭酸水素ナトリウム 菓子類、砂糖類、豆類の調製品、麺・パン類、飲料、野菜の加工品、果実の加工品又は中和剤として乳製品に使用する場合に限ること。
501ⅰ 炭酸カリウム 果実の加工品の乾燥に使用する場合又は穀類の加工品、砂糖類、豆類の調製品、麺・パン類若しくは菓子類に使用する場合に限ること。
170ⅰ 炭酸カルシウム 畜産物の加工品に使用する場合にあっては、乳製品に使用するもの(着色料としての使用は除く。)又は凝固剤としてチーズ製造に使用するものに限ること。
503ⅰ 炭酸アンモニウム 農産物の加工品に使用する場合に限ること。
503ⅱ 炭酸水素アンモニウム 農産物の加工品に使用する場合に限ること。
504ⅰ 炭酸マグネシウム 農産物の加工品に使用する場合に限ること。
508 塩化カリウム 野菜の加工品、果実の加工品、食肉の加工品、調味料又はスープに使用する場合に限ること。
509 塩化カルシウム 農産物の加工品の凝固剤及びチーズ製造の凝固剤として使用する場合又は食用油脂、野菜の加工品、果実の加工品、豆類の調製品、乳製品若しくは食肉の加工品に使用する場合に限ること。
511 塩化マグネシウム粗製海水塩化マグネシウム 農産物の加工品の凝固剤として使用する場合又は豆類の調製品に使用する場合に限ること。農産物の加工品の凝固剤として使用する場合又は豆類の調製品に使用する場合に限ること。
524 水酸化ナトリウム pH調整剤として砂糖類の加工に使用する場合又は穀類の加工品に使用する場合に限ること。
525 水酸化カリウム pH調整剤として砂糖類の加工に使用する場合に限ること。
526 水酸化カルシウム 農産物の加工品に使用する場合に限ること。
334 L―酒石酸 農産物の加工品に使用する場合に限ること。
335ⅱ L―酒石酸ナトリウム 菓子類に使用する場合に限ること。
336ⅰ L―酒石酸水素カリウム 穀類の加工品又は菓子類に使用する場合に限ること。
341ⅰ リン酸二水素カルシウム 膨張剤として粉類に使用する場合に限ること。
516 硫酸カルシウム 凝固剤として使用する場合又は菓子類、豆類の調製品若しくはパン酵母に使用する場合に限ること。
400 アルギン酸 農産物の加工品に使用する場合に限ること。
401 アルギン酸ナトリウム 農産物の加工品に使用する場合に限ること。
407 カラギナン 畜産物の加工品に使用する場合にあっては、乳製品に使用するものに限ること。
410 カロブビーンガム 畜産物の加工品に使用する場合にあっては、乳製品又は食肉の加工品に使用するものに限ること。
412 グアーガム 畜産物の加工品に使用する場合にあっては、乳製品、缶詰肉又は卵製品に使用するものに限ること。
413 トラガントガム
414 アラビアガム 乳製品、食用油脂又は菓子類に使用する場合に限ること。
415 キサンタンガム 畜産物の加工品に使用する場合にあっては、乳製品又は菓子類に使用するものに限ること。
416 カラヤガム 畜産物の加工品に使用する場合にあっては、乳製品又は菓子類に使用するものに限ること。
カゼイン 農産物の加工品に使用する場合に限ること。
ゼラチン 農産物の加工品に使用する場合に限ること。
440 ペクチン 畜産物の加工品に使用する場合にあっては、乳製品に使用するものに限ること。
エタノール 畜産物の加工品に使用する場合にあっては、食肉の加工品に使用するものに限ること。
307b ミックストコフェロール 畜産物の加工品に使用する場合にあっては、食肉の加工品に使用するものに限ること。
322 レシチン(植物レシチン、卵黄レシチン、分別レシチン、ヒマワリレシチン) 漂白処理をせずに得られたものに限ること。また、畜産物の加工品に使用する場合にあっては、乳製品、乳由来の幼児食品、油脂製品又はドレッシングに使用するものに限ること。
553ⅲ タルク 農産物の加工品に使用する場合に限ること。
558 ベントナイト 農産物の加工品に使用する場合に限ること。
559 カオリン 農産物の加工品に使用する場合に限ること。
ケイソウ土 農産物の加工品に使用する場合に限ること。
パーライト 農産物の加工品に使用する場合に限ること。
551 二酸化ケイ素 ゲル又はコロイド溶液として、農産物の加工品に使用する場合に限るこ
活性炭 農産物の加工品に使用する場合に限ること。
901 ミツロウ 分離剤として農産物の加工品に使用する場合に限ること。
903 カルナウバロウ 分離剤として農産物の加工品に使用する場合に限ること。
木灰 天然物質又は化学的処理を行っていない天然物質に由来するものから化学的な方法によらずに製造されたものに限ること。また、沖縄そば、米の加工品、和生菓子、ピータン若しくはこんにゃくに使用する場合又は山菜類のあく抜きに使用する場合に限ること。
香料 化学的に合成されたものでないこと。
941 窒素
948 酸素
290 二酸化炭素
酵素
一般飲食物添加物
次亜塩素酸ナトリウム 食肉の加工品に用いる動物の腸の消毒用又は卵の洗浄用に限ること。
次亜塩素酸水 農産物の加工品に使用する場合(食塩水(99%以上の塩化ナトリウムを含有する食塩を使用したものに限る。)を電気分解して得られた次亜塩素酸水を使用する場合に限る。)又は食肉の加工品に用いる動物の腸の消毒若しくは卵の洗浄に使用する場合に限ること。
297 フマル酸 食肉の加工品に用いる動物の腸の消毒用又は卵の洗浄用に限ること。
365 フマル酸一ナトリウム 食肉の加工品に用いる動物の腸の消毒用又は卵の洗浄用に限ること。
オゾン 農産物の加工品に使用する場合又は食肉の加工品に用いる動物の腸の消毒若しくは卵の洗浄に使用する場合に限ること。
460ⅱ 粉末セルロース ろ過助剤として農産物の加工品に使用する場合に限ること。
(注) INS番号:食品添加物の国際番号付与システムにより付与された添加物の番号


別表2 薬剤

薬剤 基準
除虫菊抽出物 共力剤としてピペロニルブトキサイドを含まないものに限ること。また、農産物に対して病害虫を防除する目的で使用する場合を除く。
ケイソウ土
ケイ酸ナトリウム 農産物に対して病害虫を防除する目的で使用する場合を除く。
重曹
二酸化炭素
カリウム石鹸(軟石鹸) 農産物に対して病害虫を防除する目的で使用する場合を除く。
エタノール 農産物に対して病害虫を防除する目的で使用する場合を除く。
ホウ酸 容器に入れて使用する場合に限ること。また、農産物に対して病害虫を防除する目的で使用する場合を除く。
フェロモン 昆虫のフェロモン作用を有する物質を有効成分とする薬剤に限ること。また、農産物に対して病害虫を防除する目的で使用する場合を除く。
カプサイシン 忌避剤として使用する場合に限ること。また、農産物に対して病害虫を防除する目的で使用する場合を除く。
ゼラニウム抽出物 忌避剤として使用する場合に限ること。また、農産物に対して病害虫を防除する目的で使用する場合を除く。
シトロネラ抽出物 忌避剤として使用する場合に限ること。また、農産物に対して病害虫を防除する目的で使用する場合を除く。
(注)薬剤の使用に当たっては、薬剤の容器等に表示された使用方法を遵守すること。


最終改正の改正文(令和2年7月16日農林水産省告示第1385号)抄

令和2年7月16日から施行する。


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