普天間飛行場に関するSACO最終報告 (仮訳)
平成8年12月2日
1.はじめに
編集(a) 平成8年12月2日に開催された日米安全保障協議委員会(SCC)において、池田外務大臣、久間防衛庁長官、ペリー国防長官及びモンデール大使は、平成8年4月15日の沖縄に関する特別行動委員会(SACO)中間報告及び同年9月19日のSACO現状報告に対するコミットメントを再確認した。両政府は、SACO中間報告を踏まえ、普天間飛行場の重要な軍事的機能及び能力を維持しつつ、同飛行場の返還及び同飛行場に所在する部隊・装備等の沖縄県における他の米軍施設及び区域への移転について適切な方策を決定するための作業を行ってきた。SACO現状報告は、普天間に関する特別作業班に対し、3つの具体的代替案、すなわち(1)ヘリポートの嘉手納飛行場への集約、(2)キャンプ・シュワブにおけるヘリポートの建設、並びに(3)海上施設の開発及び建設について検討するよう求めた。
(b) 平成8年12月2日、SCCは、海上施設案を追求するとのSACOの勧告を承認した。海上施設は、他の2案に比べて、米軍の運用能力を維持するとともに、沖縄県民の安全及び生活の質にも配意するとの観点から、最善の選択であると判断される。さらに、海上施設は、軍事施設として使用する間は固定施設として機能し得る一方、その必要性が失われたときには撤去可能なものである。
(c) SCCは、日米安全保障高級事務レベル協議(SSC)の監督の下に置かれ、技術専門家のチームにより支援される日米の作業班(普天間実施委員会(FIG:Futenma Implementation Group)と称する。)を設置する。FIGは、日米合同委員会とともに作業を進め、遅くとも平成9年12月までに実施計画を作成する。この実施計画についてSCCの承認を得た上で、FIGは、日米合同委員会と協力しつつ、設計、建設、試験並びに部隊・装備等の移転について監督する。このプロセスを通じ、FIGはその作業の現状について定期的にSSCに報告する。
2.SCCの決定
編集(a) 海上施設の建設を追求し、普天間飛行場のヘリコプター運用機能の殆どを吸収する。この施設の長さは約1,500メートルとし、計器飛行への対応能力を備えた滑走路(長さ約1,300メートル)、航空機の運用のための直接支援、並びに司令部、整備、後方支援、厚生機能及び基地業務支援等の間接支援基盤を含む普天間飛行場における飛行活動の大半を支援するものとする。海上施設は、ヘリコプターに係る部隊・装備等の駐留を支援するよう設計され、短距離で離発着できる航空機の運用をも支援する能力を有する。
(b) 岩国飛行場に12機のKC-130航空機を移駐する。これらの航空機及びその任務の支援のための関連基盤を確保すべく、同飛行場に追加施設を建設する。
(c) 現在の普天間飛行場における航空機、整備及び後方支援に係る活動であって、海上施設又は岩国飛行場に移転されないものを支援するための施設については、嘉手納飛行場において追加的に整備を行う。
(d) 危機の際に必要となる可能性のある代替施設の緊急時における使用について研究を行う。この研究は、普天間飛行場から海上施設への機能移転により、現有の運用上の柔軟性が低下することから必要となるものである。
(e) 今後5乃至7年以内に、十分な代替施設が完成し運用可能になった後、普天間飛行場を返還する。
3.準拠すべき方針
編集(a) 普天間飛行場の重要な軍事的機能及び能力は今後も維持することとし、人員及び装備の移転、並びに施設の移設が完了するまでの間も、現行水準の即応性を保ちつつ活動を継続する。
(b) 普天間飛行場の運用及び活動は、最大限可能な限り、海上施設に移転する。海上施設の滑走路が短いため同施設では対応できない運用上の能力及び緊急事態対処計画の柔軟性(戦略空輸、後方支援、緊急代替飛行場機能及び緊急時中継機能等)は、他の施設によって十分に支援されなければならない。運用、経費又は生活条件の観点から海上施設に設置することが不可能な施設があれば、現存の米軍施設及び区域内に設置する。
(c) 海上施設は、沖縄本島の東海岸沖に建設するものとし、桟橋又はコーズウェイ(連絡路)により陸地と接続することが考えられる。建設場所の選定においては、運用上の所要、空域又は海上交通路における衝突の回避、漁船の出入、環境との調和、経済への影響、騒音規制、残存性、保安、並びに他の米国の軍事施設又は住宅地区への人員アクセスについての利便性及び受入可能性を考慮する。
(d) 海上施設の設計においては、荒天や海象に対する上部構造物、航空機、装備及び人員の残存性、海上施設及び当該施設に所在するあらゆる装備についての腐食対策・予防措置、安全性、並びに上部構造物の保安を確保するため、十分な対策を盛り込むこととする。支援には、信頼性があり、かつ、安定的な燃料供給、電気、真水その他のユーティリティ及び消耗資材を含めるものとする。さらに、海上施設は、短期間の緊急事態対処活動において十分な独立的活動能力を有するものとする。
(e) 日本政府は、日米安全保障条約及び地位協定に基づき、海上施設その他の移転施設を米軍の使用に供するものとする。また、日米両政府は、海上施設の設計及び取得に係る決定に際し、ライフ・サイクル・コストに係るあらゆる側面について十分な考慮を払うものとする。
(f) 日本政府は、沖縄県民に対し、海上施設の構想、建設場所及び実施日程を含めこの計画の進捗状況について継続的に明らかにしていくものとする。
4.ありうべき海上施設の工法
編集 日本政府の技術者等からなる「技術支援グループ」(TSG)は、政府部外の大学教授その他の専門家からなる「技術アドバイザリー・グループ」(TAG)の助言を得つつ、本件について検討を行ってきた。この検討の結果、次の3つの工法がいずれも技術的に実現可能とされた。
(a)杭式桟橋方式(浮体工法):
海底に固定した多数の鋼管により上部構造物を支持する方式。
(b)箱(ポンツーン)方式:
鋼製の箱形ユニットからなる上部構造物を防波堤内の静かな海域に設置する方式。
(c)半潜水(セミサブ)方式:
潜没状態にある下部構造物の浮力により上部構造物を波の影響を受けない高さに支持する方式。
5.今後の段取り
編集(a) FIGは、SCCに対し海上施設の建設のための候補水域を可能な限り早期に勧告するとともに、遅くとも平成9年12月までに詳細な実施計画を作成する。この計画の作成に当たり、構想の具体化・運用所要の明確化、技術的性能諸元及び工法、現地調査、環境分析、並びに最終的な構想の確定及び建設地の選定という項目についての作業を完了することとする。
(b) FIGは、施設移設先において、運用上の能力を確保するため、施設の設計、建設、所要施設等の設置、実用試験及び新施設への運用の移転を含む段階及び日程を定めるものとする。
(c) FIGは、定期的な見直しを行うとともに、重要な節目において海上施設計画の実現可能性について所要の決定を行うものとする。
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