昭和58 (行ツ) 124
審決取消請求事件
編集主文
編集原判決を破棄する。
本件を東京高等裁判所に差し戻す。
理由
編集上告代理人田倉整、同大岩増雄、同竹中岑生の上告理由補充書記載の上告理由について
原審は、登録第一一六八六六八号実用新案(以下「本件実用新案」という。)における登録出願の願書に添附した明細書の実用新案登録請求の範囲の記載が「電動送風機を収納し車輪12を有する主体Aと、この主体の前部にその下部にて着脱自在に係合されかつ前輪14を有する集塵ケースBと、この集塵ケースと前記主体Aをその上部で互いに掛止する掛金4とを備え、前記主体AとケースBとの結合状態での重心位置が前記車輪12の軸心より前方に位置し、かつ前記主体Aそれ自身の重心位置が前記車輪12の軸心より後方に位置するように前記車輪12の取付位置を選定し、前記掛金4を外したとき前記主体AとケースBとの結合面をその係合部を支点として開くようにした電気掃除機」であること等を基礎として、本件実用新案の登録を無効とした特許庁昭和五二年審判第一七〇八四号事件審決を正当としてその取消しを求める上告人の請求を棄却したものであることは、原判文に徴し明らかである。
ところで、上告代理人提出の特許庁昭和五八年審判第一九一二〇号事件審決謄本写及び本件記録によれば、本件実用新案については上告人の訂正審判請求に基づき原審口頭弁論終結後の昭和五九年一二月一八日前記明細書における実用新案登録請求の範囲の記載を「電動送風機を収納しその両側に一対の車輪12を有する主体Aと、この主体の前部にその下部にて着脱自在に係合され、かつ前輪14と着脱できるフィルター装置Cとを有し、前記主体Aとの結合面の開口より塵捨てをする集塵ケースBと、この集塵ケースと前記主体Aをその上部で互いに掛止する掛金4とを備え、主体AとケースBとの結合面を車輪12の前方に位置させるとともに、前記主体AとケースBとの結合状態での重心位置が前記車輪12の軸心より前方に位置し、かつ前記主体Aそれ自身の重心位置が前記車輪12の軸心より後方に位置するように前記車輪12の取付位置を選定し、前記掛金4を外したとき前記主体AとケースBとの結合面をその係合部を支点として開くようにした電気掃除機」と訂正すること等を認める旨の審決がなされ、その審決謄本が昭和六〇年一月二一日上告人に送達されたことが認められる。
そうすると、原判決の基礎となった行政処分が後の行政処分により変更されたものであるから、原判決には民訴法四二〇条一項八号所定の事由が存するといわなければならないが、このような場合には、原判決に影響を及ぼすことの明らかな法令の違背があったものとしてこれを破棄し、更に審理を尽くさせるため本件を原審に差し戻すのが相当である。
よって、上告代理人のその余の上告理由についての判断を省略し、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 伊藤正己 裁判官 木戸口久治 安岡満彦 長島敦)
上告代理人田倉整、同大岩増雄、同竹中岑生の上告理由
編集《略》
上告代理人田倉整、同大岩増雄、同竹中岑生の上告理由補充書記載の上告理由
編集一 本件の経過の概略
(一)上告人は登録第一一六八六六八号考案の名称、「電気掃除機」についての実用新案権を保有している。
(二)被上告人は昭和五二年九月二二日特許庁に無効審判を請求し(特許庁昭和五二年審判第一七〇八四号)、特許庁は、昭和五七年四月一九日付をもって無効認容審決を発した。
(三)上告人はこの審決を不服として、東京高等裁判所へ審決取消請求訴訟を提起した(昭和五七年(行ケ)第一二九号)。右の訴訟において、被上告人(原審被告)は、上告人(原審原告)の請求原因事実をすべて自白した。
(四)東京高等裁判所は昭和五八年七月二八日上告人(原審原告)の請求を棄却する判決をした。
(五)上告人は右判決を不服として御庁へ上告し,現に係属中である。
二 訂正認容審決
(一)上告人は、本件実用新案権について、昭和五八年九月八日、訂正審判を請求し(特許庁昭和五八年審判第一九一二〇号)、登録請求の範囲を減縮することを求めた。
(二)特許庁は右訂正審判について昭和五八年九月八日訂正請求公告をしたのち、同業各社からの登録異議申立について審理をしたうえ、昭和五九年一二月一八日、訂正認容審決を発した。
(三)右審決に対しては不服申立の手段は存在しないから、審決とともに訂正の効果を生じ、本件考案は出願の当初に遡って訂正後の考案について出願から登録までの経過の下に権利付与がなされたものとされる(実用新案法第四一条、特許法第一二八条)。
(四)従って、東京高等裁判所の原審判決は訂正前の考案について審理判決されたことに帰し、審理の対象を誤ったことになる。
三 再審事由の発生
以上の事実関係を前提とすれば、本件訂正認容審決が出されたことは再審事由に当る。
すなわち、最高裁判所第二小法廷昭和五四年四月一三日判決、昭和五三年(行ツ)第四七号は、無効認容審決を是認する東京高等裁判所の判決に対する上告事件が最高裁判所に係属中であっても、訂正認容審決が出されたときには、再審事由に該当するとの理由をもって原審判決を破棄差戻をした。
右最高裁判所の判決を前提とするまでもなく、再審事由が発生したことは明らかであるから、この事由をもってしても原審判決は破棄差戻をされるべきである。
四 よって、原審判決の破棄差戻を求めるため本上申に及んだ次第である。
五 なお、本件訂正審決については、昭和六〇年一月二一日に、その審決謄本が、審判事件請求人代理人弁理士藤木三幸に送達されたことを、関係書類を添えて上申する。
(添付書類省略)
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