損害賠償請求(再審)事件 編集

主文 編集

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由 編集

上告人の上告理由について。

民訴法四二〇条一項但書後段に規定する「之ヲ知リテ主張セザリシトキ」とは、再審事由のあることを知つたのにかかわらず、上訴を提起しながら上訴審においてこれを主張しない場合のみならず、上訴を提起しないで判決を確定させた場合も含むものと解すべきであり、判断遺脱のような再審事由については、特別の事情のない限り、終局判決の正本送達により当事者は、これを知つたものと解するを相当とする。

原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ)によれば,上告人は昭和四〇年九月二九日原判示第一審判決正本の送達を受けたのにもかかわらず、これに対し上訴しなかつたというのであるから、特別の事情の主張、立証のない本件においては、上告人は右判決正本の送達の時に所論判断遺脱の事実を知つたにもかかわらず、上訴によりこれを主張しなかつたものであるとした原審の判断は、前記説示に照らして正当であり、原判決には所論違法はない。所論違憲の主張は、右違法をいう単なる法令違反の主張に帰し、論旨は、いずれも独自の見解であつて、採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 長部謹吾 裁判官 入江俊郎 裁判官 松田二郎 裁判官 岩田誠 裁判官 大隅健一郎)

上告人中山酉蔵の上告理由 編集

原判決は次の通り不当に請求権を侵した違憲であるから上告する。

原判決はわけがわからない。民訴法四二〇条一項の但書は「当事者が上訴によりその事由を主張したるとき、又はこれを知りて主張せざりしときは、この限りにあらず」としてあるが上告人は上訴によつてその主張をしていない。従て再審の訴ができる。民訴法四二四条再審の訴は、当事者が判決確定後再審の事由を知りたる日より三十日内に之を提起することを要す」とある。よつて上告人はその期限内に訴を提起している。

又事由を知つていて、主張をしていないときは、当然再審の訴はできないが上告人はその主張をしていることは記録中の釈明書、準備書面(二号)等の通りである。尚原判決は、判断遺脱もないと云うが、被上告人は組合長として組合を解散するときは、上告人に約した換地修正等現務の履行義務があるのに、放任して解散したのは不法行為であり、又債務不履行である。これを判断したならば請求棄却はあり得ない。

 

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