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15 祭司の長と學者たち其行たまへる奇事を見また兒童輩の殿にて呼ハりダビデの裔ホザナよと云を聞て怒を含
16 イエスに曰けるハ彼等が言ことを聞やイエス答て曰けるハ然り嬰兒乳哺者の口に讃美を備たりと録されしを未だ讀ざる乎
17 遂に彼等を離れ都城を出てベタニヤに往そこに宿れり
18 翌あさ都城へ返るとき飢けれバ
19 路の旁にある一の無花果の樹を見て其處に来りしに葉の他に
[千六百八十三] 何も見ざりしかバ今よりのち永久も果を結ぶこと得ざれと之に曰たまひけれバ無花果立刻に枯ぬ
20 弟子これを見て奇み曰けるハ無花果の枯ること何に速や
21 イエス答て彼等に曰けるハ我まことに爾曹に告んもし信仰ありて疑ハずバ此無花果に於るが如耳ならず此山に命じ此より移されて海に入よと云とも亦成ん
22 且なんぢらが信じて祈らバ求ふ所ことゞゝく得べし
23 イエス殿に入て教たるとき祭司の長および民の長老たち來り曰けるハ何の権威を以て此事をなすや誰この権威を爾に予しや
24 イエス答て彼等に曰けるハ我もし一言なんぢらに問ん我にその事を告なバ我も何の権威をもて之を行といふことを爾曹に曰べし
25 ヨハ子のバプテスマハ何處よりぞ天よりか人よりか彼等たがひに論じ曰けるハ若し天よりと云バ然バ何ゆゑ信ぜざるかと云ん
26 もし人よりと云バ我儕民を畏る蓋みなヨハ子を預言者と爲バなり
27 遂に答て知ずと曰イエス彼等に曰けるは我も何の権威を以て之を行か爾曹に語らじ
28 爾曹いかに意ふや或人二人の子ありしが長子に來りて曰けるハ子よ今日わが葡萄園に往て働け
29 答て否と曰しがのち悔て往たり
30 また次子にも前の如く曰けるに答て君よ我往べしと曰しが遂に往ざりき
31 此二人のもの孰か父の旨に遵ひし彼等いひけるハ長子なりイエス彼等に曰けるは誠に爾曹に告ん税吏および娼妓ハ爾曹より先に神の國に入べし
32 夫ヨハ子義道をもて來りしに爾曹これを信ぜず税吏娼妓は之を信じたり爾曹これを見てなほ悔改めず彼を信ぜざりき
33 また一の譬を聞ある家の主人葡萄園を樹り籬を環らし其中に酒榨をほり塔をたて農夫に貸て他の國へ往しが
34 果期ちかづきけれバ其果を収ん爲に僕を農夫のもとに遣せり
35 農夫と其僕等
[千六百八十四] を執へ一人を鞭ち一人を殺し一人を石にて撃り
36 また他の僕を多く遣しけるに之にも前の如くせり
37 我子ハ敬ふならんと謂て終に其子を遣しゝに
38 農夫等その子を見て互に曰けるハ此ハ嗣子なり率これを殺して其産業をも奪べしと
39 即ち之を執へ葡萄園より逐出して殺せり
40 然バ葡萄園の主人きたらん時にこの農夫に何を爲べき乎
41 彼等イエスに曰けるハ此等の惡人を甚く討滅し期に及てその果を納る他の農夫に葡萄園を貸予ふべし
42 イエス彼等に曰けるハ聖書に工匠の棄たる石ハ家の隅の首石となれり是主の行給ることにして我儕の目に奇とする所なりと録されしを未だ讀ざる乎
43 是故に我なんぢらに告ん神の國を爾曹より奪その果を結ぶ民に予らるべし
44 この石の上に墜ものハ壞この石上に墜れバ其もの砕かるべし
45 祭司の長等およびパリサイの人かれの譬を聞おのれらを指て言るを識
46 イエスを執へんと欲ひ謀しかど唯民を畏たり蓋かれを預言者とすれば也
[1] イエス彼等に答てまた譬を語りけるハ
2 天國は或王その子の爲に婚筵を設るが如し
3 婚筵に請おける者を迎ん爲に僕たちを遣しゝかど彼等きたることを好まず
4 又ほかの僕を遣さんとして曰けるハ我が筵すでに備れり我が牛また肥畜をも宰りて盡く備りたれバ婚筵に来れと請たる者に言
5 然ども彼等かへりみずして去ぬ其一人ハ己の田にゆき一人ハ己の貿易に往り
6 他の者等ハその僕を執へ辱しめて殺せり
7 王これを聞て怒り軍勢を遣して其殺せる者を亡し又その邑を焼たり
8 是に於てその僕等に曰けるハ婚筵すでに備れども請たる者ハ客となるに堪ざる者なれバ
9 街に往て遇ほどの者を婚筵に請け
10 その僕途に出て善者をも惡
[千六百八十五] 者をも遇ほどの者を悉く集けれバ婚筵の客充満す
11 王客を見んとて來りけるに茲に一人の禮服を着ざる者あるを見て
12 之に曰けるハ友よ如何なれバ禮服を着ずして此處に來る乎かれ黙然たり
13 遂に王僕に曰けるはハ彼の手足を縛りて外の幽暗に投いだせ其處にて哀哭また切齒すること有ん
14 それ召るゝ者ハ多しと雖も選るゝ者ハ少すくなし
15 此時パリサイの人いでゝ如何にしてか彼を言誤らせんと相謀り
16 その弟子とヘロデの黨を遣して云せけるハ師よ爾は眞なる者なり眞をもて神の道を教また誰にも偏らざることを我儕ハ知そは貌に由て人を取ざれバ也
17 然バ貢をカイザルに納るハ善や惡や爾いかに意か我儕に告よ
18 イエスその惡を知て曰けるハ偽善者よ何ぞ我を試むるや
19 貢の銀錢を我に見せよ彼等デナリ一をイエスに携來りしに
20 之に曰けるハ此像と號は誰か
21 答てカイザル也といふ是に於てイエス彼等に曰けるハ然バカイザルの物はカイザルに歸しまた神の物は神に歸すべし
22 彼等之をきゝ奇としてイエスを去ゆけり
23 復生なしと言なせるサドカイの人この日イエスにきたり問て
24 曰けるハ師よモーセの云るに人もし子なくして死なば兄弟その妻を娶りて子をうみ兄弟の後を嗣すべしと
25 茲に我儕の中に兄弟七人ありしが兄めとりて死に子なきが故に其妻を次子に遺れり
26 その二その三その七まで皆然す
27 後婦もまた死たり
28 甦る時は此婦七人のうち誰の妻なるべきか是みな彼を娶し者なれば也
29 イエス答て彼等に曰けるは爾曹聖書も神の能力をも知らざるに由て誤れり
30 それ甦る時は娶らず嫁ず天にある神の使等の如し
31 死し者の甦ることに就てハ爾曹に神の告たまひし言に
32 我アブラハムの神イサクの神ヤコブの神なりとあるを
[千六百八十六] 未だ讀ざる乎そもゝゝ神は死にし者の神に非ず生る者の神なり
33 人々これを聞て其訓を驚けり
34 イエス、サドカイの人をして口を塞がしめたりと聞てパリサイの人一處に集りけるが
35 その中なる一人の教法師イエスを試みん爲に問て曰けるハ
36 師よ律法のうち何の誡が大なる
37 イエス答けるは爾心を盡し精神を盡し意を盡し主なる爾の神を愛すべし
38 これ第一にして大なる誡なり
39 第二も亦これに同じ己の如く爾の隣を愛すべし
40 凡の律法と預言者は此二の誡に因り
41 パリサイの人の集れる時イエス彼等に問て曰けるハ
42 爾曹キリストについて如何におもふ乎これ誰の子なるか彼等イエスに曰けるハダビデの裔なり
43 彼等に曰けるは然バダビデ霊に感じて何故これを主と稱へし乎ダビデ言
44 主わが主に曰けるは我なんぢの敵を爾の足凳とするまで我がみぎに坐すべしと
45 然バダビデ既に之を主と稱たれば如何でその子ならん乎
46 誰一言これに答ること能ハず此日より敢て又とふ者なかりき
[1] 厥時イエス人々と弟子とに告て曰けるハ
2 學者とパリサイの人モーセの位に坐す
3 故に凡て彼等が爾曹に言ところを守て行ふべし然ど彼等が行ふ所を爲こと勿れ蓋かれらは言のみにして行ハざれバ也
4 また彼等は重かつ負がたき荷を括て人の肩に負せ己は一の指をもて之を動すことすら好ず
5 彼等の行ハ凡て人に見れんが爲にする也その佩經を幅濶し其衣の裾を大にし
6 また筵席の上座会堂の高座
7 市上の問案人々よりラビラビと稱られんことを好む
8 爾曹ハラビの稱を受ること勿れなんぢらの師ハ一人すなはちキリストなり爾曹ハみな兄弟なり
9 また地にある者を父と稱ること勿れ爾曹の父ハ一人すなはち天に在す者なり
[千六百八十七] 10 また導師の稱を受ること勿れなんぢらの導師ハ一人すなはちキリストなり
11 爾曹のうち大なる者ハ爾曹の僕と爲べし
12 凡そ自己を高する者ハ卑せられ自己を卑する者ハ高せられん
13 噫なんぢら禍なるかな偽善者なる學者とパリサイの人よ蓋なんぢら天国を人の前に閉て自ら入ず且いらんとする者の入をも許さゞれバ也
14 噫なんぢらは禍なるかな偽善なる學者とパリサイの人よ蓋なんぢら嫠婦の家を呑いつハりて長き祈をなす之に由て爾曹最も重き審判を受べければ也
15 あゝ禍なるかな偽善なる學者とパリサイの人よ蓋なんぢら徧く水山を歴巡り一人をも己が宗旨に引入んとす既に引入れバ之を爾曹よりも倍したる地獄の子と爲り
16 噫なんぢら禍なるかな瞽者なる相よ爾曹ハいふ人もし殿を指て誓ハゞ事なし殿の金を指て誓ハゞ背べからずと
17 愚にして瞽なる者よ金と金を聖かならしむる殿とハ孰か尊き
18 又いふ人もし祭の壇を指て誓ハゞ事なし其上の禮物を指て誓ハゞ背べからずと
19 愚にして瞽なる者よ禮物と禮物を聖かならしむる祭の壇とハ孰か尊き
20 それ祭の壇を指て誓ふものハ祭の壇および其上の凡の物を指て誓ふなり
21 また殿を指て誓ふものハ殿および其内に在す者を指て誓ふなり
22 また天を指て誓ふ者ハ神の實座および其上に坐する者を指して誓ふなり
23 噫なんぢらは禍なるかな偽善なる學者とパリサイの人よ蓋なんぢら薄荷茴香馬芹の十分の一を取納て律法の最も重き義と仁と信とを爾曹ハ廃これ行ふ可ものなり彼も亦棄べからざる者なり
24 瞽者の相者よ爾曹ハ蠉を漉出して駱駝を呑もの也
25 あゝ禍なるかな偽善なる學者とパリサイの人よ爾曹杯と皿の外を潔して内にハ貪欲と淫欲とを充せり
26 瞽なるパリサイの人よ爾曹まづ杯と盤の内を潔せよ然
[千六百八十八] バその外も亦きよまるべし
27 噫なんぢら禍なる哉偽善なる學者とパリサイの人よ爾曹ハ白く塗たる墓に似たり外ハ美しく見れども内ハ骸骨と諸の汚穢にて充
28 此の如く爾曹もまた外ハ義く人に見れども内ハ偽善と不法にて充
29 噫なんぢら禍なるかな偽善なる學者とパリサイの人よ爾曹預言者の墓をたて義人の碑を飾れり
30 又いふ我儕もし先祖の時にあらバ預言者の血を流すことに與せざりしをと
31 然バ爾曹ハ預言者を殺し者の裔なることを自ら證す
32 なんぢの先祖の量を充せ
33 蛇蝮の類よ爾曹いかで地獄の刑罰を免れんや
34 是故に我爾曹に預言者と知者と學者を遣さんに或は之を殺し又十字架に釘或は其会堂にて之を鞭ち或は邑から邑へ逐苦めん
35 そハ義なるアベルの血より殿と壇の間にて爾曹が殺しバラキアの子ザカリアの血に至るまで地に流したる義人の血ハ凡て爾曹に報來らんが爲なり
36 われ誠に爾曹に告ん此事みな此世に報來るべし
37 噫エルサレムよエルサレムよ預言者を殺し爾の遣さるゝ者を石にて撃ものよ母鳥の雛を翼の下に集る如く我なんぢの赤子を集んとせしこと幾度ぞや然ど爾曹は好ざりき
38 視よ爾曹の家は荒地となりて遺れん
39 われ爾曹に告ん主の名に託て來る者は福なりと爾曹の言んとき至るまでハ今より我を見ざるべし
[1] イエス殿より出けれバ其弟子すゝみて殿の構を彼に見せんとしたりしに
2 イエス彼等に曰けるは爾曹すべて此等を見ざるか我まことに爾曹に告ん此處に一の石も石の上に圯れずしてハ遺らじ
3 イエス橄欖山に坐したまへるとき弟子ひそかに來りて曰けるは何の時にこのこと有やまた爾の來る兆と世の末の兆は如何なるぞや我儕に告たまへ
4 イエス答て彼等に曰
[千六百八十九] けるは爾曹人に欺かれざるやう愼よ
5 蓋おほくの人わが名を冒きたり我はキリストなりと云て多の人を欺くべし
6 又なんぢら戰と戰の風聲をきかん然ど愼て懼るゝ勿れ此等の事は皆ある可なり然れども末期は未だ至らず
7 民おこりて民をせめ國は國をせめ餓饉疫病地震ところどころに有ならん
8 是みな禍の始なり
9 其とき人なんぢらを患難に付し爾曹を殺すべし又なんぢら我名の爲に萬民に憎れん
10 此のとき幾多のもの礙かつ互に憾むべし
11 また僞預言者おほく起て多の人を欺かん
12 また不法みつるに由て多の人の愛情ひやゝかに爲べし
13 然ど終まで忍ぶ者は救るゝことを得ん
14 また天國の此福音を萬民に證せん爲に普く天下に宣傳られん然るのち末期いたるべし
15 是故に預言者ダニエルに託て言れたる所の殘暴にくむべきもの聖所に立を見バ(讀者よく思ふべし)
16 厥時ユダヤにをる者は山に遁れよ
17 屋上に在ものは其家の物を取んとて下る勿れ
18 田にをる者は其衣を取んとて歸る勿れ
19 其日には孕める者と乳を飲する婦は禍なる哉
20 爾曹冬または安息日に逃ることを免れん爲に祈れ
21 其とき大なる患難あり此の如き患難は世の初より今に至るまで有ざりき又後にも有じ
22 若その日を少くせられずバ一人だに救るゝ者なからん然ど選れし者の爲にその日は少くせらるべし
23 其時もしキリスト此處にあり彼處にありと爾曹にいふ者あるとも信ずる勿れ
24 そは僞キリスト僞預言者たち起て大なる休徴と異能を行ひ選れたる者をも欺くことを得バ之を欺く可れバ也
25 われ預じめ爾曹に之を告
26 若キリスト野に在といふ者あるとも出る勿れ室に在と云もの有とも信ずる勿れ
27 そは電の東より出て西にまで閃くが如く人の子も來るべければ也
28 それ屍のある處に
[千六百九十] は鷲あつまらん
29 此等の日の患難の後たゞちに日は暗く月は光を失ひ星は空よりおち天の勢ひ震ふべし
30 其とき人の子の兆天に現るまた地上にある諸族は哭哀み且人の子の権威と大なる栄光をもて天の雲に乗來るを見ん
31 又その使等を遣し箛の大なる聲を出しめて天の此極より彼極まで四方より其選れし者を集むべし
32 夫なんぢら無花果樹によりて譬を學べ其枝すでに柔かにして葉萌めば夏の近きを知
33 此の如く爾曹も凡て此等の事を見バ時ちかく門口に至ると知
34 われ誠に爾曹に告ん此等の事ことゞゝく成まで此民は廢ざるべし
35 天地は廢ん然ど我言は廢じ
36 その日その時を知のは唯わが父のみ天の使者も誰もしる者なし
37 ノアの時の如く人の子の來るも亦然らん
38 それ洪水の前ノア方舟にいる日までは人々飮食嫁娶などして
39 洪水の來り悉く之を滅すまで知ざりき此の如く人の子も亦きたらん
40 其とき二人田に在んに一人は取れ一人は遺さるべし
41 二人の婦磨ひき居んに一人はとられ一人は遺さるべし
42 是故に爾曹の主いづれの時きたるかを知ざれば怠らずして守れ
43 爾曹これを知もし家の主人ぬすびとの何の時きたるかを知ば其家を守りて破らすまじ
44 然ば爾曹もまた備をせよ意ざる時に人の子きたらんと爲ばなり
45 時に及て糧を彼等に予さする爲に主人がその僕等の上に立たる忠義にして智僕は誰なる乎
46 その主人の来らん時かくの如く勤るを見るゝ僕は福なり
47 我まことに爾曹に告ん其所有をみな彼に督らすべし
48 若その惡僕おのが心に我が主人の來るは遅らんと意ひ
49 その朋輩を打撻きて酒に酔たる者どもと共に飮食し始なば
50 その僕の主人おもはざるの日に來りて
51 之を斬殺し其報を偽善者と同うすべし其處にて哀哭切
[千六百九十一] 齒すること有ん
[1] 其とき天国は燈を執て新郎を迎に出る十人の童女に比ふべし
2 その中の五人は智く五人は愚なり
3 愚なる者は其燈をとるに油を携へざりしが
4 智き者は其燈と兼に油を器に携へたり
5 新郎おそかりければ皆假寢して眠れり
6 夜半に叫びて新郎きたりぬ出て迎よと呼聲ありければ
7 この童女ども皆おきて其燈を整へたるに
8 愚なるもの智き者に曰けるは我儕の燈熄んとす願くは爾曹の油を我儕に分子よ
9 智きもの答て曰けるは我儕と爾曹とは恐くは足まじ爾曹賣者に往て己が爲に買
10 かれら買んとて往しとき新郎きたりければ既に備たる者は之と偕に婚筵に入しかば門は閉られたり
11 斯て後その餘の童女きたりて曰けるは主よ主よ我儕の爲に開たまへ
12 答て我まことに爾曹に告ん我は爾曹を知ずと曰り
13 然ば怠らずして守れ爾曹その日その時を知ざれば也
14 また天国は或人の旅行せんとして其僕をよび所有を彼等に預るが如し
15 各人の智慧に從ひて或者には銀五千或者には二千或者には一千を予おき直に旅行せり
16 五千の銀を受し者は往て之を貿易し他に五千を得たり
17 二千を受し者もまた他に二千を得たり
18 然るに一千を受し者は往て地を掘その主の金を藏せり
19 歷久て後その僕等の主かへりて彼等と會計せしに
20 五千の金を受し者その他に五千の銀を携來りて主よ我に五千の銀を預しが他に五千の銀を儲たりと曰けれバ
21 主かれに曰けるはあゝ善かつ忠なる僕ぞ爾寡なる事に忠なり我なんぢに多ものを督らせん爾の主人の歡樂に入よ
22 二千の銀を受し者きたりて主よ我に二千の銀を預しが他に二千の銀を儲たりと曰けれバ
23 主かれ
[千六百九十二] に曰けるはあゝ善且忠なる僕ぞなんぢ寡なる事に忠なり我なんぢに多ものを督らせん爾の主人の歡樂に入よ
24 また一千の銀を受し者きたりて曰けるは主よ爾は厳人にて播ざる處より穫ちらさざる處より斂ることを我は知
25 故に我懼ゆき主の一千の銀を地に藏して置り今なんぢ爾の物を得たり
26 その主こたへて曰けるは惡かつ堕れる僕ぞ爾わが播ざる處よりかり散さざる處より斂をことを知か
27 然らバ我が金を兌換舗に預置べきなり然バ我が歸たるとき本と利とを受べし
28 是故に彼の一千の銀を取て十千の銀ある者に予よ
29 それ有る者は予られて尚あまりあり無有者はその有る物をも奪るゝ也
30 無益なる僕を外の幽暗に逐やれ其處にて哀哭切齒すること有ん
31 人の子おのれの栄光をもて緒の聖使を牽來る時はその栄光の位に坐し
32 萬國の民をその前に集め羊を牧者の綿羊と山羊とを別が如く彼等を別ち
33 綿羊をその右に山羊をその左に置べし
34 斯て王その右にをる者に云ん我父に恵るゝ者よ來りて創世より以来なんぢらの爲に備られたる國を嗣
35 蓋なんぢら我が飢し時われに食せ渇しとき我に飮せ旅せし時われを宿らせ
36 裸なりし時われに衣せ病しとき我をみまひ獄に在しとき我に就ればなり
37 是に於て義者かれに答て云ん主よ何時なんぢの飢たるを見て食せまた渇たるに飮しゝ乎
38 何時主の旅したるを見て宿らせ又裸なるに衣しや
39 王こたへて彼等に曰ん我まことに爾曹に告ん既に爾曹のわが此兄弟の最微者の一人に行へるは即ち我に行しなり
40 遂にまた左にをる者に曰ん罰せらるべき者よ我を離れて悪魔と其使者の爲に備たる熄ざる火に入よ
41 蓋なんぢら我が飢し時われに食せず渇しとき我に飮せず
42 旅せし時われを宿らせず裸なりし時われに衣ず病また獄に在し時われを顧ざれば也
43 是に於て彼等また答て曰ん主よ何時なんぢの飢また渇また旅し又裸また病また獄に在を見て主に事ざりしや
44 其とき王こたへて彼等にいわん我まことに爾曹に告ん此最微者の一人に行はざるは即ち我に行はざりし也
45 此等の者は窮なき刑罰にいり義者は窮なき生命に入べし
[1] イエスこの緒の言を言竟て其弟子に曰けるは
2 二日ののち過越節なるは爾曹が知ところ也それ人の子は十字架に釘られん爲に付さるべし
3 此とき祭司の長および民の長老等カヤパと云る祭司の長の邸の庭に集り
4 詭計をもてイエスを執へ殺さんと共々に謀いひけるは
5 祭の日には行べからず恐くは民の中に乱おこらん
6 イエス、ベタニヤの癩病人シモンの家に居たまへる時
7 ある婦蠟石の器物に價たかき香膏を盛てイエスの食する所に携來りて其首に斟しかば
8 弟子等これを見て怒を含いひけるは此糜費のことを爲は何故ぞや
9 若これを賣ば多の金を得て貧者に施すことを得ん
10 イエス知て彼等に曰けるは何ぞ此婦を惱すや彼は我に善事を行へるなり
11 貧者は常に爾曹と偕にあれど我は常に爾曹と偕に在ず
12 彼がこの香油を我體に斟しは我の葬の爲に行る也
13 われ誠に爾曹に告ん天の下いづくにても此福音の宣伝らるゝ處には此婦の行し事もその記念の爲に言傳らるべし
14 其とき十二弟子の一人なるイスカリオテのユダと云るもの祭司の長等の所へ往て曰けるは
15 我なんぢらに彼を賣さば幾何を予るか遂に銀三十にて約したり
16 此時よりイエスを賣さんと機を窺ひぬ
17 除酵
[千六百九十四] 節の首の日弟子イエスに來り曰けるは我儕すぎこしの食を爾の爲に何處に備ふべき乎
18 イエス曰けるは京城にいり某に至ていへ師いふ我が時近ければ我弟子と偕に逾越の節筵を爾が家にて行べし
19 弟子イエスに命ぜられし如して逾越の食を備ふ
20 日くるゝ時イエス十二弟子と偕に席につき
21 食する時いひけるは我まことに爾曹に告ん爾曹のうち一人我を賣なり
22 彼等いたく憂へて各イエスに曰出けるは主よ我なる乎
23 答て曰けるハ我と偕に手を盂に着る者ハ即ち我を賣す者なり
24 人の子ハ己について録されたる如く逝ん然ど人の子を賣す者ハ禍なるかなその人生れざりしならば反て幸なりしならん
25 彼を賣すユダ答て曰けるハラビ我なるや之に答て曰けるハ爾の言る如し
26 かれら食するときイエスパンを取て祝し之をさき弟子に與て曰けるハ取て食これハ我身なり
27 また杯を取て謝し彼等に與て曰けるハ爾曹みな此杯より飮
28 これは新約の我血にして罪を赦さんとて衆の人の爲に流所のもの也
29 われ爾曹に告ん今より後なんぢらと偕に新しき物を吾父の國に飮ん日までハ再びこの葡萄にて造れる物を飮じ
30 かれら歌を謳て観覧山に往り
31 其時イエス彼等に曰けるハ今夜なんぢら皆われに就て礙かん蓋われ牧者を撃バ群の綿羊ちらんと録されたれバ也
32 然ど我甦りて後なんぢらに先ちガリラヤに往べし
33 ペテロ答てイエスに曰けるハ皆なんぢに就て礙くとも我ハ終に礙かじ
34 イエス彼に曰けるハ我まことに爾に告ん今夜鶏なかざる前に爾三次われを知らずと言ん
35 ペテロ彼に曰けるハ我ハ主と偕に死るとも爾を知ずと言じ弟子みな如此いへり
36 厥時イエス彼等と偕にゲッセマネといふ處に至て弟子等に曰けるハ爾曹こゝに坐われ彼處に往て祈らん
[千六百九十五] 37 ペテロ及ゼベダイの二人の子を携て憂ひ哀みを催し
38 彼等に曰けるハ我心いたく憂て死るバかり也こゝに待て我と偕に目を醒しをれ
39 少し進往てひれふして祈いひけるハ吾父よ若かなハゞ此杯を我より離ち給へ然ど我心の從を成んとするに非ず聖旨に任せ給へ
40 而して弟子に來り其寢たるを見てペテロに曰けるハ如此一時も我と偕に目を醒をること能ハざる乎
41 惑に入ぬやう目を醒かつ祈その靈にハ願なれど肉體よわきなり
42 二次ゆきて復いのり曰けるハ吾父よ若われに此杯を飮さで離つことを能ずバ聖旨に任せ給へ
43 來りて又かれらの寢たるを見るこれ彼等の目疲たる也
44 彼等を離れて又ゆき第三次も同言をもて祈れり
45 遂に其弟子に來りて曰けるハ今ハ寢て休め時ハ近し人の子罪人の手に付されん
46 起よ我儕往べし我を賣す者近きたり
47 如此いへるとき十二の一人なるユダ劔と棒とを持たる多の人々と偕に祭司の長と民の長老の所より來る
48 イエスを賣す者かれらに號をなして曰けるハ我が接吻する者は夫なり之を執へよ
49 直にイエス來りラビ安かと曰て彼に接吻す
50 イエス彼に曰けるハ友よ何の爲に來るや遂に彼等すゝみ來り手をイエスに措て執へぬ
51 イエスと偕に在し者の一人手をのべ劔を抜て祭司の長の僕を撃その耳を削おとせり
52 イエス彼に曰けるハ爾の劔を故處に収よ凡て劔をとる者ハ劔にて亡ぶべし
53 我いま十二軍餘の天使を吾父に請て受ること能ハずと爾曹おもふや
54 もし然せば如此あるべき事を錄し聖書に如何で應ハん乎
55 此時イエス人人に曰けるハ劔を棒とを持て盗人を執ふる如くして我を執に來る乎われ日々爾曹と偕に殿に坐して誨しに爾曹われを執ざりし
56 然ど此の如くなるハ皆預言者の錄たる所に應成せん爲なり
[千六百九十六] 遂に弟子等みなイエスを離れて逃去ぬ
57 イエスを執たる者これを曳て學者と長老の集れる所の祭司の長カヤパに携ゆく
58 ペテロ遠く離れてイエスに從ひ祭司の長の庭にまで至その結局を見んとて内にいり僕と偕に坐せり
59 祭司の長等および長老のすべての議員ともにイエスを殺さんとして妄證を求れども得ず
60 多の妄りの證者きたれども亦えず後また妄りの證者二人きたりて曰けるハ
61 この人嚢に言ることあり我よく神の殿を毀ちて三日の内に之を建うべしと
62 祭司の長たちてイエスに曰けるハ爾こたふる言なき乎この人々の爾に立る證據は如何
63 イエス黙然たり祭司の長こたへて彼に曰けるハ爾キリスト神の子なるか我なんぢを活神に誓せて之を告しめん
64 イエス彼に曰けるは爾が言る如し且われ爾曹に告ん此のち人の子大権の右に坐して天の雲に乗て來るを爾曹みるべし
65 是に於て祭司の長其衣を裂て曰けるハ此人ハ褻瀆ことを言り何ぞ外に證據を求んや爾曹も今その褻瀆たることを聞
66 なんぢら如何おもふ乎かれら答て曰けるハ彼ハ死に當れり
67 是に於て彼等その面に唾し且拳にて撃りまた或人かれを批いひけるハ
68 キリストよ爾を撃者ハ誰か我儕に預言せよ
69 ペテロ庭に坐ゐけるに或婢きたりて爾もガリラヤのイエスと偕なりと曰ければ
70 ペテロ凡の人の前に此言を肯ハずして我なんぢが言ところを知ずと曰り
71 出て門口に至る時また他の婢これを見て其處にをる者に曰けるは此人もナザレのイエスと偕に在し
72 ペテロまた肯ハずして誓ふ我この人を知らずと
73 暫くありて旁らに立たる者すゝみ近てペテロに曰けるハ誠に爾もその黨の一人なり蓋なんぢの方言なんぢを顯せり
74 此に於てペテロ詈り且誓て我その人を知ずと曰しが頓て鷄鳴
[千六百九十七] ぬ
75 ペテロ、イエスの鷄なかざる前なんぢ三次われを知ずといはんと云たまへる言を憶起し外に出て悲み哭り
[1] 平旦になり凡ての祭司の長と民の長老ともに謀てイエスを殺さんとし
2 既に彼を縛ひきゆきて方伯のポンテオ ピラトに解せり
3 是に於てイエスを賣しゝユダ彼の死に定られしを見て悔その銀三十を祭司の長長老等に返して
4 曰けるは無辜の血を付し我ハ罪を犯しぬ彼等いひけるハ我儕に於て何ぞ與らんや爾みづから當べし
5 ユダその銀を殿に投棄て其處を去ゆきて自ら縊たり
6 祭司の長等この銀を取て曰けるは此ハ血の價なれバ賽銭の箱に入べからずとて
7 共に謀この銀をもて旅客を葬るために陶工の田を買り
8 故に其田は今に至まで血田と稱らる
9 是に於て預言者エレミヤに託いはれたる言にイスラエルの民に估られ估られし者の値の銀三十を取
10 主の我に命ぜし如く陶工の田を買と有に應へり
11 偖イエス方伯の前にたつ方伯イエスに問て曰けるは爾はユダヤ人の王なるかイエス之に曰けるは爾が言る如し
12 祭司の長長老たち彼を訴ふるども何の答もせず
13 是に於てピラト彼に曰けるは此人々汝に立る證のかく大なるを爾きかざる乎
14 方伯の甚奇とするまでにイエス一言も答せざりき
15 この祭の日には方伯より民の願に任せて一人の囚人を釋の例あり
16 時にバラバと云る一人の名高き囚人ありけれバ
17 ピラト民の集りしとき彼等に曰けるハバラバか又ハキリストと稱ふるイエスなる乎なんぢら誰を釋さんと欲ふや
18 これ娟嫉によりてイエスを解したりと知バなり
19 方伯審判の座に坐りたる時その妻いひ遣しけるハ此義人に爾干ること勿れ蓋われ
[千六百九十八] 今日夢の中に彼につきて多く憂たり
20 祭司の長長老たちバラバを釋しイエスを殺さんことを求と民に唆む
21 方伯こたへて彼等に曰けるハ二人のうち執か我なんぢらに釋さんことを望むや彼等バラバと答ふ
22 ピラト曰けるハ然バキリストと稱ふるイエスに我なにを處べきか衆いふ十字架に釘よ
23 方伯いひけるハ彼なにの惡事を行しや彼等ますゝゝ喊叫て十字架に釘よと曰
24 ピラトその言の益なくして唯亂の起んとするをしり水を取て人々の前に手をあらひ曰けるハ此義者の血に我は罪なし爾曹みづから之に當れ
25 民みな答て曰けるハ其血ハ我儕と我儕の子孫に係るべし
26 是に於てバラバを彼等に釋しイエスを鞭ちて之を十字架に釘ん爲に付したり
27 方伯の兵卒イエスを携へ公廳に至り全營を其もとに集め
28 彼の衣を褫て綠色の袍を着せ
29 棘にて冕を編その首に冠しめ又葦を右手に持せ且その前に跪づき嘲弄して曰けるハユダヤ人の王安かれ
30 また彼に唾し其葦を取て其首を撃り
31 嘲弄し畢て其袍をはぎ故衣をきせ十字架に釘んとて彼を曳ゆく
32 その出し時クレ子人のシモンといふ者に遇ければ強て之に十字架を負せたり
33 彼等ゴルゴタ譯バ即ち髑髏と云る處に來り
34 醋に膽を和せてイエスに飮せんと爲たりしに嘗て飮ことをせざりき
35 斯てイエスを十字架に釘しのち䦰を拈て其衣を分これ預言者の言に彼等互に我が衣を分わが裏衣を䦰にすと云しに應へり
36 兵卒こゝに坐してイエスを守れり
37 また罪標に此ハユダヤ人の王イエスなりと書して其首の上に置り
38 其とき二人の盗人イエスと偕に一人ハ其右一人ハ其左に十字架に釘らる
39 往來の者イエスを詈り首を搖て曰けるハ
40 殿を毀ちて三日に之を建る者よ自己を救へ爾もし神の子ならば十
[千六百九十九] 字架より下よ
41 祭司の長學者長老等も亦おなじく嘲弄して曰けるハ
42 人を救て己が身を救あたはず若イスラエルの王たらば今十字架より下るべし然バ我儕かれを信ぜん
43 彼ハ神に依頼めり神もし彼を愛しまバ今救ふべし蓋かれ我ハ神の子なりと云し也
44 同に十字架に釘られたる盗賊も同くイエスを詈れり
45 昼の十二時より三時に至るまで其地あまねく黑暗となる
46 三時ごろイエス大声にエリ、エリ、ラマサバクタニと呼りぬ之を譯ば吾神わが神なんぞ我を遺たまふ乎と云る也
47 旁らに立たる者のうち或人これを聞て彼はエリヤを呼るなりと曰
48 その中の一人直に走り往て海綿をとり醋を含せ之を葦につけてイエスに飮しむ
49 餘人曰けるは俟エリヤ來りて彼を救ふや否試べし
50 イエスまた大声に呼りて息絶たり
51 殿の幔上より下まで裂て二となり又地ふるひ磐さけ,br />
52 墓ひらけて既に寝たる聖徒の身おほく甦へりイエスの甦れる後
53 墓を出て聖城に入おほくの人に現れたり
54 百人の長と偕にイエスを守たるもの地震および其有し事を見て甚く懼れ此ハ誠に神の子なりと曰り
55 此處に遥に望ゐたる多の婦ありし彼等ハガリラヤよりイエスに從ひて事し者等なり
56 其中にをりし者ハマグダラのマリアとヤコブ、ヨセの母なるマリアとゼベダイの子等の母となり
57 日くれてイエスの弟子なるヨセフといへるアリマタヤの富人きたりてピラトに往イエスの屍を請しかバ
58 ピラトその屍を付せと命ず
59 ヨセフ屍を取て潔き枲布に裏み
60 之を磐に鑿たる己が新しき墓におき大なる石を墓の門に轉して去
61 マグダラのマリアと他のマリアと墓に對て坐し其處に居り
62 預備日の翌日祭司の長とパリサイの人等ピラトの所に集來り曰けるハ
63 主よ我儕億起せり彼の偽者い
[千七百] きて在しとき三日ののち甦らんと言し
64 是故に命じて三日に至まで墓を固守しめよ恐くハ其弟子夜きたりて之を盗み死より甦りたりと民に言ん然バ後の惑ハ先よりも愈勝べし
65 ピラト彼等に曰けるハ守兵ハ爾曹にあり往て意のまゝに固守しめよ
66 是に於て彼等ゆきて石に封印し守兵をして墓を固守しめたり
[1] 安息日終てのち七日の首の日黎明にマグダラのマリア及び他のマリアその墓を観んとて來りしに
2 大なる地震ありて主の使者天より降り墓の門より石を轉し其上に坐す
3 その容貌ハ閃電のごとく其衣ハ雪のごとく白し
4 守兵かれを懼戦き死たる者の如くなりぬ
5 天使こたへて婦に曰けるハ爾曹おそるゝ勿れ我なんぢらが十字架に釘られしイエスを尋ることを知る
6 彼ハ此に在ず其言る如く甦りたり爾曹きたりて主の置れし處を見よ
7 且ゆきて其弟子に告よ彼ハ死より甦り爾曹に先ちてガリラヤに往り彼處に於て爾曹かれを見べし我これを爾曹に告
8 婦懼ながらも甚く喜びて急墓を去り其弟子に告んと走り往り
9 弟子に告んとて往ときイエス彼等に遇て安かれと曰給ひけれバ婦すゝみ其足を抱て拜しぬ
10 イエス彼等に曰けるハ懼るゝ勿れ去て我兄弟にガリラヤに往と告よ彼處にて我を見べし
11 婦の去しのち守兵のうち或者ども城に至り凡て有し事を祭司の長等に告しかバ
12 彼等と長老あつまりて共に謀おほくの銀子を兵卒に給て曰けるハ
13 爾曹いへ我儕が寢たる時その弟子夜きたりて彼を竊めりと
14 此事もし方伯に聞るとも我儕かれに勸て爾曹に憂なからしめん
15 かれら銀子を取て囑められたる如くしたりしに是に於て此の如き話今日に至るまでユダヤ人の中に傳播られた
[千七百一] り
16 十一の弟子ガリラヤに往てイエスの彼等に命じ給ふ所の山に至り
17 イエスを見て拜せり然ど疑へる者もありき
18 イエス進て彼等に語いひけるハ天のうち地の上の凡ての權を我に賜れり
19 是故に爾曹ゆきて萬国の民にバプテスマを施し之を父と子と聖靈の名に入て弟子とし
20 且わが凡て爾曹に命ぜし言を守れと彼等に教よ夫われハ世の末まで常に爾曹と偕に在なりアメン
新約全書馬太傳福音書 終