明治元訳新約聖書(大正4年)/提多書

[二千三十三]
新約全書しんやくぜんしょ使徒しとパウロテトスおくれるしょ

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第一章

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かみしもべまたイエス キリスト使徒しとパウロおな信仰しんかうより眞子まことのこなるテトスふみおく我神われかみえらたまへるひとをして信仰しんかうおこさしめ且神かつかみうやま眞道まことのみちしらしめんため使徒しとつとめをなし
いつはりなきかみ創世よのはじめまへ約束やくそくたまひし永生かぎりなきいのちのぞめり
神己かみおのれさだめおきたまへるときおよびて宣教せんけうよりてこの永生かぎりなきいのちみちあらはせり宣教せんけうすなは我儕われら救主すくひぬしなるかみそのめいわれゆだたまへるところのものなり
ねがはくハなんぢテトスちゝなるかみおよび我儕われら救主すくひぬしキリスト イエスより恩寵めぐみ平康やすきうけ


われなんぢクレテとゞめたるゆゑなんぢをしてかけなくところたゞしくしかつわがなんぢめいぜしごと各邑まちゝゝ長老ちゃうらうたてしめんとてなり
ひともしとがむべきところなく一個ひとりおんなをっとにして其子女そのこども放蕩ほうたうをもてうったへらるることなくしたがハざることなき信者しんじゃならバ長老ちゃうらうたつべきものなり
それ監督かんとくかみ家宰いへづかさなれバかならとがむべきところなくおのまゝをなさず輕易かるゞゝしくいからずさけたしまずひとうたむさぼらず
遠人たびびと懇切ねんごろあしらぜんこの謹虔つゝしみ公義たゞしく聖潔きよくみづかせい
まなびしところ眞道まことのみちまもるべしこれたゞしきをしへひとすゝ且辨駁かつべんばくするものくじかんためなり
そハしたがハずしてむなしろんをいふものまたあざむことなすものおほくして割禮かつれいぞくするものうちにハことかくごとものあれバなり
十一 かれら汚利きたなきりためをしふべからざることをしへて全家ぜんか信仰しんかうほろぼすがゆゑかならず彼等かれらくちをしてふさがしむべし
十二 クレテびとつねいつはりいふもの惡獸あしきけものまた懶惰らんだにしてしょくむさぼものなりと
十三 このあかしまことなり是故このゆゑ爾嚴なんぢきびし彼等かれらいまし彼等かれらをして信仰しんかうかたうし
十四 ユダヤびとあやしはなし眞理まことすつひとたて律法おきてこゝろよすることなからしむべし
十五 潔人きよきひとにハすべてものきよくけがれたるひと不信者ふしんじゃにハひとつ
[二千三十四]
としてきよものなしすで彼等かれらこゝろ良心りゃうしんともにけがれたり
十六 彼等かれらみづかかみしるかたれども其行そのおこなひこれもど彼等かれらにくむべきものなりしたがハざるものなりすべて善事よきわざとりてハすつべきものなり

第二章

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されなんぢ正教ただしきをしへかなことかたるべし
老人らうじんにハ謹愼つゝしみ端莊うやゝゝしきみづかせいすることとをすゝめかつ信仰しんかうあい忍耐しのびとにかたうならんことをすゝむべし
老婦らうふにも聖潔きよきかなおこなひをなさんことひとそしらずさけおほたしまず善事よきことひとをしふることゝをすゝむべし
また彼等かれらをして幼婦わかきをんなおっとあいあい
みづかせい貞潔ていけつにし家務いえのわざをなし慈悲じひいだ其夫そのをっとしたがことをしへしむべし是神これかみことばけがされざらんためなり
なんぢまた幼男わかきをとこみづかせいすることすゝむべし
なんぢ何事なにごとなすにもおのれ善行よきわざ模楷かたとならんことつとをしへつたふるに信實しんじつ端莊うやゝゝしくし
せむべきところなき正言たゞしきことばあらハすべしてきするものをして我儕われらあくいふよしなくみづかはづることをなさしめんためなり
しもべにハおのれ主人しゅじんしたが何事なにごとなすにもこれよろこバせんことつとこれ言咈いひさからハず
もの竊取ぬすみとらこれ忠信ちうしんつくすべきことすゝむべし何事なにごとなすにも我儕われら救主すくひぬしなるかみをしへかざことをせんためなり
十一 それすべてのひとすくひたまかみめぐみあらハれ
十二 我儕われらいまし我儕われらをしてかみうやまハざることなかよくすてみづかせいたゞし且虔かつつゝしみて今世いまのよながら
十三 望所のぞむところさいはひおほいなるかみすなはち我儕われら救主すくひぬしイエス キリストさかえあらはれんこと望待のぞみまたしむ
十四 キリスト我儕われらためおのれ舍給すてたまへりこれわれらをすべてつみよりあがないだ且己かつおのれため一民ひとつのたみきよこれをして熱心ねっしん善事よきわざおこなハしめんためなり
十五 なんぢ此等これらことかたりまたすゝなんぢすべて權威けんゐいましむることをすべし爾人なんぢひとかろんぜらるゝなか

第三章

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なんぢ彼等かれらをして執政つかさ權威けんゐあるものとにふく且順かつしたがすべて善事よくことおこなそなへをなし
ひとそし
[二千三十五]
らずあらそハず和平おだやかにしすべてひとあしらふに柔和にうわてせんことを憶起おもひださしむべし
我儕われらさきにハおろかなる者順ものしたがはざる者迷ものまよへるもの諸般さまゞゝよくたのしみ奴隷どれいなれるものうらねたみておくりしものにくむべきものまたたがひにくみあへるものなりしなり
され我儕われら救主すくいぬしなるかみさなけひとあいたまあいあらはれしとき
かれ我儕われらおこなひしところたゞしわざよらたゞその衿恤あはれみしたが重生うまれかはりあらひ聖靈せいれいよりあらたにすることとを我儕われらすくへり
聖靈せいれいすなは神我儕かみわれらをして其恩そのめぐみによりとせられ嗣子よつぎたるをかぎりなき生命いのちのぞまたしめんため
我儕われら救主すくひぬしイエス キリストよりゆたか我儕われらうへそゝぎたまへるところのものなり
しんずべきはなしなりわれなんぢが此等これらことせつかたかみしんずるものをしてつゝしみて善功よきわざつとめしめんことをほっ此等これらことよしまたひとえきあり
なんぢおろかなる辨論べんろん系圖けいづ爭鬪さうたう律法おきて紛爭あらそひさるべし此等これらえきなく亦虛妄またむなしきものなれバなり
異端いたんとなわかれおこひとなんぢこれをひとたびいましめてのちとおざくべし
十一 それかくのごとひと邪僻よこしまにしてみづかつみなるをしりなほこれをおかすことを爾知なんぢしれバなり


十二 アルテマスあるひテキコわれなんぢにつかはさんとき爾急なんぢいそぎてニコポリスきたわれつくべし我彼處われかしこにてふゆすごさんとさだめたり
十三 法律家はふりつかなるゼナスおよびアポロ懇切ねんごろおく彼等かれらをしてともしことなからしめよ
十四 またわれらにつけものをして善功よきわざつとひと所需用なくてならぬものたすけんことをまなびてむすばざることなからしめよ
十五 われともあるものみななんぢのやすきとふなんぢに信仰しんかうありわれあいするものやすきねがはくハ恩寵めぐみなんぢら衆人すべてのものにあらんことをアメン


新約全書提多書 終