明治元訳新約聖書(大正4年)/彼得後書

Wikisource:宗教 > 聖書 > 明治元訳新約聖書 (大正4年) > 彼得後書(明治元訳大正4年)

[二千七十三]
新約全書しんやくぜんしょ使徒しとペテロ後書のちのふみ

Wikipedia
Wikipedia
ウィキペディアペテロの第二の手紙のページがあります。

第一章

編集

イエス キリストしもべまた使徒しとなるシモンペテロ我儕われらかみ救主すくひぬしイエス キリストより我儕われらうけところおなたふと信仰しんかうみちうけものふみおく
ねがはくはかみ我儕われらしゅイエスしるより爾曹なんぢら恩寵めぐみ平康やすきまさんことを
かみその能力ちからしたがひて生命いのち敬虔つゝしみかゝすべてのものを我儕われらたまへりこれわれらさかえとく我儕われらまねたまひものしるよりてなり
またかみそのさかえとくより至大いとおほいなるたふと約束やくそく我儕われらあたたまへり爾曹なんぢらをして此約束このやくそくよりにあるところよく敗壞ほろびまぬかれかみ性質せいしつもたしめんためなり
是故このゆゑ爾曹勤なんぢらつとめ信仰しんかうとくくはとく智識ちしきくは
智識ちしき撙節そんせつくは撙節そんせつ忍耐にんたいくは忍耐にんたい敬虔つゝしみくは
敬虔つゝしみ兄弟きゃうだいむつみくは兄弟きゃうだいむつみあいくはふべし
此等これらのものもしなんぢらのうちあり彌増いやますときは爾曹なんぢらわれらのしゅイエス キリストしることにおこたることなく又實またみむすばざることなきいたらん
此等これらのものゝなきものめしひなりとほみることあたはずかつそのふるつみきよめられしことわするゝなり
是故このゆゑ兄弟きゃうだいつとめ爾曹なんぢらめされしことえらばれしこととを堅固かたうせよ若前もしまへのべたることどもをおこなはゞ爾曹なんぢらいつまでもつまづくことなからん
十一 かくごとくかみなんぢらに我儕われらしゅなる救主すくひぬしイエス キリスト永遠國かぎりなきくにいるめぐみゆたかあたたまふべし


十二 是故このゆゑつねわれなんぢら此等これらことしりかつすでうけたる眞道まことのみちかたけれどなほなんぢらに此事このこと憶起おもひいださせんとしておこたらざるなり
十三 われこの幕屋まくやをるあひだ爾曹なんぢら此事このこと憶起おもひいださせて爾曹なんぢらはげますは當然たうぜんのことゝおもへり
十四 そはわれらのしゅイエス キリストわれしめたまへるごとわれわが幕屋まくやはなるゝことのちかきしればなり
十五 われまた爾曹なんぢらなしてさらのちにもつね此等これらこと憶起おもひいださしめんことをつとむ
十六 われ
[二千七十五]
まへ爾曹なんぢら我儕われらしゅイエス キリスト能力ちから其顯そのあらはたまふことをつぐるにたくみなる奇談あやしきはなしもちゐざりき我儕われらしたし其大そのおほいなる威光ゐくわうものなり
十七 至大いとおほいなる榮光えいくわううちよりこゑありてかれよびこは我心わがこゝろかな愛子あいしなりといへ此時このときかれはかみなるちゝよりたふときさかえうけたり
十八 われらかれとも聖山きよきやまありときこのてんよりいでこゑきけ
十九 こと預言者よげんしゃ確言かたきことばわれらにありこのことば暗處くらきところてれともしびごときものなりあくるまで明星みゃうじゃう爾曹なんぢらこゝろうちいづるまでこれかへりみばよし
二十 まづはじめしるべきこと聖書せいしょすべて預言よげん預言者よげんしゃおのれのこゝろしめせるにあらざるをしらんことなり
二一 そは預言よげんもとより人意ひとのこゝろよりいでしにあらかみぞくする聖人きよきひと聖靈きよきみたまかんじてかたりしものなればなり

第二章

編集

むかたみなかいつはり預言者よげんしゃありきそのごとく爾曹なんぢらなかにもいつはりいでん彼等かれら淪亡ほろびいた異端いたんつたかつおのれをあがなしゅしゅとせずしてすみやかなる淪亡ほろびみづかとるべし
またおほくひとかれらの好色かうしょくならはん眞道まことのみちこれにより謗讟そしりうけ
かれら貪婪心むさぼるこゝろより造言つくりことばまう爾曹なんぢらよりとらんとす
かみさきにつみをかしゝ天使てんのつかひゆるさずこれ地獄じごくなげいれこれ幽穴くらきあなおきこれを禁鋼まもり彼等かれらをして審判さばきときまたしめたまへり

また古世ふるきよゆるさず洪水こうずゐかみうやまはざるほろぼしたゞ義道たゞしきみちつたふるノア一家いっか八人はちにんすくへり
またソドムゴモラまちほろぼさんとさだこれやきはひとなしのちかみうやまはざるものかがみとなし
たゞたゞしロトすなは惡者あしきもの淫亂いんらんおこなひつねうれへものすくへり
この義人たゞしきひとかれらのうちにをり日々ひゞその不法ふほうおこなひ見聞みきゝしておのれたゞしこゝろいためたり
かくごとかみうやまもの患難くわんなんよりすく不義ふぎなるもの審判さばきまでまもりてこればつ
わけけがれたる情慾じょうよくしたがにくよくおこなしゅたるものかろ
[二千七十五]
ずるものばっすること知給しりたまふなり此輩このともがら膽太きもふと自放わがまゝなるものにして尊者たふときものそしることをおそれざるなり
十一 天使てんのつかひ彼等かれらまさりおほいなる權威けんゐ能力ちからもてしゅまへ此尊者このたふときものそしりうったふることを
十二 彼等かれらとられてころさるゝためうまれたる無知獸わきまへなきけものごとしらざるところことそし其邪曲そのよこしまによりほろぼされて不義ふぎむくいうけ
十三 彼等かれら白晝ひる酒食しゅしょくたのしみとすしみなりきづなり爾曹なんぢらとも筵席ふるまひあづかるとき其謊譎そのいつはりたのしみとせり
十四 かれら淫婦いんぷみたつみをかしてやめこゝろかたからざるものまどはし其心そのこゝろ貪婪むさぼりなるこれのろはるべき子輩こどもらなり
十五 かれら正道たゞしきみちはなれてまよひいりボソロなるバラムみちしたがへりバラム不義ふぎむさぼりしものなり
十六 かれその不法ふほうためとがめらるかたることあたはざる驢馬人ろばひとこゑをなして預言者よげんしゃくるひとどめたり
十七 此輩このともがらみづなきなり狂風あらしおはるゝくもなり黑暗くろきやみかれらのためかぎりなくのこれり
十八 そは彼等かれらほこりたる虛誕むなしきことかた肉慾にくよく淫亂いんらんまよへるものうちよりからうじてのがれたるものいざなへばなり
十九 また彼等かれらこれ自由じゆうあたふるととなふれどもみづか淪亡ほろび奴隷しもべたりそはかたるゝもの勝者かつもの奴隷しもべたればなり
二十 彼等かれらもし我儕われらしゅなる救主すくひぬしイエス キリストしるよりけがれのがまたこれにまとはれてかたるゝとき其後そののち狀態ありさままへまさりてさらあしかるべし
二一 かれらみちしり尚復なほそのつたへられしところ聖命きよきいましめすてんよりはむしみちしらざるをよしとすべし
二二 いぬかへりきたりて其吐そのはきたるものくらきよめられて復泥またひぢなかふすいへことはざまことにして彼等かれらかなへり


第三章

編集

あいするもの我今われいまこの第二だいにふみ爾曹なんぢら筆贈かきおく此二書このふたつのふみ爾曹なんぢら眞實しんじつなるこゝろはげま
さき聖預言者きよきよげんしゃかたりしことば爾曹なんぢら使徒等しとたちつたへししゅなる救主すくひぬし命令いましめ記憶おもひいださせんとす
まづはじめ此事このことしるべし末日至すえのひいたらば戯謔者あざけるものいできたおのれよくしたがひてあゆ
しゅ約束やくそくたまひし其臨そのきた
[二千七十六]
何處いづこある列祖せんぞたちねむりしより以來このかたすべての物開闢ものかいびゃくはじめかはることなしいは
彼等かれらかみことばより上古天むかしてんありみづよりいでかつみづよりいでかつみづよりたち
これよりいにしへ世水よみづおほはれてほろびたることしるこのまず
それかみ其言そのことばいまてんたくはこれにてやかためかみうやまはざるひと審判さばきする淪亡ほろびまでのこせり
あいするもの爾曹なんぢらこの一事いちじしらざるべからずしゅおいては一日いちにち千年せんねんごと千年せんねん一日いちにちごと
しゅその約束やくそくたまひしところなすおそきは或人あるひとおそしとおもふがごとくにあら一人ひとりほろぶるをものぞたまはず衆人すべてのひと悔改くいあらためいたらんことをのぞみて我儕われらながしのたまふなり
されしゅきたることぬすびとよるきたるがごとくならん其日そのひには天大てんおほいなるひびきありてさり體質たいしつことゞゝく焚毀やけくず其中そのなかにあるものみな焚盡やけつき
十一 かくごとすべてのものとかされんされ爾曹神なんぢらかみきたるをまちこれをすみやかにせんことをつとめいかに潔行きよきおこなひをなしかみうやまふことをなすべき
十二 かみには天爇毀てんもえくづ體質たいしつ焚鎔やけとけ
十三 され我儕われら其約束そのやくそくよりあたらしきてんあたらしきのぞまてそのうちあり
十四 あいするもの爾曹なんぢらすでにこれのぞまてしみなくきずなくしゅまへ安然あんぜんあらんことをつとめ
十五 かつわれらのしゅ我儕われらながしのたまふは我儕われらすくひとなるをしるべし我儕われらあいする兄弟きゃうだいパウロ其賦そのあたへられし智慧ちゑしたがかつ此事このこと爾曹なんぢら書贈かきおくれり
十六 かれそのすべてふみにも此事このことついかたりたりかれふみなかには難明わきまえがたきところあり無学むがくなる者心ものこゝろかたからざる者他ものほか聖書せいしょ強解しひとくごとこれをも強解しひときみづか敗亡ほろびいたるなり
十七 あいするもの爾曹預なんぢらあらかじめこれしれつゝしめよ惡者あしきもの迷謬あやまりさそはれて其堅そのかたこゝろうしなふことなか
十八 なんぢら益々ますゝゝ我儕われらしゅなる救主すくひぬしイエス キリストしらんことゝ益々ますゝゝその恩惠めぐみしることをつとむべしねがはくは榮光今えいくわういまのちかれしてかぎりなからんことをアメン
[二千七十七]




新約全書使徒彼得後書 終