明治元訳新約聖書（大正4年)/帖撒羅尼迦人後書

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新約全書使徒（しんやくぜんしょしと）パウロテサロニケ人（びと）に贈（おく）れる後書（のちのふみ）

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第一章

パウロ、シルワノ、テモテ我儕（われら）の父（ちゝ）なる神（かみ）および主（しゅ）イエス キリストに在（ある）テサロニケ人（びと）の教會（けうくわい）に書（ふみ）を贈（おく）る
^二 願（ねがは）くは我儕（われら）の父（ちゝ）なる神及（かみおよ）び主（しゅ）イエス キリストより爾曹（なんぢら）恩寵（めぐみ）と平康（やすき）を受（うけ）よ

^三
兄弟（きゃうだい）よ我儕（われら）なんぢらに就（つい）て恒（つね）に神（かみ）に感謝（かんしゃ）すべき也（なり）これ理（り）に合（かな）うこと也（なり）そは爾曹（なんぢら）の信仰（）爾曹（なんぢら）かつ爾曹（なんぢら）おのゝゝ互（たがひ）に愛（あい）すること篤（あつ）く成（なり）たれバ也（なり）
^四 是故（このゆゑ）に我儕（われら）なんぢらの爲（ため）に神（かみ）の教會（けうくわい）の中（なか）に誇（ほこ）る蓋（そは）なんぢら窘迫（せめ）と患難（なやみ）の中（なか）に在（あり）て忍耐（しのび）と信仰（しんかう）を存（たもて）ばなり
^五 これ神（かみ）の義鞫（たゞしきさばき）の表（しるし）なり爾曹（なんぢら）をして神（かみ）の國（くに）の爲（ため）に患難（なやみ）を受（うく）
^六 蓋（そは）なんぢらに患難（なやみ）を加（くはふ）る者（もの）には患難（なやみ）を以（も）て報（むくい）
^七 患難（なやみ）を受（うく）る爾曹（なんぢら）には我儕（われら）と偕（とも）に平安（やすき）を得（うる）ことを以（も）て報（むくゆ）るは神（かみ）の公義（たゞしきこと）なればなり此事（このこと）は主（しゅ）イエス火燄（ほのほ）の中（うち）にて其能力（そのちから）の諸使（つかひたち）と偕（とも）に天（てん）より顯（あらは）れん時（とき）にあり

^八 即（すなは）ち神（かみ）を識（しら）ざる者（もの）および我儕（われら）の主（しゅ）イエス キリストの福音（ふくいん）に服（したが）はざる者（もの）に報（むくい）を予（あた）ふ
^九 かれら主（しゅ）の面（かほ）と其勢（そのいきほひ）の榮光（えいくわう）より離（はな）れて窮（かぎり）なく亡（ほろぶ）る罰（ばつ）を受（うけ）ん
^十 其時（そのとき）は即（すなは）ち主（しゅ）の臨（きた）りて其聖徒（そのせいと）に由（より）て榮光（えいくわう）をうけ諸（すべて）の信者（しんじゃ）に由（より）て讃（ほまれ）を得（え）ん其日（そのひ）なり爾曹（なんぢら）も我儕（われら）の証（あかし）を信（しん）ずる者（もの）なり
^十一 此（これ）に就（つい）て我儕（われら）つねに爾曹（なんぢら）の爲（ため）に祈（いの）るは我儕（われら）の神爾曹（かみなんぢら）をして召（めし）を受（うく）べき者（もの）となし又能力（またちから）を以（も）て爾曹（なんぢら）の諸（すべて）の善願（よきねがひ）と信仰（しんかう）の行（わざ）を成就（じょうじゅ）せしめん事（こと）なり
^十二 此（これ）われらの神（かみ）と主（しゅ）イエス キリストの恩（めぐみ）に由（より）て我儕（われら）の主（しゅ）イエスの名（な）なんぢらの中（うち）に榮（あがめ）られ亦（また）なんぢら彼（かれ）に在（あり）て榮（あがめ）られん爲（ため）なり

第二章

兄弟（きゃうだい）よ我儕（われら）の主（しゅ）イエス キリストの臨（きた）り給（たま）ふこと及（およ）び我儕（われら）が彼（かれ）の所（もと）に集（あつま）ることに就（つい）ては我儕願（われらねが）ふ
^二 爾曹（なんぢら）あるひは靈（れい）により或（あるひ）は言（ことば）に由（より）あるひは我（わ）が贈（おく）れるに似（に）たる書（ふみ）に由（より）て主（しゅ）の日（ひ）い
[二千十六]
ま既（すで）に來（きた）るとて心（こゝろ）を動（うご）かし且擾（かつさわぐ）こと莫（なか）らんことを
^三 誰（たれ）なにの法（はふ）を以（も）てするとも爾曹欺（なんぢらあざむ）かるゝこと勿（なか）れ蓋（そは）さきに道（みち）を離（はな）るゝ事（こと）なく且罪（かつつみ）の人即（ひとすなは）ち淪亡（ほろび）の子現（こあらは）るゝ事（こと）なくバ其日（そのひ）きたらじ
^四 かれ凡（すべ）て神（かみ）と稱（となふ）る者（もの）また人（ひと）の拜（をが）む所（ところ）の者（もの）に敵（てき）し之（これ）より超（すぎ）て己（おのれ）を尊（たふと）くし神（かみ）の殿（みや）に坐（ざ）して自（みづか）ら神（かみ）なりと爲（する）に至（いた）る
^五 われ爾曹（なんぢら）の中（うち）に在（あり）しとき此事（このこと）を語（かたり）しを爾曹（なんぢら）記憶（きおく）せざる乎（や）
^六 彼（かれ）をして其時（そのとき）に至（いた）りて現（あらは）れしめん爲（ため）に今（いま）かれを抑（おさふ）る者（もの）を爾曹（なんぢら）しる
^七 それ不法（ふはう）の隱（かくれ）たる者（もの）すでに働（はたら）けり今（いま）これを抑（おさふ）るもの除（のぞか）るゝまで隱（かくれ）をり
^八 其時（そのとき）に至（いた）りて不法（ふはう）の者（もの）あらはるべし主（しゅ）イエス其口（そのくち）の氣（いき）を以（も）て彼（かれ）を滅（ほろぼ）さん其臨（そのきた）るとき發（あらは）す所（ところ）の榮光（えいくわう）を以（も）て彼（かれ）を廢（はい）せん
^九 彼（かれ）サタンの行爲（はたらき）に循（したが）ひて各様（さまゞゝ）の僞（いつはり）なる能（ちから）と徴（しるし）と奇跡（ふしぎなるわざ）
^十 かつ不義（ふぎ）の諸（すべて）の詭譎（まどはし）を以（も）て顯（あらは）れかの淪亡者（ほろぶるもの）の中（うち）に在（ある）なり蓋（そは）かれら眞理（まこと）を愛（あい）するの愛（あい）を受（うけ）ずして救（すくひ）を得（え）ざる者（もの）なれば也（なり）
^十一 是故（このゆゑ）に神（かみ）かれらが誑（いつはり）を信（しん）ぜん爲（ため）に迷惑（まどひ）をして彼等（かれら）の中（うち）に働（はたら）かしむ
^十二 これ凡（すべ）て眞理（まこと）を信（しん）ぜず不義（ふぎ）を好（この）む者（もの）の罪（つみ）を定（さだめ）んとて也（なり）

^十三 主（しゅ）に愛（あい）せらるる兄弟（きゃうだい）よ爾曹（なんぢら）の爲（ため）に我儕常（われらつね）に神（かみ）に感謝（かんしゃ）すべき也（なり）そは神始（かみはじめ）より爾曹（なんぢら）を簡（えら）び眞理（まこと）を信（しん）ずることゝ靈（れい）の聖（きよめ）を蒙（かうむ）ることに因（より）て救（すくひ）を得（え）しめ給（たま）へバ也（なり）
^十四 神（かみ）われらの福音（ふくいん）を以（も）て爾曹（なんぢら）を此福（このさいはひ）に召（まね）き給（たま）へり爾曹（なんぢら）をして我儕（われら）の主（しゅ）イエス キリストの榮光（えいくわう）を得（え）しめん爲（ため）なり
^十五 是故（このゆゑ）に兄弟（きゃうだい）よ爾曹堅（なんぢらかた）く立（たち）かつ或（あるひ）は我儕（われら）の言（ことば）あるひは我儕（われら）の書（ふみ）に因（より）て教（をしへ）を受（うけ）たる傳（つたへ）を堅（かた）く守（まも）るべし
^十六 願（ねがは）くは我儕（われら）の主（しゅ）イエス キリスト及（およ）び我儕（われら）の父（ちゝ）の神（かみ）すなはち我儕（われら）を愛（あい）し且恩（かつめぐみ）に因（より）て永遠（かぎりなき）の安慰（なぐさめ）と善望（よきのぞみ）を予（あたふ）る者（もの）
^十七 爾曹（なんぢら）の心（こゝろ）を慰（なぐさ）め凡（すべて）の善行（よきわざ）と善言（よきことば）に爾曹（なんぢら）を堅固（かたく）せんことを

第三章

終（をはり）に我（われ）これを言兄弟（いふきゃうだい）よ爾曹（なんぢら）われらの爲（ため）に祈（いの）り主（しゅ）の道（ことば）をして疾（とく）ひろまり榮（さかえ）を受（うく）ること爾曹（なんぢら）の中（うち）の如（ごとく）ならしめ
^二 又我儕（またわれら）をして邪（よこしま）なる惡人（あくにん）より救（すくは）るゝことそハ人（ひと）みな信（しん）ずる者（もの）といふに非（あら）ざれば也（なり）
^三 然（され）ど主（しゅ）は信實（まこと）なる者（もの）なり彼（かれ）なんぢらを堅（かた）くし爾曹（なんぢら）を護（まも）りてかの惡人（あしきひと）より救（すくは）ん
^四 爾曹（なんぢら）われらの命（めい）ずる事（こと）を今（いま）すでに行（おこな）ふ後（のち）また之（これ）を行（おこな）ふ後（のち）また之（これ）を行（おこな）はんことを主（しゅ）に賴（より）て信（しん）ずる也（なり）
^五
願（ねがは）くハ主（しゅ）なんぢらの心（こゝろ）を神（かみ）の愛（あい）とキリストの忍耐（しのび）に導（みちび）き給（たまは）んことを

^六 兄弟（きゃうだい）よ我儕主（われらしゅ）イエス キリストの名（な）に託（より）て爾曹（なんぢら）に命（めい）ず我儕（われら）より受（うけ）たる傳（つたへ）に循（したが）はずして妄（みだり）に行（あゆ）む諸（すべて）の兄弟（きゃうだい）に遠（とほざ）かるべし
^七 爾曹（なんぢら）みづから如何（いかに）して我儕（われら）に效（なら）ふべきを知（しる）それ我儕（われら）なんぢらの中（うち）に在（あり）て妄（みだり）なる事（こと）を行（なさ）ず
^八 また人（ひと）のパンを價（あたひ）なしに食（しょく）することなく唯人（たゞひと）を累（わづら）はせざらん爲（ため）に勞（らう）と苦（くるしみ）をして晝夜工（ひるよるわざ）を作（なせ）り
^九 是（これ）われら權威（けんゐ）なきが故（ゆゑ）に非（あら）ずたゞ自己（みづから）を模楷（かた）とし爾曹（なんぢら）をして效（ならは）しめん爲（ため）なり
^十 われら爾曹（なんぢら）の中（うち）に在（あり）しとき人（ひと）もし工（わざ）を作（なす）ことを欲（このま）ずバ食（しょく）すべからずと爾曹（なんぢら）に命（めい）じたり
^十一 それ爾曹（なんぢら）の中（うち）に工（わざ）を作（なさ）ずして專（もっぱ）ら餘事（よじ）を務（つと）め妄（みだり）なる事（こと）を行（おこな）ふ者（もの）ありと我儕聞（われらきゝ）たり
^十二 われら此（かく）の如（ごと）き者（もの）に靜（しづか）に工（わざ）を作（なし）て己（おのれ）のパンを食（しょく）せんことを我儕（われら）の主（しゅ）イエス キリストに託（より）て命（めい）じ且勸（かつすゝ）む
^十三 兄弟（きゃうだい）よ善（ぜん）を行（おこな）ひて倦（うむ）こと勿（なか）れ
^十四 若（もし）この書（ふみ）に云（いへ）る我儕（われら）の言（ことば）に從（したが）はざる者（もの）あらば之（これ）を愧（はずか）しめん爲（ため）に其人（そのひと）を錄（しる）して相交（あひまじは）ること勿（なか）れ
^十五 然（され）ど彼（かれ）を敵（てき）とせず兄弟（きゃうだい）の如（ごと）く之（これ）を諫（いさ）むべし
^十六 願（ねがは）くは平安（へいあん）の主（しゅ）つねに何事（なにごと）に拘（よら）ず爾曹（なんぢら）に平安（へいあん）を賜（たまは）んことを願（ねがは）くは主爾曹（しゅなんぢら）と偕（とも）に在（あら）んことを
^十七 我（われ）パウロ手（て）づから筆（ふで）を執（とり）て安（やすき）をとふ書（ふみ）ごとに之（これ）を以（も）て誌（しるし）とす我（わ）が書（かけ）るは此（かく）の如（ごと）し
^十八 願（ねがは）くは我儕（われら）の主（しゅ）イエス キリストの恩（めぐみ）すべて爾曹（なんぢら）と偕（とも）に在（あら）んことをアメン

新約全書帖撒羅尼迦後書　終