明治元訳新約聖書（大正4年)/加拉太人書

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[千九百七十三] 新約全書（しんやくぜんしょ）使徒（しと）パウロガラテヤ人（びと）に贈（おく）れる書（ふみ）

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第一章

人（ひと）よりに非（あら）ず亦人（またひと）に由（よら）ずイエス キリストと彼（かれ）を死（し）より甦（よみがへ）らしゝ父（ちゝ）なる神（かみ）に由（より）て立（たて）られたる使徒（しと）パウロ
^二 及（およ）び我（われ）と偕（とも）に在（ある）すべての兄弟（きゃうだい）ガラテヤの諸教會（しょけうくわい）に書（ふみ）を達（おく）る
^三 なんぢら願（ねがは）くは父（ちゝ）なる神（かみ）および我儕（われら）の主（しゅ）イエス キリストより恩寵（めぐみ）と平康（やすき）を受（うけ）よ
^四 キリストハ我儕（われら）の父（ちゝ）なる神（かみ）の旨（むね）に循（したが）ひ今（いま）の惡世（あしきよ）より我儕（われら）を救出（すくひいだ）さんとて我儕（われら）の罪（つみ）の爲（ため）に己（おの）が身（み）を捨（すて）たまへり
^五 願（ねがは）くは榮彼（さかえかれ）に歸（き）して世々（よゝ）に至（いた）れアメン

^六 キリストの恩（めぐみ）をもて爾曹（なんぢら）を召（めし）たる者（もの）を爾曹（なんぢら）が如此（かく）すみやかに離（はな）れて異（こと）なる福音（ふくいん）に遷（うつり）し事（こと）を我怪（われあや）しむ
^七 此（これ）ハ福音（ふくいん）に非（あら）ず或人（あるひと）たゞ爾曹（なんぢら）を擾（みだ）しキリストの福音（ふくいん）を更（かへ）んとする也（なり）
^八 我儕（われら）にもせよ天（てん）よりの使者（つかひ）にもせよ若（もし）われらが曾（かつ）て爾曹（なんぢら）に傳（つたへ）し所（ところ）に逆（さから）ふ福音（ふくいん）を爾曹（なんぢら）に傳（つたふ）る者（もの）ハ詛（のろは）るべし
^九 我儕既（われらすで）に言（いひ）しが今（いま）また我（われ）その如（ごと）く言（いは）ん若（もし）なんぢらが受（うけ）し所（ところ）に逆（さから）ふ福音（ふくいん）を爾曹（なんぢら）に傳（つたふ）る者（もの）ハ詛（のろは）るべし
^十 今（いま）われ人（ひと）の親（したしみ）を得（え）んことを求（ねが）ハゞキリストの僕（しもべ）に非（あら）ざるべし

^十一 兄弟（きゃうだい）よ我（われ）なんぢらに示（しめ）す我曾（われかつ）て爾曹（なんぢら）に傳（つたへ）し所（ところ）の福音（ふくいん）ハ人（ひと）より出（いづ）るに非（あら）ず
^十二
蓋（そは）われ之（これ）を人（ひと）より受（うけ）ず亦教（またをしへ）られず惟（たゞ）イエス キリストの默示（しめし）に由（より）て受（うけ）たれば也（なり）
^十三 わが曩（さき）にユダヤ教（けう）に在（あり）しとき行（おこな）ひたる事（こと）を爾曹聞（なんぢらきけ）り卽（すなは）ち甚（はなはだ）しく神（かみ）の教會（けうくわい）を窘（せめ）かつ之（これ）を殘賊（ほろぼ）せり
^十四 我（われ）また心（こゝろ）を人（ひと）よりも先祖等（せんぞたち）の遺傳（いひつたへ）に熱（あつく）しユダヤ教（けう）に在（あり）てハ我（わ）が國人（くにびと）のうち年相若（としひとしき）おほくの人（ひと）に超（まさ）りたり
^十五 然（しかれ）ども我（わ）が母（はゝ）の胎（たい）を出（いで）し時（とき）より我（われ）を簡（えら）びおき恩（めぐみ）をもて我（われ）を召給（めしたま）ひし神（かみ）
^十六 その子（こ）を異邦人（いはうじん）の中（うち）に宣（のべ）しめんがため心（こゝろ）に善（よし）として彼（かれ）を我（わ）が心（こゝろ）に示（しめ）し給（たま）へる其時（そのとき）われ直（たゞち）に血肉（けつにく）と謀（はか）ることを
[千九百七十四]
せず
^十七 また我（われ）より先（さき）に使徒（しと）と作（なり）てエルサレムに在（ある）ところの者（もの）にも往（ゆか）ずアラビヤに往（ゆき）またダマスコに返（かへ）れり
^十八 三年（さんねん）を經（へ）て後（のち）ペテロを尋（たずね）ん爲（ため）にエルサレムに上（のぼ）り十五日彼（じゅうごにちかれ）と偕（とも）に居（をり）しが
^十九 他（ほか）の使徒等（しとたち）にハ主（しゅ）の兄弟（きゃうだい）ヤコブを除（のぞき）てハ誰（たれ）にも遇（あは）ざりき
^二十 今（いま）わが爾曹（なんぢら）に書遣（かきおく）る所（ところ）は神（かみ）の前（まへ）に謊（いつ[は]）れる言（こと）なし
^二一 厥後（そののち）われスリヤ、キリキヤの地（ち）に至（いた）れり
^二二 然（しかれ）どもユダヤに在（ある）キリストの諸教會（しょけうくわい）ハ我（わ）が面（かほ）を識（しら）ざりき
^二三 只（たゞ）かれらハ前（さき）に己等（おのれら）を窘（せめ）しもの今（いま）ハ其前（そのさき）に滅（ほろぼ）さんとしたる信仰（しんかう）の道（みち）を宣傳（のべつた）ふと聞（きゝ）
^二四 我事（わがこと）に因（より）て神（かみ）を崇（あがむ）ることを爲（せ）り

第二章

十四年（じふよねん）の後（のち）われバルナバと偕（とも）にテトスを偕（ともな）ひて亦（また）エルサレムに上（のぼ）る
^二 わが上（のぼ）りしハ默示（しめし）に循（したが）へるなり異邦人（いはうじん）の中（なか）に於（おい）て我（わ）が宣（のべ）し所（ところ）の福音（ふくいん）を彼等（かれら）に告（つげ）また私（ひそか）に名（な）ある人等（ひとたち）に之（これ）を告（つげ）たり蓋（そは）いま勤（つとむ）る所（ところ）の事（こと）の徒然（むなしく）ならざらんが爲（ため）なり
^三 我（われ）と偕（とも）に在（あり）しテトスハギリシャ人（びと）なるになほ強（しひ）てハ之（これ）に割禮（かつれい）を受（うけ）させざりき
^四 そハ私（ひそか）に入（いれ）られし僞（いつはり）の兄弟（きゃうだい）あるに因（より）てなり彼等（かれら）の私（ひそか）に入（いり）しハ我儕（われら）がイエス キリストに在（あり）て有（たもつ）ところの自由（じゆう）を窺（うかゞ）ひ我儕（われら）を奴隷（どれい）とせんが爲（ため）なり
^五 われら一時（ひととき）も之（これ）に服（ふく）することをせず此（こ）ハ福音（ふくいん）の眞（まこと）つねに爾曹（なんぢら）と偕（とも）に在（あら）んことを望（のぞ）めバ也（なり）
^六 かの名（な）ある者（もの）より我（われ）ハ受（うけ）しことなし彼等（かれら）ハ何（いか）なる人（ひと）なるにもせよ我（われ）に於（おい）て與（あづか）る所（ところ）なし神（かみ）ハ偏（かたよ）る者（もの）に非（あら）ず彼（か）の名（な）ある者（もの）われに誨（をしへ）を加（そへ）しこと無（なき）なり
^七 反（かへっ）て彼等（かれら）ハペテロが割禮（かつれい）を受（うけ）たる者（もの）に福音（ふくいん）を傳（つたふ）ることを託（ゆだね）られし如（ごと）く我（わ）が割禮（かつれい）を受（うけ）ざる者（もの）に福音（ふくいん）を傳（つたふ）ることを託（ゆだね）られしを見（み）
^八 （ペテロに能力（ちから）を予（あたへ）て割禮（かつれい）を受（うけ）たる人（ひと）の使徒（しと）と爲（なし）し者（もの）また我（われ）にも能力（ちから）を予（あたへ）て異邦人（いはうじん）の使徒（しと）と爲（な）り）
^九 また我（われ）に賜（たまひ）し所（ところ）の恩（めぐみ）を知（しり）しにより柱（はしら）と意（おもは）るゝヤコブ、ケパ、ヨハ子も其右手（そのみぎのて）を予（あたへ）て我（われ）
[千九百七十五]
とバルナバに交（まじはり）を結（むす）べり是（これ）われらハ異邦人（いはうじん）に至（いた）り彼等（かれら）ハ割禮（かつれい）を受（うけ）たる者（もの）に至（いた）らん爲（ため）なり
^十 彼等（かれら）の惟（たゞ）ねがふ所（ところ）ハ我儕（われら）が貧民（まづしきもの）を眷顧（かへりみ）んことなり我儕（われら）も亦（また）この事（こと）ハ素（もと）より進（すゝ）んで爲（なさ）んとする所（ところ）なり
^十一 ペテロアンテオケに至（いた）りしとき彼（かれ）に責（せむ）べき所（ところ）ありしに因（より）われ當面（まのあたり）これを詰（いまし）めたり
^十二 蓋（そは）ヤコブより來（きた）る者（もの）の未（いま）だ至（いた）らざる前（さき）にハペテロ異邦人（いはうじん）と同（とも）に食（しょく）したれども彼等（かれら）が至（いた）るに及（および）て割禮（かつれい）を受（うけ）たる者（もの）を懼（おそ）れ退（しりぞ）きて異邦人（いはうじん）と別（わかれ）たれバ也（なり）
^十三 その餘（ほか）のユダヤ人（びと）も彼（かれ）と偕（とも）に僞（いつはり）の行（おこなひ）をなしバルナバも遂（つい）に其僞（そのいつはり）の行（おこなひ）に誘（さそは）れたり
^十四 我（われ）かれらが福音（ふくいん）の眞（まこと）に遵（したが）ひ正（たゞし）く行（おこな）ハざるを見（み）すべての人（ひと）の前（まへ）に於（おい）てペテロに曰（いひ）けるハ爾（なんぢ）ユダヤ人（びと）にして若（も）し異邦人（いはうじん）の如（ごと）く行（おこな）ひユダヤ人（びと）の如（ごと）く行（おこな）ハざるときは何（なん）ぞ異邦人（いはうじん）を強（しひ）てユダヤ人（びと）の例（ならはし）に遵（したが）ハせんと爲（する）や
^十五 夫（それ）われらは生來（うまれつき）のユダヤ人（びと）にして異邦（いはう）より出（いで）たる罪人（つみびと）に非（あら）ず
^十六 然（され）ど人（ひと）の義（ぎ）とせらるゝは律法（おきて）の行（おこなひ）に由（よる）に非（あら）ず惟（たゞ）イエス キリストを信（しん）ずるに由（よる）なるを知（しる）この故（ゆゑ）に我儕（われら）も律法（おきて）の行（おこなひ）に由（よら）ずキリストを信（しん）ずるに由（より）て義（ぎ）とせられんが爲（ため）にイエス キリストを信（しん）ず蓋律法（そはおきて）の行（おこなひ）に由（より）て義（ぎ）とせらるゝ者（もの）なければ也（なり）
^十七 若（もし）われらキリストに在（あり）て義（ぎ）とせられん事（こと）を欲（ねが）ひなほ罪人（つみびと）ならばキリストは罪（つみ）の僕（しもべ）なるか决（きはめ）て然（しか）らず
^十八 我（わ）が先（さき）に毀（こぼち）し此（この）ものを今（いま）もし復（ふたゝ）び建（たて）なば自（みづか）ら其罪人（そのつみびと）なるを顯（あらは）すなり
^十九 我（わ）れ律法（おきて）により律法（おきて）に向（むか）ひて死（しね）り是神（これかみ）に向（むか）ひて生（いき）ん爲（ため）なり
^二十 我（われ）キリストと偕（とも）に十字架（じふじか）に釘（つけ）られたり既（もはや）われ生（いけ）るに非（あら）ずキリスト我（われ）に在（あり）て生（いけ）るなり今（いま）われ肉體（にくたい）に在（あり）て生（いけ）るなり今（いま）われ肉體（にくたい）に在（あり）て生（いけ）るハ我（われ）を愛（あい）して我（わ）が爲（ため）に己（おのれ）を捨（すて）し者（もの）すなハち神（かみ）の子（こ）を信（しん）ずるに由（より）て生（いけ）るなり
^二一 我（われ）ハ神（かみ）の恩（めぐみ）を徒然（むなしく）せず若（も）し義（ぎ）とせらるゝこと律法（おきて）に由（よら）ばキリストの死（し）は徒然（いたずら）なる業（わざ）なり

[千九百七十六]

第三章

愚（おろか）なる哉（かな）すでにイエス キリストの十字架（じふじか）に釘（つけ）られし事（こと）を明（あきら）かに其目前（そのめのまへ）に著（あらは）されたるガラテヤ人（びと）よ誰（た）が爾曹（なんぢら）を誑（たぶら）かしゝ乎（や）
^二 我（われ）たゞ此事（このこと）を爾曹（なんぢら）が靈（みたま）を受（うけ）しは律法（おきて）を行（おこな）ふに由（よる）か將（はた）きゝて信（しん）ぜしに由（よる）か
^三 爾曹（なんぢら）かく愚（おろか）なる乎（か）なんぢら靈（みたま）に因（より）て始（はじま）り今肉（いまにく）に因（より）て全（まった）うせらるゝ乎（や）
^四 なんぢら如此（かく）おほくの苦（くるしみ）を徒然（いたづら）に受（うけ）しや實（じつ）に徒然（いたづら）には有（ある）まじ
^五 それ爾曹（なんぢら）に靈（みたま）を予（あた）へかつ奇跡（ふしぎなるわざ）を行（おこな）はしめ給（たま）ふ者（もの）の如此（かく）なすは爾曹（なんぢら）が律法（おきて）を行（おこな）ふに由（より）てなる乎（か）または聞（きゝ）て信（しん）ぜしに由（より）てなる乎（か）
^六 即（すなは）ちアブラハム神（かみ）を信（しん）じ其信仰（そのしんかう）を義（ぎ）と爲（せら）れたるが如（ごと）し
^七 是故（このゆゑ）に信仰（しんかう）による者（もの）は是（これ）アブラハムの子（こ）なりと爾曹知（なんぢらしる）べし
^八 かつ聖書（せいしょ）すでに信仰（しんかう）に由（より）て神（かみ）の異邦人（いはうじん）を義（ぎ）と爲給（したま）ふことを預（あらか）じめ曉（さとり）まづ福音（ふくいん）をアブラハムに傳（ちたへ）て諸国（すべてのくに）の民（たみ）は爾（なんぢ）に由（より）て福（さいはひ）を獲（え）んと云（いへ）り
^九 是故（このゆゑ）に信仰（しんかう）に由（よる）ものは信仰（しんかう）ありしアブラハムと偕（とも）に福（さいはひ）を受（うく）
^十 凡（おほよ）そ律法（おきて）の行（おこなひ）に由（よる）ものは詛（のろは）るべし蓋律法（そはおきて）の書（ふみ）に載（のせ）たる凡（すべて）の事（こと）を恒（つね）に行（おこな）ハざる者（もの）は詛（のろは）ると錄（しる）されたれば也（なり）
^十一 かつ義人（ぎじん）は信仰（しんかう）に由（より）て生（いく）べしと有（あれ）バ律法（おきて）に由（より）て義（ぎ）とせらるゝ者（もの）なきことは明（あきら）かなり
^十二 それ律法（おきて）は信仰（しんかう）に由（よら）ず即（すなは）ち曰（いふ）これを行（おこな）ふ者（もの）ハ之（これ）に由（より）て生（いく）べしと
^十三 キリスト既（すで）に我儕（われら）の爲（ため）に詛（のろ）ハるゝ者（もの）となりて我儕（われら）を贖（あがな）ひ律法（おきて）の詛（のろひ）より脱（はなれ）しめ給（たま）へり蓋（そは）すべて木（き）に懸（かゝ）る者（もの）ハ詛（のろは）れし者（もの）なりと錄（しる）されたれば也（なり）
^十四 是（これ）アブラハムに約束（やくそく）し給（たま）ひし恩惠（めぐみ）イエス キリストに由（より）て異邦人（いはうじん）にまで及（およ）び我儕（われら）にも信仰（しんかう）に由（より）て約束（やくそく）の靈（みたま）を受（うけ）しめん爲（ため）なり
^十五 兄弟（きょうだい）よ我（われ）いま人（ひと）の事（こと）に由（より）て曰（いは）ん人（ひと）の契約（けいやく）だに既（すで）に定（さだむ）れバ之（これ）を廢（けし）また加（くは）ふることなし
^十六 それ約束（やくそく）ハアブラハムと其裔（そのすゑ）とに立給（たてたま）ひし者（もの）にして多（おほく）の人（ひと）を指（さし）て裔々（すゑゞゝ）と言（いへ）るに非（あら）ず惟一人（たゞひとり）を指（さし）て爾（なんぢ）の裔（すゑ）と言（いへ）る也此即（なりこれすなは）ちキリストなり
^十七 我（われ）これを言（いは）ん神（かみ）の預（あらか）じ
[千九百七十七]
め定給（さだめたま）ひし契約（けいやく）は四百三十年（よんひゃくさんじゅうねん）のちの律法（おきて）これを棄（すて）その約束（やくそく）の言（ことば）を徒然（むなしく）することをせざる也（なり）
^十八
嗣業（よつぎ）と爲（なる）こと若（も）し律法（おきて）に由（よら）バ約束（やくそく）にハ由（よら）ざるべし然（され）ど神（かみ）ハ約束（やくそく）に由（より）て之（これ）をアブラハムに賜（たま）へり

^十九 然（しか）らバ律法（おきて）の用（よう）ハ何（なに）ぞや此（こ）ハ約束（やくそく）を受（うく）べき裔（すゑ）の來（きた）るまで罪（つみ）の爲（ため）に加（くは）へし者（もの）にて天使等（てんのつかひたち）により中保（なかだち）の手（て）に備（そな）へ給（たま）ひし也（なり）
^二十 それ中保（なかだち）ハ一人（ひとり）に屬（つけ）る者（もの）に非（あら）ず神（かみ）ハ即（すなは）ち一人（ひとり）なり
^二一 然（しか）らバ律法（おきて）ハ神（かみ）の約束（やくそく）に反（もと）るや决（きはめ）て非（しから）ず若（も）し人（ひと）を生（いか）しうる律法（おきて）を賜（たまは）りしならバ義（ぎ）とせらるゝハ必（かなら）ず律法（おきて）に由（よる）べし
^二二 然（しかれ）ども聖書（せいしょ）ハ反（かへっ）て萬人（すべてのひと）を罪（つみ）の下（もと）に拘幽（とぢこめ）たり此（こ）ハイエス キリストを信（しん）ずるに由（よれ）る約束（やくそく）のものを諸 （もろゝゝ）の信者（しんじゃ）に賜（たまは）らんが爲（ため）なり
^二三 信仰（しんかう）の來（きた）らざる先（さき）には我儕律法（われらおきて）の下（した）に拘幽（とぢこめ）られ且守（かつまもら）れて其顯（そのあらは）れんとする信仰（しんかう）を俟（まて）り
^二四 かく律法（おきて）ハ我儕（われら）をして信仰（しんかう）に由（より）て義（ぎ）とせらるゝ事（こと）を得（え）しめんが爲（ため）に我儕（われら）をキリストに導（みちび）く師傳（しふ）となれり
^二五 然（しかれ）ども今信仰（いましんかう）すでに來（きたり）たれば我儕（われら）もハや師傳（しふ）の下（した）にあらず
^二六 爾曹（なんぢら）ハ皆（みな）キリスト イエスを信（しん）ずるに由（より）て神（かみ）の子（こ）となれり
^二七 そハ凡（おほよ）そバプテスマを受（うけ）てキリストに入（いれ）る爾曹（なんぢら）ハキリストを衣（き）たる者（もの）なれば也（なり）
^二八 斯（かゝ）る者（もの）の中（うち）にハユダヤ人（びと）またギリシャ人（びと）あるひハ奴隷（どれい）あるひハ自主（じしゅ）あるひハ男（をとこ）あるひハ女（をんな）の分（わかち）なし蓋（そは）なんぢら皆（みな）キリスト イエスに在（あり）て一（ひとつ）なれば也（なり）
^二九 若（もし）なんぢらキリストに屬（ぞく）する者（もの）ならバ爾曹（なんぢら）ハアブラハムの裔（すゑ）すなハち約束（やくそく）に循（したが）ひて嗣子（よつぎ）たる也（なり）

第四章

我（われ）いハん嗣子（よつぎ）たる者（もの）ハ全業（ぜんげふ）の主（しゅ）なれども其童蒙（そのわらべ）の時（とき）ハ僕（しもべ）に異（こと）なることなし
^二 父（ちゝ）の定（さだめ）し期（とき）いたるまで受託身（うしろみ）および家宰（いへづかさ）の下（した）に在（あり）
^三 此（かく）の如（ごと）く我儕（われら）も童蒙（わらべ）の時（うち）ハ此世（このよ）の小学（せうがく）の下（した）に在（あり）て僕（しもべ）たる也（なり）
^四 然（しかれ）ども期（とき）すでに至（いた）るに及（およ）びて神（かみ）その子（こ）を遣（つかは）し給（たま）へり彼（かれ）ハ女（をんな）より生（うま）れ律法（おきて）の下（した）に
[千九百七十八]
生（うま）れたり
^五 これ律法（おきて）の下（した）にある者（もの）を贖（あがな）ひ我儕（われら）をして子（こ）たることを得（え）しめんが爲（ため）なり
^六 且（かつ）なんぢら既（すで）に子（こ）たることを得（え）しが故（ゆゑ）に神（かみ）その子（こ）の靈（みたま）を爾曹（なんぢら）の心（こゝろ）に遣（おく）りアバ父（ちゝ）と呼（よば）しむ
^七 是故（このゆゑ）に爾（なんぢ）はもはや僕（しもべ）に非（あら）ず子（こ）なり既（すで）に子（こ）ならバ亦神（またかみ）に由（より）て嗣子（よつぎ）たる也（なり）
^八 然（しかれ）ども爾曹神（なんぢらかみ）を識（しき）ざりし時（とき）ハ其實神（そのじつかみ）に非（あら）ざる者（もの）に事（つかへ）て僕（しもべ）たりき
^九 然（しかれ）ども爾曹（なんぢら）いま神（かみ）を識（しれ）り反（かえっ）て神（かみ）に識（しら）れたりと謂（いふ）べし何（なん）ぞ弱（よわ）く賤（いやし）き小学（せうがく）に返（かへ）りて復（ふたゝ）び之（これ）が僕（しもべ）たらんことを欲（ねが）ふや
^十 なんぢら愼（つつしみ）て月（つき）と日（ひ）と節（せつ）と歳（とし）とを守（まも）る
^十一 われ爾曹（なんぢら）に就（つい）て危（あやぶ）む恐（おそら）くハ爾曹（なんぢら）の爲（ため）に我（わ）が勤（つと）めし事（こと）の徒然（むなしく）ならんことを

^十二 兄弟（きゃうだい）よ願（ねがわ）くハ爾曹（なんぢら）わが如（ごと）くなれ蓋（そは）われ爾曹（なんぢら）の如（ごと）くなりたれバ也（なり）なんぢらハ我（われ）を害（がい）せしことなし
^十三 曩（さき）に我（われ）よわき身（み）にして爾曹（なんぢら）に福音（ふくいん）を傳（つたへ）しことハ爾曹（なんぢら）の知（しる）ところ也（なり）
^十四 爾曹（なんぢら）を試（こゝろむ）る者（もの）の我（わ）が身（み）に在（あり）しを爾曹（なんぢら）ハ卑（いやし）めず亦厭（またいとは）ず反（かへっ）て天使（てんのつかひ）の如（ごと）くキリスト イエスの如（ごと）くに我（われ）を待（あつか）ひたり
^十五 爾曹（なんぢら）その時（とき）の福（さいはひ）ハ如何（いかに）ありし乎（や）われ爾曹（なんぢら）に證（あかし）す若（も）し爲得（なしう）べくば爾曹（なんぢら）みづからの目（め）を抉（とり）て我（われ）に予（あたへ）んとてまで願（ねがひ）たり
^十六 然（しか）るに我（われ）なんぢらに眞理（しんり）を語（かた）りしに緣（より）て我（われ）なんぢらの仇（あた）となりし乎（や）
^十七 彼等（かれら）が爾曹（なんぢら）に熱心（ねっしん）なるハ善意（よきこゝろ）に非（あら）ず爾曹（なんぢら）を己（おのれ）に熱心（ねっしん）ならしめんとて爾曹（なんぢら）を離（はなれ）しめんとする也（なり）
^十八 然（され）ど唯（たゞ）わが爾曹（なんぢら）と偕（とも）なる時（とき）のみならず善事（よきこと）の爲（ため）に常（つね）に熱心（ねっしん）なるは宜（よろし）きなり
^十九 我（わ）が小子（をさなご）よ我（われ）なんぢらの心（こゝろ）にキリストの狀成（かたちなる）までハ復（ふたゝ）び爾曹（なんぢら）の爲（ため）に産（うみ）の劬勞（くるしみ）をなす
^二十 我（われ）いま爾曹（なんぢら）と偕（とも）に在（あり）て口氣（こゑ）を改（あらた）めんことを欲（ねが）ふ蓋（そは）われ爾曹（なんぢら）に就（つい）て惑（まどへ）バなり

^二一 なんぢら律法（おきて）の下（した）に在（あら）んことを欲（ねが）ふ者（もの）よ我（われ）に語（かた）れ爾曹律法（なんぢらおきて）を聞（きか）ざる乎（か）
^二二 錄（しる）してアブラハムに二人（ふたり）の子（こ）あり一人（ひとり）ハ婢（しもめ）より一人（ひとり）ハ自主（じしゅ）の婦（をんな）より生（うまれ）たりと有（ある）
^二三 その婢（しもめ）より生（うま）れし者（もの）ハ肉（にく）に循（したが）ひ自主（じしゅ）の婦（をんな）より生（うま）れし者（もの）は約束（やくそく）に因（より）て生（うま）れたる也（なり）
^二四 こ
[千九百七十九]
の言（こと）ハ譬喩（たとへ）にして即（すなは）ち此婦（このをんな）ハ二（ふたつ）の契約（けいやく）に比（なぞら）ふべし一（ひとつ）ハシナイ山（やま）より出（いで）て子（こ）を奴隷（どれい）に生（うむ）これ即（すなは）ちハガルなり
^二五 此（この）ハガルハアラビアのシナイ山今（やまいま）のエルサレムに當（あたれ）るなり蓋（そは）かれ其諸子（そのこども）と偕（とも）に奴隷（どれい）たれバ也（なり）
^二六 然（され）ど上（うへ）に在（ある）ところのエルサレムハ自主（じしゅ）にして是（これ）われらの母（はゝ）なり
^二七 そハ錄（しる）して姙（はらま）ず生（うま）ざる者（もの）よ喜（よろこ）べ産（うみ）の劬勞（くるしみ）せざる者（もの）よ聲（こゑ）を揚（あげ）て呼（よばは）れ寡居（ひとりすめ）る者（もの）の子（こ）ハ夫（おっと）ある者（もの）の子（こ）よりも多（おほき）が故（ゆゑ）なりと有（あれ）バなり
^二八 兄弟（きゃうだい）よ我儕（われら）ハイサクの如（ごと）く約束（やくそく）の子（こ）なり
^二九 然（しかれ）ども當時（むかし）の肉（にく）に循（したが）ひて生（うまれ）しもの靈（みたま）に循（したが）ひて生（うま）れし者（もの）を窘（せめ）し如（ごと）く今（いま）も亦然（またしか）り
^三十 然（され）ど聖書（せいしょ）は何（なに）と言（いへ）るや婢（しもめ）および其子（そのこ）を逐（おへ）そは婢（しもめ）の子（こ）は自主（じしゅ）の婦（をんな）の子（こ）と共（とも）に嗣子（よつぎ）となる可（べか）らざれば也（なり）と言（いへ）り
^三一 兄弟（きゃうだい）よ此（かく）の如（ごとく）なれバ我儕（われら）は婢（しもめ）の子（こ）に非（あら）ず此自主（このじしゅ）の婦（をんな）の子（こ）なり

第五章

イエス キリスト我儕（われら）を釋（とき）て自由（じゆう）を得（え）させたり是故（このゆゑ）に爾曹堅立（なんぢらかたくたち）て復（ふたゝ）び奴隷（どれい）の軛（くびき）に繋（つなが）るゝ勿（なか）れ
^二 我（われ）パウロ爾曹（なんぢら）にいふ爾曹（なんぢら）もし割禮（かつれい）を受（うけ）なバキリスト更（さら）に爾曹（なんぢら）に益（えき）なし
^三 我（われ）また割禮（かつれい）を受（うけ）たる各 （おのゝゝ）の人（ひと）に就（つい）て證（あかし）す其人（そのひと）ハ全（まった）き律法（おきて）を行（おこな）ふべき者（もの）なり
^四 なんぢら律法（おきて）に由（より）て義（ぎ）とせらるゝ者（もの）ハキリストと與（かゝは）りなく恩（めぐみ）より堕（おち）たる者（もの）なり
^五 われら望（のぞ）む所（ところ）のもの即（すなは）ち信仰（しんかう）を以（も）て義（ぎ）とせらるゝことを靈（みたま）に由（より）て俟（まつ）なり
^六 夫（それ）キリスト イエスに在（あり）てハ割禮（かつれい）を受（うく）るも受（うけ）ざるも益（えき）なく惟愛（たゞあい）に由（よっ）て行（はたら）く所（ところ）の信仰（しんかう）のみ益（えき）あり
^七 なんぢら前（さき）にハ善走（よくはし）りたり誰（た）が爾曹（なんぢら）の眞理（まこと）に循（したが）はざるやう阻（さゝふ）ることを爲（せ）しや
^八 その勸（すゝめ）は爾曹（なんぢら）を召者（めすもの）より出（いづ）るに非（あら）ず
^九 少許（すこし）の麪酵（ぱんだね）ハ全團（かたまり）をみな發（ふくれ）しむ
^十 爾曹（なんぢら）に就（つい）てハ我（われ）なんぢらが少（すこ）しも異念（ことなるおもひ）を懷（いだか）ざることを主（しゅ）に由（より）て信（しん）ず誰（たれ）にても爾曹（なんぢら）なんぢらを煩（わづら）はす者（もの）は其審判（そのさばき）を受（うく）べし
^十一 兄弟（きゃうだい）よ我（われ）もし今（いま）も尚割禮（なほかつれい）を宣（のべ）バ何（なん）ぞ窘（せめ）らるゝ事（こと）あらん乎（や）もし然（しか）せば
[千九百八十]
既（もは）や十字架（じふじか）に礙（つまづ）くこと止（やむ）べし
^十二 爾曹（なんぢら）を亂（みだ）す者（もの）の自（みづか）ら爾曹（なんぢら）より離（はなれ）んことを願（ねが）ふ
^十三 そは兄弟（きゃうだい）よ爾曹（なんぢら）は召（めし）を蒙（かうむ）りて自由（じゆう）を得（え）たる者（もの）なれば也（なり）されど其自由（そのじゆう）を得（う）る機會（をり）として肉（にく）に循（したが）ふ勿（なか）れ惟愛（たゞあい）を以（も）て互（たがひ）に事（つかふ）ることを爲（せ）よ
^十四 それ己（おのれ）の如（ごと）く爾（なんぢ）の隣（となり）を愛（あい）すべしと曰（いへ）る此一言（このひとつのことば）すべての律法（おきて）を全（まった）うする也（なり）
^十五 なんぢら愼（つゝしめ）よ若（もし）たがひに呑噬（かみくら）はゞ恐（おそら）くハ互（たがひ）に滅（ほろぼ）されん

^十六 われ謂（いふ）なんぢら靈（みたま）に由（より）て行（あゆ）むべし然（さら）ば肉（にく）の慾（よく）を成（なす）こと莫（なか）らん
^十七 そハ肉（にく）の慾（ねがひ）ハ靈（みたま）に逆（さから）ひ靈（みたま）の慾（ねがひ）ハ肉（にく）に逆（さから）ひ此二（このふたつ）のもの互（たがひ）に相敵（あひもと）る是故（このゆゑ）に爾曹好（なんぢらこの）む所（ところ）の事（こと）をなすを得（え）ず
^十八 然（され）ど爾曹（なんぢら）もし靈（みたま）に導（みちび）かるゝときハ律法（おきて）の下（した）に在（あら）ざるべし
^十九 それ肉（にく）の行（おこなひ）ハ顯著（あらは）なり即（すなは）ち苟合（こうがふ[う]）、汚穢（をくわい）、好色（かうしょく）、
^二十 偶像（ぐうざう）に事（つかふ）ること、巫術（ふじゅつ）、仇恨（きうこん）、爭鬪（さうとう）、妒忌（とき）、忿怒（ふんど）、分爭（ぶんそう）、結黨（けったう）、異端（いたん）、
^二一 娼嫉（ばうしつ）、兇殺（きょうさつ）、醉酒（すゐしゅ）、放蕩（はうとう）、などの如（ごと）し此等（これら）の事（こと）につき我甞（われかつ）て爾曹（なんぢら）に斯（かゝ）る事（こと）をなす者（もの）は神國（かみのくに）を嗣（つぐ）べからずと告（つげ）しその如（ごと）く今（いま）また預（あらか）じめ之（これ）を告（つぐ）
^二二 靈（みたま）の結（むす）ぶ所（ところ）の果（み）ハ仁愛（じんあい）、喜樂（きらく）、平和（へいわ）、忍耐（にんたい）、慈悲（じひ）、良善（りょうぜん）、忠信（ちゅうしん）、
^二三 温柔（おんじう）、撙節（そんせつ）かくの如（ごと）き類（たぐひ）を禁（きん）ずる律法（おきて）ハある事（こと）なし
^二四 夫（それ）キリストに屬（ぞく）する者（もの）ハ肉（にく）と其情（そのじょう）および慾（よく）とを十字架（じふじか）に釘（つけ）たり
^二五 若（もし）われら靈（みたま）に由（より）て生（いき）なバ亦靈（またみたま）に由（より）て行（あゆ）むべし
^二六 互（たがひ）に怒（いかり）たがひに妒（ねた）むことを爲（なし）て虛榮（むなしきほまれ）を求（もとむ）る勿（なか）れ

第六章

兄弟（きゃうだい）よ若（もし）はからずも過（あやまち）に陥（おちい）る者（もの）あらば爾曹（なんぢら）のうち靈（みたま）に感（かん）じたる者柔和（ものにうわ）なる心（こゝろ）をもて之（これ）を爲正（たゞす）べし亦自己（またみづから）をも顧（かへり）みよ恐（おそら）くハ爾誘（なんぢさそは）るゝこと有（あら）ん
^二 なんぢら彼此（たがひ）の勞（らう）を任（お）へ斯（かく）してキリストの律法（おきて）を全（まったう）すべし
^三 人（ひと）もし有（ある）ことなくして自（みづか）ら有（あり）とせバ是（これ）みづから欺（あざむ）くなり
^四 各人（おのゝゝ）その行（なす）ところを勘（かんが）へ視（み）よ如此（かく）せバ誇（ほこ）る基（もとゐ）ハたゞ己（おのれ）に在（あり）て人（ひと）に非（あら）ず
^五 そハ人（ひと）おのゝゝ其荷（）を負（おふ）べけれバ也（なり）
^六 然（され）ど道（みち）を教（をしへ）らるゝ者（もの）ハ道（みち）を教（おしふ）る者（もの）に凡（すべ）て有益（いうえき）なる物（もの）を分予（わけあた）ふべし
^七 自（みづか）ら欺（あざむ）く勿（なか）れ
[千九百八十一]
神（かみ）ハ慢（あなど）るべき者（もの）に非（あら）ず蓋人（そはひと）の種（まく）ところの者（もの）ハ亦（また）その穫（かる）ところと爲（なる）なり
^八 己（おの）が肉（にく）のために種（まく）ものハ肉（にく）より敗壞（くづる）ものを穫（かり）とり靈（みたま）のために種（まく）ものハ靈（みたま）より永生（かぎりなきいのち）を穫（かり）とるべし
^九 善（ぜん）を行（おこな）ふに臆（おく）する勿（なか）れ蓋（そは）もし倦（うむ）ことなくバ我儕時（われらとき）に至（いた）りて穫取（かりとる）べければ也（なり）
^十 是故（このゆゑ）に若（も）し機會（をり）あらバ衆（すべて）の人（ひと）に善（ぜん）を行（なす）べし信仰（しんかう）の徒（ともがら）にハ別（わけ）て之（これ）を行（なす）べし

^十一 爾曹（なんぢら）わが親手（てづから）なんぢらに書遣（かきおく）る字（もじ）の何（いか）に大（おほい）なるかを見（み）よ
^十二 凡（およ）そ肉（にく）について美（うるは）しからんことを欲（ねが）ふ者（もの）は爾曹（なんぢら）に割禮（かつれい）を強（し）ふ是（これ）たゞ己（おのれ）キリストの十字架（じふじか）の爲（ため）に窘（せめ）らるゝことを免（まぬか）れんが爲（ため）なり
^十三 そハ割禮（かつれい）をうけたる彼等（かれら）なほ自（みづか）ら律法（おきて）を守（まも）ることをせず彼等（かれら）が爾曹（なんぢら）に割禮（かつれい）を受（うけ）させんとするハ爾曹（なんぢら）の肉（にく）に於（おい）て誇（ほこ）らんと欲（おも）ふなり
^十四 然（され）ど我（われ）には惟（たゞ）われらの主（しゅ）イエス キリストの十字架（じふじか）の外（ほか）に誇（ほこ）る所（ところ）なからんことを願（ねが）ふ此（この）キリストに由（より）て我世（われよ）に向（むか）へバ世（よ）ハ十字架（じふじか）に釘（つけ）られ世（よ）の我（われ）に向（むか）ふも亦然（またしか）り
^十五 夫（それ）イエス キリストに於（おい）ては割禮（かつれい）を受（うく）るも受（うけ）ざるも益（えき）なく唯新（たゞあらた）に作（つくら）れし者（もの）のみ益（えき）あり
^十六 凡（およ）そ此規矩（こののり）に循（したが）ひて行（あゆ）む者（もの）に願（ねがは）くハ平康（やすき）と恩惠（めぐみ）とあれ神（かみ）のイスラエルにも亦然（またしか）り
^十七 今（いま）よりのち誰（たれ）も我（われ）を擾（わづら）ハす勿（なか）れ蓋（そは）われ身（み）にイエスの印記（しるし）を佩（おび）たれバ也（なり）
^十八 兄弟（きゃうだい）よ願（ねがは）くは我儕（われら）の主（しゅ）イエス キリストの恩（めぐみ）なんぢらの靈（れい）と偕（とも）ならんことをアメン

新約全書加拉太書　終