日支共同防敵軍事協定

日支共同防敵ニ関スル交換公文

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大正七年三月二十五日 東京ニ於テ
同  年五月三十一日 官報掲載

来翰(訳文)

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以書翰致啓上候陳者支那国政府ニ於テハ現下ノ時局ニ顧ミ左記ノ綱領ニ依リ貴国政府ト協同措置スルヲ貴我両国ノ為必要ナリト信シ本使ハ茲ニ本国政府ノ訓令ニ依リ貴国政府ニ提議スルノ光栄ヲ有シ候

一 支那国政府及日本国政府ハ敵国勢力ノ日ニ露国境内ニ蔓延シ其ノ結果将ニ極東全局ノ平和及安寧ヲ侵迫スルノ危険アラムトスルニ因リ此ノ情勢ニ適応シ且両国カ此次ノ戦争参加ノ義務ヲ実行セムカ為行フヘキ処置ヲ速ニ協同考量スルモノトス

二 前項ニ依リ両国政府ノ合意ヲ経タル後決定スルコトアルヘキ事項ヲ実行セムカ為両国陸海軍此次ノ共同防敵戦略ノ範囲ニ付協力ヲ行フヘキ方法及其条件ハ両国当局官憲ニ於テ之ヲ協定スヘク該当局官憲ハ相互ノ利害問題ニ付互ニ慎重誠実ニ随時協議シ並ニ両国政府ヨリ確定シテ時機ヲ俟チ実行スルモノトス

右ニ対シ何分ノ儀御回答ヲ得度右照会申進旁〻本使ハ茲ニ重ネテ閣下ニ向テ敬意ヲ表シ候敬具

中華民国七年三月二十五日
中華民国特命全権公使章宗祥(署名)印
外務大臣法学博士子爵本野一郎閣下

往翰

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以書翰致啓上候陳者貴国政府ニ於テハ現下ノ時局ニ顧ミ左記ノ綱領ニ依リ帝国政府ト協同措置スルヲ貴我両国ノ為必要ナリト信シ帝国政府ニ提議セラレタル本日付貴翰茲ニ致閲悉候

一 日本国政府及支那国政府ハ敵国勢力ノ日ニ露国境内ニ蔓延シ其ノ結果将ニ極東全局ノ平和及安寧ヲ侵迫スルノ危険アラムトスルニ因リ此ノ情勢ニ適応シ且両国カ此次ノ戦争参加ノ義務ヲ実行セムカ為行フヘキ処置ヲ速ニ協同考量スルモノトス

二 前項ニ依リ両国政府ノ合意ヲ経タル後決定スルコトアルヘキ事項ヲ実行セムカ為両国陸海軍此次ノ共同防敵戦略ノ範囲ニ付協力ヲ行フヘキ方法及其条件ハ両国当局官憲ニ於テ之ヲ協定スヘク該当局官憲ハ相互ノ利害問題ニ付互ニ慎重誠実ニ随時協議シ並ニ両国政府ヨリ確定シテ時機ヲ俟チ実行スルモノトス

帝国政府ハ右貴国政府提議ノ趣旨ニ全然同感ヲ有スルモノニテ前記綱領ニ依リ貴国政府ト協同措置スルハ帝国政府ノ欣快トスル所ニ有之候右回答申進旁〻本大臣ハ茲ニ重ネテ閣下ニ向テ敬意ヲ表シ候敬具

大正七年三月二十五日
日本帝国外務大臣法学博士子爵本野一郎(署名)印
支那共和国特命全権公使章宗祥閣下

往翰

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以書翰致啓上候陳者三月二十五日貴我両国政府間ニ両国共同防敵ノ為公文ノ交換ヲ了シ候処帝国政府ニ於テハ右公文ノ有効期間ハ両国ノ軍事当局ニ於テ議定スルコトト致度候将又帝国政府ハ共同防敵ノ為ニ日本軍隊ノ支那国境内ニ在ルモノハ総テ戦事終了後ヲ俟チ支那国境内ヨリ一律撤退スヘキコトヲ特ニ茲ニ声明致候

右照会申進旁〻本大臣ハ茲ニ重ネテ閣下ニ向テ敬意ヲ表シ候敬具

大正七年三月二十五日
日本帝国外務大臣法学博士子爵本野一郎(署名)印
支那共和国特命全権公使章宗祥閣下

来翰(訳文)

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以書翰致啓上候陳者本日付貴翰ヲ以テ三月二十五日貴我両国政府間ニ両国共同防敵ノ為公文ノ交換ヲ了シタルカ貴国政府ハ右公文ノ有効期間ハ両国ノ軍事当局ニ於テ議定スルコトト致サレ度旨御照会相成候処右ハ支那国政府ニ於テモ同意ニ有之候将又右貴翰ヲ以テ貴国政府ハ共同防敵ノ為ニ日本軍隊ノ支那国境内ニ在ルモノハ総テ戦時終了後ヲ俟チ支那国境内ヨリ一律撤退スヘキ旨特ニ声明相成致領承候

右本国政府ノ訓令ニ基キ回答申進旁〻本使ハ茲ニ重ネテ閣下ニ向テ敬意ヲ表シ候敬具

中華民国七年三月二十五日
中華民国特命全権公使章宗祥(署名)印
外務大臣法学博士子爵本野一郎閣下

日支陸軍共同防敵軍事協定

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大正七年五月十六日 北京ニ於テ調印(日、支文)
大正八年三月十四日 公表

日支両国政府協商ノ結果ニ基キ両国政府交換ノ文章ニ據リ両国軍事当局互ニ委員ヲ派遣シ左ノコトヲ協定ス

第一条

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日支両国陸軍ハ敵国勢力ノ日ニ露国境内ニ蔓延シ其結果将ニ極東全局ノ平和及安寧ヲ侵迫スルノ危険アラントスルニ因リ此情勢ニ適応シ且両国カ此次ノ戦争参加ノ義務ヲ実行センカ為共同防敵ノ行動ヲ執ル

第二条

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共同軍事行動ニ関シ両国ノ地位ト利害トハ平等ノ見地ニ於テ相互ニ尊重スルモノトス

第三条

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日支両国当局ハ本協定ニ基キ行動ヲ開始スルニ方リ各自本国軍体及官民ノ軍事行動区域内ニ在ルモノニ対シ相互誠意親善同心協力シテ共同防敵ノ目的ノ達成ヲ期スヘキコトヲ命令又ハ訓告ス 凡ソ軍事行動区域内ニ於ケル支那地方官吏ハ該区域内ニ在ル日本軍隊ニ対シ尽力協助シ軍事上ニ故障ヲ生セサラシメ又日本軍隊ハ支那ノ主権及地方ノ習慣ヲ尊重シ人民ヲシテ不便ヲ感セサラシム

第四条

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共同防敵ノ為ニ日本軍隊ノ支那国境内ニ在ルモノハ凡テ戦時終了後ヲ俟チ支那国境内ヨリ一律撤退ス

第五条

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支那国境外ニ軍隊ヲ派遣スルトキハ若シ必要アラハ両国ハ共同シテ之ヲ派遣ス

第六条

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作戦区域及作戦上ノ任務ハ共同防敵ノ目的ニ適応スル如ク両国軍事当局ニ於テ各自本国ノ兵力ヲ量リ別ニ之ヲ協定ス

第七条

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日支両国軍事当局ハ共同作戦期間ニ於ケル共同動作ノ便利ヲ図ル為左記事項ヲ行フモノトス

一、直接作戦上ニ関シ各軍事機関ハ彼此相互職員ヲ派遣シ往来聯絡ノ任ヲ充フ
二、軍事行動及運輸補充ノ敏活且確実ヲ図ル為陸海運輸通信諸業務ハ彼此共ニ便利ヲ謀ル
三、作戦上必要ノ建設例ヘハ軍用鉄道電信電話等ノ如キコトニ関シ如何ニ設備スヘキヤハ両国総司令官ニ於テ臨時之ヲ協定シ戦事終了ヲ俟チ凡テ臨時建設工事ハ之ヲ撤廃ス
四、共同防敵ニ関シ要スル所ノ兵器及軍需品並其原料ハ両国相互ニ供給ス其数量ハ各自本国ノ需要ヲ害セサル範囲ヲ以テ限リトス
五、作戦区域内ニ於ケル軍事衛生事項ニ関シテハ相互ニ補助シテ遺憾ナカラシム
六、直接作戦上ニ関スル軍事技術人員ノ補助ノ必要アルトキハ一方ノ請求ニ依リ他方ハ之ヲ補助シ以テ任使ニ供ス
七、軍事行動区域内ニ諜報機関ヲ設置シ並軍事所要ノ地図及情報ヲ相互交換ス
諜報機関ノ通信聯絡ニ関シテハ彼此補助シテ其便利ヲ図る
八、共用ノ軍事暗号ヲ協定ス
本条列スル所ノ各項ニシテ予メ計画ヲ要スルモノ及予メ施行スヘキモノハ作戦未実行前ニ別ニ之ヲ協定ス

第八条

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軍事輸送ノ為東清鉄道ヲ使用スルトキハ該鉄道ノ指揮保護管理等ハ本来ノ条約ヲ尊重シ其輸送方法ハ臨時之ヲ協定ス

第九条

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本協定実行ニ要スル詳細事項ハ日支両国軍事当局ノ指定スル各当事者ニ於テ之ヲ協定ス

第十条

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本協定及本協定付属ノ詳細事項ハ日支両国ニ於テ均シク之ヲ公布スルコトナク軍事ノ秘密トシテ取扱フ

第十一条

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本協定ハ日支両国陸軍代表者記名調印シ各自本国政府ノ承認ヲ経タル上効力ヲ生ス其作戦行動ハ適当ノ時機ヲ俟チ両国最高統帥部商定シテ之ヲ開始ス 本協定及本協定ニ基キ発生スル所ノ各種細則ハ日支両国独墺敵国ニ対する戦争状態終了ノ時ヲ俟チ即チ其効力ヲ失フ 本協定は日本文及漢文各々二通ヲ作リ対照シテ記名調印シ双方各一通ヲ保有シ証據ト為ス

大 正 七年五月十六日
中華民国七年五月十六日
 於北京

日本帝国陸軍軍事協約委員
委員長 陸軍少将 斎藤季治郎
委員 陸軍少将 宇垣一成
委員 陸軍歩兵中佐 本圧 繁
委員 陸軍砲兵少佐 川崎吉五郎
委員 陸軍歩兵大尉 山田健三
中華民国陸軍軍事協商委員
委員長 果威将軍 靳雲鵬
委員 陸軍中将 童煥文
委員 陸軍中将 曲同豐
委員 陸軍少将 田書年
委員 陸軍少将 劉嗣榮
委員 陸軍少将 江壽祺
委員 陸軍少将 丁 錦
委員 督弁参戦処参議 劉祟傑
委員 陸軍少将 張済元
委員 陸軍歩兵上校 陳鴻逵
委員 陸軍歩兵上校 秦 華

日支陸軍共同防敵軍事協定実施ニ要スル詳細ノ協定

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日支軍事協定第九条ニ基キ日支両国軍事当局ノ指定スル各当事者ハ同協定第六条第七条に関シ左記事項ヲ協定ス

第一条 日支両国ハ各其軍ノ一部ヲ派遣シ後貝加爾州及黒龍州ニ対シ軍事行動ヲ執ル其任務ハ「チェックスロワック」軍ノ救援竝独墺両国及之ニ加担スル勢力ヲ排除スルニ在り。指揮ノ統一共同ノ円満ヲ期スル為メ該方面ニ行動スル支那軍ハ日本軍司令官ノ指揮下ニ入ルモノトス。 満州里方面ヨリ後後貝加爾ニ行動スル軍ト策応スル爲メ支那軍ノ一部は庫倫方面ヨリ貝加爾方面ニ行動ス而して支那軍の希望アラバ日本軍モ該方面ニ一部ノ兵力ヲ派遣シ支那軍司令官ノ指揮下ニシムルモノトス。 以上ノ外中部蒙古以西ノ辺境ハ支那自ラ其防備ヲ強固ニス。

第二条  兵器及軍需品ノ供給ハ緊急巳ムヲ得ザルモノハ出先司令官相互ノ協定ニ依リ之ヲ行フベキモ其他ノモノ及原料ノ供給ハ東京及北京ノ最高補給機関ヨリ交渉シテ之ヲ行フ。

第三条  衛生業務ニ関シ若シ支那ニ於テ之ヲ希望スルアレバ日本軍ハ爲シ得ル範囲ニ於テ便宜ヲ提供スベシ。而シテ情況進展セバ病院及休養所ノ施設等ニ関シ日本軍モ亦支那ノ助力ヲ受クルモノトス。

第四条  南満鉄道ニ依リ輸送セラルベキ支那軍隊及其軍需品ハ支那ヨリ大連、営口若クハ奉天ニ搬出シ爾後長春マデノ輸送ハ日本軍之ヲ担任ス。 庫倫方面ヨリ貝加爾湖方面ニ出動スル支那軍ニ一部ノ日本軍隊ヲ参加セシムル場合ニハ該軍隊及其軍需品ハ太沽又ハ秦皇島若クハ奉天マデ日本軍ニ於テ輸送シ爾後ノ輸送ハ支那軍之ヲ担任ス。 東清鉄道輸送ハ東清鉄道当局ヲシテ之ガ実施ニ当ラシム該当局トオ交渉、日支両軍及「チェックスロワック」軍ノ輸送ノ調節按排ヲ計ル為メ日支協同ノ機関ヲ設ク。此ノ機関ニハ将来與国軍ニシテ此ノ方面ニ行動スル場合ニ於テハ其軍ヨリ所要ノ人員ヲ参加セシムルコトアルベシ。

第五条 連絡職員ノ派遣ニ関シテハ既ニ交渉ヲ了シ或ハ交渉中ニアルモノノ外差当ノ出先司令部ト将来之ヲ要スル場合、東京及北京ニ於ケル最高補給機関ニ相互職員ノ派遣ヲ爲スベク爾後の必要ニ応ジ随時協議ス。

第六条  兵器其他軍需材料竝原料ノ供給及一方軍ノ爲メニ担任シタル輸送等ノ費用ハ有償トシ其決済ハ随時又は軍事行動終了後ニ於テ之ヲ行フ。

第七条 本協定ハ日本文及漢文各二通ヲ作リ対照シテ記名調印シ双方各一通ヲ保有シ証拠ト爲ス。 大正7年9月6日 中華民国七年9月6日          於北京 大日本帝国陸軍軍事当局ノ指定スル当事者          陸軍中将 齋藤季治郎 大中華民国陸軍軍事当局指定之当事者          陸軍中将 徐 樹 錚

条約彙纂: 大正7年輯録 追加 外務省, 858頁

日支陸軍共同防敵軍事協定第九条ニ基キ第十一条第二項中戦争状態終了ノ時期ニ関スル協定

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大正八年二月 五日北京ニ於テ調印(日、支文)  同 年三月十四日 公   表

日支両国最高統帥部協議の上、日支陸軍共同防敵軍事協定第九条ニ基キ第十一条第二項戦争状態終了ノ時期ニ関シ左ノ通協定ス。

独墺敵国ニ対スル戦争状態終了ノ時トハ欧州戦争ノ平和会議ニ於テ平和条約締結セラレ日支両国之ヲ批准シ日支両国軍ノ支那国境外より及同地方ニ駐在スル協商国軍ノ同時ニ撤退スルニ至ル時ヲ謂フ。

本協定ハ日本文及漢文各二通ヲ作り対照シテ記名調印シ双方各一通ヲ保有シ証拠ト爲ス。 大 正  八年ニ月五日 中華民国 八年ニ月五日

       日本帝国陸軍代表者          陸 軍 少 将 東  乙彦        中華民国陸軍代表者          陸軍上将衛中将 徐 樹 錚

条約彙纂: 大正7年輯録 追加 外務省, 861頁

日支海軍共同防敵軍事協定

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大正七年五月十九日北京ニ於テ調印(日、支文) 大正八年三月十四日 公   表


日支両国政府協商ノ結果大 正 七年三月二十五日            中華民国七年三月二十五日東京ニ於テ両国政府間ニ交換セル文書ニ予リ両国海軍当局互ニ委員ヲ派シ左の事項ヲ協定ス。

第一条 日支両国海軍ハ敵国勢力東漸シ其ノ結果極東全局ノ和平及安寧将ニ侵迫ヲ受クルノ危険アラムトスルニ因リ此ノ情勢ニ適応シ且両国此ノ次欧州戦争参加の義務ヲ実行セムカ爲共同防敵ノ行動を執ル

第二条 協同軍事行動ニ関シ両国ノ地位ト利害トハ平等ノ見地ニ於テ相互ニ尊重スルモノトス。

第三条 日支両国当局ハ本協定ニ基キ行動ヲ開始スルニ方リ各自本国艦船及官民ノ軍事行動区域内ニ在ルモノニ対シテ命令又ハ訓告ヲ発シ彼此誠意親善同心協力以テ共同防敵ノ目的ヲ達セシム。

第四条 作戦区域及作戦上ノ任務ハ共同防敵ノ目的ニ適応スル如ク両国海軍当局ニ於テ各自本国ノ兵力ヲ量リ別ニ之ヲ協定ス

第五条 日支両国海軍当局ハ共同作戦機関ニ於テ協同動作ノ便利ヲ図ル爲左ノ事項ヲ行フ  一、 直接作戦上ニ関シ各軍事機関ハ彼此互ニ職員ヲ派遣シ往来聯絡ノ任ニ充ツ  ニ、 軍事行動及運輸補充ノ敏活確実ヲ期スル爲海陸運輸通信諸業務ハ彼此共ニ便利ヲ謀ル  三、 艦艇兵器及軍事機具等ノ造修竝之ニ要スル材料ニ関シテハ爲シ得ル限リ相互ニ補助ス軍需品亦同ジ  四、 直接作戦上ニ関スル軍事技術人員ハ日支両国海軍相互輔助ノ必要アルトキハ一方ノ請求ニ依リ他方ハ之ニ応ジ派遣服務セシム  五、 日支両国海軍ハ各自必要ナル地点ニ諜報機関ヲ設置シ又行動上必要ナル水路図誌及情報ヲ交換ス     通信聯絡ノ敏活確実ヲ期シ相互ニ輔助シテ共ノ便利ヲ図ル爲必要ナル設備ハ両国当事者臨時之ヲ協定ス  六、共用ノ軍事暗号ヲ共同商定ス 本条列スル所ノ各項ニシテ豫メ計画ヲ要スルモノ及豫メ施行スベキモノハ作戦未実行前別ニ之ヲ協定ス

第六条 本協定実行上必要ナル詳細事項ハ日支両国海軍当局各当事者ヲ指定シ之ヲ協定ス

第七条 本協定及本協定附属ノ詳細事項ハ日支両国ニ於テ均シク之ヲ公布スルコトナク軍事ノ秘密トシテ取扱ウ

第八条 本協定ハ日支両国海軍代表者記名調印シ各自本国政府ノ承認ヲ経テ効力ヲ生ズ其ノ作戦行動ハ適当ノ時機ヲ俟チ両国海軍最高統率部商定シテ之ヲ開始ス 本協定及本協定ニ基キ発生スル所ノ各種細則ハ日支両国ノ独墺敵国ニ対スル戦争状態終了ノ時ヲ俟チ其ノ効力ヲ失フ

第九条 本協定ハ日本文及漢文各二通ヲ作り彼此対照シテ記名調印シ双方各一通ヲ保有シ証拠ト爲ス。

日本大正七年五月十九日 中華民国七年五月十九日 於北京

      委員長 海軍少将 吉田 増次郎        委員 海軍大佐 伊集院 俊        委員 海軍大佐 樺山 可也       委員長 海軍中将 沈 壽 堃        委員 海軍少将 呉 振 南        委員 海軍少将 陳 恩 鱟

日支海軍共同防敵軍事協定

大正七年五月十九日北京ニ於テ調印(日、支文) 大正八年三月十四日 公   表

条約彙纂: 大正7年輯録 追加 外務省, 862頁

日支海軍共同防敵軍事協定説明書

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大正七年五月十九日北京ニ於テ調印 大正八年三月十四日 公  表

一、 日支両国海軍ハ共同作戦ノ円満ヲ図リ以テ軍事協定第一条ノ趣旨ニ副ハムカ爲和哀共同相互輔助シテ用兵計画ニ遺憾ナキヲ期ス ニ、 軍事協定第五条各項ノ説明左ノ如シ    第一項ノ職員ハ差当リ公使館附海外武官及各処駐在海外武官ヲ以テ之ニ充テ其ノ他ハ必要ニ応ジ臨時協定派遣ス    第三項ノ材料即チ金属物件類ノ如キ又軍需品即チ燃料食糧及軍事上必要ナル弾丸火薬等ノ如キハ両国均シク爲シ得ル限リ相互ニ輔助ス    第五項ノ水路図誌交換は他方の請求ヲ俟テ之ヲ行フ    軍事行動区域内ニ於ケル港湾ニシテ双方其ノ補測ノ必要ヲ認メタルトキハ該港湾所属ノ本国海軍自ラ之ヲ行フ

日本大正七年五月十九日 中華民国七年五月十九日 於北京

      委員長 海軍少将 吉田 増次郎        委員 海軍大佐 伊集院 俊        委員 海軍大佐 樺山 可也       委員長 海軍中将 沈 壽 堃        委員 海軍少将 呉 振 南        委員 海軍少将 陳 恩 鱟        委員 海軍中校 呉 光 宗

条約彙纂: 大正7年輯録 追加 外務省, 866頁

日支海軍共同防敵軍事協定第六条ニ基キ第八条第二項中戦争状態終了ノ時期ニ関スル協定

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大正八年三月 一日 北京ニ於テ調印(日、支文)  同 年三月十四日   公  表

日支両国最高統率部協議ノ上日支海軍共同防敵軍事協定第六条ニ基キ第八条第二項中戦争状態終了ノ時期ニ関シ左ノ通協定ス 独墺敵国ニ対スル戦争状態終了ノ時トハ欧州戦争ノ平和会議ニ於テ平和条約締結セラレ日支両国之ヲ批准シ日支両国海軍ノ露領ヨリ及同地方ニ駐在スル協商各国海軍ノ撤退スルニ至ル時ヲ謂フ 本協定ハ日本文及漢文各々二通ヲ作り対照シテ記名調印シ双方各一通ヲ保有シ証拠ト爲ス。

  大 正 八年三月一日 中華民国八年三月一日

      日本帝国海軍代表者         海軍大佐 伊集院 俊         海軍中佐 八角 三郎       中華民国海軍代表者         海軍少将 謝 葆 璋         海軍少将 陳 恩 鱟

条約彙纂: 大正7年輯録 追加 外務省, 867頁