新学校制度実施準備の案内


 学校制度の改革については、閣議の決定、議会の協賛等の手続き順序を経て、正式に決定実施されるはずであるが、その実施に対しては、各方面とも事前に研究を進める必要がある。よつて、こゝに「新学校制度実施準備の案内」を編纂して、その参考に供しようとする次第である。これに記載されている事項は、新制度のうち中学校及び高等学校に関する概要、並びに差し当たり中学校を昭和二十二年度から実施しようとする場合に採られるべき措置等につき、解説を試みたものである。各方面におかれては、これを参考として、新制度実施に対する研究を進められたいのである。
 学校制度を改革して教育の刷新を図ることは、日本再建の根基に培う極めて重要な事業であるから、その準備並びに実施に対しては、教育者は勿論、あまねく一般の熱心な協力と努力とを切望するものである。

第一、新学制実施準備協議会の設置について

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一、目的と種類
 国民学校初等科修了者を収容する三年制の新制中学校を、昭和二十二年度から実施するについて、まず、以下に示す要領によつて、都道府県・郡・市区町村ごとに、新学制実施準備協議会を設置することが望ましい。この協議会は、市区町村協議会・郡協議会・都道府県協議会の三つに分れ、それぞれの地域の新学制の実施に関係あるいろいろな問題について研究・審議し、それぞれの教育行政当局にその意見を伝えることを目的とし、教育行政当局は、この意見に基づいて新制度の実施についての諸般の措置を行うのである。
 各協議会から当局に提出された意見は、いろいろな方法によつてなるべく一般に発表することにする。
 各協議会の委員は、同じ人数の教育者と一般の人で構成され、委員の選定はすべて選挙によることとし、男女を問わず広く教育に識見のある人を選出するようにする。教育関係の官公吏は、必要に応じて協議会に出席し、協議会の要求によつて、資料を提供したり調査をしたりしてその運営について援助することは差し支えないが、議決権は持たない。
 各協議会は、新制度を実施するについての当面の準備ばかりでなく、地方における今後の教育問題全般についての諮問機関として、現在の教育行政機構が改変されるまでは、これを常置することにしたい。
 各協議会は、いずれも第一回の会合の席でその議長を互選し、会の運営は、すべて議長の主宰によるものとする。
 各協議会の組織や運営について、次に説明する。 二、市区町村協議会
 市区町村協議会を組織する責任は、市区町村長にある。委員は、その地域内の官公私立の学校ごとに、校長・教師一名、一般の人二名、計四名ずつ選出する。学校がたゞ一つよりない町村では、校長・教師二名、一般の人三名、計六名とし、教師及び一般の人各一名以上は婦人を入れるようにする。このことは、二校以上ある市区町村の場合にも準用することとする。
 教師の代表は教師の互選により、一般の人の代表は父兄会・保護者会・又は後援会等の適当な組織を利用して、どちらも各学校ごとに選出する。
 市などで、各学校ごとに右に述べた四名ずつの委員を選出するときは委員の数が多すぎて、協議会の運営に適当でないと思われる場合には、右の校長・教師・一般の人の間から、あらかじめ定められた人数の委員を選挙するがよい。
 この場合にも、教育者と一般の人にはおのおの同数の委員を割り当てるものとし、その総数はあらかじめ市区長が決定する。市区町村長は、協議会に出席はするが議決権は持たない。
 市区町村長は、委員を選出する前に、まず、全般に対して新学制の基本原理である民主的な教育の理念と、新学制の実施がその地方の興隆ひいては日本の再建に緊要であるゆえんを述べ、この協議会の目的と意義、教育者及び一般の人を代表する委員の責務、更に協議会と教育関係官公吏との関係などについて説明する外、新学制の実施に対する地方民一般の責務についても言及する必要がある。
 市区町村協議会で処理すべき当面の問題は、凡そ次の通りである。
  1、新制中学校への進学は地域制によるのを原則とするから、その市区町村を適当な地域に分割すること。
    新制中学校の第一学年は、多くは従来の国民学校高等科又は中等学校に設けられるであろうが、どこに設けられるにしても、その施設や内容にはなるべく差し支えのないように措置することが望ましい。
  2、現存する校舎・教室数・増築資材及び財源等の調査と、これらに関する新学制の実施に必要な計画、及び新規採用を要する教員の数等についての調査を行うこと。
  3、市区町村当局に対して、新制中学校の編成に関する具体案の提出や地方事務所又は都道府県庁からの援助を必要とする事項の具申を必要の都度行うこと。
  4、その他その地方の学校に六・三・三制を実施するについての関係事項を研究すること。
    大きな都市では、協議会は各区又はその他適当に分割された地域に設置し、その組識や運営についてはこゝに述べた通りであるが、この場合の都市の協議会は、次の第三項に示す郡協議会に準するものとする。
三、郡協議会
 新学制の実施に関する市区町村の問題は、隣接すろ市区町村との連絡及び協力を必要とする部分が多い。児童の通学、校舎、建築資材の確保、教師の訓練、教育に関係する諸団体の発達、その他多くの教育上重要な事項は、市区町村よりも郡又は都道府県単位の立場からの措置を必要とする。
 この意味から、郡協議会は、郡内のすべての町村に関係する教育上の問題を処理するために設置するので、各町村協議会の代表者がその委員になる。郡協議会の委員となる各町村協議会の代表者の数は、協議会ごとに教育者一名、一般の人一名、計二名とするのが適当であろう。
 郡協議会の委員は、それぞれ代表している町村協議会に対して、郡協議会における審議と成案について責任を負う。
四、都道府県協議会
 新学制の実施について財政上の問題、及び市町村や郡の範囲で処置のできない学校関係のすべての問題に関しては、都道府県単位の協議会で処置するのが望ましく、都道府県協議会は、郡又は市の協議会からそれぞれ教育者一名、一般の人一名、計二名ずつ選出された委員で構成するものとする。
 都道府県協議会の委員は、始めに市区町村協議会から選出されて郡又は市の協議会の委員になつた者であるから、それぞれの市区町村の問題や要求を理会し、新制中学校に関係ある都道府県所管事項のすべてについての審議や立案を行うのに最も適当な立場にある。そして委員は、それぞれの代表する郡又は市の協議会に対して責任を持つことになる。
 以上で新学制実施準備協議会についての説明を終るが、この新しい制度は、独立校舎の建築あるいは設備の充実等その完成を見るまでに相当の年月を必要とするであろうが、各学校及び市区町村は、責任を持つて、その地方の学校教育の発展を図り、新学制に伴なういろいろな措置については、その地方の実情に即し、それぞれの能力に応じて、できることは直ちにこれを実施し、率先して制度の完成を促進することに努力されるよう希望してやまない。
 なお、都道府県又は大都市などで、新学制を新学年度から実施するための準備としてこの種の協議会又は委員会を設置し、既に活動を始めたところもあるようであるが、これらの都道府県や都市において、改めて、この「案内」に提案された通りの協議会を設置しなおすことが特に困難な事情にある場合には、既設の協議会又は委員会の構成を維持しながら、この「案内」に示された趣旨に沿つて、教育者及び一般人の委員の比率等につき、できる限り必要な改善を加え、民主的な教育上の基本原理の線に沿う組織と運営に遺憾のないよう、努力することが必要であろう。

第二、昭和二十二年度における生徒の進学について

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 新制中学校は、昭和二十二年度から実施されるが、この制度改正は、国民は全て中等程度の学校教育を受ける権利と義務とをもつと言う民主的な原則に基つくものであつて、初等及び中等の学校で、一つの学年の課程を修了した生徒は、すべて、次の学年に進学することを認められるのである。
 新制中学校の義務制は、昭和二十二年度においては第一学年(第七年)にだけ実施される。また、新制中学校第二学年(第八年)には昭和二十三年度から、第三学年(第九年)には昭和二十四年度から、それぞれ義務制が実施される予定である。
 次に来年度における新制中学校の各学年への進学について説明しよう。
一、新制中学校第一学年(第七年)
 昭和二十一年度に国民学校初等科第六学年を修了する生徒は、すべて、新制中学校の第一学年に進学する。これらの生徒を収容する新制中学校は、多くは国民学校高等科・中等学校又は青年学校の中に、それぞれの施設を利用して設置されることになる。どの新制中学校に進学するかは、この「案内」の第一に示された各市区町村ごとに設置される新学制実施準備協議会が、地域制を設けて定めるのである。
 新制中学校の第一学年は義務制であるから、その入学者の決定に、筆答試問・口頭試問あるいはこれらに類する方法を用いてはならない。但し、自主的経営を行う私立の新制中学校は、地域制から除外されるので、入学者の選抜を行うことになるが、この場合にも新しい教育制度の精神に即して、このような選抜の方法によらず、第四項に説明する方法によつて選抜を行うことが望ましい。
 新制中学校が国民学校高等科・中等学校又は青年学校のどの施設を利用して設けられるにしても、その第一学年は、すべて同じ新しい教科課程を用いて、等しく充実した教育が受けられるように措置されるのである。このことは、新制中学校の第二・第三学年についても同じである。
二、新制中学校第二学年(第八年)
 昭和二十一年度に国民学校高等科・国民学校初等科修了を入学資格とする中等学校、及び青年学校普通科のそれぞれの第一学年を修了する生徒は、すべて、そのまゝ進級して新制中学校の第二学年になる。従つて地域制や選抜の問題は起らない。
三、新制中学校第三学年(第九年)
 昭和二十二年度において、新制中学校第三学年への進学で選抜が問題になるのは、従来の国民学校高等科修了を入学資格とする中等学校の場合である。これらの学校で、入学志願者の数が、収容可能な数を超えた場合に、選抜を行うことになる。新しい教育の精神によれば、高等科を修了してこれらの学校に入学を希望する者は、身体に支障がない限りすべて入学を許可されるはずであるが、右の場合にはたゞ設備の関係上、やむなく選抜を行うのであつて、選抜にもれたとしてもそれは生徒の失敗というよりは、設備の不足によるものであることを教師も生徒もよく承知してほしい。
 この場合の選抜の方法については、次の項に説明する。
四、入学者の選抜
 入学者の選抜に従来の筆答試問や口頭試問の方法を用いることは、新しい教育制度の精神からして望ましくない。今年度から入学者の選抜を行う場合には、国民学校よりの報告書と中等学校で行う面接試問及び身体検査によつて入学者を決定することにしたい。
 将来、生徒の知能・個性・素質及び成績を測定する心理学的な客観的な検査法の完成することが期待されるが、今のところではこのような検査の方法を用いるのは、時期尚早であると思われる。
 次に新しい選抜法について項目別に説明しよう。
1、国民学校よりの報告書
 国民学校よりの報告書は、従来のように個人調査書と学級一覧表とに分れ、次に示される事項について記載せねばならない。
(一) 出欠についての記録
(二) 教科成績
(三) 協同性・責任感・統率性・持続性・勤勉・規律・正直・親切・器用さ等の性格や習性に関する事項
(四) 科学芸術・音楽・実務・耕作等に示された特別な才能
(五) 校長及び教師の判断を総合して決定された学級における順位
    これは、学級の生徒全体をその性行と学業成績によつて六つの段階に分け、これを一級・二級・三級・四級・五級・六級として記載する。一級には最も優れた生徒が属し、六級にはもつとも劣つた生徒が属するわけである。そして、各級に属する生徒の数を、学級全体の生徒の数と共に学級一覧表に記載しておく。各級に属する生徒の数は同じでなく、若干の差を生ずるのが普通であつて、一般には他の級よりも三級と四級とに多くの生徒が属するはずである。
2、面接試問
 面接試問の目的は、中等学校の校長と教師とが生徒に直接に面接して、その問答を通じて生徒の性格や個性を察知するにある。
 面接試問では、校長と少数の教師とが面接係りになつて、同一の関門で個々の生徒と打ちとけて話し合うのである。
 打ちとけて話し合うためには、教師の数はあまり多くない方がよい。生徒の受け答えが自然にかざりなくなされるように、面接係りは生徒を気安くさせるような態度で生徒に接することが大切である。
 面接試問で聞く事がらには、生徒の知識を験すというよりは、問答を通じて生徒の人物全体が察せられ、生徒の精神の発達が年齢相当の程度に達しているかどうかを見ることのできるようなものを選定しなければならない。そのためには個々の生徒に対する問答は画一的でなく、多角的に発展させることが必要である。
 また、時間も、個々の生徒について画一的に限定するのは適当でなく、従つて志願者全体に対する面接試問は、一日に済ませないで、数日に亙つて行う場合も起つてくると思う。
3、身体検査
 身体検査は、中等学校の校医を中心として行われ、その結果は、身体上就学に堪えないと認められる生徒を除外するに用いられるだけで、志願者の成績序列を決定する要素にはしないものとする。身体検査において疾病と以上とを重視することは、従来と変りがない。
五、学籍簿写しの送附
 生徒の転学又は進学に当たつては、その在学期間を通じての教科成績・性行・身体状況について正確に記録された学籍簿の写しを入学する先の学校へ送らなければならない。この記録は、生徒の能力と興味とに応じて、生徒を指導し、その発達を助成するについて大切な資料となる。
 学籍簿が生徒を指導するについての価値ある資料であるためには、それは、生徒の能力・成果・個性及び健康にだけ基づいて記載されたものでなければならない。学籍簿の記載に当たつて、生徒の家庭の社会的又は経済的地位に影響されてならないことは勿論である。
 学籍簿には、校長及び教師の個々の判断を総合して、公正で教育的な記載をしなければならない。
 国民学校において教科教授が充実し、生徒の能力が個性に応じた多面的な発達を示し、且つ生徒の性格と成績に対して正確な評価を示すことは、中等学校及び社会全般の信頼と尊敬とを得るゆえんである。これで国民学校と中等学校の関係が改善され、学籍簿の生徒指導上の資料としての価値が大いに高められるのである。

第三、学校制度改革(六・三・三制)

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一、緒言
 いわゆる六・三・三制を中心とする学校制度の改革案は、昭和二十一年十二月二十七日に教育刷新委員会で採択され、文部省もこれに同意したのである。
 この改革案は、児童が学校に入る場合その最初の六年間を小学校(仮称であるが以後このように呼ぶ)において過ごし(但し幼稚園におけるものを除く)その課程を修了した後、三年制の中学校(仮称であるが以後このように呼ぶ)に入る。この二つの学校において就学は義務制である。中学校の次には更に教育を受けようとする者のために三年を原則とする高等学校(仮称であるが以後このように呼ぶ)を置き、更にその次に四年を原則とする大学(仮称であるが以後このように呼ぶ)を置くのである。
 この改革案には現在の制度に比して種々優れた点があるが、その最も重要な点は、すべての者に対して一様に小学校と中学校とを通じて九年間の教育を行うということである。また、高等学校、大学における教育も勿論重要であるが、とにかく現在の制度では国民学校初等科を卒える者の約二〇%だけが中等学校へ進み、残りの約八〇%は国民学校高等科と青年学校に入るのであつて、このようなことは非民主的で教育的にも不合理であり、また国家再建に対して国民の能力を充分に発揮させるゆえんでもない。この改革案は、現在の中等学校程度に該当するところに中学校・高等学校の二つを設け、青少年教育の刷新を行わんとするところに意義があるのである。
二、中学校に関する事項
1、定義と目的
 中学校は、すべての小学校修了者に対して原則的には同一の教科課程を適用することとなるであろうが、各地方及び学校の希望によつてはそれぞれ弾力性のある教育を実施して、生徒各個人の適性伸張の機会とするのである。
 中学校の主な目的は、青少年を健康で責任感の強い且つ立派な公民に育て、おのおのその才能を発揮させるように援助し指導することにある。従つて、その教科の内容としては、人格・個性の確立と、実際の社会生活に参加寄与することのできる能力の発展が強調されており、また職業に関する指導並びに訓練に関する事項も含まれている。即ち、中学校は教育的原則並びに心理学的・社会学的及びその他の方面よりの考察の基礎の上に立つて、満十二才より満十五才までの男子及び女子の発展を指導するために活動するのである。
2、修業年限について
 中学校の修業年限は、三年(第七年・第八年・第九年)であり、附設課程は設けない。新制の中学校の第三学年となるべき者よりも、更に上級の生徒は将来新制の高等学校のわくに入るのである。
3、小学校に続く教育機関としての意義
 中学校は、小学校を修了した者の全部が進学する教育機関である。即ち、小学校に続く唯一の学校であり、できるだけ速く独立の施設をもつ学校となすべきである。これは教育の機会均等という民主的理念に基づくものである。、まだ教科課程の基準は、中学校のわくに入つて運営されることとなるどの学校のどの生徒にも、原則として共通のものが適用されることになる。
4、設置について
 中学校の教育は義務教育であるから、市町村は、義務就学該当者(第七年・第八年・第九年)の全部を収容するに足る中学校を設置すべきである。従つて、中学校に入学するについての入学考査は、原則としてあるべきではない。また、中学校の設置主体は、各市町村を原則とするが、事情によつては近接した市町村が連合して設置しても差し支えない。
5、授業料を徴集せず無償とし、義務制とすること
 中学校は、授業料を徴集せず公費負担の義務制の教育であり、これに関する法令は、今議会に提出される予定である。これを実施するに当たつて、義務制は昭和二十二年度においては第一学年(第七年)のみ、昭和二十三年度においては第二学年(第八年)まで、昭和二十四年度においては第三学年(第九年)までというように逐年進行するのである。昭和二十二年度では、中学校の第一学年(第七年)は、公費によつて経営される学校においては無償である。義務教育の委託を受ける私立学校に対しては、公費団体から委託費を支払うのであるが、市町村はできるだけ速く施設を整備して中学校教育の万全を期することが必要である。
 また、私立学校で公費による委託を希望しないものは、授業料を徴集することができる。
6、男女共学について
 官公立の中学校においてはなるべく男女共学とする。男女共学は、男女間の社会的関係を正常にし、両性の平等を促す上からも、また、経済的見地からも推奨されるからである。しかし、この原則を採用するかどうかを決定するには、その学校への就学範囲内にある市町村民の意見を尊重すべきである。私立学校においての男女共学に関しては、学校自身で自由に決定する。
7、全日制とすること
 中学校は、全日制とし、夜間の授業を認めない。しかし昭和二十二年度においては、第三学年(第九年)相当のところに中学校の全日制(昼間及び夜間)と青年学校があるが、この青年学校の定時制も、中学校の全日制と原則的には同一の規準で運営されるべきである。
8、独立校舎を持ち、専任の校長及び教職員を置くこと
 小学校・中学校・高等学校は、それぞれ独立校舎を持つことが望ましいが、全国を通じて中学校設置に当たつて現在の国民学校高等科の占むべき部分は相当大きいから、現在国民学校で初等科と高等科とを併置しているところでは多くの場合中学校を小学校と併置するのもやむを得ない場合がある。このような併置の場合であつても、中学校としての組織を持ち、専任校長及び教職員によつて運営されるのが原則である。

 また、現在の中等学校の建物の中に中学校と高等学校とを併置することになる場合でも、それぞれの学校が完成したときにおいては原則としてそれぞれに専任の校長及び教職員を置くべきである。すべての問題において中学校が小学校との関係を緊密にすることは必要であるが、また近接している他の中学校・高等学校との関係を密接にすることはより必要である。このことは、小学校と中学校とが両方とも義務教育であるため密接な関係を持たねばならない以上に、中学校と高等学校については、ともに青年期の教育である点から一層連絡が重要視されるのである。

 
第一表

 中学校の校長及び教職員としては、この年齢層の生徒の発達を指導する上に必要な経歴と能力とを有する者を配置する。条件に合致する者を得られない場合には、再教育の途を講ずる。ある中学校の校長が他の学校の校長を兼任するような場合においても、その中学校の教職員は他の学校より兼任するものとせずに、専任の者とすべきである。

 
第二表

9、教科課程
 第一表に示した中学校の教科課程は、学習指導要綱とともに発表され、昭和二十二年度において第一学年・第二学年・第三学年(第七年・第八年・第九年)に適用されることになる。第二表は、中学校のわくに入る児童・生徒に対してこの教科課程を適用するに当たつての参考である。
10、実施の時期
 中学校は、昭和二十二年度より実施される。なお、それと同時に現在制度の種々な学校の生徒は第二表に例示するような規準で中学校の相当学年となるのであるが、義務制は第一学年(第七年)より実施されるのである。即ち、義務制の学年は、昭和二十二年度より逐年充実されて行くから、それに対する市町村の負担もそれに応じて変つて行くことになる。
三、高等学校に関する事項
1、定義と目的
 中学校においては、一般教育的及び職業的に生徒の才能や興味を探究することを目的の一つとしたのである。高等学校に入学する者は、中学校における学習の結果に応じて更に上級の学校に進学を希望するか、あるいは職業に就くことを希望するかのいずれかを選んで入学するのであるから、高等学校においてはそれぞれの部門においての教育並びに訓練に必要な設備を整備することが必要である。生徒それぞれの個性に従つて個人として又社会人として必要な修養と職業とを系統的に修得できるようにするために、高等学校には多岐の課程をおくことになる。課程としては、一般的なもの並びに農業・工業・商業及びその他の職業に関するものとなる。大都市においては極めて専門化した高等学校もあり得るが、その他の地方では更に進学する者のため、あるいは職業に就く者のために必要な課程を併置するいわゆる総合的なものを置くこともあろう。
2、修業年限について
 高等学校の修業年限は、三年(第一〇年・第一一年・第一二年)を原則とするが、四年あるいは五年のものも認める。高等学校は、中学校修了後更に学校教育を継続しようとする者を全部収容することを理想とする。高等学校には、特殊の事項や職業に関する附設課程を置くこともあるが、これは大学の部に属するものではない。
3、設置について
 高等学校は、希望する者全部を収容するに足るように将来拡充していくべきであり、その計画は、高等学校において修学を希望する者の数を調査する等合理的な基礎の上に立つて行われるべきものである。希望者全部の入学できることが理想であるから、都道府県及び市町村等は高等学校の設置に対して努力してほしい。また、高等学校の設置は官立・公立・私立のいずれの場合もある。
4、義務制ではない
 高等学校は義務制ではないが、将来は授業料を徴集せず、無償とすることが望ましい。
5、男女共学について
 高等学校においては、必ずしも男女共学でなくてもよい。男子も女子も教育上は機会均等であるという新制度の根本原則と、地方の実情、なかんずく地方の教育的意見を尊重して、高等学校における男女共学の問題を決すべきである。即ち、男女共学については、教員の問題、財政の問題、設備の問題、あるいはまたその学校の所在する地方の意見等あらゆる事項を考慮の中に入れて取り計らう必要があるとともに、男女共学とは、単に男子と女子とを同一の学校や同一の教室へ入れるだけでなく、更に進んで日常生活並びに交際においても男子と女子とが互に人格として尊重し合うようにしなければならない。
6、全日制あるいは定時制とすること
 高等学校には、昼間全日制のものと、定時制のものとがある。この定時制の設置とともに、現在の青年学校本科は廃止されることになる。定時制は、教員の点においても教育の程度においても全日制と同一規準に置かれるのであるから、生徒も原則的には全日制と同一規準で学習すべきである。従つて、卒業資格も全日制のものと原則的には同一であるべきであるが、修業年限は全日制よりも長くなることもあろう。
7、独立の校舎を持ち、専任の校長及び教職員を置くこと
 高等学校は独立の設備を持つべきであつて、その建設に対する計画は、生徒の要求及び設置する課程の要求に基づいて立てられなければならない。また、高等学校は、三の(一)に示したように上級学校に進学しようとする者、及び各自にもつとも適した職業に就こうとする者を入学させて教育するのであるから、その意味においても、施設計画は、生徒の希望及び要求のうち合理的にして実行可能なるものをも尊重して行わるべきである。
 校長及び教職員は専任とするのを原則とし、高等学校教育に必要な経歴と能力とを有する者であるべきである。条件に合致する者を得られないときには再教育の途を講ずる。
8、教科課程

 
第三表

 高等学校の教科課程の規準は別途に発表されるが、この教科課程は、実質的には昭和二十二年度より中等学校の上級学年、即ち将来高等学校に該当することになる者に対して適当に適用されることになる。この教科課程の適用を受けるべきものを例示すると第三表のようである。
9、実施の時期
 高等学校は昭和二十二年度から実施されるが、すべての学校が全部第三学年(第一二年)まで一挙に充実されるのではない。その実施に当たつての学年編成基準は次の通りである。即ち、国民学校初等科修了をもつて入学資格とする現在の中等学校の第四学年(第一〇年)第五学年(第一一年)、及び国民学校高等科修了をもつて入学資格とする現在の中等学校の第二学年(第一〇年)第三学年(第一一年)の部がそれぞれ高等学校の全日制の第一学年・第二学年(第一〇年・第一一年)に該当するのであり、また定時制のものについては、青年学校の本科についてその該当を決定するのである。
 なお、高等学校はその実施の時期においてできるだけ第三学年(第一二年)まで充実するようにすることが望ましい。
四、新学校制度(六・三・三制)の実現に対して採るべき方途

 
第四表

1、漸進的方策
 この学校制度改革案は、急速なる実施が困難だと思われるかも知れないが、その実行は漸進的に、しかも着実に進められるべきである。そして新制度の実施に当たつて起る幾多の問題解決のためには、教育者・教育関係官・父兄・生徒を始め一般人の協力が必要である。
2、現在の学校制度と新学校制度との関係
 現在の学校制度と新学校制度との関係を示すために小都市の学校を例示すれば第四表のようになる。この都市には、高等科と初等科とを置く国民学校六、初等科のみの国民学校一、国民学校初等科修了をもつて入学資格とする中学校・高等女学校、及び実業学校各一、国民学校高等科修了をもつて入学資格とする実業学校一、並びに青年学校一がある。表中の最右側にあるものが六・三・三制の学校段階である。この表でわかるように
新制度の中学校に該当すべきものは
(一) 国民学校高等科第一学年・第二学年(第七年・第八年)
(二) 国民学校初等科修了をもつて入学資格とする中等学校の第一学年・第二学年・第三学年(第七年・第八年・第九年)
(三) 国民学校高等科修了をもつて入学資格とする中等学校の第一学年(第九年)
(四) 青年学校普通科及び本科の一部
新制度の高等学校に該当すべきものは
(一) 国民学校初等科修了をもつて入学資格とする中等学校の第四学年・第五学年(第一〇年・第一一年)
(二) 国民学校高等科修了をもつて入学資格とする中等学校の第二学年・第三学年(第一〇年・第一一年)(夜間のものにあつては第四学年も含む)
(三) 青年学校本科の大部
である。
五、中学校の設立

 
第五表
 
第六表
 
第七表
 
第八表

1、独立の施設の整備
 まず、昭和二十二年度において中学校のために独立した建物が準備できるかどうかを各公共団体で研究しなければならない。即ち、
イ、中学校用として利用可能な建物があるかどうか
ロ、中学校用として独立した建物が新築できるかどうか
ハ、その他
2、高等科のみの国民学校を中学校とする場合
 高等科のみの国民学校を中学校に振り向けるときには、中学校の第一学年・第二学年(第七年・第八年)を収容し、第三学年(第九年)を増設するとともに、新教科課程を実施すればよい。勿論第三学年(第九年)を増設するには、それを収容するに足る設備も増設することが必要である。こういつた場合の例を、ある学校について示すと第五表のようになる。
3、高等科・初等科を置く国民学校に中学校を設置する場合
 この場合においても、(二)の場合と実質的には同様である。即ち中学校と小学校との場所をそれぞれ分割して定め、更に中学校の部に第三学年(第九年)を収容するに足る設備を増設することである。このような場合をある一つの国民学校に例をとつてみると第六表及び第七表のようになる。この第六表は、国民学校で初等科・高等科を併置する現状であり、第七表は小学校と中学校とを併置する場合の予想である。即ち、今直ちに中学校に独立の施設を持たせずに、現在の国民学校のところに併置するのである。
4、数校の国民学校が存在する地区における中学校の設置
 以上に考察した事項は、個々の学校をいかにして新制度の六・三・三制に移行させるかについてであるが、ある市町村に二つ以上の学校がある場合には、それらの学校を個々別々に考えることは避くべきで、それらを全部総括して考慮し、その市町村の実情に応じて新制度を実施するようにすることが必要である。
 今、ある町を例にとつて示すと、この町には六つの国民学校がある。その場合それらのおのおのに中学校を併置してもよいが、六校を総括して考えて、その町で中学校に就学すべき者の数、通学の便等を研究の上、比較的町の中心に位置する一校を独立した中学校に振り替えてその町の就学該当者全部をそれに収容し、他の五校は小学校のみの経営とすることもよい方法である。第八表(a)は前の方法を(b)は後の方法を採つた場合の児童生徒の配分を、数字を当てはめて示したものである。この例は国民学校のみを考えに入れたのであるが、青年学校・中等学校等がその町にある場合にはこれ欄学校も総括して考慮の中に加えることが必要である。また、一般的にいつて後の方法のほうが推奨される。

第四、新学校制度(六・三・三制)を実施するに当たり、昭和二十二年度に現在制度の学校に対して採られるべき措置

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 昭和二十二年度においては、新制度の中学校には新教科課程を実施するとともに、従来どおりの中等学校として残る部分即ち将来新制度の高等学校に該当すべき部分に対しても、教科課程は新しい高等学校用のものを適用するのである。次に、中学校の実施に当たつて採るべき編成要領を記そう。
一、昭和二十二年度における中学校の編成
1、第一学年(第七年)
   昭和二十一年度に現在の国民学校初等科第六学年を修了する者の全部が、義務制の下に無償で中学校第一学年(第七年)に入学する。 2、第二学年(第八年)
 (一) 昭和二十一年度に現在の国民学校高等科第一学年(第七年)、青年学校普通科第一学年(第七年)を修了する者を中学校第二学年(第八年)に入れる。但し義務制ではない。
 (二) 昭和二十一年度に国民学校初等科修了をもつて入学資格とする現在の中等学校の第一学年(第七年)を修了する者を、そのまゝの状態で中学校第二学年(第八年)のわくに入れる。但し義務制ではない。
     この場合、その管理は従前どおりの設置者の下におかれることになるのが普通であろう。
3、第三学年(第九年)
 (一) 昭和二十一年度に国民学校高等科第二学年(第八年)、特修科(第九年)、青年学校普通科第二学年(第八年)、及び本科第一学年(第九年)を修了する者のうち希望する者を中学校第三学年(第九年)に入れる。但し、義務制ではない。
     国民学校高等科第二学年を修了する者及び青年学校普通科第二学年を修了する者で、定時制を希望する者は青年学校本科第一学年に進む。
 (二) 昭和二十一年度に国民学校高等科第二学年(第八年)を修了する者で、昭和二十二年度に、国民学校高等科修了をもつて入学資格とする昼間あるいは夜間の現在制度の中等学校に入学する者は、入学と同時にそれを中学校第三学年(第九年)のわくに入れる。但し義務制ではない。従つて、昭和二十二年度に限り、中学校第三学年(第九年)の部に夜間において授業を行うものを認める。
     この場合、その管理は、従前通りの設置者の下におかれることになるのが普通であろう。
 (三) 昭和二十一年度に、国民学校初等科修了をもつて入学資格とする現在の中等学校の第二学年(第八年)を修了する者を、そのまゝの状態で中学校第三学年(第九年)のわくに入れる。但し、義務制ではない。
     この場合、その管理は、従前通りの設置者の下におかれることになるのが普通であろう。
4、現在制度の中等学校より新制度の中学校に編入される者の卒業取り扱い
 (一) 2の(二)及び3の(三)によつて現在制度の中等学校より新制の中学校第二学年(第八年)及び第三学年(第九年)のわくに入る者に対する卒業の取り扱いは、新しい中学校制度による。そして、現在制度の年限による卒業は認められない。
     また、これらの生徒が高等学校に進学する場合には、その学校において新たに入学考査等を受けずに、そのまゝ進学することが認められる。但し、その学校が高等学校になる場合に限る。
 (二) 3の(二)によつて新制の中学校の第三学年(第九年)のわくに入る者に対する卒業の取り扱いは、新しい中学校制度による。また、この者が高等学校に進学する場合には、その学校において新たに入学考査等を受けずに、そのまゝ進学することが認められる。但し、その学校が高等学校になる場合に限る。そして現在制度の年限による卒業も認められる。
二、昭和二十二年度において現在制度の中等学校のうち高等学校に相当する部分に対する取り扱い
 新制度の高等学校は、昭和二十三年度から実施されるのであるが、将来高等学校に該当すべき部分に対して昭和二十二年度に採られるべき措置を示せば次の通りである。
1、第一学年(第一〇年)
 (一) 昭和二十一年度に国民学校初等科修了をもつて入学資格とする現在の中等学校の第三学年(第九年)を修了する者は、現在制度において第四学年(第一〇年)に進むが、その教科課程は新制度の高等学校のものを適用することとなる。
 (二) 昭和二十一年度に国民学校高等科修了をもつて入学資格とする現在の中等学校の第一学年(第九年)を修了する者は、現在制度において第二学年(第一〇年)に進むが、その教科課程は新制度の高等学校のものを適用することとなる。
 (三) 昭和二十一年度に国民学校高等科修了をもつて入学資格とする現在の夜間中等学校の第一学年及び第二学年を修了する者は、現在制度においてそれぞれ第二学年及び第三学年に進むが、その教科課程は新制度の高等学校のものを適用することとなる。
2、第二学年(第一一年)
 (一) 昭和二十一年度に国民学校初等科修了をもつて入学資格とする現在の中等学校の第四学年(第一〇年)を修了する者は、現在制度において第五学年(第一一年)に進むが、その教科課程は新制度の高等学校のものを適用することとなる。
 (二) 昭和二十一年度の国民学校高等科修了をもつて入学資格とする現在の中等学校の第二学年(第一〇年)を修了する者は、現在制度において第三学年(第一一年)に進むが、その教科課程は新制度の高等学校のものを適用することとなる。
 (三) 昭和二十一年度に国民学校高等科修了をもつて入学資格とする現在の夜間中等学校の第二学年及び第三学年を修了する者は、現在制度において第三学年及び第四学年に進むが、その教科課程は新制度の高等学校のものを適用することとなる。
3、卒業に対する取り扱い
 (一) 昭和二十一年度に国民学校初等科修了をもつて入学資格とする現在の中等学校の第三学年・第四学年(第九年・第一〇年)を修了する者は、将来高等学校のわくに入つても、現在制度の年限での卒業も認める。
 (二) 昭和二十一年度に国民学校高等科修了をもつて入学資格とする現在の中等学校の第一学年・第二学年(第九年・第一〇年)を修了する者は、将来高等学校のわくに入つても、現在制度の年限での卒業も認める。
 更に附設課程に進む者に対しても、その学年に応じて高等学校の教科課程を適用する。
 なお、公立の高等学校であつて中学校を併置するものにあつては、その中学校の卒業者を優先的に入学させてはいけない。但し、私立の学校であつて同一経営者において高等学校及び中学校の両者を経営するものは、この限りでない。
三、昭和二十二年度において現在の青年学校に対して採られるべき措置
 青年学校の普通科は昭和二十一年度限り、本科は昭和二十二年度限り廃止の予定である。
 昭和二十二年度においては、青年学校本科に対しては新しい教科を適用して、将来高等学校の定時制課程に進む準備をすることが必要である。
 また、昭和二十二年度において定時制の青年学校普通科より中学校の相当学年に編入される者に対しては、全日制の教育に応じられるように特別な措置を講じて、学力及び能力の進展につとめることが望ましい。
1、 昭和二十一年度に青年学校普通科第一学年を修了する者は、中学校の第二学年(第八年)に入る。但し、義務制ではない。
2、 昭和二十一年度に青年学校普通科第二学年を修了する者のうち、希望する者を中学校第三学年(第九年)に入れる。但し、義務制ではない。
 定時制課程を継続することを希望する者は、本科に進む。
3、 昭和二十一年度に青年学校本科第一学年を修了する者の中、希望する者は昭和二十二年度に中学校第三学年(第九年)に編入できる。但し、義務制ではない。
四、高等学校定時制課程の設置
 国家社会において勤労青年の持つ役割は極めて大きい。この勤労青年男女は、道義の確立と文化国家の建設に対して活動するための向学心に燃えているのである。これに応えて、勤労青年たちのために修学の途を開いて、各自の能力に応じて教育を受ける権利を行使する機会を与えることは極めて重要な事がらである。よつて、学校制度の改革もこの線に沿つて行われるべきであり、青年教育が従来の青年学校の在り方とは一変した発展を遂げるように、国家及び公共団体が責任を持つて活動しなければならない。この意味において、高等学校に置くべき定時制課程も、勤労青年教育のために極めて重要なものである。
1、定時制課程の要点
 (一) 中学校の課程を修了した者を入学せしめる。
 (二) 設置する学科及びその教科課程は全日制のものに準ずるとともに、その地方の実情に即した教育を行う。
 (三) 高等学校三年の課程を履修させるために、定時制課程の修業年限は、地方の実情により四年又は五年に延長することができる。
2、定時制課程経営上の要点

 
第九表

 (一)、高等学校に設置すべき定時制の課程も、なるべく現在の中等学校の施設を使用するように計画すべきである。
 (二) 全日制の運営は、定時制課程の教育を徹底させる観点に立つて考えなければならない。
 (三) 教育の徹底を期する上から、教職員は全日制の者が兼ねる外に定時制専任の者を置くこととなるが、学校としては全く同一のものであるべきこと。
 (四) 教職員は、この課程の教育に必要な経歴と能力とを備えていること。
差し当たり条件に合致する者を得られない場合は再教育の途を講ずる。
 (五) 地方の実情によつては、定時制のみの高等学校を置くこともできる。この場合も、独立の設備を持つことを原則とするが、第九表に示すように、全日制課程を置く設備の相当充実した高等学校を中心校とし、その周辺の定時制課程のみの学校数校が連合して、学習上特に設備を要する科目例えば物理・化学・実業関係科目等につき中心校の設備を順番に利用することもよい。
 また、中心校が教員の研究機関として活動することも望ましい。
 (六) 市町村は、定時制高等学校の発展に格段の努力をすることが必要である。定時制課程のみの高等学校を置く場合に、独立した設備が得られず小学校又は中学校の施設の中に併置するのもやむを得ないものもあろうが、その場合には、小学校又は中学校の教育に妨げのないうちに充分注意することが必要であるとともに、できるだけ早くそれぞれに対して独立した設備を設けるようにすることが必要である。
五、私立学校
 新学校制度実施に当たつては、私立中等学校は自主的な経営をすることができる。即ち、公共団体と協議の上、公費による中学校の義務教育を受託してもよく、また公費による委託を受けずに独自の立場で中学校を経営してもよい。また、同一の経営者において中学校と高等学校との双方を経営するようにすることも、高等学校のみを経営するようにすることも随意である。
 なお、自主的経営の場合には授業料の徴集は勿論差し支えないが、教科課程は新制度のものに準拠されたい。そうすれば生徒は義務教育を受けたものと同等に取り扱われる。この場合は地域制の適用は受けず、入学者を選抜することもでき、男女共学も随意である。
六、社会一般の協力の必要
 以上各項において、いわゆる六・三・三制による学校制度を実施するに当たり、まず昭和二十二年度においては中学校までを実施するという仮定の下に立つて、その場合に採られるべき措置並びに方途について参考に供したのである。
 教育者・教育関係官・父兄・生徒、その他一般国民諸氏は、この案に基づく新学校制度の実施に対し、各方面に亙つて研究を重ね、この実現に向かつて努力と協力とを致されることを望むものである。
 なお、こゝに記した事がらについても、今後幾分変更される場合もあるかも知れず、まだ具体的に明確になつていない事項もあるが、これらについては決定次第に逐次通知する予定である。

 

この著作物は、日本国の著作権法第10条1項ないし3項により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。(なお、この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により、発行当時においても、著作権の目的となっていませんでした。)


この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。