改正対照表を用いた改正方式について (案)

1 改正対照表を用いた改正方式

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本文と改正対照表から成る改正規定の記述によって、改正の内容を表すものとする。

本文と改正対照表から成る改正規定においては、改正対象法令について改正前の規定と改正後の規定を対照して示すことによって、改正の内容を分かりやすく記述することに主眼を置き、これまでの改正規定(以下「改め文」という。)のように、規定の文言を改正した上で当該規定を移動するといった改正操作の手順を逐一記述することはしないが、改正の内容を実現するために必要な改正操作は、改め文による改正の場合と同様の論理的順序に従って、当然に行われることとなる。

(1) 本文

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立法者の改正意思を明記し、改正規定としての法的効力を有する部分を明確にするため、本文において、簡潔に、改正対照表中で用いる傍線等の改正操作に係る記号の意味を明らかにするものとする。

(本文の例)

次の表により(注1)、改正前欄に掲げる規定(注2)の傍線を付し又は破線で囲んだ部分(注3)をこれに順次対応する(注4)改正後欄に掲げる規定(注5)の傍線を付し又は破線で囲んだ部分(注6)のように改め(注7)、改正前欄及び改正後欄に対応して掲げるその標記部分(注8)に二重傍線を付した規定(以下「対象規定」という。)(注9)は、その標記部分が同一のものは当該対象規定を改正後欄に掲げるもののように改め(注10)、その標記部分が異なるものは改正前欄に掲げる対象規定を改正後欄に掲げる対象規定として移動し(注11)、改正前欄に掲げる対象規定(注12)で改正後欄にこれに対応するものを掲げていないものは、これを削り(注13)、改正後欄に掲げる対象規定(注14)で改正前欄にこれに対応するものを掲げていないものは、これを加える(注15)(注16)

(注1) 改正対照表が本文と一体の改正規定を構成して、改正の内容を表すものであることを明らかにするもの。いわゆる二段ロケット方式による改正等複数の改正対照表がある場合は、たとえば「次の第一表及び第二表により」として、本文を共通のものとすることができるものとする。なお、単純に施行期日が異なる改正部分がある場合には、施行期日ごとに改正対照表を作成する方法のほか、改正規定を分かりやすいものにするという趣旨に反しない限り、一つの改正対照表について附則で施行期日を書き分けることもできるものとする。本文と改正対照表から成る改正規定であることから、たとえば「○条の改正規定(「○○」を「△△」に改める部分に限る。)」、「第○条から第△条までを加える改正規定」として書き分ける部分を特定することができる。

(注2) 改め文における「第○条第○項中」に相当する部分。題名の改正を伴う場合は、「規定(題名を含む。以下同じ。)」とするものとする。

(注3) 改め文における「「○○」を「△△」に改める。」の「○○」に相当する部分。改正対照表において傍線を付した部分の前後の文言は参考記載であることに留意しつつ、その掲げる規定の中で改正部分を特定することができるように傍線を付するものとする。なお、目次の改正、章名等の付加削除、罫線を含む表の一部改正等その改正部分及びこれに対応する改正後の規定を傍線では的確に特定できないときは、その部分を破線で囲んで特定するものとする。

(注4) 改正対照表において改正部分とその改正後の文言が一対一に対応するように記載する。一の規定に改正部分が複数ある場合には、改正前欄において傍線を付した改正部分と改正後欄において傍線を付した改正後の文言とが順次対応するものであることを本文に明記する。

(注5) 改正後欄に掲げる規定が移動後のものであっても((注11)参照)、論理的順序に従い、まず改正前欄に掲げる規定について文言の改正が行われ、次いで当該規定が改正後欄に掲げる規定として移動されるものであり、文言の改正部分の対応関係に問題はない。

(注6) 改め文における「「○○」を「△△」に改める。」の「△△」に相当する部分。

(注7) 改め文においては、「改める」、「 加える」及び「削る」を用いていたが、その使い分けは、前後の文言や当該改正部分が単純に特定できるかなどといった事情に左右されるものであり、また、いずれも規定の文言を改正するという本質は同じであることから、改正対照表を用いた改正方式においては、特に、参考記載部分に依存しないで改正部分と改正後の文言との対応関係を明確に表す必要から、いずれの場合も、改正前欄の傍線を付した文言をこれに対応する改正後欄の傍線を付した文言に「改める」という改正操作に統一することとした。

(注8) 標記部分とは、章、条、項、号、号の細分等ひとまとまりの規定の冒頭の「第○章」、「第○条」、「2」、「一」、「イ」等の部分をいう。 表中の項については、当該表の最上欄の字句(改め文において、「別表○○の項」と表している「○○」の部分)が標記部分に当たる。また、項番号がない第一項や項番号が付されない旧来の規定については、改正対照表において当該項の冒頭に「[①]」など[]で注記した項番号を付し、本文において「標記部分([]で注記した項番号を含む。以下同じ。)」として、この部分に二重傍線を付することにより、項番号が付されている場合と同様の扱いをすることができるものとする。 なお、ただし書や後段の規定には、このような標記部分がなく、また、ひとまとまりの規定としての独立性も乏しいことから、ただし書や後段の規定の追加削除については、本文や前段の最後の語及び句点を含めて傍線を付することによって改正部分及びこれに対応する改正後の規定を表すものとする。

(注9) 改正対照表においてひとまとまりの規定の標記部分に二重傍線を付することによって、当該ひとまとまりの規定の全体(規定の文言ではなく当該規定自体)を改正操作の対象として表すものとする。

(注10) 標記部分に二重傍線を付した規定の全部改正であり、当該規定が改正後欄に掲げるもののように改正されることを表す。改正前欄に掲げた規定の文言は参考記載である。

(注11) 改正前欄において標記部分に二重傍線を付した規定を改正後欄において標記部分に二重傍線を付した規定として移動することを表す。この改正操作においては、改正前欄及び改正後欄に掲げる規定の文言は参考記載である。規定の移動については、他の規定(章名、節名等を含む。)を飛び越して移動させることはしないものとする。これにより、改正対照表の改正後欄及び改正前欄のいずれにおいても、すべての規定が昇順で並ぶこととなり、また、改正対照表は、ここに掲げる規定(章名、節名等を含む。)の前後の位置関係を表すものとなる。 規定をその属する章、節等の最初又は最後の規定として移動する場合は、改正対照表の改正後欄及び改正前欄に当該移動後の規定の直前又は直後にある章名、節名等を掲げることによって、その前後関係を入念的に明らかにするものとする。 移動する規定について文言の改正がある場合、その文言の改正は改正部分に傍線を付して表される((注4)参照)。なお、条ずれ等の処理のための単なる条項移動の場合には、二重傍線を付した標記部分のみを掲げ、その他の部分の記載を省略することができるものとする。

(注12) 共通見出しを削る場合は、「対象規定及び二重傍線を付した共通見出し」とし、改正対照表の改正前欄において当該共通見出しの全体に二重傍線を付するものとする。

(注13) 標記部分に二重傍線を付した規定を削るものである。改正前欄に掲げた規定の文言は参考記載である。

(注14) 共通見出しを付する場合は、「対象規定及び二重傍線を付した共通見出し」とし、改正対照表の改正後欄において当該共通見出しの全体に二重傍線を付するものとする。

(注15) 標記部分に二重傍線を付した規定を加えるものである。新たな条は、その条名(番号)に応じて直前の条の次に加えられ、新たな章、節等は、その最初の条の条名(番号)に応じて直前の条の次に加えられる。 章、節等の最初又は最後に新たな規定を加える場合には、改正対照表の改正後欄及び改正前欄に当該新たな規定の直前又は直後にある章名、節名等を掲げることによって、その前後関係を明らかにするものとする。

(注16) 本文は、改正内容に応じて、必要な部分のみを規定するものとする。

(2) 改正対照表

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改正対照表は、その上欄を「改正後」、下欄を「改正前」として、それぞれ改正対象法令の改正後の規定と改正前の規定とを対照して掲げ、これに改正操作に係る傍線等の記号のほか適当な注記を加えるものとする。

改正対照表において改正規定としての法的効力を有するのは、その掲げる改正対象法令の規定のうち改正操作に係る傍線が付された部分等その本文の記述と相まって立法者の改正意思を表している部分であり、その余の記載は、これまでの新旧対照表の記載と同様、法的な効力を有しない参考記載にとどまるものである。この参考記載部分は、形式上は法令の一部であるが、何ら法的な効力を有しないものであることから、実質上法令ではない部分と言うことができる。

ア 改正規定としての法的効力を有する部分

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① 傍線を付した改正部分とこれに対応する傍線を付した改正後の文言を表す部分
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改正前欄に掲げる規定(本文注2)の傍線を付した部分(本文注3)が改正部分を示し、これに対応する(本文注4)改正後欄に掲げる規定(本文注5)の傍線を付した部分(本文注6)が改正後の文言を示すものであり(本文注7)、いずれも改正規定としての法的効力を有する。破線で囲んだ改正部分とこれに対応する破線で囲んだ改正後の規定の内容を表す部分についても、同様である。

② 標記部分に二重傍線を付してその規定の全部改正、移動、削除及び追加を表す部分等
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改正対照表においてその標記部分(本文注8)に二重傍線を付した規定(以下「対象規定」という。)は、当該対象規定の全体を対象として改正操作が行われることを示すものであり(本文注9)、全部改正を行う場合(本文注10)にあっては、改正前欄の二重傍線を付した標記部分及び改正後欄に掲げる対象規定そのものが、移動を行う場合(本文注11)にあっては、改正前欄の二重傍線を付した標記部分及び改正後欄の二重傍線を付した標記部分が、削除を行う場合(本文注13)にあっては、改正前欄の二重傍線を付した標記部分が、追加を行う場合(本文注15)にあっては、改正後欄に掲げる対象規定そのものが、それぞれ改正規定としての法的効力を有する。共通見出しに二重傍線を付してその付加削除を行う場合(本文注12及び14)は、当該共通見出しの部分が法的効力を有する。なお、注記による標記部分に二重傍線を付した場合(本文注8)は、その注記も改正規定としての法的効力を有するものとなる。

③ 規定の掲げ方
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①又は②に関連して、改正操作のために特定の規定を掲げていること、対象規定の改正前欄と改正後欄における対応関係、改正対照表に掲げる規定の前後の位置関係(本文注15)も改正規定としての法的効力を有する要素である。

イ 参考記載部分

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① 法的効力を有する部分以外の改正対象法令の規定の記載
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改正対照表におけるアに該当しない改正対象法令の規定の記載は、当該改正の内容の理解を助けるための参考記載である。参考記載として改正対象法令の規定をどの程度掲げ、また、どの程度省略するかは、改正対照表が膨大なものとなることを回避しつつ当該改正の内容を分かりやすいものとするとの観点から、適切に判断するものとする。

② 注 記
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改正対照表を用いた改正操作の理解を助けるため、改正対照表において、改正対象法令の規定の記載(引用)と区別することができるよう、備考において[]の記載は注記であることを明記して、適当な注記を行うものとする。たとえば、対象規定の削除を行う場合にあっては空白となる改正後欄に「[条を削る。]」等の、対象規定の追加を行う場合にあっては空白となる改正前欄に「[条を加える。]」等の注記を行うものとし、また、対象規定の全部改正又は追加を行う場合には、注意喚起のため、改正後欄に掲げる当該対象規定の二重傍線を付した標記部分を除く全体に注記として傍線を付するものとする。また、参考記載部分について改正対象法令の規定の記載(引用)を省略する場合は、その箇所の改正後欄に「[略]」、改正前欄に「[同上]」と注記するものとする。

2 法令案の審査等

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内閣法制局における法令案の審査(読み合わせを含む。)の対象は、改正規定としての法的効力を有する部分であり、その余の改正対照表の参考記載部分の正確性等については、これまでの新旧対照表の記載と同じように、各府省庁においてそのチェックを行う。また、改正対照表における参考記載部分である改正対象法令の規定について他法令による改正が行われる場合等、当該改正対照表における参考記載部分が改正時点での改正対象法令の内容を必ずしも正確に表すものではないとしても、当該参考記載部分について改正等は行わないものとする。

 

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