原文
二年春正月甲子朔。賀正禮畢。即宣改新之詔曰。
其一曰。罷昔在天皇等所立。子代之民。處々屯倉及別臣連。伴造。國造。村首所有部曲之民。處處田庄。仍賜食封大夫以上。各有差。降以布帛賜官人。百姓有差。又曰。大夫所使治民也。能盡其治則民賴之。故重其祿所以爲民也。
其二曰。初修京師。置畿內國司。郡司。關塞。斥候。防人。驛馬。傳馬。及造鈴契。定山河。凡京每坊置長一人。四坊置令一人。掌按檢戶口督察奸非。其坊令取坊內明廉强直堪時務者充。里坊長並取里坊百姓淸正强幹者充。若當里坊無人。聽於比里坊簡用。凡畿內東自名墾橫河以來。南自紀伊兄山以來。〈兄。此云制。〉西自赤石櫛淵以來。北自近江狹々波合坂山以來。爲畿內國。凡郡以四十里爲大郡。三十里以下四里以上爲中郡。三里爲小郡。其郡司並取國造性識淸廉堪時務者爲大領少領。强幹聰敏工書算者爲主政主帳。凡給驛馬。傅馬。皆依鈴傅苻剋數。凡諸國及關給鈴契。並長官執。無次官執。
其三曰。初造戶籍。計帳。班田收授之法。凡五十戶爲里。每里置長一人。掌按檢戶口。課殖農桑禁察非違。催駈賦役。若山谷阻險。地遠人稀之處。隨便量置。凡田長卅步。廣十二步爲段。十段爲町。段租稻二束二把。町租稻廿二束。
其四曰。罷舊賦役而行田之調。凡絹絁絲綿並隨鄕土所出。田一町絹一丈。四町成疋。長四丈。廣二尺半。絁二丈。二町成疋。長廣同絹。布四丈。長廣同絹絁。一町成端。〈綿絲絇屯諸處不見。〉別收戶別之調。一戶貲布一丈二尺。凡調副物鹽贄。亦随鄕土所出。凡官馬者。中馬每一百戶輸一疋。若細馬每二百戶輸一疋。其買馬直者。一戶布一丈二尺。凡兵者。人身輸刀甲弓矢幡鼓。凡仕丁者。改舊每卅戶一人〈以一人充廝也。〉而每五十戶一人〈以一人充廝。〉以充諸司。以五十戶充仕丁一人之粮。一戶庸布一丈二尺。庸米五斗。凡釆女者。貢郡少領以上姉妹及子女形容端正者〈從丁一人。從女二人。〉以一百戶充釆女一人之粮。庸布。庸米皆准仕丁。
訓
二年、春正月、きのえねの朔、みかどをがみこと終りて、すなはち新、あらためんとのたまうて、みことのりしてのたまはく、其一に云、むかしの天皇等の、たてたまへる子代のおほんたから、處々のみやけ、およびことには臣、連、伴造、くにのみやつこ、村首のたもてる部曲のおほんたから、處々の田庄をやめ給。よつて食封たまふこと、大夫以上おの〳〵しなくだりあり。布帛をもて、官人おほんたからに賜ふこと差あり。又云、大夫治民をつかへるなり。よく、そのまつりごとを、つくすときは、すなはち、民たのめり。故、そのたまものをおもくすることは、民のためにするゆゑなり。その上にいはく、はじめてみさとをつくります。畿內の國司、郡司、關塞、斥候、防人、驛馬、傳馬を置き、および鈴契を造、山河を定めよ。凡そみさとにはまちごとに長人を置け、よつのまちにうなかし一人おきて、戶口をかんがへおさめ、かたましくあしきをただし、あきらむることをつかさどらせよ。その坊の令には坊のうちにいさぎよくこはくただしくて、時のまつりことにたへたるものを、とりてあてよ。里坊の長にはならびに、里坊のおほんたからの、いさぎよくただしくいさをしき者をとりてあてよ。もし其さとまちに人なくば、並びの里まちに、えらび用ることをゆるす。およそ畿內はひがしは名墾の橫川よりこなた、南はきのくに兄山よりこなた、西はあかしのくしふちよりこなた、北はあふみの狹々波のあふさか山よりこなたを、畿內國とせよ。およそ郡は四十里をもて大郡とせよ。三十里以下の四里以上を中郡とし、三里を小郡とせよ。そのこほりのつかさには、ならびに國造のひととなり、たましひいさぎよくして、時のまつりごとに堪たるものをとりて、おほみやつこ、すけのみやつことせよ。こはくいさをしくさとくて、てかき、かづしるにたくみなるものを主政主帳とせよ。およそ驛馬傳馬をたまふこと、みな鈴、傳のしるしのきざみの數によれり。およそくに〴〵、及關に鈴契をたまはゞ、ならびに長官はとれ、無ば次官とれ。その三に云はしめて戶籍斗帳班田、ををさめさづくるの法をつくる。すべて五十戶を里とす。里ことに長一人をおきて、戶口をかんがへをさめ、なりはひくわをおほせうう、のりにたがへるをいましめ、みつぎうながすことをつかさどらしめよ。およそ田長三十步、ひろさ十二步を段とせよ。十段を町とせよ。きだごとに租稻二束二把町ごとにたちから二十二束。もし山谷さかしく、ところ遠く人まれなる處には、たまりのまゝにはからひて置け。その四にいはく、舊のみつぎをやめて田のみつぎをおこはへ。およそかとり、ふときぬ、いとわたは、ならびに鄕土の出せるまに〳〵、田一町に、かとり、一丈、四町にて疋なる長四丈ひろさ二尺半、ふとぬのは二丈、二町にてむらをなす、たけひろかとりにおなじ。ぬのは四丈、長はかとりふとぬのにおなじ。一町にて端をなす。〈いとわた絇屯はもろもろのところにみえず〉別に戶別の調をとれ。一戶に、みな、ぬの一丈二尺。およそ調の副物鹽贄また鄕土より出せるまに〳〵。およそ官長は中馬は一百戶ごとに一疋いたせ。もし細馬は二百戶ごとに一疋いたせ。その馬かはんあたひは、一戶に布一丈二尺。およそ兵は人身にたち、よろひ、ゆみ、や、はたつづみをいたせ。およそ仕丁は舊の三十戶ごとに一人と、云しをあらためて、〈一人をもつて廝にあつ〉五十戶をもて仕丁一人がかてにあてよ。一戶に庸布一丈二尺、庸米五斗。およそ采女は、こほりのみやつこより上つかたの、いろねいろと、および子女の形容きら〳〵しきものをたてまつれ。〈縱丁一人縱女一人〉一百戶をもてうねめ一人か粮にあてよ。ちからしろのぬの、庸米、みなつかへよほろになぞらへ。
大意
1. 従前の天皇等が立てた子代の民と各地の屯倉、そして臣・連・伴造・国造・村首の所有する部曲の民と各地の田荘を廃止する。
2. 初めて京師を定め、畿内・国司・郡司・関塞・斥候・防人・駅馬・伝馬の制度を設置し、駅鈴・契を作成し、国郡の境界を設定することとする。
3. 初めて戸籍・計帳・班田収授法を策定することとする。
4. 旧来の税制・労役を廃止して、新たな租税制度(田の調)を策定することとする。
この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。
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