排他的経済水域及び大陸棚の保全及び利用の促進のための低潮線の保全及び拠点施設の整備等に関する法律


第一章 総則 編集

(目的)

第一条
この法律は、我が国の排他的経済水域及び大陸棚が天然資源の探査及び開発、海洋環境の保全その他の活動の場として重要であることにかんがみ、排他的経済水域等の保持を図るために必要な低潮線の保全並びに排他的経済水域等の保全及び利用に関する活動の拠点として重要な離島における拠点施設の整備等に関し、基本計画の策定、低潮線保全区域における海底の掘削等の行為の規制、特定離島港湾施設の建設その他の措置を講ずることにより、排他的経済水域等の保全及び利用の促進を図り、もって我が国の経済社会の健全な発展及び国民生活の安定向上に寄与することを目的とする。

(定義等)

第二条
  1. この法律において「排他的経済水域等」とは、排他的経済水域及び大陸棚に関する法律(平成八年法律第七十四号)第一条第一項の排他的経済水域及び同法第二条の大陸棚をいう。
  2. この法律において「低潮線の保全」とは、排他的経済水域及び大陸棚に関する法律第一条第二項の海域若しくは同法第二条第一号の海域の限界を画する基礎となる低潮線又はこれらの海域の限界を画する基礎となる直線基線及び湾口若しくは湾内若しくは河口に引かれる直線を定めるために必要となる低潮線を保全することをいう。
  3. この法律において「特定離島」とは、本土から遠隔の地にある離島であって、天然資源の存在状況その他当該離島の周辺の排他的経済水域等の状況に照らして、排他的経済水域等の保全及び利用に関する活動の拠点として重要であり、かつ、当該離島及びその周辺に港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)第二条第三項に規定する港湾区域、同法第五十六条第一項の規定により都道府県知事が公告した水域及び漁港漁場整備法(昭和二十五年法律第百三十七号)第六条第一項から第四項までの規定により市町村長、都道府県知事又は農林水産大臣が指定した漁港の区域が存在しないことその他公共施設の整備の状況に照らして当該活動の拠点となる施設の整備を図ることが特に必要なものとして政令で定めるものをいう。
  4. この法律において「拠点施設」とは、特定離島において排他的経済水域等の保全及び利用に関する活動の拠点として整備される施設をいう。
  5. この法律において「低潮線保全区域」とは、低潮線の保全が必要な海域(海底及びその下を含む。)として政令で定めるものをいう。
  6. 内閣総理大臣は、第三項の政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、あらかじめ、関係都道府県知事の意見を聴かなければならない。
  7. 低潮線保全区域は、低潮線の保全を通じて排他的経済水域等の保持を図るために必要な最小限度の区域に限って定めるものとし、やむを得ない事情により、海底の地形、地質その他の低潮線及びその周辺の自然的条件について、調査によってその確認を行うことができない海域については定めないものとする。

第二章 基本計画 編集

(基本計画)

第三条
  1. 政府は、排他的経済水域等の保全及び利用の促進のため、低潮線の保全並びに拠点施設の整備、利用及び保全(次項において「拠点施設の整備等」という。)に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本計画(以下「基本計画」という。)を定めなければならない。
  2. 基本計画には、次に掲げる事項について定めるものとする。
    一 低潮線の保全及び拠点施設の整備等に関する基本的な方針
    二 低潮線の保全に関し関係行政機関が行う低潮線及びその周辺の状況の調査、低潮線保全区域における海底の掘削等の行為の規制その他の措置に関する事項
    三 特定離島を拠点とする排他的経済水域等の保全及び利用に関する活動の目標に関する事項
    四 拠点施設の整備等の内容に関する事項
    五 その他低潮線の保全及び拠点施設の整備等に関する事項
  3. 内閣総理大臣は、基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
  4. 内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本計画を公表しなければならない。
  5. 前二項の規定は、基本計画の変更について準用する。

(基本計画の推進)

第四条
国は、次章及び第四章並びに他の法律で定めるもののほか、基本計画に基づき、排他的経済水域等の保全及び利用の促進のため、低潮線及びその周辺の状況の調査、拠点施設の整備その他必要な措置を講ずるものとする。

第三章 低潮線保全区域 編集

(低潮線保全区域内の海底の掘削等の許可)

第五条
  1. 低潮線保全区域内において、次に掲げる行為をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣の許可を受けなければならない。ただし、低潮線の保全に支障を及ぼすおそれがないものとして政令で定める行為については、この限りでない。
    一  海底の掘削又は切土
    二  土砂の採取
    三  施設又は工作物の新設又は改築
    四  前三号に掲げるもののほか、低潮線保全区域における海底の形質に影響を及ぼすおそれがある政令で定める行為
  2. 国土交通大臣は、前項の許可の申請があった場合において、その申請に係る事項が低潮線保全区域における低潮線の保全に支障を及ぼすおそれがないと認める場合でなければ、これを許可してはならない。

(許可の特例)

第六条
  1. 第九条第一項、海岸法(昭和三十一年法律第百一号)第八条第一項若しくは第三十七条の五、港湾法第三十七条第一項若しくは第五十六条第一項又は漁港漁場整備法第三十九条第一項の規定による許可を受けた者は、当該許可に係る事項については、前条第一項の規定による許可を受けることを要しない。
  2. 国又は地方公共団体が前条第一項の行為をしようとする場合には、同項中「国土交通大臣の許可を受けなければ」とあるのは「国土交通大臣と協議しなければ」と、同条第二項中「許可の申請」とあるのは「協議」と、「その申請」とあるのは「その協議」と、「これを許可しては」とあるのは「その協議に応じては」とする。

(監督処分)

第七条
  1. 国土交通大臣は、次に掲げる者に対し、その行為の中止、施設若しくは工作物の改築、移転若しくは撤去、施設若しくは工作物により生ずべき低潮線の保全上の障害を予防するため必要な施設の設置その他の措置をとること又は原状の回復を命ずることができる。
    一  第五条第一項の規定に違反して、同項各号に掲げる行為をした者
    二  第五条第一項の規定による許可に付した条件に違反した者
    三  偽りその他不正な手段により第五条第一項の規定による許可を受けた者
  2. 国土交通大臣は、前項第二号又は第三号に該当する者に対し、第五条第一項の規定による許可を取り消し、その効力を停止し、その条件を変更し、又は新たな条件を付することができる。

第四章 特定離島港湾施設 編集

(特定離島港湾施設の建設等)

第八条
国の事務又は事業の用に供する泊地、岸壁その他の港湾の施設であって、基本計画において拠点施設としてその整備、利用及び保全の内容に関する事項が定められたもの(次条において「特定離島港湾施設」という。)の建設、改良及び管理は、国土交通大臣が行う。

(特定離島港湾施設の存する港湾における水域の占用の許可等)

第九条
  1. 特定離島港湾施設の存する港湾において、当該港湾の利用又は保全上特に必要があると認めて国土交通大臣が水域(政令で定めるその上空及び水底の区域を含む。)を定めて公告した場合において、その水域において、次に掲げる行為をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣の許可を受けなければならない。
    一 水域の占用(公有水面の埋立てによる場合を除く。)
    二 土砂の採取
    三 前二号に掲げるもののほか、港湾の利用又は保全に支障を与えるおそれのある政令で定める行為
  2. 国土交通大臣は、河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第三条第一項に規定する河川に係る同法第六条第一項に規定する河川区域又は海岸法第三条第一項の規定により指定される海岸保全区域について、前項の水域を定めようとするときは、当該河川を管理する河川法第七条に規定する河川管理者又は当該海岸保全区域を管理する海岸法第二条第三項に規定する海岸管理者に協議しなければならない。
  3. 国土交通大臣は、第一項の行為が、港湾の利用又は保全に著しく支障を与えるものであるときは、同項の許可をしてはならない。
  4. 国土交通大臣は、特定離島港湾施設の建設又は改良の工事のために必要な場合その他の港湾の機能の維持若しくは増進又は公益上の観点から特に必要なものとして政令で定める場合を除き、特定離島港湾施設である泊地その他の国土交通省令で定める水域施設について第一項第一号又は第三号の行為に係る同項の許可をしてはならない。
  5. 国又は地方公共団体が第一項の行為をしようとする場合には、同項中「国土交通大臣の許可を受けなければ」とあるのは「国土交通大臣と協議しなければ」と、前二項中「許可をしては」とあるのは「協議に応じては」とする。
  6. 国土交通大臣は、国土交通省令で定めるところにより、第一項第一号又は第二号の行為に係る同項の許可を受けた者から占用料又は土砂採取料を徴収することができる。
  7. 国土交通大臣は、国土交通省令で定めるところにより、偽りその他不正の行為により前項の占用料又は土砂採取料の徴収を免れた者から、その徴収を免れた金額の五倍に相当する金額以下の過怠金を徴収することができる。

第十条

  1. 何人も、前条第一項の規定により公告されている水域内において、みだりに、船舶その他の物件で国土交通大臣が指定したものを捨て、又は放置してはならない。
  2. 国土交通大臣は、前項の規定による物件の指定をするときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公示しなければならない。これを廃止するときも、同様とする。
  3. 前項の指定又はその廃止は、同項の公示によってその効力を生ずる。

(監督処分)

第十一条
  1. 国土交通大臣は、次に掲げる者に対し、工事その他の行為の中止又は工作物若しくは船舶その他の物件(以下この条において「工作物等」という。)の撤去、移転若しくは改築、工事その他の行為若しくは工作物等により生じた若しくは生ずべき障害を除去し、若しくは予防するため必要な施設の設置その他の措置をとること若しくは原状の回復(第三項及び第九項において「工作物等の撤去等」という。)を命ずることができる。
    一 第九条第一項の規定に違反して、同項各号に掲げる行為をした者
    二 第九条第一項の規定による許可に付した条件に違反した者
    三 偽りその他不正な手段により第九条第一項の規定による許可を受けた者
    四 前条第一項の規定に違反した者
  2. 国土交通大臣は、前項第二号又は第三号に該当する者に対し、第九条第一項の規定による許可を取り消し、その効力を停止し、その条件を変更し、又は新たな条件を付することができる。
  3. 第一項の規定により工作物等の撤去等を命じようとする場合において、過失がなくて当該工作物等の撤去等を命ずべき者を確知することができないときは、国土交通大臣は、当該工作物等の撤去等を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者にこれを行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、当該工作物等の撤去等を行うべき旨及びその期限までに当該工作物等の撤去等を行わないときは、国土交通大臣又はその命じた者若しくは委任した者が当該工作物等の撤去等を行う旨を、あらかじめ、公告しなければならない。
  4. 国土交通大臣は、前項の規定により工作物等を撤去し、又は撤去させたときは、当該工作物等を保管しなければならない。
  5. 国土交通大臣は、前項の規定により工作物等を保管したときは、当該工作物等の所有者、占有者その他当該工作物等について権原を有する者(第九項において「所有者等」という。)に対し当該工作物等を返還するため、国土交通省令で定めるところにより、国土交通省令で定める事項を公示しなければならない。
  6. 国土交通大臣は、第四項の規定により保管した工作物等が滅失し、若しくは破損するおそれがあるとき、又は前項の規定による公示の日から起算して三月を経過してもなお当該工作物等を返還することができない場合において、国土交通省令で定めるところにより評価した当該工作物等の価額に比し、その保管に不相当な費用又は手数を要するときは、国土交通省令で定めるところにより、当該工作物等を売却し、その売却した代金を保管することができる。
  7. 国土交通大臣は、前項の規定による工作物等の売却につき買受人がない場合において、同項に規定する価額が著しく低いときは、当該工作物等を廃棄することができる。
  8. 第六項の規定により売却した代金は、売却に要した費用に充てることができる。
  9. 第三項から第六項までに規定する撤去、保管、売却、公示その他の措置に要した費用は、当該工作物等の返還を受けるべき所有者等その他当該工作物等の撤去等を命ずべき者の負担とする。
  10. 第五項の規定による公示の日から起算して六月を経過してもなお第四項の規定により保管した工作物等(第六項の規定により売却した代金を含む。以下この項において同じ。)を返還することができないときは、当該工作物等の所有権は、国に帰属する。

(報告の徴収等)

第十二条
  1. 国土交通大臣は、この法律の施行に必要な限度において、国土交通省令で定めるところにより、第九条第一項の規定による許可を受けた者に対し必要な報告を求め、又はその職員に当該許可に係る行為に係る場所若しくは当該許可を受けた者の事務所若しくは事業所に立ち入り、当該許可に係る行為の状況若しくは工作物、帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができる。
  2. 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。
  3. 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

(強制徴収)

第十三条
  1. 第九条第六項の規定に基づく占用料若しくは土砂採取料、同条第七項の規定に基づく過怠金又は第十一条第九項の規定に基づく負担金(以下この条において「負担金等」と総称する。)をその納期限までに納付しない者がある場合においては、国土交通大臣は、督促状によって納付すべき期限を指定して督促しなければならない。この場合において、督促状により指定すべき期限は、督促状を発する日から起算して二十日以上経過した日でなければならない。
  2. 国土交通大臣は、前項の規定による督促をした場合においては、国土交通省令で定めるところにより、延滞金を徴収することができる。この場合において、延滞金は、年十四・五パーセントの割合で計算した額を超えない範囲内で定めなければならない。
  3. 第一項の規定による督促を受けた者がその指定の期限までにその納付すべき金額を納付しないときは、国土交通大臣は、国税滞納処分の例により負担金等及び前項の延滞金を徴収することができる。この場合における負担金等及び延滞金の先取特権は、国税及び地方税に次ぐものとする。
  4. 延滞金は、負担金等に先立つものとする。

第五章 雑則 編集

(許可の条件)

第十四条
  1. 国土交通大臣は、この法律の規定に基づく許可には、この法律の施行のために必要な限度において、条件を付すことができる。
  2. 前項の条件は、許可を受けた者に対し、不当な義務を課することとなるものであってはならない。

(経過措置)

第十五条
この法律の規定に基づき政令又は国土交通省令を制定し、又は改廃する場合においては、それぞれ、政令又は国土交通省令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

(権限の委任)

第十六条
この法律に規定する国土交通大臣の権限は、国土交通省令で定めるところにより、地方整備局長又は北海道開発局長に委任することができる。

第六章 罰則 編集

第十七条

次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第五条第一項の規定に違反して、同項各号に掲げる行為をした者
二 第九条第一項の規定に違反して、同項各号に掲げる行為をした者
三 第十条第一項の規定に違反した者

第十八条

次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
一 第七条第一項の規定による国土交通大臣の命令に違反した者
二 第十一条第一項の規定による国土交通大臣の命令に違反した者

第十九条

第十二条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、三十万円以下の罰金に処する。

第二十条

法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

附則 編集

附則 抄

(施行期日)
第一条
この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日[1]から施行する。ただし、第二条第五項及び第七項、第三章、第十七条(第一号に係る部分に限る。)並びに第十八条(第一号に係る部分に限る。)並びに附則第五条の規定は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

(港湾法の一部改正)

第二条
港湾法の一部を次のように改正する。
以下略

(水産資源保護法の一部改正)

第三条
水産資源保護法(昭和二十六年法律第三百十三号)の一部を次のように改正する。
以下略

(自衛隊法の一部改正)

第四条
自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)の一部を次のように改正する。
以下略
第五条
自衛隊法の一部を次のように改正する。
以下略

(海岸法の一部改正)

第六条
海岸法の一部を次のように改正する。
以下略

(海洋水産資源開発促進法の一部改正)

第七条
海洋水産資源開発促進法(昭和四十六年法律第六十号)の一部を次のように改正する。
以下略

脚注 編集

  1. 排他的経済水域及び大陸棚の保全及び利用の促進のための低潮線の保全及び拠点施設の整備等に関する法律の施行期日を定める政令(2010年(平成22年)6月23日政令第156号)により、2010年(平成22年)6月24日

参考資料 編集


 

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