序(旧約続篇)
序
編集 昭和六年、日本聖公會諸監督より、アポクリフアの邦語飜譯を依囑せられたる本委員等は、普通『ローマ版』として知らるる原本を用ひ、數書を分擔して、各自飜譯に從事し、うち一委員、編緝者として、特に原稿の整理に當り、ここに漸くその完成を見るに至れり。
本書は、英語改正譯、エズラ(エスドラス)第二書七章三十五節と三十六節との中間に挿入せられし、紀元一八七五年にベンスリー教授の發見せしラテン語原本斷片七十節(英語改正譯七章「三六節」より「一〇五節」まで)を除き、アポクリフア全部を、原語より邦譯せるものなり。
文體は、現行舊約聖書及び新約聖書に準據し、なるべくこれに近からんことを期したり。固有名詞は、大體に於て在來の讀方に從ひしが、中には發音の調子により、少しく變更せしものもあり。又ギリシヤ名をヘブル名とせしものもあり。ギリシヤ語母音の讀方は統一せず、自由にこれを用ひたり。ことに重母音は、使用箇所によりて讀方を變へしものあり。子音默音の「t」及び「th」は「テ」と讀ませし箇所も、「ト」と讀ませし箇所もあり。
段落の切方は、在來の章節に拘泥せず、英語改正譯を參考とし、編緝者に於て適當と思惟する所に從ひてなせり。
編緝者の使用せし主なる參考書は左の如し。
Dr. Swete, The Old Testament in Greek.
英語聖書欽定譯、及び改正譯。
世界聖典全集・舊約外典(杉浦貞二郎氏譯)
ラルボツト博士編・トビア書註解(守屋與雄氏譯)
ラルボツト博士編・マカベ前後書註解(守屋與雄氏譯)
Dr. Charles, Apocrypha and Pseudepigrapha of the Old Testament, Vol. 1.
S. P. C. K., Translations of Early Documents, First and Second Series.
S. P. C. K., A New Commentary on Holy Scripture.
Speaker's Commentary.
Cambridge Bible.
Oxford Church Biblical Commentary.
本譯書は、不備の點少なからずと雖も、大能者の祝福と祐導とによりて、信徒の教養、建徳のために、廣く使用せらるるに至らば、幸これに過ぎず。
終に臨み、本書の編緝に當り、特に校正の勞を取り、種々よき暗示を與へられし一長老、及び文體、文法等に關し、懇切なる指導を吝まざりし一教授の好意を深く感謝す。
猶、豫期せざりし事故發生のため、本書の發行、豫定より著しく遲延せしことを謝す。
救主降世一九三四年二月二日 被獻日
アポクリフア飜譯委員