平成14 (行ヒ) 200

平成14(行ヒ)200から転送)

特許取消決定取消請求事件

編集

主文

編集

原判決を破棄する。

本件を東京高等裁判所に差し戻す。

理由

編集

上告代理人大場正成,同尾崎英男,同嶋末和秀,同黒田健二,同平田忠雄,同藤谷修の平成14年9月13日付け上申書記載の上告受理申立て理由について

1 原審の確定した事実関係及び本件訴訟の経緯の概要は,次のとおりである。

(1)上告人らは,発明の名称を「窒化ガリウム系化合物半導体発光素子」とする特許権(特許番号第2658009号。以下,この特許を「本件特許」という。)の特許権者である。本件特許は,平成4年7月23日に特許出願がされ,願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)についての同8年2月1日付け手続補正書による補正を経て,同9年6月6日に特許権の設定の登録がされたものである。

(2)本件特許について特許異議の申立てがされ,特許庁において,平成10年異議第71450号事件として審理された結果,平成11年10月1日,本件特許の請求項1から3までに係る特許を取り消すべき旨の決定(以下「本件取消決定」という。)がされた。

(3)上告人らは,本件取消決定の取消しを求める本件訴訟を提起した。原審は,平成14年4月3日に口頭弁論を終結し,同月24日に上告人らの請求を棄却する旨の判決を言い渡した。上告人らは,同年5月15日,上告及び上告受理の申立てをした。

2 上告代理人ら提出の特許庁訂正2002 - 39155号事件審決謄本写し及び本件記録によれば,次の事実が認められる。

(1)本件明細書の特許請求の範囲の請求項1から3までの記載は,別紙1のとおりであった。上告人らは,平成14年7月11日,特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として,本件明細書の訂正をすることについて審判を請求した。この審判請求につき,特許庁において,訂正2002 - 39155号事件として審理された結果,同年9月2日,本件明細書の訂正をすべき旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)がされ,そのころ確定した。

(2)本件訂正審決は,本件特許の請求項1及び2を別紙2のとおり訂正し,請求項3を削除するものであって,特許請求の範囲の減縮に当たる。

3 本件のように,特許を取り消すべき旨の決定の取消請求を棄却した原判決に対して上告又は上告受理の申立てがされ,上告審係属中に当該特許について特許出願の願書に添付された明細書を訂正すべき旨の審決が確定し,特許請求の範囲が減縮された場合には,原判決の基礎となった行政処分が後の行政処分により変更されたものとして,原判決には民訴法338条1項8号に規定する再審の事由がある。そして,この場合には,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があったものというべきである(最高裁昭和58年(行ツ)第124号同60年5月28日第三小法廷判決・裁判集民事145号73頁参照)。

そうすると、本件については,原判決を破棄し,更に審理を尽くさせるために事件を原審に差し戻すのが相当である。 

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 梶谷玄 裁判官 福田博 裁判官 亀山継夫 裁判官 滝井繁男)

 

この著作物は、日本国著作権法10条2項又は13条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同法10条2項及び13条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。

  1. 憲法その他の法令
  2. 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの
  3. 裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行われるもの
  4. 上記いずれかのものの翻訳物及び編集物で、国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が作成するもの
  5. 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道

この著作物は、米国政府、又は他国の法律、命令、布告、又は勅令等(Edict of governmentも参照)であるため、ウィキメディアサーバの所在地である米国においてパブリックドメインの状態にあります。“Compendium of U.S. Copyright Office Practices”、第3版、2014年の第313.6(C)(2)条をご覧ください。このような文書には、“制定法、裁判の判決、行政の決定、国家の命令、又は類似する形式の政府の法令資料”が含まれます。