工房
工房󠄁
樹木の中の
小さな部屋
小徑に面した
小さい窓
窓の下の
小さい机
友人達󠄁のやうに
親しい小さい書物達󠄁
一人の手をあたゝめるだけの
小さい火鉢
小さい花󠄁ばかりさす
小さい花󠄁瓶
燕の繪のあるマツチ箱、
ほこりのつもつた電燈の傘、〔ママ〕
灰󠄁皿代りの空󠄁罐
書物の上にこちら向いてる
桶をいたゞいた土人形
ここが私の工房󠄁だ
今私は歸つて來た
一週󠄁間の休暇ののちに
一週󠄁間の現實に疲れて
別れて來た肉󠄁親の顏が
うすらぐ
樣々の言葉が、力が
影が象〔ママ〕が遠󠄁のく
ああ私の來るのは
ここだつた
さあ私の心が步きだした
心よ步いておゆき
おまへのすきな小さい道󠄁を
心よそして歌ひなさい
おまへのすきな小さな歌を
私は煙草に火をつけて
しみじみ私の工房󠄁を
ながめる
この著作物は、1943年に著作者が亡くなって(団体著作物にあっては公表又は創作されて)いるため、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(回復期日を参照)の時点で著作権の保護期間が著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)50年以下である国や地域でパブリックドメインの状態にあります。
この著作物は、アメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。