少年


春淡きたそがれどき

少年は 線切れし電球を握りて

麥畑の畔󠄁をまはり

交󠄁換所󠄁にゆくなり

みちなかに耳元にてふりて見れば

かそかにさゝやく金屬の音󠄁ならずや

空󠄁に殘るうすらあかりに

かざしては見つれ

纖細なるフイラメントはもはや見わかず

ひたすら まもる電球の傍に

ひらひらと光そめしは

まだ若き春の宵󠄁星

少年はふと 寂しくなり

掌ぬちに電球の丸きを握れば

乳󠄁白硝󠄁子のけうときぬくみに

春はそれと知らるるなりき

この著作物は、1943年に著作者が亡くなって(団体著作物にあっては公表又は創作されて)いるため、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(回復期日を参照)の時点で著作権の保護期間が著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)50年以下である国や地域でパブリックドメインの状態にあります。


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