死貌

編集

寒々と蒼ざめた祖先の太陽――
椎の根をふかく沈んだ石の寝棺
母よ
私は熱に呆うけて
せんせんとあなたの子守唄をきいた。
いまだいとけなき搖籠ぶらんこの唄を……
緋牡丹の花瓣をめぐる白蛾の
遠のいてゆく幽遠な羽音をきいた。

あゝ 深海の昆布のように
舌にからまる 白水の沮。

〈昭和五年、愛誦〉