土地收用令明治四十四年法律第三十號第一條及第二條ニ依リ勅裁ヲ得テ玆ニ之ヲ公布ス

明治四十四年四月十七日 朝鮮總督 子爵寺內 正毅

制令第三號

土地收用令
  • 第一條 公共ノ利益ト爲ルヘキ事業ノ爲必要アルトキハ本令ニ依リ其ノ事業ニ要スル土地ヲ收用又ハ使用スルコトヲ得
  • 第二條 土地ノ收用又ハ使用スルコトヲ得ル事業ハ左ノ各號ノ一ニ該當スルモノナルコトヲ要ス
國防其ノ他軍事ニ關スル事業
官憲又ハ公署建設ニ關スル事業
敎育、學藝又ハ慈善ニ關スル事業
鐵道、軌道、道路、橋梁、河川、堤防、砂防、運河、用惡水路、溜池、溜池、船渠、港灣、埠頭、水道、下水、電氣、瓦斯又ハ火葬場ニ關スル事業
衛生、測候、航路標識、防風、防火、水害豫防其ノ他公用ノ目的ヲ以テ國又ハ公共團體ニ於テ施設スル事業
  • 第三條 土地ニ關スル所有權以外ノ權利、水ノ使用ニ關スル權利及工作物其ノ他土地ノ定著物ハ本令ニ準シ之ヲ收用又ハ使用スルコトヲ得
  • 第四條 土地ヲ收用又ハ使用スルコトヲ得ル事業ハ朝鮮總督之ヲ認定ス
朝鮮總督前󠄁項ノ認定ヲ爲シタルトキハ起󠄃業者、事業ノ種類及收用又ハ使用スヘキ土地ノ細目ヲ公告ス
  • 第五條 起󠄃業者前󠄁條ノ認定ヲ受ケムトスルトキハ地方長官ヲ經由シ朝鮮總督ニ申請󠄁スヘシ 但シ宮內省又ハ國ノ起󠄃業ニ係ルトキハ宮內大臣又ハ主務官廳ヨリ朝鮮總督ニ協議スヘシ
  • 第六條 天災事變ニ際シ急施ヲ要スル事業ノ爲土地ヲ使用スルノ必要アルトキハ府尹又ハ都守其ノ事業ノ認定ヲ爲スコトヲ得
前󠄁項ノ使用期間ハ六月ヲ超ユルコトヲ得ス
第一項ノ認定アリタルトキハ起󠄃業者ハ直ニ其ノ土地ヲ使用スルコトヲ得
  • 第七條 土地ノ收用又ハ使用ニ關シ關係人ノ受クヘキ損失ハ起󠄃業者之ヲ補償スヘシ
  • 第八條 第四條ノ公告アリタルトキハ起󠄃業者ハ其ノ土地ニ關シ收用人又ハ使用ノ權利ヲ取得スル爲關係人ニ協議ヲ爲スヘシ
  • 第九條 前󠄁條ノ協議調ハサルトキ又ハ協議ヲ爲スコト能ハサルトキハ起󠄃業者ハ地方長官ノ裁決ヲ求ムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ同時ニ關係人ニ之ヲ通知スヘシ
  • 第十條 第六條ノ使用ニ依リ生スル損失又ハ第二十一條ノ損失ノ補償ニ付協議調ハサルトキハ地方長官之ヲ決定ス
  • 第十一條 地方長官裁決又ハ決定ヲ爲スニ付必要アリト認ムルトキハ鑑定人、事實參考人、起󠄃業者又ハ關係人ヲ呼出シ其ノ意見又ハ供述󠄁ヲ聽クコトヲ得
  • 第十二條 起󠄃業者又ハ關係人地方長官ノ裁決又ハ決定ニ不服アルトキハ裁決書又ハ決定書ノ謄本ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ三十日內ニ朝鮮總督ノ裁定ヲ求ムルコトヲ得
前󠄁項ノ裁定ヲ求メタル場合ト雖土地ノ受用又ハ使用ヲ停止セス
  • 第十三條 第四條ノ公告アリタル後起󠄃業者カ二年內ニ土地物件ニ關スル權利ヲ取得セサルトキハ事業ノ認定ハ其ノ效力ヲ失フ但シ地方長官ノ裁決ヲ求メタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
  • 第十四條 土地ノ使用カ五年以上ニ亙ルトキ又ハ土地ノ形質ヲ變更スルトキハ關係人ハ其ノ土地ノ收用ヲ請󠄁求スルコトヲ得
  • 第十五條 收用ハ使用スヘキ土地ニ在ル物件ハ移轉料ヲ補償シテ移轉セシムルコトヲ得
前󠄁項ノ移轉料ニシテ其ノ物件ノ相當價格ヲ超ユル場合ニ於テハ起󠄃業者ハ其ノ物件ノ收用ヲ請󠄁求スルコトヲ得
  • 第十六條 第四條ノ公告アリタル後地方長官ノ許可ヲ受ケスシテ土地ノ形質ヲ變更シ、工作物ノ新築、改築、增築若ハ大修繕ヲ爲シ又ハ物件ヲ附加增置シタル關係人ハ之ニ關スル損失ノ補償ヲ請󠄁求スルコトヲ得ス
  • 第十七條 地方長官ノ裁決又ハ決定ヲ爲スニ付要スル鑑定人及事實參考人ノ旅費手當其ノ他審査ニ關スル費用ハ起󠄃業者ノ負擔トス
  • 第十八條 土地物件ヲ收用シタルトキハ收用ノ時期ニ於テ所有權ハ起󠄃業者之ヲ取得シ其ノ土地物件ニ關スル他ノ權利ハ消滅ス
土地ヲ使用シタルトキハ其ノ權利ハ使用ノ期間ニ於テ起󠄃業者之ヲ取得シ其ノ土地ニ存スル他ノ權利ノ行使ハ使用ノ期間之ヲ停止ス但シ使用ヲ妨ケサルモノハ此ノ限ニ在ラス
  • 第十九條 第六條ノ規定ニ依ル使用ノ場合ヲ除クノ外起󠄃業者ハ收用又ハ使用ノ期間迄ニ補償金ヲ關係人ニ拂渡スヘシ但シ拂渡スコト能ハサル事由アルトキハ之ヲ供託スヘシ
關係人ハ收用又ハ使用ノ時期迄ニ土地ヲ起󠄃業者ニ引渡シ及物件ヲ移轉又ハ引渡スヘシ
  • 第二十條 起󠄃業者前󠄁條ノ拂渡又ハ供託ヲ爲ササルトキハ朝鮮總督ノ認定、裁定及地方長官ノ裁決ハ其ノ效力ヲ失フ但シ關係人カ損害賠償ノ請󠄁求ヲ爲スコトヲ妨ケス
  • 第二十一條 第四條ノ公告アリタル後起󠄃業者カ事業ヲ廢止變更シタルニ依リテ關係人ノ受ケタル損失ハ起󠄃業者之ヲ補償スヘシ
  • 第二十二條 起󠄃業者過失ナクシテ關係人ヲ確知スルコト能ハサルトキ又ハ關係人其ノ義務ヲ履行スルコト能ハサルトキハ面長ハ關係人ニ代ハリテ之ヲ處理スヘシ
  • 第二十三條 義務者本令又ハ本令ニ基キテ發スル命令ニ依ル義務ヲ履行セス又ハ之ヲ履行スルモ一定ノ期間內エ終了スル見込ナキトキハ地方長官ハ自ラ之ヲ執行シ又ハ第三者ヲシテ之ヲ執行セシメ其ノ費用ハ義務者ノ負擔ト爲スコトヲ得
前󠄁項ノ規定ニ依ルコト能ハサルトキハ地方長官ハ直接ニ義務ノ履行ヲ强制スルコトヲ得
  • 第二十四條 第十七條及前󠄁條ノ費用ヲ納󠄁付セサル者アルトキハ國稅滯納󠄁處分ノ例ニ依リ之ヲ懲役スルコトヲ得
  • 第二十五條 第十一條ノ呼出ヲ受ケタル鑑定人又ハ事實參考人故ナク之ニ應セサルトキハ五十圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
  • 第二十六條 鑑定人虛僞ノ鑑定ヲ爲シタルトキハ一年以下ノ懲役又ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
  • 第二十七條 本令又ハ本令ニ基キテ發スル命令ニ依ル起󠄃業者ノ權利義務ハ事業ト共ニ其ノ承繼人ニ移轉ス
本令又ハ本令ニ基キテ發スル命令ニ依リテ爲シタル手續其ノ他ノ行爲ハ起󠄃業者又ハ關係人ノ承繼人ニ對シテモ其ノ效力ヲ有ス
  • 第二十八條 本令ニ於テ使用ト稱スルハ權利ノ制限ヲ包含ス
土地ニ於テ關係人ト稱スルハ收用又ハ使用スヘキ土地物件ノ所有者及其ノ土地物件ニ關シテ權利ヲ取得シタル者ハ關係人ト看做サス但シ旣存ノ權利ヲ承繼シタル者ハ此ノ限此ノ限ニ在ラス
  • 第二十九條 本令ニ規定スルモノノ外土地ノ收用又ハ使用ニ關シ左ニ揭クル事項ハ朝鮮總督之ヲ定ム
事業準備ノ爲他人ノ土地ニ立入リ又ハ障害物ヲ除却スル場合ニ關スル事項
二以上ノ行政區劃ニ涉ル事業匚付地方官ノ認定、裁決又ハ決定ヲ爲ス場合ニ關スル事項

附 則

編集

本令施行ノ地域及期日ハ朝鮮總督之ヲ定ム

 

この著作物は、日本国の著作権法第10条1項ないし3項により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。(なお、この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により、発行当時においても、著作権の目的となっていませんでした。)


この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。