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吾妻獅子 作者:長堀丁々?
昔より、言ひ慣はせし、東国(あづま)下りのまめ男(をとこ)。慕(した)ふ旅路(たびぢ)や、松が枝(え)の、富士の高嶺(たかね)に白妙(しろたへ)の、花の姿に吉原訛(よしはらなまり)、君が身に添ふ牡丹に馴(な)れて、己(お)のが富貴(ふうき)を花とのみ、弥猛心(やたけごころ)も憎からず、思ひ思ふ千代までも、情(なさけ)に、かざす後朝(きぬぎぬ)に、糸竹(いとたけ)の心乱れ髪。うたふ恋路や露添(つゆそ)ふ春も、呉(く)れ竹の、かざす扇子(あふぎ)にうつす曲、花やかに乱れ乱るる妹背の道も、獅子の遊びて幾千代までも、変らぬ色や目度けれ。
この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。