基督教綱要/第一篇 第6章

<基督教綱要

第一篇 第6章

<<創造主なる神に到達するために、導者〈導き手〉および師伝〈聖典〉として聖書が必要である>>

1

茲（ここ）をもって、神は、人類に同一の罪責を負わさんとて、各（おのおの）のものに、例外なく、被造物のうちに描写されている彼の神威（しんい）を呈示（ていじ）し給うが故に、天にあり又地にありて、すべてのものの眼に注がるる光輝は、人間の忘恩に対して、一切の弁護を十分に奪い去って余りあるとはいえ、なおかつ、我々を正当にこの世界の創造主へ導くところの他のいっそう卓（すぐ）れたる援助に近づくことが必要である。

【続く】

2

しかし、やがて族父たちが手づから子孫に伝うべかりしことを、神が、託宣と幻とによって彼らに告示し給うたにもせよ、あるいは人間の働きと服仕とによって暗示し給うたにもせよ、彼らの心情が教理の堅き確実さに印銘され、斯（か）くて彼らの学びしことが神より出（い）でしものであることを納得し且つ識（し）るに至ったことだけは疑いない。

【続く】

3

蓋（けだ）し、若（も）しも我々にして、いかに滑らかに人間の精神が神についての忘却へ陥りやすく、如何（いか）ばかり凡（あら）ゆる種類の迷誤に傾き、如何（いか）ばかり新しくかつ虚構の宗教を頻（しき）りに案出することに渇望しているかを考慮せんか、忘却されて亡び、あるいは迷誤のうちに消失し、あるいは人間の僭冒（せんぼう）によって腐敗せしめざらんがために、天よりの教理の斯（か）く裁定されることの必要であったことが理解されるであろう。

【続く】

4

それゆえに、同じ預言者は、諸（もろもろ）の天は神の栄光をあらわし、蒼穹（そうきゅう）はその御手（みて）のわざを示し、昼と夜との秩序づけられた連続は、神の威厳を告げ知らすと述べたところ（詩篇19:1）にて、やがて進んで、「言（ことば）」について挙示している。

【続く】