26テラ七十歳に及びてアブラム、ナホルおよびハランを生り
27テラの傳は是なりテラ、アブラム、ナホルおよびハランを生ハラン、ロトを生り
28ハランは其父テラに先ちて其生處なるカルデアのウルにて死たり
29アブラムとナホルと妻を娶れりアブラムの妻の名をサライと云ナホルの妻の名をミルカと云てハランの女なりハランはミルカの父にして亦イスカの父なりき
30サライは石女にして子なかりき
31テラ、カナンの地に往とて其子アブラムとハランの子なる其孫ロト及其子アブラムの妻なる其媳サライをひき挈て倶にカルデアのウルを出たりしがハランに至て其處に住り
32テラの齡は二百五歳なりきテラはハランにて死り
1爰にヱホバ、アブラムに言たまひけるは汝の國を出で汝の親族に別れ汝の父の家を離れて我が汝に示さん其地に至れ
2我汝を大なる國民と成し汝を祝み汝の名を大ならしめん汝は祉福の基となるべし
3我は汝を祝する者を祝し汝を詛ふ者を詛はん天下の諸の宗族汝によりて福禔を獲と
4アブラム乃ちヱホバの自己に言たまひし言に從て出たりロト彼と共に行りアブラムはハランを出たる時七十五歳なりき
5アブラム其妻サライと其弟の子ロトおよび其集めたる總の所有とハランにて獲たる人衆を携へてカナンの地に往んとて出で遂にカナンの地に至れり
6アブラム其地を經過てシケムの處に及びモレの橡樹に至れり其時にカナン人其地に住り
7茲にヱホバ、アブラムに顯現れて我汝の苗裔に此地に與へんといひたまへり彼處にて彼己に顯現れたまひしヱホバに壇を築けり
8彼其處よりベテルの東の山に移りて其天幕を張り西にベテル東にアイありき彼處にて彼ヱホバに壇を築きヱホバの名を龥り
9アブラム尚進て南に遷れり
10茲に饑饉其地にありければアブラム、エジプトに寄寓らんとて彼處に下れり其は饑饉其地に甚しかりければなり
11彼近く來りてエジプトに入んとする時其妻サライに言けるは視よ我汝を觀て美麗き婦人なるを知る
12是故にエジプト人汝を見る時是は彼の妻なりと言て我を殺さん然ど汝をば生存かん
13請ふ汝わが妹なりと言へ然ば我汝の故によりて安にしてわが命汝のために生存ん
14アブラム、エジプトに至りし時エジプト人此婦を見て甚だ美麗となせり
15またパロの大臣等彼を視て彼をパロの前に譽めければ婦遂にパロの家に召入れられたり
16是に於てパロ彼のために厚くアブラムを待ひてアブラム遂に羊牛僕婢牝牡の驢馬および駱駝を多く獲るに至れり
17時にヱホバ、アブラムの妻サライの故によりて大なる災を以てパロと其家を惱したまへり
18パロ、アブラムを召て言けるは汝が我になしたる此事は何ぞや汝何故に彼が汝の妻なるを我に告ざりしや
19汝何故に彼はわが妹なりといひしや我幾彼をわが妻にめとらんとせり然ば汝の妻は此にあり挈去るべしと
20パロ即ち彼の事を人々に命じければ彼と其妻および其有る諸の物を送りさらしめたり
1アブラム其妻および其有る諸の物と偕にエジプトを出て南の地に上れりロト彼と共にありき
2アブラム甚家畜と金銀に富り
3彼南の地より其旅路に進てベテルに至りベテルとアイの間なる其以前に天幕を張たる處に至れり
4即ち彼が初に其處に築きたる壇のある處なり彼處にアブラム、ヱホバの名を龥り
5アブラムと偕に行しロトも羊牛および天幕を有り
6其地は彼等を載て倶に居しむること能はざりき彼等は其所有多かりしに縁て倶に居ることを得ざりしなり
7斯有かばアブラムの家畜の牧者とロトの家畜の牧者の間に競爭ありきカナン人とペリジ人此時其地に居住り
8アブラム、ロトに言けるは我等は兄弟の人なれば請ふ我と汝の間およびわが牧者と汝の牧者の間に競爭あらしむる勿れ
9地は皆爾の前にあるにあらずや請ふ我を離れよ爾若左にゆかば我右にゆかん又爾右にゆかば我左にゆかんと
10是に於てロト目を擧てヨルダンの凡ての低地を瞻望みけるにヱホバ、ソドムとゴモラとを滅し給はざりし前なりければゾアルに至るまであまねく善く潤澤ひてヱホバの園の如くエジプトの地の如くなりき
11ロト乃ちヨルダンの低地を盡く撰とりて東に徙れり斯彼等彼此に別たり
12アブラムはカナンの地に住り又ロトは低地の諸邑に住み其天幕を遷してソドムに至れり
13ソドムの人は惡くしてヱホバの前に大なる罪人なりき
14ロトのアブラムに別れし後ヱホバ、アブラムに言たまひけるは爾の目を擧て爾の居る處より西東北南を瞻望め
15凡そ汝が觀る所の地は我之を永く爾と爾の裔に與べし
16我爾の後裔を地の塵沙の如くなさん若人地の塵沙を數ふることを得ば爾の後裔も數へらるべし
17爾起て縱横に其地を行き巡るべし我之を爾に與へんと
18アブラム遂に天幕を遷して來りヘブロンのマムレの橡林に住み彼處にてヱホバに壇を築けり
1當時シナルの王アムラペル、エラサルの王アリオク、エラムの王ケダラオメルおよびゴイムの王テダル等
2ソドムの王ベラ、ゴモルの王ビルシア、アデマの王シナブ、ゼボイムの王セメベルおよびベラ(即ち今のゾアル)の王と戰ひをなせり
3是等の五人の王皆結合てシデムの谷に至れり其處は今の鹽海なり
4彼等は十二年ケダラオメルに事へ第十三年に叛けり
5第十四年にケダラオメルおよび彼と偕なる王等來りてアシタロテカルナイムのレパイム人、ハムのズジ人、シヤベキリアタイムのエミ人
6およびセイル山のホリ人を撃て曠野の傍なるエルパランに至り
7彼等歸りてエンミシパテ(即ち今のカデシ)に至りアマレク人の國を盡く撃又ハザゾンタマルに住るアモリ人を撃り
8爰にソドムの王ゴモラの王アデマの王ゼボイムの王およびベラ(即ち今のゾアル)の王出てシデムの谷にて彼等と戰ひを接たり
9即ち彼五人の王等エラムの王ケダラオメル、ゴイムの王テダル、シナルの王アムラペル、エラサルの王アリオクの四人と戰へり
10シデムの谷には地瀝靑の坑多かりしがソドムとゴモラの王等遁て其處に陷りぬ其餘の者は山に遁逃たり
11是に於て彼等ソドムとゴモラの諸の物と其諸の食料を取て去れり
12彼等アブラムの姪ロトと其物を取て去り其は彼ソドムに住たればなり
13茲に遁逃者來りてヘブル人アブラムに之を告たり時にアブラムはアモリ人マムレの橡林に住りマムレはエシコルの兄弟又アネルの兄弟なり是等はアブラムと契約を結べる者なりき
14アブラム其兄弟の擄にせられしを聞しかば其熟練したる家の子三百十八人を率ゐてダンまで追いたり
15其家臣を分ちて夜に乗じて彼等を攻め彼等を撃破りてダマスコの左なるホバまで彼等を追ゆけり
16アブラム斯諸の物を奪回し亦其兄弟ロトと其物および婦人と人民を取回せり
17アブラム、ケダラオメルおよび彼と偕なる王等を撃破りて歸れる時ソドムの王シヤベの谷(即ち今の王の谷)にて彼を迎へたり
18時にサレムの王メルキゼデク、パンと酒を携出せり彼は至高き神の祭司なりき
19彼アブラムを祝して言けるは願くは天地の主なる至高神アブラムを祝福みたまへ
20願くは汝の敵を汝の手に付したまひし至高神に稱譽あれとアブラム乃ち彼に其諸の物の什分の一を饋れり
21茲にソドムの王アブラムに言けるは人を我に與へ物を汝に取れと
22アブラム、ソドムの王に言けるは我天地の主なる至高き神ヱホバを指て言ふ
23一本の絲にても鞋帶にても凡て汝の所屬は我取ざるべし恐くは汝我アブラムを富しめたりと言ん
24但少者の旣に食ひたる物および我と偕に行し人アネル、エシコルおよびマムレの分を除くべし彼等には彼等の分を取しめよ
1是等の事の後ヱホバの言異象の中にアブラムに臨て曰くアブラムよ懼るなかれ我は汝の干櫓なり汝の賚は甚大なるべし
2アブラム言けるは主ヱホバよ何を我に與んとしたまふや我は子なくして居り此ダマスコのエリエゼル我が家の相續人なり
3アブラム又言けるは視よ爾子を我にたまはず我の家の子わが嗣子とならんとすと
4ヱホバの言彼にのぞみて曰く此者は爾の嗣子となるべからず汝の身より出る者爾の嗣子となるべしと
5斯てヱホバ彼を外に携へ出して言たまひけるは天を望みて星を數へ得るかを見よと又彼に言たまひけるは汝の子孫は是のごとくなるべしと
6アブラム、ヱホバを信ずヱホバこれを彼の義となしたまへり
7又彼に言たまひけるは我は此地を汝に與へて之を有たしめんとて汝をカルデアのウルより導き出せるヱホバなり
8彼言けるは主ヱホバよ我いかにして我之を有つことを知るべきや
9ヱホバ彼に言たまひけるは三歳の牝牛と三歳の牝山羊と三歳の牡羊と山鳩および雛き鴿を我ために取れと
10彼乃ち是等を皆取て之を中より剖き其剖たる者を各相對はしめて置り但鳥は剖ざりき
11鷙鳥其死體の上に下る時はアブラム之を驅はらへり
12斯て日の沒る頃アブラム酣く睡りしが其大に暗きを覺えて懼れたり
13時にヱホバ、アブラムに言たまひけるは爾確に知るべし爾の子孫他人の國に旅人となりて其人々に服事へん彼等四百年のあひだ之を惱さん
14又其服事たる國民は我之を鞫かん其後彼等は大なる財貨を携へて出ん
15爾は安然に爾の父祖の所にゆかん爾は遐齡に逹りて葬らるべし
16四代に及びて彼等此に返りきたらん其はアモリ人の惡未だ貫盈ざれば也と
17斯て日の沒て黑暗となりし時烟と火焔の出る爐其切剖たる物の中を通過り
18是日にヱホバ、アブラムと契約をなして言たまひけるは我此地をエジプトの河より彼大河即ちユフラテ河まで爾の子孫に與ふ
19即ちケニ人ケナズ人カデモニ人
20ヘテ人ペリジ人レパイム人
21アモリ人カナン人ギルガシ人ヱブス人の地是なり
1アブラムの妻サライ子女を生ざりき彼に一人の侍女ありしがエジプト人にして其名をハガルと曰り
2サライ、アブラムに言けるは視よヱホバわが子を生むことを禁めたまひければ請ふ我が侍女の所に入れ我彼よりして子女を得ることあらんとアブラム、サライの言を聽いれたり
3アブラムの妻サライ其侍女なるエジプト人ハガルを取て之を其夫アブラムに與へて妻となさしめたり是はアブラムがカナンの地に十年住みたる後なりき
4是においてアブラム、ハガルの所に入るハガル遂に孕みければ己の孕めるを見て其女主を藐視たり
5サライ、アブラムに言けるはわが蒙れる害は汝に歸すべし我わが侍女を汝の懷に與へたるに彼己の孕るを見て我を藐視ぐ願はヱホバ我と汝の間の事を鞫きたまへ
6アブラム、サライに言けるは視よ汝の侍女は汝の手の中にあり汝の目に善と見ゆる所を彼に爲すべしサライ乃ち彼を苦めければ彼サライの面を避て逃たり
7ヱホバの使者曠野の泉の旁即ちシユルの路にある泉の旁にて彼に遭ひて
8言けるはサライの侍女ハガルよ汝何處より來れるや又何處に往や彼言けるは我は女主サライの面をさけて逃るなり
9ヱホバの使者彼に言けるは汝の女主の許に返り身を其手に任すべし
10ヱホバの使者又彼に言ひけるは我大に汝の子孫を増し其數を衆多して數ふることあたはざらしめん
11ヱホバの使者又彼に言けるは汝孕めり男子を生まん其名をイシマエル(神聽知)と名くべしヱホバ汝の艱難を聽知したまへばなり
12彼は野驢馬の如き人とならん其手は諸の人に敵し諸の人の手はこれに敵すべし彼は其諸の兄弟の東に住んと
13ハガル己に諭したまへるヱホバの名をアタエルロイ(汝は見たまふ神なり)とよべり彼いふ我視たる後尚生るやと
14是をもて其井はベエルラハイロイ(我を見る活る者の井)と呼ばる是はカデシとベレデの間にあり
15ハガル、アブラムの男子を生めりアブラム、ハガルの生める其子の名をイシマエルと名づけたり
16ハガル、イシマエルをアブラムに生める時アブラムは八十六歳なりき
1アブラム九十九歳の時ヱホバ、アブラムに顯れて之に言たまひけるは我は全能の神なり汝我前に行みて完全かれよ
2我わが契約を我と汝の間に立て大に汝の子孫を増ん
3アブラム乃ち俯伏たり神又彼に告て言たまひけるは
4我汝とわが契約を立つ汝は衆多の國民の父となるべし
5汝の名を此後アブラムと呼ぶべからず汝の名をアブラハム(衆多の人の父)とよぶべし其は我汝を衆多の國民の父と爲ばなり
6我汝をして衆多の子孫を得せしめ國々の民を汝より起さん王等汝より出べし
7我わが契約を我と汝および汝の後の世々の子孫との間に立て永久の契約となし汝および汝の後の子孫の神となるべし
8我汝と汝の後の子孫に此汝が寄寓る地即ちカナンの全地を與へて永久の產業となさん而して我彼等の神となるべし
9神またアブラハムに言たまひけるは然ば汝と汝の後の世々の子孫わが契約を守るべし
10汝等の中の男子は咸割禮を受べし是は我と汝等および汝の後の子孫の間の我が契約にして汝等の守るべき者なり
11汝等其陽の皮を割べし是我と汝等の間の契約の徴なり
12汝等の代々の男子は家に生れたる者も異邦人より金にて買たる汝の子孫ならざる者も皆生れて八日に至らば割禮を受べし
13汝の家に生れたる者も汝の金にて買たる者も割禮を受ざるべからず斯我契約汝等の身にありて永久の契約となるべし
14割禮を受ざる男兒即ち其陽の皮を割ざる者は我契約を破るによりて其人其民の中より絶るべし
15神又アブラハムの言たまひけるは汝の妻サライは其名をサライと稱ぶべからず其名をサラと爲べし
16我彼を祝み彼よりして亦汝に一人の男子を授けん我彼を祝み彼をして諸邦の民の母とならしむべし諸の民の王等彼より出べし
17アブラハム俯伏て哂ひ其心に謂けるは百歳の人に豈で子の生るることあらんや又サラは九十歳なれば豈で產ことをなさんやと
18アブラハム遂に神にむかひて願くはイシマエルの汝のまへに生存へんことをと曰ふ
19神言たまひけるは汝の妻サラ必ず子を生ん汝其名をイサクと名くべし我彼および其後の子孫と契約を立て永久の契約となさん
20又イシマエルの事に關ては我汝の願を聽たり視よ我彼を祝みて多衆の子孫を得さしめ大に彼の子孫を増すべし彼十二の君王を生ん我彼を大なる國民となすべし
21然どわが契約は我翌年の今頃サラが汝に生ん所のイサクと之を立べし
22神アブラハムと言ことを竟へ彼を離れて昇り給へり
23是に於てアブラハム神の己に言たまへる如く此日其子イシマエルと凡て其家に生れたる者および凡て其金にて買たる者即ちアブラハムの家の人の中なる諸の男を將きたりて其陽の皮を割たり
24アブラハムは其陽の皮を割れたる時九十九歳
25其子イシマエルは其陽の皮を割れたる時十三歳なりき
26是日アブラハムと其子イシマエル割禮を受たり
27又其家の人家に生れたる者も金にて異邦人より買たる者も皆彼とともに割禮を受たり
1ヱホバ、マムレの橡林にてアブラハムに顯現たまへり彼は日の熱き時刻天幕の入口に坐しゐたりしが
2目を擧て見たるに視よ三人の人其前に立り彼見て天幕の入口より趨り行て之を迎へ
3身を地に鞠めて言けるは我が主よ我若汝の目のまへに恩を得たるならば請ふ僕を通り過すなかれ
4請ふ少許の水を取きたらしめ汝等の足を濯ひて樹の下に休憇たまへ
5我一口のパンを取來らん汝等心を慰めて然る後過ゆくべし汝等僕の所に來ればなり彼等言ふ汝が言るごとく爲せ
6是においてアブラハム天幕に急ぎいりてサラの許に至りて言けるは速に細麺三セヤを取り捏てパンを作るべしと
7而してアブラハム牛の群に趨ゆき犢の柔にして善き者を取りきたりて少者に付しければ急ぎて之を調理ふ
8かくてアブラハム牛酪と牛乳および其調理へたる犢を取て彼等のまへに供へ樹の下にて其側に立り彼等乃ち食へり
9彼等アブラハムに言けるは爾の妻サラは何處にあるや彼言ふ天幕にあり
10其一人言ふ明年の今頃我必ず爾に返るべし爾の妻サラに男子あらんサラ其後なる天幕の入口にありて聞ゐたり
11抑アブラハムとサラは年邁み老いたる者にしてサラには婦人の常の經已に息たり
12是故にサラ心に哂ひて言けるは我は老衰へ吾が主も亦老たる後なれば我に樂あるべけんや
13ヱホバ、アブラハムに言たまひけるは何故にサラは哂ひて我老たれば果して子を生ことあらんと言ふや
14ヱホバに豈爲し難き事あらんや時至らば我定めたる期に爾に歸るべしサラに男子あらんと
15サラ懼れたれば承ずして我哂はずと言へりヱホバ言たまひけるは否汝哂へるなり
16斯て其人々彼處より起てソドムの方を望みければアブラハム彼等を送らんとて倶に行り
17ヱホバ言ひ給けるは我爲んとする事をアブラハムに隱すべけんや
18アブラハムは必ず大なる強き國民となりて天下の民皆彼に由て福を獲に至るべきに在ずや
19其は我彼をして其後の兒孫と家族とに命じヱホバの道を守りて公儀と公道を行しめん爲に彼をしれり是ヱホバ、アブラハムに其曾て彼に就て言し事を行はん爲なり
20ヱホバ又言給ふソドムとゴモラの號呼大なるに因り又其罪甚だ重に因て
21我今下りて其號呼の我に逹れる如くかれら全く行ひたりしやを見んとす若しからずば我知るに至らんと
22其人々其處より身を旋してソドムに赴むけりアブラハムは尚ほヱホバのまへに立り
23アブラハム近よりて言けるは爾は義者をも惡者と倶に滅ぼしたまふや
24若邑の中に五十人の義者あるも汝尚ほ其處を滅ぼし其中の五十人の義者のためにこれを恕したまはざるや
25なんぢ斯の如く爲て義者と惡者と倶に殺すが如きは是あるまじき事なり又義者と惡者を均等するが如きもあるまじき事なり天下を鞫く者は公儀を行ふ可にあらずや
26ヱホバ言たまひけるは我若ソドムに於て邑の中に五十人の義者を看ば其人々のために其處を盡く恕さん
27アブラハム應へていひけるは我は塵と灰なれども敢て我主に言上す
28若五十人の義者の中五人缺たらんに爾五人の缺たるために邑を盡く滅ぼしたまふやヱホバ言たまひけるは我若彼處に四十五人を看ば滅さざるべし
29アブラハム又重ねてヱホバに言上して曰けるは若彼處に四十人看えなば如何ヱホバ言たまふ我四十人のために之をなさじ
30アブラハム曰ひけるは請ふわが主よ怒らずして言しめたまへ若彼處に三十人看えなば如何ヱホバいひたまふ我三十人を彼處に看ば之を爲じ
31アブラハム言ふ我あへてわが主に言上す若彼處に二十人看えなば如何ヱホバ言たまふ我二十人のためにほろぼさじ
32アブラハム言ふ請ふわが主怒らずして今一度言しめたまへ若かしこに十人看えなば如何ヱホバ言たまふ我十人のためにほろぼさじ
33ヱホバ、アブラハムと言ふことを終てゆきたまへりアブラハムおのれの所にかへりぬ
1其二個の天使黄昏にソドムに至るロト時にソドムの門に坐し居たりしがこれを視起て迎へ首を地にさげて
2言けるは我主よ請ふ僕の家に臨み足を濯ひて宿りつとに起て途に遄征たまへ彼等言ふ否我等は街衢に宿らんと
3然ど固く強ければ遂に彼の所に臨みて其家に入るロト乃ち彼等のために筵を設け酵いれぬパンを炊て食はしめたり
4斯て未だ寢ざる前に邑の人々即ちソドムの人老たるも若きも諸共に四方八方より來たれる民皆其家を環み
5ロトを呼て之に言けるは今夕爾に就たる人は何處にをるや彼等を我等の所に携へ出せ我等之を知らん
6ロト入口に出て其後の戸を閉ぢ彼等の所に至りて
7言けるは請ふ兄弟よ惡き事を爲すなかれ
8我に未だ男知ぬ二人の女あり請ふ我之を携へ出ん爾等の目に善と見ゆる如く之になせよ唯此人等は旣に我家の蔭に入たれば何をも之になすなかれ
9彼等曰ふ爾退け又言けるは此人は來り寓れる身なるに恒に士師とならんとす然ば我等彼等に加ふるよりも多くの害を爾に加へんと遂に彼等酷しく其人ロトに逼り前よりて其戸を破んとせしに
10彼二人其手を舒しロトを家の内に援いれて其戸を閉ぢ
11家の入口にをる人衆をして大なるも小も倶に目を眩しめければ彼等遂に入口を索ぬるに困憊たり
12斯て二人ロトに言けるは外に爾に屬する者ありや汝の婿子女および凡て邑にをりて爾に屬する者を此所より携へ出べし
13此處の號呼ヱホバの前に大になりたるに因て我等之を滅さんとすヱホバ我等を遣はして之を滅さしめたまふ
14ロト出て其女を娶る婿等に告て言けるはヱホバが邑を滅したまふべければ爾等起て此處を出よと然ど婿等は之を戲言と視爲り
15曉に及て天使ロトを促して言けるは起て此なる爾の妻と二人の女を携へよ恐くは爾邑の惡とともに滅されん
16然るに彼遲延ひしかば二人其手と其妻の手と其二人の女の手を執て之を導き出し邑の外に置りヱホバ斯彼に仁慈を加へたまふ
17旣に之を導き出して其一人曰けるは逃遁て汝の生命を救へ後を回顧るなかれ低地の中に止るなかれ山に遁れよ否ずば爾滅されん
18ロト彼等に言けるはわが主よ請ふ斯したまふなかれ
19視よ僕爾の目のまへに恩を得たり爾大なる仁慈を吾に施してわが生命を救たまふ吾山に遁る能はず恐くは災害身に及びて死るにいたらん
20視よ此邑は遁ゆくに近くして且小し我をして彼處に遁れしめよしからば吾生命全からん是は小き邑なるにあらずや
21天使之にいひけるは視よ我此事に關ても亦爾の願を容たれば爾が言ふところの邑を滅さじ
22急ぎて彼處に遁れよ爾が彼處に至るまでは我何事をも爲を得ずと是に因て其邑の名はゾアル(小し)と稱る
23ロト、ゾアルに至れる時日地の上に昇れり
24ヱホバ硫黄と火をヱホバの所より即ち天よりソドムとゴモラに雨しめ
25其邑と低地と其邑の居民および地に生るところの物を盡く滅したまへり
26ロトの妻は後を回顧たれば鹽の柱となりぬ
27アブラハム其朝夙に起て其嘗てヱホバの前に立たる處に至り
28ソドム、ゴモラおよび低地の全面を望み見るに其地の烟燄窰の烟のごとくに騰上れり
29神低地の邑を滅したまふ時即ちロトの住る邑を滅したまふ時に當り神アブラハムを眷念て斯其滅亡の中よりロトを出したまへり
30斯てロト、ゾアルに居ることを懼れたれば其二人の女と偕にゾアルを出て上りて山に居り其二人の女子とともに巖穴に住り
31茲に長女季女にいひけるは我等の父は老いたり又此地には我等に偶て世の道を成す人あらず
32然ば我等父に酒を飮せて與に寢ね父に由て子を得んと
33遂に其夜父に酒を飮せ長女入て其父と與に寢たり然るにロトは女の起臥を知ざりき
34翌日長女季女に言けるは我昨夜わが父と寢たり我等此夜又父に酒をのません爾入て與に寢よわれらの父に由て子を得ることをえんと
35乃ち其夜も亦父に酒をのませ季女起て父と與に寢たりロトまた女の起臥を知ざりき
36斯ロトの二人の女其父によりて孕みたり
37長女子を生み其名をモアブと名く即ち今のモアブ人の先祖なり
38季女も亦子を生み其名をベニアンミと名く即ち今のアンモニ人の先祖なり
1アブラハム彼處より徒りて南の地に至りカデシとシユルの間に居りゲラルに寄留り
2アブラハム其妻サラを我妹なりと言しかばゲラルの王アビメレク人を遣してサラを召入たり
3然るに神夜の夢にアビメレクに臨みて之に言たまひけるは汝は其召入たる婦人のために死るなるべし彼は夫ある者なればなり
4アビメレク未だ彼に近づかざりしかば言ふ主よ汝は義き民をも殺したまふや
5彼は我に是はわが妹なりと言しにあらずや又婦も自彼はわが兄なりと言たり我全き心と潔き手をもて此をなせり
6神又夢に之に言たまひけるは然り我汝が全き心をもて之をなせるを知りたれば我も汝を阻めて罪を我に犯さしめざりき彼に觸るを容ざりしは是がためなり
7然ば彼の妻を歸せ彼は預言者なれば汝のために祈り汝をして生命を保しめん汝若歸ずば汝と汝に屬する者皆必死るべきを知るべし
8是に於てアビメレク其朝夙に起て臣僕を悉く召し此事を皆語り聞せければ人々甚く懼れたり
9斯てアビメレク、アブラハムを召て之に言けるは爾我等に何を爲すや我何の惡き事を爾になしたれば爾大なる罪を我とわが國に蒙らしめんとせしか爾爲べからざる所爲を我に爲したり
10アビメレク又アブラハムに言けるは爾何を見て此事を爲たるや
11アブラハム言けるは我此處はかならず神を畏れざるべければ吾妻のために人我を殺さんと思ひたるなり
12又我は誠にわが妹なり彼はわが父の子にしてわが母の子にあらざるが遂に我妻となりたるなり
13神我をして吾父の家を離れて周遊しめたまへる時に當りて我彼に爾我等が至る處にて我を爾の兄なりと言へ是は爾が我に施す恩なりと言たり
14アビメレク乃ち羊牛僕婢を將てアブラハムに與へ其妻サラ之に歸せり
15而してアビメレク言けるは視よ我地は爾のまへにあり爾の好むところに住め
16又サラに言けるは視よ我爾の兄に銀千枚を與へたり是は爾および諸の人にありし事等につきて爾の目を蔽ふ者なり斯爾償贖を得たり
17是に於てアブラハム神に祈りければ神アビメレクと其妻および婢を醫したまひて彼等子を產むにいたる
18ヱホバさきにはアブラハムの妻サラの故をもてアビメレクの家の者の胎をことごとく閉たまへり
1ヱホバ其言し如くサラを眷顧みたまふ即ちヱホバ其語しごとくサラに行ひたまひしかば
2サラ遂に孕み神のアブラハムに語たまひし期日に及びて年老たるアブラハムに男子を生り
3アブラハム其生れたる子即ちサラが己に生る子の名をイサクと名けたり
4アブラハム神の命じたまひし如く八日に其子イサクに割禮を行へり
5アブラハムは其子イサクの生れたる時百歳なりき
6サラ言けるは神我を笑はしめたまふ聞く者皆我とともに笑はん
7又曰けるは誰かアブラハムにサラ子女に乳を飮しむるにいたらんと言しものあらん然に彼が年老るに及びて男子を生たりと
8偖其子長育ちて遂に乳を離るイサクの乳を離るる日にアブラハム大なる饗宴を設けたり
9時にサラ、エジプト人ハガルがアブラハムに生たる子の笑ふを見て
10アブラハムに言けるは此婢と其子を遂出せ此婢の子は吾子イサクと共に嗣子となるべからざるなりと
11アブラハム其子のために甚く此事を憂たり
12神アブラハムに言たまひけるは童兒のため又汝の婢のために之を憂るなかれサラが汝に言ところの言は悉く之を聽け其はイサクより出る者汝の裔と稱らるべければなり
13又婢の子も汝の胤なれば我之を一の國となさん
14アブラハム朝夙に起てパンと水の革嚢とを取りハガルに與へて之を其肩に負せ其子を携へて去しめければ彼往てベエルシバの曠野に躑躅しが
15革嚢の水遂に罄たれば子を灌木の下に置き
16我子の死るを見るに忍ずといひて遙かに行き箭逹を隔てて之に對ひ坐しぬ斯相嚮ひて坐し聲をあげて泣く
17神其童兒の聲を聞たまふ神の使即ち天よりハガルを呼て之に言けるはハガルよ何事ぞや懼るるなかれ神彼處にをる童兒の聲を聞たまへり
18起て童兒を起し之を汝の手に抱くべし我之を大なる國となさんと
19神ハガルの目を開きたまひければ水の井あるを見ゆきて革嚢に水を充し童兒に飮しめたり
20神童兒と偕に在す彼遂に成長り曠野に居りて射者となり
21パランの曠野に住り其母彼のためにエジプトの國より妻を迎へたり
22當時アビメレクと其軍勢の長ピコル、アブラハムに語て言けるは汝何事を爲にも神汝とともに在す
23然ば汝が我とわが子とわが孫に僞をなさざらんことを今此に神をさして我に誓へ我が厚情をもて汝をあつかふごとく汝我と此汝が寄留る地とに爲べし
24アブラハム言ふ我誓はん
25アブラハム、アビメレクの臣僕等が水の井を奪ひたる事につきてアビメレクを責ければ
26アビメレク言ふ我誰が此事を爲しを知ず汝我に告しこと无く又我今日まで聞しことなし
27アブラハム乃ち羊と牛を取て之をアビメレクに與ふ斯て二人契約を結べり
28アブラハム牝の羔七を分ち置ければ
29アビメレク、アブラハムに言ふ汝此七の牝の羔を分ちおくは何のためなるや
30アブラハム言けるは汝わが手より此七の牝の羔を取りて我が此井を掘たる證據とならしめよと彼等二人彼處に誓ひしによりて
31其處をベエルシバ(盟約の井)と名けたり
32斯彼等ベエルシバにて契約を結びアビメレクと其軍勢の長ピコルは起てペリシテ人の國に歸りぬ
33アブラハム、ベエルシバに柳を植ゑ永遠に在す神ヱホバの名を彼處に龥り
34斯してアブラハム久くペリシテ人の地に留寄りぬ
1是等の事の後神アブラハムを試みんとて之をアブラハムよと呼たまふ彼言ふ我此にあり
2ヱホバ言給ひけるは爾の子爾の愛する獨子即ちイサクを携てモリアの地に到りわが爾に示さんとする彼所の山に於て彼を燔祭として獻ぐべし
3アブラハム朝夙に起て其驢馬に鞍おき二人の少者と其子イサクを携へ且燔祭の柴薪を劈りて起て神の己に示したまへる處におもむきけるが
4三日におよびてアブラハム目を擧て遙に其處を見たり
5是に於てアブラハム其少者に言けるは爾等は驢馬とともに此に止れ我と童子は彼處にゆきて崇拜を爲し復爾等に歸ん
6アブラハム乃ち燔祭の柴薪を取て其子イサクに負せ手に火と刀を執て二人ともに往り
7イサク父アブラハムに語て父よと曰ふ彼答て子よ我此にありといひければイサク即ち言ふ火と柴薪は有り然ど燔祭の羔は何處にあるや
8アブラハム言けるは子よ神自ら燔祭の羔を備へたまはんと二人偕に進みゆきて
9遂に神の彼に示したまへる處に到れり是においてアブラハム彼處に壇を築き柴薪を臚列べ其子イサクを縛りて之を壇の柴薪の上に置せたり
10斯してアブラハム手を舒べ刀を執りて其子を宰んとす
11時にヱホバの使者天より彼を呼てアブラハムよアブラハムよと言へり彼言ふ我此にあり
12使者言けるは汝の手を童子に按るなかれ亦何をも彼に爲べからず汝の子即ち汝の獨子をも我ために惜まざれば我今汝が神を畏るを知ると
13茲にアブラハム目を擧て視れば後に牡綿羊ありて其角林叢に繋りたりアブラハム即ち往て其牡綿羊を執へ之を其子の代に燔祭として獻げたり
14アブラハム其處をヱホバエレ(ヱホバ預備たまはん)と名く是に縁て今日もなほ人々山にヱホバ預備たまはんといふ
15ヱホバの使者再天よりアブラハムを呼て
16言けるはヱホバ諭したまふ我己を指て誓ふ汝是事を爲し汝の子即ち汝の獨子を惜まざりしに因て
17我大に汝を祝み又大に汝の子孫を増して天の星の如く濱の沙の如くならしむべし汝の子孫は其敵の門を獲ん
18又汝の子孫によりて天下の民皆福祉を得べし汝わが言に遵ひたるによりてなりと
19斯てアブラハム其少者の所に歸り皆たちて偕にベエルシバにいたれりアブラハムはベエルシバに住り
20是等の事の後アブラハムに告る者ありて言ふミルカ亦汝の兄弟ナホルにしたがひて子を生り
21長子はウヅ其弟はブヅ其次はケムエル是はアラムの父なり
22其次はケセデ、ハゾ、ピルダシ、ヱデラフ、ベトエル
23ベトエルはリベカを生り是八人はミルカがアブラハムの兄弟ナホルに生たる者なり
24ナホルの妾名はルマといふ者も亦テバ、ガハム、タハシおよびマアカを生り
1サラ百二十七歳なりき是即ちサラの齡の年なり
2サラ、キリアテアルバにて死り是はカナンの地のヘブロンなりアブラハム至りてサラのために哀み且哭り
3斯てアブラハム死人の前より起ち出てヘテの子孫に語りて言けるは
4我は汝等の中の賓旅なり寄居者なり請ふ汝等の中にて我は墓地を與へて吾が所有となし我をして吾が死人を出し葬ることを得せしめよ
5ヘテの子孫アブラハムに應て之に言ふ
6我主よ我等に聽たまへ我等の中にありて汝は神の如き君なり我等の墓地の佳者を擇みて汝の死人を葬れ我等の中一人も其墓地を汝にをしみて汝をしてその死人を葬らしめざる者なかるべし
7是に於てアブラハム起ち其地の民ヘテの子孫に對て躬を鞠む
8而して彼等と語ひて言けるは若我をしてわが死人を出し葬るを得せしむる事汝等の意ならば請ふ我に聽て吾ためにゾハルの子エフロンに求め
9彼をして其野の極端に有るマクペラの洞穴を我に與へしめよ彼其十分の値を取て之を我に與へ汝等の中にてわが所有なる墓地となさば善し
10時にエフロン、ヘテの子孫の中に坐しゐたりヘテ人エフロン、ヘテの子孫即ち凡て其邑の門に入る者の聽る前にてアブラハムに應へて言けるは
11吾主よ我に聽たまへ其野は我汝に與ふ又其中の洞穴も我之を汝に與ふ我吾民なる衆人の前にて之を汝にあたふ汝の死人を葬れ
12是に於てアブラハム其地の民の前に躬を鞠たり
13而して彼其地の民に聽る前にてエフロンに語りて言けるは汝若之を肯はば請ふ吾に聽け我其野の値を汝に償はん汝之を吾より取れ我わが死人を彼處に葬らん
14エフロン、アブラハムに答て曰けるは
15わが主よ我に聽たまへ彼地は銀四百シケルに當る是は我と汝の間に豈道に足んや然ば汝の死人を葬れ
16アブラハム、エフロンの言に從ひエフロンがヘテの子孫の聽る前にて言たる所の銀を秤り商買の中の通用銀四百シケルを之に與へたり
17マムレの前なるマクペラに在るエフロンの野は野も其中の洞穴も野の中と其四周の堺にある樹も皆
18ヘテの子孫の前即ち凡て其邑に入る者の前にてアブラハムの所有と定りぬ
19厥後アブラハム其妻サラをマムレの前なるマクペラの野の洞穴に葬れり是即ちカナンの地のヘブロンなり
20斯く其野と其中の洞穴はヘテの子孫之をアブラハムの所有なる墓地と定めたり
1アブラハム年邁て老たりヱホバ萬の事に於てアブラハムを祝みたまへり
2茲にアブラハム其凡の所有を宰る其家の年邁なる僕に言けるは請ふ爾の手を吾髀の下に置よ
3我爾をして天の神地の神ヱホバを指て誓はしめん即ち汝わが偕に居むカナン人の女の中より吾子に妻を娶るなかれ
4汝わが故國に往き吾親族に到りて吾子イサクのために妻を娶れ
5僕彼に言けるは倘女我に從ひて此地に來ることを好まざる事あらん時は我爾の子を彼汝が出來りし地に導き歸るべきか
6アブラハム彼に曰けるは汝愼みて吾子を彼處に携かへるなかれ
7天の神ヱホバ我を導きて吾父の家とわが親族の地を離れしめ我に語り我に誓ひて汝の子孫に此地を與へんと言たまひし者其使を遣して汝に先たしめたまはん汝彼處より我子に妻を娶るべし
8若女汝に從ひ來る事を好ざる時は汝吾此誓を解るべし唯我子を彼處に携へかへるなかれ
9是に於て僕手を其主人アブラハムの髀の下に置て此事について彼に誓へり
10斯て僕其主人の駱駝の中より十頭の駱駝を取りて出たてり即ち其主人の諸の佳物を手にとりて起てメソポタミアに往きナホルの邑に至り
11其駱駝を邑の外にて井の傍に跪伏しめたり其時は黄昏にて婦女等の水汲にいづる時なりき
12斯して彼言けるは吾主人アブラハムの神ヱホバよ願くは今日我にその者を逢しめわが主人アブラハムに恩惠を施し給へ
13我この水井の傍に立ち邑の人の女等水を汲に出づ
14我童女に向ひて請ふ汝の瓶をかたむけて我に飮しめよと言んに彼答へて飮め我また汝の駱駝にも飮しめんと言ば彼は汝が僕イサクの爲に定め給ひし者なるべし然れば我汝の吾主人に恩惠を施し給ふを知らん
15彼語ふことを終るまへに視よリベカ瓶を肩にのせて出きたる彼はアブラハムの兄弟ナホルの妻ミルカの子ベトエルに生れたる者なり
16其童女は觀に甚だ美しく且處女にして未だ人に適しことあらず彼井に下り其瓶に水を盈て上りしかば
17僕はせゆきて之にあひ請ふ我をして汝の瓶より少許の水を飮しめよといひけるに
18彼主よ飮たまへといひて乃ち急ぎ其瓶を手におろして之にのましめたりしが
19飮せをはりて言ふ汝の駱駝のためにも其飮をはるまで水を汲て飽しめん
20急ぎて其瓶を水鉢にあけ又汲んとて井にはせゆき其諸の駱駝のために汲みたり
21其人之を見つめヱホバが其途に幸福をくだしたまふや否やをしらんとして默し居たり
22茲に駱駝飮をはりしかば其人重半シケルの金の鼻環一箇と重十シケルの金の手釧二箇をとりて
23言けるは汝は誰の女なるや請ふ我に告よ汝の父の家に我等が宿る隙地ありや
24女彼に曰けるは我はミルカがナホルに生みたる子ベトエルの女なり
25又彼にいひけるは家には藁も飼草も多くあり且宿る隙地もあり
26是に於て其人伏てヱホバを拜み
27言けるは吾主人アブラハムの神ヱホバは讃美べきかなわが主人に慈惠と眞實とを缺きたまはず我途にありしにヱホバ我を吾主人の兄弟の家にみちびきたまへり
28茲に童女走行て其母の家に此等の事を告たり
29リベカに一人の兄あり其名をラバンといふラバンはせいで井にゆきて其人の許につく
30すなはち彼鼻環および其妹の手の手釧を見又其妹リベカが其人斯我に語りといふを聞て其人の所に到り見るに井の側らにて駱駝の傍にたちゐたれば
31之に言けるは汝ヱホバに祝るる者よ請ふ入れ奚ぞ外にたつや我家を備へ且駱駝のために所をそなへたり
32是に於て其人家にいりぬラバン乃ち其駱駝の負を釋き藁と飼草を駱駝にあたへ又水をあたへて其人の足と其從者の足をあらはしめ
33斯して彼の前に食をそなへたるに彼言ふ我はわが事をのぶるまでは食はじとラバン語れといひければ
34彼言ふわれはアブラハムの僕なり
35ヱホバ大にわが主人をめぐみたまひて大なる者とならしめ又羊牛金銀僕婢駱駝驢馬をこれにたまへり
36わが主人の妻サラ年老てのちわが主人に男子をうみければ主人其所有を悉く之に與ふ
37わが主人我を誓せて言ふ吾すめるカナンの地の人の女子の中よりわが子に妻を娶るなかれ
38汝わが父の家にゆきわが親族にいたりわが子のために妻をめとれと
39我わが主人にいひけるは倘女我にしたがひて來ずば如何
40彼我にいひけるは吾事ふるところのヱホバ其使者を汝とともに遣はして汝の途に幸福を降したまはん爾わが親族わが父の家より吾子に妻をめとるべし
41汝わが親族に至れる時はわが誓を解さるべし若彼等汝にあたへずば汝はわが誓をゆるさるべしと
42我今日井に至りて謂けらくわが主人アブラハムの神ヱホバねがはくはわがゆく途に幸福を降したまへ
43我はこの井水の傍に立つ水を汲にいづる處女あらん時我彼にむかひて請ふ汝の瓶より少許の水を我にのましめよと言んに
44若我に答へて汝飮め我亦汝の駱駝のためにも汲んと言ば是ヱホバがわが主人の子のために定たまひし女なるべし
45我心の中に語ふことを終るまへにリベカ其瓶を肩にのせて出來り井にくだりて水を汲みたるにより我彼に請ふ我にのましめよと言ければ
46彼急ぎ其瓶を肩よりおろしていひけるは飮めまた汝の駱駝にものましめんと是に於て我飮しが彼また駱駝にものましめたり
47我彼に問て汝は誰の女なるやといひければミルカがナホルに生たる子ベトエルの女なりといふ是に於て我其鼻に環をつけ其手に手釧をつけたり
48而して我伏てヱホバを拜み吾主人アブラハムの神ヱホバを頌美たりヱホバ我を正き途に導きてわが主人の兄弟の女を其子のために娶しめんとしたまへばなり
49されば汝等若わが主人にむかひて慈惠と眞誠をもて事をなさんと思はば我に告よ然ざるも亦我に告よ然ば我右か左におもむくをえん
50ラバンとベトエル答て言けるは此事はヱホバより出づ我等汝に善惡を言ふあたはず
51視よリベカ汝の前にをる携へてゆき彼をしてヱホバの言たまひし如く汝の主人の子の妻とならしめよ
52アブラハムの僕彼等の言を聞て地に伏てヱホバを拜めり
53是に於て僕銀の飾品金の飾品および衣服をとりいだしてリベカに與へ亦其兄と母に寶物をあたへたり
54是に於て彼および其從者等食飮して宿りしが朝起たる時彼言我をして吾主人に還らしめよ
55リベカの兄と母言けるは童女を數日の間少くも十日我等と偕にをらしめよしかるのち彼ゆくべし
56彼人之に言ヱホバ吾途に福祉をくだしたまひたるなれば我を阻むるなかれ我を歸してわが主人に往しめよ
57彼等いひけるは童女をよびて其言を問んと
58即ちリベカを呼て之に言けるは汝此人と共に往や彼言ふ往ん
59是に於て彼等妹リベカと其乳媼およびアブラハムの僕と其從者を遣り去しめたり
60即ち彼等リベカを祝して之にいひけるはわれらの妹よ汝千萬の人の母となれ汝の子孫をして其仇の門を獲しめよ
61是に於てリベカ起て其童女等とともに駱駝にのりて其人にしたがひ往く僕乃ちリベカを導きてさりぬ
62茲にイサク、ラハイロイの井の路より來れり南の國に住居たればなり
63しかしてイサク黄昏に野に出て默想をなしたりしが目を擧て見しに駱駝の來るあり
64リベカ目をあげてイサクを見駱駝をおりて
65僕にいひけるは野をあゆみて我等にむかひ來る者は何人なるぞ僕わが主人なりといひければリベカ覆衣をとりて身をおほへり
66茲に僕其凡てなしたる事をイサクに告ぐ
67イサク、リベカを其母サラの天幕に携至りリベカを娶りて其妻となしてこれを愛したりイサクは母にわかれて後茲に慰籍を得たり
1アブラハム再妻を娶る其名をケトラといふ
2彼ジムラン、ヨクシヤン、メダン、ミデアン、イシバク、シユワを生り
3ヨクシヤン、シバとデダンを生むデダンの子はアッシユリ族レトシ族リウミ族なり
4ミデアンの子はエパ、エペル、ヘノク、アビダ、エルダアなり是等は皆ケトラの子孫なり
5アブラハム其所有を盡くイサクに與へたり
6アブラハムの妾等の子にはアブラハム其生る間の物をあたへて之をして其子イサクを離れて東にさりて東の國に至らしむ
7アブラハムの生存へたる齡の日は即ち百七十五年なりき
8アブラハム遐齡に及び老人となり年滿て氣たえ死て其民に加る
9其子イサクとイシマエル之をヘテ人ゾハルの子エフロンの野なるマクペラの洞穴に葬れり是はマムレの前にあり
10即ちアブラハムがヘテの子孫より買たる野なり彼處にアブラハムと其妻サラ葬らる
11アブラハムの死たる後神其子イサクを祝みたまふイサクはベエルラハイロイの邊に住り
12サラの侍婢なるエジプト人ハガルがアブラハムに生たる子イシマエルの傳は左のごとし
13イシマエルの子の名は其名氏と其世代に循ひて言ば是のごとしイシマエルの長子はネバヨテなり其次はケダル、アデビエル、ミブサム
14ミシマ、ドマ、マツサ
15ハダデ、テマ、ヱトル、ネフシ、ケデマ
16是等はイシマエルの子なり是等は其郷黨を其營にしたがひて言る者にして其國に循ひていへば十二の牧伯なり
17イシマエルの齡は百三十七歳なりき彼いきたえ死て其民にくははる
18イシマエルの子等はハビラよりエジプトの前なるシユルまでの間に居住てアッスリヤまでにおよべりイシマエルは其すべての兄弟等のまへにすめり