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ばらの芽 初等科國語 六1943年
くれなゐの二尺のびたるばらの芽の針やはらかに春雨の降る 松の葉の葉ごとにむすぶ白露のおきてはこぼれこぼれてはおく
雪降れば山よりくだる小鳥多し障子のそとにひねもす聞ゆ
土ぼこりうづまき立つや十あまり荷馬車すぎ行く夏草の野路に
汽車の來る重き力の地ひびきに家鳴(やな)りとよもす秋の晝すぎ おとろへし蠅(はへ)の一つが力なく障子にはひて日はしづかなり 國こぞり心ひとつとふるひ立ついくさの前に火も水もなし